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2017.08.01

【中国発 2016年医薬品査察の年次報告書(2)】ASTROM通信<127号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

うだるような暑さが続いていますが、いかがお過ごしでいらっしゃいますか?

さて、今回も前回に続いて、
中国国家食品薬品監督管理局(CFDA:China Food and Drug Administration)が2016年に実施した
医薬品関連の査察の年次報告書を見ていきたいと思います。

前回のメールマガジンで、CFDAの管理レベルの高さに驚かれた方が多かったようですが、中国は
2017年6月にはICHにも加盟するなど、グローバルスタンダードに対応してきているので、今後の
動向は非常に興味深いところです。
是非、今回のメールマガジンも最後までお付き合い頂ければ幸いです。

出典
http://eng.sfda.gov.cn/WS03/CL0757/173386.html


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2016年に実施した査察について ※Part1~Part3は前回のメルマガをご参照ください。
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Part4. 無通告査察
I. 概略
CFDAの関連部署の要求により、製薬GMPの無通告査察の作業手順に基づき、2016年はCFDAから45社の
無通告査察の仕事を受け、そのうち39社は完了し、残りは、現在実施中である。39社のうち、9社は
バイオ医薬品の製造業者、20社はTCM(Traditional Chinese Medicine:中国の伝統薬)の製造業者、
9社は化学薬品の製造業者、2社は血液製剤の製造業者である。
2016年の無通告査察において、21社(54%)が不合格となった。14社の企業の製薬GMP認証の取り消しと、
10社の取り調べの開始が示唆された。7社の問題の多い製品は、回収が命じられた。製薬GMP無通告査察
において、TCM薬品と化学薬品は、より多くの問題があると判断された。無通告査察で発見された全て
の問題は、法律に従って対処された。
II. 主な結果
(1)TCM製造業者で見つかった主な問題
20のTCM製造業者のうち12社は製薬GMPの要件を満たしていなかった。
 1.中国漢方薬の製造業者
 ①工程の正式に許可されていない変更の問題が目立った。
  経口剤の製造コストを減らすため、前処理と抽出処理の許可されていない変更が目立った。
  今年の無通告査察は、処方にある植物薬が抽出されなかったことにより実施された。
  この植物薬は、技術的な手段により抽出されるべきだが、粉砕後に直接加えられていた。
 ②植物薬及び薄切りの生薬は管理がされていなかった。
  全レベルの医薬品の規制当局による査察に対処するために、中国漢方薬の製造業者は、倉庫の原料
  のシステム在庫数と、在庫品と欠品の記録を改ざんした。
  企業の内部操作により、関連するシステム在庫と原料の記録は一致させることができたが、購入に
  関するインボイスや領収書の対応をし損ねた。また、そのような企業は、植物薬が農家から直接
  買うことができることを悪用し、逆に、中国漢方薬の製造分から植物薬を使用し、また、原料の
  システム在庫数を改ざんした。
 ③購入された植物薬と薄切りの生薬は厳格な検査の対象ではなく、データの完全性が疑わしい。
  中国漢方薬の昔ながらの製造業者は、たくさんの製品品種を持ち、その中には、多様な植物薬と
  薄切りの生薬を含んでいる。詳細の分析装置とQC職員は生産規模に適応していないため、
  購入された植物薬と薄切りの生薬の各バッチが検査されたことを保証することができない。
 2.人工牛黄
  人工牛黄は、中国薬局方で“医薬原料と薄切りの生薬”の分類のもとで販売されているので、
  それは中国漢方薬の原料に属し、人工牛黄の製造業者は製薬GMPの要件に従って製品を作ることが
  できない。特に、人工牛黄の上流サプライチェインの供給者の監査や管理に関し、製薬GMP要件が
  非常に不十分で、加工場所の衛生状態は悪く、原料はトレースできず、加工工程は管理されていない。
  主な問題は下記の通りである。
 ①供給者の管理が弱い
 ②微生物限度の信頼性試験が疑わしい
 ③品質保証システムに含まれていない
 3.薄切りの生薬
  外注委託された薄切りの生薬の販売は非常に一般的である。購入された植物薬や加工製品の含有量
  定量の問題は非常に突出している。時々、染色や重さの問題が発生し、バッチの製造記録の信ぴょう
  性が疑わしい。
 ①信頼できないバッチの製造記録
 ②疑わしい外部委託された薄切り生薬の販売
 ③データインテグリティの信ぴょう性
(2)バイオ医薬品
 1. 抗ganglioside GM1抗体ナトリウムの査察
  2016年、抗ganglioside GM1抗体ナトリウムの製造業者4社が査察を受け、原料の品質の管理と、
  豚の脳の供給者にリスクがあることがわかった。
 ①企業による供給者の管理は、効果的なトレーサビリティが保証できていないので、供給者の管理を
  向上させなければならない。
 ②豚の脳の低温輸送のモニタリング用電子データの管理が不十分だった。
 2.肝細胞の成長促進因子の注射剤の査察
  2016年、肝細胞の成長促進因子の注射剤の製造業者4社が査察を受け、2社は製薬GMP認証を取り
  消され、2社は、ワーニングレターが発行された。
 ①記録ファイルの偽造
 ②データインテグリティの問題
 ③登録された製造工程の不一致
 ④原料としての肝臓の品質の有効な保証ができないこと

Part5. 海外査察
I. 概略
(1)年間査察業務の概略
CFDAの2016年の海外査察の合計は49件だった。
 1.2016年の査察は19か国に及び、ヨーロッパ33件、北米6件、東南アジア6件、南米2件、インド
  1件、オーストラリア1件だった。ヨーロッパと北米は相対的に薬の種類が多かったこと、インドと
  ベトナムは品質リスクが高いことから査察件数が多かった。
 2.査察は、評価と承認に役立ち、市販されている製品の安全性の要件を考慮に入れるべきであるとい
  原則に従った。審査中の薬の割合が増え、査察の範囲には、治験の申請中の製品、製造や再登録
  の申請、追加申請の段階のものがすべて含まれる。販売されている製品を査察する理由は、主に通関地
  の品質試験の問題だった。海外の会社で製造された副作用のリスクが高いiodoprestamine注射剤が査察
  に追加された。
 3.査察業務は、包括的でさまざまな剤型に及び、化学製剤にも及んだ。注射剤、固形製剤、インプラント、
  スプレー式点鼻薬を含む40の化学薬品が含まれ、その中にはバイオ薬品が3件、原薬が6件、
  ワクチン・血液製剤・治療用バイオ薬品が11件、植物薬が4件含まれる。
(2)2016年の査察の実施
上半期のCFDAとCFDI(The Center for Food and Drug Inspection)の査察ツアー、関連する海外の状況や、
企業の製品の準備により、CFDIは年間を通じて37件の医薬品の査察業務を提案した。7件の現地査察を含む
15件の査察業務が完了し、そのうちの3件(42%)は、不合格になり、8件の医薬品の企業は、輸入登録認証を
取り下げるか、査察中に申請を返上した。21件については、企業の製造スケジュールにより、査察が2017年
の第1四半期に完了するよう計画された。その他の12件は、2017年の第1四半期に査察を受けられないため、
CFDIは2017年の海外査察にそれらを含めることを監督部門に報告した。
II. 主な結果
査察した7件のうち、3件が不合格になり、その率は前年に比べてわずかに増えた。査察では117の不
備が確認された。そのうちの3件はクリティカル、18件はメジャーの不備だった。問題は主に、品質
管理と品質保証、原料システム、変更管理に集中した。クリティカルの不備は主に、製造プロセスの一
貫性とデータインテグリティだった。海外査察で発見された全ての問題は、法律に従って対処された。
主な重大な問題は下記の通りである。
 1.実際の製造プロセスと製造施設が登録申請の内容と不一致で、大きな変更が中国での申請の提出なしに
  実施されていた。
 2.データインテグリティについて、製品品質に深刻な影響を与えるような重大な問題があった。
 3.オフサイトの査察で処理された品目が多数あった。

Part6. GSP(Good Supply Practice)無通告査察
I. 概略
2016年、CFDAは医薬品の流通フィールド内での違法な販売の集中的な改善を実施し、さらに、会社の
自己点検と改正、県の管理組織による管理と査察、CFDAによる無通告査察を通じて、医薬品の流通規
則を再編成し管理し、違法な販売を解決した。年間を通じて、53の医薬品卸売販売業者で査察を実施
した。無通告査察の結果はCFDAから発表された。
II. 主な結果
(1)CFDA通知No.94の違反
 1.規制に則って医薬品を保管・輸送し、温度・湿度をモニタすることを怠った。
 2.医薬品の購入・販売に関し、認証(ライセンス証明書)、請求書(インボイス、商品に添付される
  シート)、勘定(原料の数量、金融勘定)、商品(医薬品)とお金(医薬品の支払い)が一致しない
  か、または、お互いに矛盾がある。隠し口座の医薬品を倉庫に入れることを怠った。品質マネジメント
  システムに含まれた後も医薬品を管理することを怠った。ビジネスの取引に個人の口座を使用した等が
  みつかった。
 3. 企業は、医薬品の調達源を改ざんし、医薬品の販売の流れをねつ造し、コンピュータシステムや、
  温度及び湿度のモニタリングシステムのデータを改ざんし、本物の医薬品の購買―販売―保管の記録、
  請求書、領収書やデータを隠匿した。医薬品の購買―販売―保管の記録は不完全で信用できず、
  販売はトレースができなかった。
(2)企業によるCFDAの製薬GSP(Good Supply Practice for Pharmaceuticals)の違反の状況
 医薬品流通企業のGSPの問題は、主に、一般規定、保管、維持管理、販売に集中していた。主な問題は下記
 の通りである。
 1.法律に従ったビジネスの実施を怠り、虚偽や不正行為があった。
  企業は許可なく、登録された住所を変更した。許可の範囲を超えて医薬品を保管するための倉庫を
  作った。医薬品の不法な販売の条件を備えていた。医薬品の調達源と販売の流れを改ざんした。請求書
  を隠匿し、偽の原料を提供した。信用できない自己点検記録を提供した。納税申告書を改ざんした。
  温度と湿度のモニタリングデータを改ざんした。
 2.規制に従って医薬品を保管することを怠り、倉庫の温度と湿度を効果的にモニタリングすることを怠った。
 3.請求書、入出金、商品と支払が、購入した医薬品と販売した医薬品と矛盾している。企業は、特定の医薬
  品の販売に関し、国の規制を実践することを怠った。

Part7. 海外の組織によるGMP査察の観察
I. 概略
CFDAの国際協力部門からの文書に基づき、CFDIは2016年に81件の査察の観察を計画した。そのうち76社80%は
浙江 、山東、江蘇、広東、湖北、海南、および河北を含む20県におよび、これは昨年と基本的に一致している。
2016年は、査察の観察を行った査察組織は、世界保健機構(WHO)、欧州医薬品品質理事会(EDQM)、アメリカ
の食品医薬品局(FDA)、ドイツのBGV、ブラジルのANVIA、フランスのANSMなど、海外の医薬品規制当局の12個
の国際組織を含んでいた。医薬品製造業者9社(11%)でクリティカルな不備がみつかり、海外の規制当局/査察
組織による現地査察が不合格になった。
2015年と比較すると、不合格の率はわずかに増加した。査察に不合格になった9社のうち、最もクリティカルな
不備は、適格と評価されるまで、繰り返し試験を実施する、システムの時刻を変えた後に試験をする、監査証跡
の記録を消す、信用できない記録、データや記録の紛失、不十分なファイル記録管理等を含むデータインテグリ
ティだった。そして、いくつかの企業では、不当に作られた原料の基準、交差汚染を防ぐためにとっている
不適切な方法がみつかった。
全体的に、データインテグリティの問題が突出していた。2016年の国内企業の不合格の増加の主な理由は、現在
の医薬品の査察の傾向の変化を反映している。
今年の査察の観察は合計172の医薬品で、原薬が119、経口固形製剤が23、注射剤が19、バイオ医薬品が5、
その他製品が6だった。査察した81件のうち、62件(69%)が原薬、12件(13%)が経口固形製剤で、原薬の割合が最も
多かった。
II. 主な結果
2016年の査察の観察において、1108件の不備が確認され記録された。中国GMP(2010年版)に基づき、不備を分類
すると、すべての不備の88%が、①品質管理と品質保証②文書管理③装置④原料と製品⑤検証と適格性評価
⑥建物と設備の6つのカテゴリに入った。現在の海外の査察において、データインテグリティの要件が広がり
厳しくなっているという懸念を反映し、企業が徐々にデータインテグリティの管理を強化するムードの中で
2015年に比べ文書管理の不備が7%増加し、4位から2位になった。
海外の組織による製薬GMP査察において、“品質管理と品質保証”の不備は、トップの27.3%だった。主な問題は、
実験室内のコンピュータ化分析装置、逸脱の取り扱いとCAPA、製品品質レビュ、変更管理、OOS/OOTの結果の処理、
実験室の管理手順の規定との不一致、微生物試験の管理、品質リスクマネジメントと安定性試験に集中した。
2位の“文書管理”は、主に、記録の完全性と追跡可能性、文書のライフサイクルマネジメント、文書の完全性、
記録の運用の4点に集中した。
3位の“装置”の不備は、使用と洗浄、装置の保守と修理、水の準備システムで83.6%を占めた。
“原料と製品”の不備は、供給者の管理、原料と製品の識別、原料の加工の管理、原料と製品の基準への準拠、
リリース管理に集中した。
”検証と適格性評価“は主に、バリデーションの科学性、バリデーションの管理とバリデーションの文書と記録
の問題を含んでいた。”建物と設備“の不備は主に、環境の管理、保管エリアの管理、汚染及び交差汚染を防ぐ
ための手段、建物と設備のライフサイクルマネジメントを含んでいた。
III.異なる組織の製薬GMP査察の分析
査察内容の観点から、異なる製薬GMP査察機関の間で、査察の焦点に違いがあったが、2016年の査察の観察でみつ
かった不備の分析の結果、①品質管理と品質保証②文書管理③装置④原料と製品⑤検証と適格性評価⑥建物と
設備の6点により多くの不備があったことがわかった。
EDQMとWHOは、より多くの不備のデータを提出し、各査察で平均すると20件あった。各不備については査察中に
発見された問題が説明された。
査察の終了後、そのような問題は、最終査察報告の準備のためにまとめられた。アメリカのFDAは、査察において
相対的に提出した不備が少なく、各査察で平均すると7件だった。また、すべての問題を査察中に不備として
取り上げなかった。査察官は、製品リスクとの関連において識別された問題にもとづく判断の後に不備を提出した。
そして、最後の査察ミーティングの時に、Form 483の形式で企業に通知した。


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まとめ
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2回にわたって、中国国家食品薬品監督管理局(CFDA:China Food and Drug Administration)が2016年に実施
した医薬品関連の査察の年次報告書をみてきましたが、いかがでしたでしょうか。
データインテグリティへの対応を強化しつつも査察の中で不備が多く見つかっている状況は、日本と全く変わらず
興味深かったです。
査察の中で、在庫、購入インボイス、領収書、納税申告書等を確認し、不法な販売を行っていないかをチェック
している点も非常に興味深かったです。
日本でも、もっとこのようなチェックを行っていけば、アセトアミノフェン問題のような事案が防げるのではない
かと感じました。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。
☆次回は、8/15(火)に配信させていただきます。

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hashimoto@e-pros.co.jp

【発行責任者】
株式会社プロス
ASTROM通信』担当 橋本奈央子

2017.07.14

【中国発 2016年医薬品査察の年次報告書(1)】ASTROM通信<126号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

暑い日が続いていますが、いかがお過ごしでいらっしゃいますか?

さて、これまで3回にわたり、英国医薬品庁(MHRA)が2016年に実施したGMP査察における不備の
傾向をまとめたレポートについて取り上げてきましたが、今回は、2回にわたって
中国国家食品薬品監督管理局(CFDA:China Food and Drug Administration)が2016年に実施した
医薬品関連の査察の年次報告書を見ていきたいと思います。
中国といえば、以前は、製造所の管理ができていない、製造される原薬や薬の品質に問題があると
いうイメージが強かったですが、CFDAの規制強化により、管理レベルはどんどん上がりつつあります。
また、2017年6月にはICHにも加盟し、今後の動向には目が離せない状況です。
日本の製薬会社様の中で、中国に輸出をしている、もしくは、輸出しようとしている会社様が増えて
いますので、CFDAがどのような査察を行い、何を指摘するのかを、参考にしてみていただければと
思います。

最後までお付き合い頂ければ幸いです。

出典
http://eng.sfda.gov.cn/WS03/CL0757/173386.html


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2016年に実施した査察について
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The Center for Food and Drug Inspection(CFDI)は、(1)承認前査察:34件(2)GMP認証検査:
16件(3)GMPフォローアップ査察:204件(4)無通告査察:39件(5)海外査察:7件
(6)GSP(Good Supply Practice)無通告査察:50件(7)国際査察の観察:81件 合計431件の査察を
実施した。
※文中では(5)の海外査察は49件、(6)のGSP無通告査察は53件(但し、グラフ上は50件)になっている。

Part1. 承認前査察
I. 概略
34件42製造所の査察を実施し、34製造所(81%)が合格し、8製造所(19%)は不合格となった。
II. 主な結果
トレースできないデータや、虚偽の申請書類といったデータの完全性に関する問題が目立った。それと
同時に、不十分なプロセスバリデーション、安定しない製造プロセス、製造プロセスと承認された
パラメータとの不一致がみつかった。詳細は以下の通りである。
(1)データの完全性に関する問題
 1.テストデータがトレースできなかった。一部の企業は、必要とされるサンプルの保管や、安定性試験
  の実施を怠った。
  承認前査察において、製品サンプル及び安定性試験用保管サンプルがなかった。また、保管サンプルに
  ついて要求される記録や、破棄の記録、安定性試験のサンプル、安定試験に使用した装置の記録の提供
  を怠った。
 2.申請書類に添付されたバッチの製造記録が虚偽で、不完全で、不整合だった。
(2)プロセスバリデーションが不十分で、製造プロセスが不安定だった。
 多様なプロセスバリデーションの実施が不十分だった。
 ダイナミックな製造中、いくつかの手順で重大な逸脱があったり、バッチの収率がバリデートされたバッチ
 から大きく外れていたりした。
(3)製造プロセス、キープロセスパラメータ、内装材料が、承認されたものと不一致で、その調査や評価が
 されていなかった。
 1.製造プロセスは、承認または申請中のプロセスと不一致だった。
 2.キープロセスパラメータが承認された、または、申請中の製造プロセスと不一致だった。
 3.内装材料の製造業者が登録申請中の業者と不一致だったが、企業は比較調査を実施しなかった。
(4)必要な逸脱調査が実施されなかった。
 ダイナミックな製造において重大な異常があったが、調査は不十分で、主要な原因は特定されなかった。
 申請中の原薬の、3バッチのプロセスバリデーションの結果とダイナミックな製造において、4バッチの
 最終製品の生産率に重大な違いがあったが、企業は分析や原因の特定をしなかった。

Part2. GMP認証検査
I. 概略
16件の医薬品製造業者の査察が準備され、16件の現地査察報告のコピーを受け取り、14件を2016年中
にレビュした。そのうち12件は、GMP認証査察に合格し、2件は不合格となった。また、5件の製造業者
にワーニングレターが発行された。2件の製造業者は、登録の承認文書を受け取っていないため、GMP認
証プロセスが中断している。
II. 主な結果
23件のメジャーな不備、197件のジェネラルの不備を含む合計220件の不備がみつかった。
品質管理・品質保証の不備が41件、文書管理の不備が32件、制度と人員の不備が24件、装置の不備が
23件、検証や適格性評価の不備が21件で、その割合は基本的に2015年と一致している。
今年は対外診断薬を製造する2社とも、認証査察で不合格になった。主な問題は以下の通りである。
(1)品質マネジメントシステム
 品質マネジメントシステムが効果的に運用されず、製品の製造や品質の要件を満たしていなかった。
 人の移動が頻繁で、熟練者が不足し、教育が実施されておらず、繰り返し生産に関する品質マネジメント
 システムの要件を満たしていなかった。文書の運用性が乏しく、データは不完全に記録されていた。
 変更手順に従って変更を変更管理の対象としていなかった。
(2)検証と適格性評価
 GMP認証を申請中の全ての製品についてプロセスバリデーションを実施することを怠った。
 また、共用の装置や設備の洗浄バリデーションを実施していなかった。バリデーション記録の一部は
 不完全だった。いくつかの再バリデーションが要求通りに実施されていなかった。

Part3. GMPフォローアップ査察
I. 概略
2016年は、215社のフォローアップ査察の実施を予告し、合計228件の査察を実施した。それらのうち
58件は製造休止または長期間製造中止の企業の査察だった。合計204件のフォローアップ査察が完了し
た。
12社(5.9%)はフォローアップ査察に不合格になり、58社(28.9%)にはワーニングレターが発行された。
査察で不合格になった12社のうち、5社は2015年の臨時査察で不適格とされ、4社は2重のランダム査
察の対象だった。
(1)2015年の品質レポートにおける臨時査察の状況
 10社がフォローアップ査察を受け入れ、5社が不合格になり、4社にワーニングレターが発行された。
(2)2重のランダム査察
 本質的な監視と、査察後の監視を革新するために、CFDAによる一体化した調整に従い、2016年12月に
 製薬企業向けの2重のランダム査察システムが最初に行われた。13社に対して実施さ
 れ、4社が不合格になり、69%が合格し、3社にワーニングレターが発行された。
(3)ワクチン製造業者
 2016年に、GMP認証を得ている38のワクチン製造業者に対し、フォローアップ査察が計画されたが、
 1社は2014年にGMP認証を取り消され、1社は2015年に製造所の変更の申請により認証取得に失敗していた
 ため、フォローアップ査察は36のワクチン製造業者に実施された。36社すべてが査察に合格したが、
 7社にジェネラルのリスクがみつかり、改善のためのワーニングレターが発行された。専門家の評価に
 よると、現場の査察官によりクリティカルな不備と評価されたものは、リスクが低いので、メジャーの
 不備にされるべきものだった。全体的にみると、ワクチン製造における品質リスクは、管理可能で、
 製造者は、規格化生産と品質マネジメントを行っている。
(4)血液製剤製造業者
 2016年に、26の血液製剤の製造業者にフォローアップ査察が計画されたが、1社は、製造停止中のため、
 25社の製造業者に対して実施した。25社すべてが査察に合格したが、4社にジェネラルのリスクが
 みつかり、改善のためのワーニングレターが発行された。全体的にみると、血液製剤の製造における
 品質リスクは管理可能で、製造者は規格化生産と品質マネジメントを行っている。
 ただし、個々の製造業者に対する監視は強化されるだろう。
(5)2015年にワーニングレターが発行された製造業者
 2015年にワーニングレターが出された32の製造業者に対してフォローアップ査察が実施された。
 製造業者は基本的には要件を満たしていたが、14社には再びワーニングレターが発行された。
(6)認証の地方分権化後の県の認証に合格した無菌製剤製造業者の臨時査察の状況
 県の認証に合格した21の無菌製剤の製造業者が臨時査察を受けた。すべての企業が査察に合格したが、
 6社にワーニングレターが発行された。
 査察結果によると、県はGMP認証査察機能を円滑に請け負うことができている。
(7)ハイリスクの製品に対する特別査察
 今年は、主に骨ペプチド、フルクトース二リン酸塩、シチコリンナトリウムが含まれる3つの注射剤に
 対してフォローアップ査察が実施された。114の特別査察を計画したが、47社はGMP(2010年版)査察で
 不合格、または、長期間製造を行っていないため、実際には67社に対して査察が実施された。
 査察において、骨ペプチド注射剤製造業者1社と、シチコリンナトリウム注射剤製造業者2社が不合格に
 なり、21社にワーニングレターが発行された。
II. 主な結果
(1)全体的な状況
 204の査察で、合計2271件の不備がみつかり、22件がクリティカルな不備、210件がメジャーな不備、
 2039件がジェネラルな不備だった。2015年のGMP認証及びフォローアップ査察と比べると、クリティカル
 な不備が増えた。
 特別査察の対象であるハイリスク製品の製造業者の中には、長期間製造を行っていない、または、
 GMP(2010年版)査察で不合格になった製造業者が目立った。査察で発見された一般的な問題は次の通り
 である。
 1.製造工程と登録された工程が不一致だった。
 2.製造記録の改ざん、データのでたらめな利用、検査記録のデータの勝手な変更、製品の内容物、
  装置、原料に関する記録の不一致を含むデータの完全性と信頼性の問題がまだある。
 3.プロセスバリデーションが不十分である。企業が製品のロットサイズの変更後のプロセスバリデー
  ションを怠ることに、より多くの問題がある。
 4.データ管理の標準化の問題が目立つ。主にシステムの権限設定の管理の不実施、監査証跡機能や、
  文書やデータの修正・削除に関する許可、合理的な管理の不足や、データの削除・選択・使用に
  関する合理的な説明の不足がある。
 5.コンピュータシステムの付属文書と、適格性評価とバリデーションの付属文書と、法的要件の実行に
  ギャップがあり、たくさんの問題がみつかった。
 6.逸脱や変更の管理が弱い。主に、発生した逸脱の効率的な確認と記録の不履行、変更に必要な
  評価やバリデーションの不足がある。
(2)2015年の臨時査察で不適格だった企業
 11社の査察において、11件のクリティカル、27件のメジャー、84件のジェネラルな不備がみつかった。
 主な問題は下記の通りである。
 1.製造工程が登録された工程と不一致だった。
 2.データインテグリティの問題
 3.プロセスバリデーションの問題
(3)2重のランダム査察
 5件のクリティカル、24件のメジャー、123件のジェネラルな不備がみつかった。
 主な問題は下記の通りである。
 1.記録の改ざん
 2.製品の品質と安全性の潜在的な危険
 3.データインテグリティの問題
 4.プロセスバリデーションの問題
 5.汚染、取り違い、間違えのリスクがある、標準化されていない原料の管理
 6.汚染や交差汚染を効果的に防ぐことのできない不完全な洗浄
(4)ワクチン製造業者
 38件のメジャー、383件のジェネラルな不備がみつかった。主な問題は以下の通りである。
 1.装置
  注入水貯蔵タンクに入る注入準備システム用の水が通るステンレス製のバルブ弁と、
  水のジェネレータの間に非常に長い水のよどみ部分があった。個々の機器はさびていた。
 2.原料と製品
  破壊された製品の量が、未確認最終製品の破壊記録の中に記録されていなかった。
  企業は、製造のための主要な細菌やウイルス種の全遺伝子の配列に関する予備知識を確立する
  ことを怠った。
 3.文書管理
  文書が特定されず、その管理の実施可能性が乏しかった。文書に指定された内容は実施の
  状況と一致していなかった。個々の記録は不完全な内容だった。バッチの製造記録は、正当な
  理由がなくデザインされ、実際の操作時にタイムリーに記録されていなかった。
 4.品質管理と品質保証
  ①実験室の品質管理
   企業は、必要なテストデータと解析を、委託試験を実施する機関に依頼するのを怠った。
   いくつかの原料は、サンプル混合の後に試験を行った。
  ②逸脱の対処
   逸脱の対処に関する文書の教育と実施が行われていなかった。企業は、個々の逸脱に関する
   調査をタイムリーに開始することを怠った。いくつかの逸脱に関する原因の分析、是正手段・
   予防手段は実施されず、逸脱が製品の品質に与える潜在的な影響の適切な評価を怠った。
  ③変更管理
   企業は、変更手順に従って変更を処理し、登録に関する追加の申請を提出することを怠った。
   いくつかの変更について、評価を行わないか、不十分な評価を行った。
  ④供給者の管理
   いくつかの原料の供給者に関し、監査内容が不完全だった。また、企業は、原料が製品の品質
   に与える影響に基づいた供給者の監査内容を決定することを怠った
  ⑤製品品質レビュ
   企業は、製品の年次の品質レビュの実施を怠った。
 5.コンピュータシステム
  企業はコンピュータシステムの管理のために、文書システムを開発したが、システムに応じた
  分類管理を怠った。また、文書管理に従っていない状態のリスクを軽減するための効果的な手
  をとらなかった。品質の検証を行う実験室内のHPLCのテスト装置のログイン画面に権限を設定して
  いなかった。また、許可されていない人物がログインすることを防ぐための手段もなかった。
(5)血液製剤製造業者
 25社の査察において、13件のメジャー、241件のジェネラルな不備がみつかったが、クリティカルな
 不備はみつからなかった。主な問題は以下の通りである。
 1.制度と人員
  いくつかの職において、職員の教育不足があった。
 2.建物と施設
  汚染や交差汚染が効果的に管理できていない。
 3.設備
  いくつかのセンサは、実際の使用範囲をカバーしていなかった。いくつのかのテスト用の機器と
  設備は、定期的にキャリブレートされていないか、不十分にキャリブレートされていた。また、その
  記録は不完全だった。設備は、ステイタスの識別や、キャリブレーションの識別を持っていなかった。
 4.原料と製品
  供給源、有効期間、その他の情報が供給品の凍結品の表示に不足していた。また、表示は、紛失
  したり取り違えたりしやすいカードだった。
 5.検証と適格性評価
  培地の模擬充填試験中、サンプリングのモニタリングは両手のみで、前腕と胸は、製造が終わった時
  のみだった。また、衣服のサンプリングは明確に規定されていなかった。
 6.文書管理
  技術的な手順と操作手順は内容が明確に記述されておらず、運用性に乏しく、文書の提出は標準化
  されていなかった。
 7.製造管理
  不活化する前に加えられるオクチル酸ナトリウム溶液に関する微生物の管理手段が不十分だった。
  レベルAの層流のもとで、沈下板をセットする時間が確認されていなかった。
 8.品質管理と品質保証
  ①QC(品質管理)実験室の管理
   試験された製品の受領と発送をするために使用されるマシンのアカウントが不完全な内容だった。
   中間体や半製品のテストサンプルの受領情報がなかった。環境のモニタリングのために外部委託
   された培地のプレートはテストされていなかった。薬局方に従った無菌試験用の陰性対象がセット
   されなかった。
  ②製品の安定性試験
   中間品に関し、有効期間が策定されていたが、継続的な安定性試験やバリデーションデータによる
   裏付けがなかった。
  ③変更管理
   変更管理が行われていなかった。いくつかの変更は評価されないか、評価が不十分だった。
  ④逸脱の対処
   企業は逸脱の調査をタイムリーにはじめなかった。いくつかの逸脱調査と是正手段・予防手段は
   不十分だった。
  ⑤供給者管理
   企業が適格と判断した供給者の名簿に、凍結品の供給者が含まれていなかった。
  ⑥製品品質レビュ
   製品の年次品質レビュに、いくつかの情報が含まれていなかった。
  ⑦製品の配送と回収
   企業は、バッチの出荷におけるサンプルの出荷方法を明確に定めることを怠った。
  ⑧コンピュータシステム
   コンピュータシステムに関する文書が不完全で、包括的かつ効果的な管理、コンピュータシステム
   及び関連データの評価が不足していた。QC実験室のいくつかの機器と設備に関する監査証跡機能
   がなかった。システムは、異なるレベルのアクセス許可が設定されていなかった。また、データと
   システムの変更のリスクがあった。HPLCデータの転送に関する安全性と信頼性が確認されていな
   かった。
(6)2015年にワーニングレターが発行された製造業者
 32の製造所を査察し、2件のクリティカル、32件のメジャー、328件のジェネラルな不備がみつかった。
 主な問題は下記の通りである。
 1.データインテグリティの問題
 2.逸脱に関する記録や調査の不実施
 3.無菌保証に関する問題があった。関連する検証や適格性評価の取り組みが不十分だった。
(7)県の認証に合格した無菌製剤製造業者
 21の企業の査察で、15件のメジャー、209件のジェネラルの不備がみつかったが、クリティカルの
 不備はみつからなかった。
 主な問題は次の通りである:少量の注射剤の製造における共有製造ラインに関するリスクアセスメント
 が不十分であった。1品目の洗浄バリデーションは行っていたが、全品目のリスクアセスメントは実施
 していなかった。いくつかの調査の記録は不十分な内容だった。コンピュータシステムのバリデーション
 と監査をまだ実施していなかった。原料が不適切に管理されていて、取り違えや間違えのリスクがあった。
(8)ハイリスクの製品に対する特別査察
 61の企業の査察において、3件のクリティカル、64件のメジャー、658件のジェネラルの不備がみつかった。
 主な問題は下記の通りである。
 1. 骨ペプチド注射剤
  ①XX社から前脚の骨7バッチを購入したが、規定に則った調達と受入試験の実施を怠った。
   会社は調達SOPに従って、調達オーダを策定しなかった。原料の到着後、会社は、受入試験・
   倉庫保管・原料の貯蔵に関するSOPに従って、供給者により発行された検査報告書を要求し、
   チェックすることを怠った。
   受入試験に関し、豚の足の低温輸送の温度モニタリング記録を要求することを怠った
  ②合成骨ペプチドの貯蔵液のウイルス不活性はバリデートされていなかった。4本の豚の足が
   購入依頼後25日間保管され、充填から合成骨ペプチドの注射剤の滅菌開始まで5時間とすること
   裏付けるバリデーションデータはあったが、準備の終了時間から合成骨ペプチドの充填の終了時間
   まで10時間だったが、微生物限度データはなかった。
  ③連続的な安定性試験の計画を立てることを怠り、活性指標や、アレルギー試験、発熱性物質、異常な
   毒性といった関連のある安全性の指標を設定することを怠った。
 2.フルクトース二リン酸塩注射剤
  ①フルクトース二リン酸塩の製造業者の内部管理標準内の微生物限度に関する基準を、中国薬局方の対応
   する条件に従って改訂することを怠った。
  ②フルクトース二リン酸塩の原薬の含有量定量に使用される合成酵素試薬に関し、使用期限は2015年の
   12月だった。現場の査察で、企業が使用期限後もフルクトース二リン酸塩の原薬の14バッチの
   含有量定量の実施に合成酵素試薬を使用しているのがみつかった。
 3.シチコリンナトリウム注射剤
  ①シチコリンナトリウムの原薬の内部の品質標準は合理的な理由もなく開発され、原薬製造業者の
   品質標準を参照してトルエン残留物は追加されなかった。
  ②中間体の含有量定量法とシチコリンナトリウム注射剤の最終製品の比較を、1バッチの検出結果のみで
   実施した。
  ③シチコリンナトリウム注射剤の企業は、異なる原薬製造業者毎にプロセスバリデーションを実施すること
   を怠った。企業はシチコリンナトリウム注射剤の滅菌フィルターの適合性試験データの提供を怠った。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
まとめ
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
年次報告書の前半を見てきましたが、いかがでしたでしょうか。
FDAの中国の製薬会社に対するウォーニングレターを見ると、製造所に虫がいた、ネズミがいた、記録書が
ゴミ箱からみつかった等、かなり強烈な指摘内容が多かったため、年次報告書には一体どのような内容が
載っているのかと思って読んでみたら、査察で発見される不備は日本と変わらなくて驚きました。
現品の表示が紛失したり取り違えたりしやすいカードだったとか、サンプルの出荷方法が明確に定められて
いないといった問題は、日本にもそのまま当てはまりそうな内容であると感じました。
また、この報告書から、中国規制当局がハイリスクの製品には特別査察を行っていることがわかり、
興味深かったです。
中国と取引のある製薬会社様は参考にしていただければ幸いです。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

☆次回は、8/1(火)に、残りのPart4. 無通告査察、Part5. 海外査察、
 Part6. GSP(Good Supply Practice)無通告査察、Part7.海外の組織によるGMP査察の観察 についてみて
 いきたいと思います。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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【発行責任者】
株式会社プロス
ASTROM通信』担当 橋本奈央子

2017.06.30

【続 MHRA発GMP査察時の不備報告】ASTROM通信<125号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。
今年もあっという間に折り返し地点まできてしまいましたが、皆様いかがお過ごしですか?

さて、今回も、前回に引き続き、
英国医薬品庁(MHRA : Medicines & Healthcare products Regulatory Agency)が2016年に
実施したGMP査察における不備の傾向をまとめたレポートについて取り上げたいと思います。
今回は、ガイドラインのAnnex部分をみていきます。

製剤関連のみの内容ではありますが、EU GMPガイドラインに基づいた不備の具体例が挙げられ
ているので、自社の自己点検等の参考にもできると思います。
最後までお付き合い頂ければ幸いです。

出典
https://www.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/609030/MHRA_GMP_Inspection_Deficiency_Data_Trend_2016.pdf


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
英国医薬品庁による2016年実施GMP査察における不備の傾向レポート
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
●EU GMPガイドラインAnnex1(無菌医薬品の製造)の不備の例
微生物汚染の増加するリスク及び無菌保証を確実にするのを怠ったことに関する不備
・充填装置の入った袋(例:充填用針)は、繊維が装置/ライン、その後、製品に取り込まれる
 リスクが存在するのに、破られて開放されていた。
・繊維がストッパー、その後、製品に移るリスクが存在するのに、充填ラインに投入される前に、
 最内部のバッグが破損していた。
滅菌後に無菌接続の数が最小化されていることを示す文書化されたエビデンスが不十分であった。
・衣服が触られ着用された後、手の消毒がされていなかった。
・Grade Bゾーンで、作業者が、屋外の服を無菌服の下に来ていた。
・更衣手順は、Grade D及びCエリアに入る時、靴を脱ぐことを作業者に要求していた。
 使用されている足カバーの性質上、クリーンルームの床を歩いた操作者の足から微生物汚染が
 起きることを防ぐことはできないだろう。
・Block Bのメインオフィスで、製造作業者は、靴または靴下の上にかかとのないサンダルをはく
 ことが認められていたことが見て取れる。
・製造エリア内での作業着を着ている間、ベンチは座る前に消毒されていなかった。
・消毒した手袋を着用しGrade Bエリアに入る前に、作業者が手袋の外側を何度か触っているのを
 発見した。
・製造前、作業者が触れたり、コンパウンダー上の化学成分が接触したりする表面のみが消毒され
 が、全ての表面の消毒が望ましい。
・ボトルやバッグをつるすためのフックは、作業者の手で握られ、個々にではなくまとめて消毒されて
 いて適切に清掃されていない。
・消毒用の拭き取り繊維は、全体ではなく中心だけが湿っているだけで十分に湿っていなかった
・数人の作業者は、フードとマスクの間の隙間があり、特に、LAF(Laminar Air Flow)キャビネット
 で作業する時に製品の汚染の可能性をもたらす顔の肌の露出があった。
一方向流が維持されていることを保証するためのLAFキャビネットやアイソレータ内で物の位置が
 定義された図面や図表が現在ない。
・調合が、開放したLAFキャビネットで実施されているにも関わらず、作業者はゴーグルを着用して
 いなかった。また、アンプルは、閉じた環境ではなく、オープンな環境の調合工程で使用されていた。
・EU Grade Bエリアで、無菌ではなく消毒されたゴーグルの着用が許可されていた。
・針の据付、充填、チューブへの接続の一連作業が、汚染リスクを最小化していなかった;
 連続作業で、何回か、RABS(Restricted Access Barrier System)の手袋の指の間や、針の露出した
 先端と接触していた。
■培地充填作業に関する不備
・培地充填の試験の不合格は、時系列の記録に含まれず、作業者の評価、作業者の再訓練といった
 是正処置にも含まれなかった。
・汚染されたバッグのサンプルは保管されず、汚染細菌の種類は特定できなかった。
・培地充填のバッチサイズは60バッグだったが、充填のラベルが貼られず、汚染された容器の位置が
 特定できなかった。
・培地充填とプロセスバリデーションの研究では、無菌製造工程の全ての複雑さを記録していなかった
 ため、製造工程をしっかりと類似させられず、最悪ケースを考慮できなかった。

●EU GMPガイドラインAnnex2(生物学的製剤の製造)の不備の例
■汚染のリスクと不十分な管理に関する不備
・接触面の消毒の回数がモニタされておらず、殺胞子剤に関する5分の接触時間は、消毒物質の製造者
 によって定義されておらず、会社によってバリデートされていなかった。
・ビル管理システムの警報用ケーブルが、キャンペーン生産終了時の効果的な洗浄を助けるために
 外されていなかった。
・EU Grade Bの部屋で着用されている作業着は消毒されておらず、ゴーグルを着用せず肌は露出して
 いた。
・EU Grade Bエリアへ移送用ハッチに殺菌原料を入れる作業者は、消毒した手袋をしていなかった。
・屋外の服がEU Grade Bエリアで着用されていた。
設備はEU Grade A/B無菌工程作業に不適切であった。
・エアロックドアはインターロックされず、ドアの開放を警告するシステムも設置されていなかった。
・個々のエアの等級の切り替えロックがなかった。
・エアの供給の不具合を示す警報がEU Grade Bの部屋になかった。

●EU GMPガイドラインAnnex3(放射性医薬品の製造)の不備の例
■洗浄、確認、バリデーションの管理に関する不備
・装置が清潔で再利用できることを確認するための、洗浄され分解された装置の目視検査の
 記録が保管されていなかった。
査察に先立ち実施された交差汚染のリスクを抑えるための組織的で技術的な対策の適合性に
 関するリスク評価は、適合性や管理の潜在的な不具合の可能性を確認するための現在の管理の
 課題に生かされていなかった。
・新しい装置は、その設計や構造、洗浄目的で必要な分解に関し、完全かつ適切に評価されて
 いなかった。
装置をどのように洗浄し分解するかを開発するという手順がなかった。
傾向やバリデーションのレビュに使用する目視試験段階の不具合の記録が無かった。
・洗浄室で、洗浄済装置のドアの外側に、製品Xに関係する製造所職員に起因すると考えられる粉末の
 大きな堆積があった。全体の洗浄は装置が洗浄室に到達する前に完了されているはずなので、これは
 要求される手順の違反を意味する。
 さらに、洗浄室には大きな汚染が残されているべきでない。

●EU GMPガイドラインAnnex6(医療用ガスの製造)の不備の例
■バッチリリースと受領、保管に関する不備
バッチのリリースが、規格外の酸素含有量の記録と共に、不適切に管理されていた。
権限の与えられた品質管理者とクオリファイドパーソンのどちらも、OOS(Out Of Specification)
 の結果が記録されていることに気付かず、製品品質レビュの準備中になってはじめて取り上げられた。
・ヒューマンエラーが根本原因とされたが、これを確認する試みはなされなかった。
・所轄官庁に(欠陥医薬品報告センタ経由で)市場の欠陥製品の潜在的リスクの検討について
 報告しなかった。
・医療用酸素の入った容器が、クリーンで、使用される環境に準拠した状態で届けられるよう、
 カバーのついた状態で保管されていなかった。
・中身の入った容器に貼る発送用の製品ラベルは、登録された詳細が完全に見えないほど汚れていた。
・現在のタンカーへの充填作業は、顧客への配送前またはQPの証明の前に、予想される品質を保証して
 いなかった。
入荷した容器の残圧チェックの不足の正当性の証明が文書化されておらず、洗浄手順の
 バリデーション報告書が製造所で利用できず、そのため査察ができなかった。

●EU GMPガイドラインAnnex8(原料及び包材のサンプリング)の不備の例
■サンプリングと包材の受領の管理に関する不備
・印刷された包材の部品のサンプリング計画は、統計に基づいたものでなかった。
・印刷された包材のサンプリング場所の指示がなかった。それらは、倉庫の保管パレットの上で
 サンプリングされている。
・印刷された包材の部品のサンプリングに、印刷会社の製造方法が考慮されていなかった。
印刷された包材の部品をチェックするために使われるシェードカードは、適切に管理されていなかった。

●EU GMPガイドラインAnnex9(液剤、クリーム剤及び軟膏剤の製造)の不備の例
■製造管理に関する不備
・製造室5のミキサーは、較正されておらず、その速度は定期的に点検されていないため、定期的な
 製造工程のバリデートが確認できなかった。

●EU GMPガイドラインAnnex11(コンピューター化システム)の不備の例
■データバックアップに関する不備
・ソフトウエアのバックアップ後、オートクレーブ(加圧滅菌器)コントロールシステムのデータが
 失われた。バックアップは3ヶ月毎にだけ作られていたので、失われたデータの復元はできなかった。
・オートクレーブコントロールシステムのバックアップCD/DVDは、その完全性を保証するための管理
 された環境には保管されていなかった。
・完全性試験で得られたデータはバックアップされていなかった。システムは過去のデータに上書きしていた。
・バックアップは、データの保管期間中、アクセスできることを保証するために、5年の間、
 年1回アクセス可能性についてレビュすることが求められていたが、これを怠った。
・バックアップは、同じコンピュータドライブに作られることが許可されていたが、それは、
 ドライブの障害や破損後に、コピーが利用できることを保証することができない。
■コンピュータ化システムの不十分な管理に関する不備
全てのユーザがファイルやハードドライブのシステム時計にアクセスできた。
・ロックしたスクリーンに共有パスワードが使われていた。もし、スクリーンのロックの後に、
 ユーザがソフトウエアにログインし、別のユーザがコンピュータを開いたら、彼らは、最初のユーザの
 ログインの状態で操作ができた。
・ユーザは、SOPで許可されている以上に、クロマトグラフィデータシステムの操作権限を持っていた。
・アクセスコントロールシステムは、GMPエリアへのアクセスを管理するためのものであるのにかかわらず、
 GMPを考慮していなかった。
実験室内のHPLCのソフトウエアはGMPに従って構成設定されていなかった:
・ユーザ固有のパスワード管理が実施されていなかった。
・ユーザは、監査証跡の初期値を変更することが許されていた。
・ユーザは、“要求されるユーザコメント”の初期値を変更することが許されていた。
・ユーザは、無関係のプロジェクトのデータをコピーすることが許されていた。
・ユーザは、注釈をつけるツールを使うことを許されていた。

●EU GMPガイドラインAnnex12(医薬品製造における電離放射線の使用)の不備の例
■線量計の読み方に関する不備
・6%の変動が見られた場合、線量計が読み直され、個々の濃度がSADA(Shared-Arm Dipole Array)
 システムに入力されていた。これは、前回の合格結果の信頼性をレビュする際の逸脱にはならなかった。
・新しい濃度の読取に、データの正確性を保証するための第二の人間の確認がなかった。

●EU GMPガイドラインAnnex13(治験薬の製造)の不備の例
■治験薬の輸入に関するQPの申告の管理に関する不備
非EU加盟国からの対照薬の輸入に関するQPの申告の発行に関する責任部門が明確でなかった。
・それぞれの技術的な取り決めの中の要件であるにもかかわらず、最近輸入された製品に関し、
 申告と証明がされていなかった。
■製品規格ファイル(PSF: Product Specification File)に関する不備
PSFは臨床試験や現在のバージョン番号に関する全ての文書への参照のサマリを含んでいないので、
 不十分である。PSFと呼ばれている現在の“Manufactured Product Specification”
 という文書は適切ではない。
・治験薬の関連書類(IMPD:Investigational Medicinal Product Dossier))は、
 F国のプラスチックのバイアルのみを使わなければならないと述べているが、G国の別の
 製造所のバイアルもまた使用されている。
・IMPDは、臨床試験の申請の最初の却下や次の規格や工程の変更後に更新されていない。

●EU GMPガイドラインAnnex15(適格性評価及びバリデーション)の不備の例
■適格性評価及びバリデーションに関する不備
・現存の製造所、設備、原料の取得に関し、変更管理や全体的なプロジェクト管理がなかった。
 L設備と対照的に、A設備にはユーザ要求仕様書(URS)がなかった。
・L設備のURSは、例えば、製造用の容器の数や容量に関し、不正確だった。
・L設備の精製水システムの再適格性評価は、IQとOQのレビュで2つの品目を対象としていた。
 これらの品目は、次のPQでは対象とされず、
 製剤の品質システム(PQS: Pharmaceutical Quality System)にも記録されていなかった。
・バリデーションマスタープランは、求められる高水準の設備のバリデーション、プロセス
 バリデーション、洗浄バリデーションを考慮していなかった。
・製造工程の定期的な再バリデーションが行われていなかった。
非専用のサンプリングツールの洗浄バリデーションが行われていなかった。
バリデーション中と再適格性評価中にアイソレータの漏れ試験に用いられた方法では、漏れを
 検知できない。
・例えば、コーティングの流量や造粒のチョッパーの速度のような、バッチのプロセスパラメータ
 の範囲は、プロセスバリデーションデータにより立証されたものではなかった
・プロセスバリデーションの手順に、バリデーション用バッチが商業ベースで出荷可能になる可能性
 があることを事前に定義する明確な表示がなかった。

●EU GMPガイドラインAnnex16(QP(クオリファイドパーソン)と出荷判定)の不備の例
■輸入とバッチの保証に関する不備
・EUの品質試験のために、第三国でサンプルをとる手順が許容されていたが、このアプローチに関し、
 技術的な正当性の理由も、第三国でとられるサンプルが適切であることを証明するために定期的に
 輸入品のサンプリングをする要件もなかった。
・空輸の温度モニタリングに関する取り決めは、全てのパレットにデータロガーが必要ない理由の
 正当性を証明していなかった。
・手順上、平均運動温度(MKT: Mean Kinetic Temperature)を温度の逸脱の評価に使用すること
 は許可されていたが、逸脱の原因の調査は定められていなかった。
・いくつかの製品は、アメリカからEUに定期的に輸入され、別の第三国に輸出されるために製造所に
 保管されていたが、輸出に際し、出荷前のQPの証明の対象としていなかった。
・輸入されたバッチについて、第三国でとられたサンプルの継続的な信頼性を正当化するために、
 輸入後にサンプルの無作為の定期的な分析を行う定めがなかった。
■QPが職務を全うすることを怠ったことに関する不備
・会社は、出荷された製品に関する製造業許可について、いかなる情報も持っていなかった。
・会社は、サプライチェインの確認に関するいかなる情報も持っていなかった
・QPの証明に関する手順や管理の詳細がなかった。
・出荷証明が、会社のレターヘッドのある用紙上で文書化されていなかった。
 また、相互認証協定(MRA: Mutual Recognition Agreement)の通りにバッチの保証の内容の詳細を
 含んでいなかった。
・分析証明書の詳細がファイルに保管されていなかった。
・QPは、自身が会社の製剤の品質システム(Pharmaceutical Quality System)の最新の知識を
 持っていることを保証しなかった。

●EU GMPガイドラインAnnex19(参考品及び保存サンプル)の不備の例
■手順と管理に関する不備
保存サンプルに関する取り決めが完全には定義されていなかった。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
まとめ
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
3回にわたって、英国医薬品庁がGMP査察中にみつけた不備の具体例をみてきましたが、いかがで
したでしょうか。
EU GMPガイドラインの本文からAnnexまで非常に広範囲にわたり不備の具体例があげられていました。
EU GMPガイドラインとPIC/S GMPガイドラインはほぼ同じ内容ですので、たとえEUに輸出がない会社様
でも、PIC/S GMPガイドラインに則った運用ルール構築のために参考にしていただければと思います。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

☆次回は、7/14(金)に配信させていただきます。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
おしらせ
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本日17:00まで、東京ビックサイトの医薬品・化粧品・洗剤 研究・製造技術展インターフェックス
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【発行責任者】
株式会社プロス
ASTROM通信』担当 橋本奈央子

2017.06.15

【続 MHRA発GMP査察時の不備報告】ASTROM通信<124号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

梅雨らしくない天気が続いていますが、いかがお過ごしですか?

さて、今回は、前回に引き続き、
英国医薬品庁(MHRA : Medicines & Healthcare products Regulatory Agency)が2016年に
実施した、GMP査察における不備の傾向をまとめたレポートについて取り上げていきます。
レポートの中身がかなり多いので、今回は2章~9章、次回はAnnex部分と2回に分けてみて
いきたいと思います。
製剤関連のみの内容ではありますが、EU GMPガイドラインに基づいた不備の具体例が挙げられて
いるので、自社の自己点検等の参考にもできると思います。
最後までお付き合い頂ければ幸いです。

出典
https://www.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/609030/MHRA_GMP_Inspection_Deficiency_Data_Trend_2016.pdf


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
英国医薬品庁による2016年実施GMP査察における不備の傾向レポート
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
●EU GMPガイドライン2章(人員)の不備の例
■従業員の訓練に関する不備
・製造担当者は、原材料の評価について、実際の教育評価なしに、質問表の読みと理解に
 基づいて、教育済みとされていた。
複合設備の清掃のような全ての関連業務の教育が完了していない製造担当者が、溶剤や
 懸濁液の製造の能力があるとされていた。
・手順の認識度評価フォームは、訓練手順書に要求された通りにトレーナによって全てサイン
 されていなかった。
訓練が必要な全ての従業員が訓練されていることを確認するシステムがなかった。
最近採用された品質保証幹部のGMP教育に関する能力評価のエビデンスがなかった。
・製造オペレータの訓練記録は、無菌製造をするにも関わらず、アイソレータの操作を訓練
 されたことが示されていなかった。
・分析者の教育と適格性をモニタする確固とした手順がなかった。
・あるクロマトグラフィシステムに適任とされた分析者が、製造所にある他の2つのシステム
 についても、システム間の違いの理解に関する能力のチェックがされないまま、適任とされた。

●EU GMPガイドライン3章(建物及び設備)の不備の例
■汚染や交差汚染のリスクを最小化することを怠った不備
・過酸化水素による消毒中、手袋と部品に、隠蔽面ができた。例えば、
 -アイソレータ用手袋にしわがあった
 -たくさんのプラスチックの結び目がきつく固定されていた。
 -アイソレータ用手袋が製品バッグに接触しておかれていた。
 -はさみやさじのような小さな機器が金属の台の上に水平に置かれていた
 これは、効果的な消毒を妨げる可能性がある。
・製造所で使われる微粒子の暴露限度または
 PDE値(1 日に許容される摂取限度値:Permitted Daily Exposure)に基づく健康予測や、
 製造施設内で要求される組織的で技術的な手段の評価がされていなかった。
・利用可能な建物内の圧力のカスケードを示した図がなかった。
・製品が接触する設備の洗浄状態や、製品の残留物からの汚染の可能性に関する文書化された
 評価がなかった。
・設備が、製品の切り替えに関する標準的アプローチを満たして清掃されていなかった。
■建物に関する不備
・倉庫は、取り違えのリスクを生じさせる、同じ原料で異なるロット番号の物が混じった
 パレットを保管することが許されていた。
・原料の入出庫の間の覆いとなる張り出し屋根がなかった。
・製剤エリアに入るところに、清潔・不潔の間の境界がなかった。
・液体プールが、保全不良(漏れ)または清掃不足(こぼれ)の状態で製剤エリアの廊下の
 端にあった。
■設備に関する不備
いくつかの清潔な篩をかけるためのスクリーンが1つのプラスチックのバッグの中に保管
 されていた。バッグは、1つのスクリーンを取り出すために開いていて、他の清潔なスクリーン
 の汚染の潜在的なリスクを生んでいた。
前にどの製品の製造に使われたことを特定するような篩の使用の履歴がなかった。
・コーティング機のドアの密封材に傷があり、欠けた部分があった。
・装置は、必ずしも手順で要求されたようにカバーをかけて保管されていなかった。
包装ラインの錠剤ホッパーの点検窓をとめておくために粘着性のテープが使用されていた。
■温度制御された保管設備に関する不備
いくつかの原料と最終製品は2度から25度での保管が求められているのに、製造エリア内の
 温度アラームは18度から26度に設定されていた。製造所は25度から26度の間の逸脱を通知されない
 状態だった。
・温度と相対湿度が、瞬間測定により、製造中の日に2回だけ保存されていた。どんな時でも
 温度と相対湿度の要件を満たすことを保証するための最大/最小データは利用できなかった。
・会社は、分類されたエリア内のHEPA(High Efficiency Particulate Air Filter)フィルター
 をテストするために請負業者が使用している方法を評価していなかった。
・倉庫の温度・湿度プローブ、精製水の流量計を含む外部のキャリブレーション活動のために、
 文書化された予め定められた基準がなかった。
・車両が医薬品/原料の輸送に適していることを保証するために、配送車両のチェックのための
 要件がなかった。

●EU GMPガイドライン4章(文書化)の不備の例
■文書管理及び完了に関する不備
・文書の保存ポリシーに一貫性がない。例えば、文書管理手順では、文書は会社の存続期間中
 保存しなければならないと定めていたが、苦情の手順では保存期間を3年と述べていた。
・プラセボの製造中、実際に工程が完了する前に、バッチの製造記録に完了日付が入力されて
 いるような非同時の記録があった。
・QCの予防保全記録とキャリブレーショントラッカーの記録に、乖離や、適切な説明のない
 追加があった。
・ボトル包装ラインの外のごみ入れの中に、パレットの積み方に関するバッチシートのページの
 コピーがあったが、これは、使用中のバッチ記録のページの管理されていないコピーという、
 容認できない行為のしるしである。
・各ワークステーションに、作業のトレーサビリティを保証するための所定のログブックが
 なかった。
・セットアップの詳細やパスワードが書かれた生産技術ノート、エリア内の物品についての
 壁のカンニングペーパー、ラインに持ち込まれた構成物の数が書かれた紙くずといった管理
 されていない書類がいたるところにあった。
■データの完全性に関する不備
・データの完全性の評価がシステムコンプライアンスに集中し、例えば、電子システム間の
 データのマニュアルの転送といったビジネス・プロセスについて、データの完全性への影響を
 考慮していない。
どのようにして偽のユーティリティのモニタリングデータが記録されたかというデータの
 完全性の不具合に関する調査で、故意が疑われるかどうかを示すための詳細が欠けていた。
HEPAフィルターテストから得られた粒子の数のデータのプリントアウトは、保存期間中記録の
 完全性を保証するために感熱紙から不揮発性の媒体に移されなかった。

●EU GMPガイドライン5章(製造)の不備の例
■原料の管理とコントロールに関する不備
・供給者の適格性評価や監査の手順は、重要な原料や供給者の定義に欠けていた。
・製品の容器にラベルが二重に貼られていて、GMPデータがよく見えなかった。
・倉庫の受入エリアは温度がモニタされていないため、32度未満という温度の許容範囲である
 ことを立証できなかった。
乾燥粉末薬品の大きなドラムの最上層からしかサンプリングをしていないため、バルク原料
 のサンプルになっていなかった。
・インドの供給者から出荷された原薬は、保管温度が25度以下と定められているにも関わらず、
 モニタリングや管理の対象とされていなかった。
・承認された供給者のリストにはメーカの住所が含まれていない。従って、製造所は、原料が
 正しい供給者及びメーカから受け取ったことを確認できない。
不正開封の跡がわかる開封明示シールの番号が原薬の受け取りにおいて期待通りであること
 を確認する要件がなかった。
・精製水システムに追加された試薬より得られる
 TSE(伝達性海綿状脳症。Transmissible Spongiform Encephalopathy)証明書がなかった。
・倉庫の入荷場所及び荷下し場所は、悪天候時に原料を保護するものがなかった。
■交差汚染を防ぐための不十分な管理に関する不備
・アイソレータの使用に関し、洗浄バリデーションが実施されなかった。
・洗浄バリデーションをしないことの正当性の根拠は弱く、関連するリスクアセスメントに
 おいてリスクを低減すると考えられたファクタは実際の業務に反映されなかった。
ミストのシャワーによる洗浄が残留汚染を取り除くのに効果的であると証明するデータが
 なかった。
ミストシャワーの中にドラムをどのように置くかを示す図がなかった。これでは、ドラムが
 ぎっしりと詰められ、シャワーにより濡れない閉塞表面を作ることにつながるおそれがある。
・アイソレータの使用中に、原材料払出ブースを使用することを防ぐための指図がなかった。
・ミストシャワーの配水の周りのビニルに亀裂があった。これは、化学及び微生物汚染の蓄積を
 起こすかもしれないトラップポイントを作りうる。
・非常に効能がある原料の製造に使用された装置が、一般の保管場所に移動する前にクリーン
 であることが確認されなかった。
管理がいかに実施されるかを詳しく述べたり評価したりせずにSOPを参照することで、
 FMEA(故障モード影響解析。Failure Mode and Effect Analysis)のリスクアセスメントは
 適切なリスク低減を証明することを怠っていた。
・健康に基づく曝露制限が実施されず、リスクアセスメント作業が適切に実行されず、
 ADE(交叉汚染限度値)レベルで装置内に保持される場合、リスクアセスメントとの関連で
 記録されることはなかった。
洗浄不足が2番目の製造の検査者による目視試験でみつかったが、逸脱として記録されなかった。
洗浄済と未洗浄の物の間で交差汚染のリスクが管理されていることを保証するための洗浄室の
 使用のルールの文書化された指示がなかった。
・洗浄方法をどのように開発すべきか(すなわち、技術的図面の使用や装置の物理的な試験により)
 や、一貫性のあるアプローチがされることを確実にするためにどのように検証すべきかを
 定義する手順がなかった。
新製品の導入手順に健康に基づく暴露制限やハザードアセスメントを作ることは、査察官
 により知らされていたが、手順の中で要求しなかった。
■製造に関する不備
・包装場所のラベルの保管場所で、異なるラベルが適切に分離されず、多数の異なるラベルが
 同じ場所に保管されていた。
・カプセル殻は、倉庫内で製造者が推奨する湿度条件(35-65%RH)で保管されていなかった。

●EU GMPガイドライン6章(品質管理)の不備の例
■QC試験室の作業に関する不備
・QC試験室のサンプル受領ログブックは、数日後にサンプルが試験室に受領された時ではなく
 試験依頼を受領した時に完成されていた。そのため、サンプルのトレーサビリティは維持
 されず、データ入力は同時ではなかった。
・安定性チャンバーは、間違った温度と相対湿度の書かれたラベルが貼られていた。
・洗浄済ガラス器具は、再汚染を防ぐためにカバーされていなかった。また洗浄の有効期限
 が定義されていなかった。
・Grade Bのガラス器具はGMP試験用に実験室で使用されていた。
・微生物実験室は、正確なコロニーのカウントをすることを保証するための拡大鏡付の
 微生物学的プレートリーダを持っていなかった。
・試薬の12ヶ月の有効期限の正当性の根拠がなかった。
・開封された薬品の有効期限を設定する際、試薬の化学的安定性は考慮されなかった。
水溶液の移動相の2ヶ月の有効期間はデータによって立証されなかった。
・実験室の天秤は年次のキャリブレーションと、週に1度の1個のおもりの確認だけで、製品の
 リスクを最小化されていなかった。
・標準的な冷蔵庫の温度は、週に1回の確認だけで、プローブには最大/最小の読取がなかった。
■OOS(Out of Specification)やOOT(Out of Trend)調査に関する不備
滴定法による水分分析で不合格になったバルク製品に関する実験室のインシデントレポート(LIR)
によれば、最初のサンプルを再テストするか、妥当な疑いが解決されたことを証明せずに、
フェーズIIの試験の一部として再サンプリングをした。
約定の再テスト計画は、仮説検証の一部として、硬度と摩損度(H&F)の試験用に既に抜き取った
同等のサンプルの試験を含んでいた。H&Fサンプルと再サンプルは合格しOOSは覆ったが、
LIRには、再サンプルがどのように実施されたか記録されず、再サンプルの記録は、そのサンプル
が品質を代表するものではないことを示唆していた。
従って、全体的に見て、バッチの均一性は適正であったかどうかの疑いの要素は残ったままである。
原薬XYZのバッチ123実験室の未知の不純物による不合格に関するインシデントレポート(LIR)は、
最初にオリジナルサンプルが汚染されていたかを判断するための適切なエビデンスを作らずに、
フェーズIIの試験のために再サンプリングをした。
再サンプルによる試験は、LIRに含まれていなかった。また、再サンプルで何がされたかを説明する
コメントがなかった。
・OOSの結果は、合格結果を作るために、2つの結果が平均された。
・再サンプルと再試験が実施され、最大3セットの分析が許可された。この再試験の数は、統計的に
 大きな影響を与えるものと考えられなかった。
・OOSの手順は、原料の再サンプルに関する適切な管理を含んでいなかった。
・潜在的に原因となる要素を識別するために、製造により調査を実施する要件がなかった。
・調査は、再テスト前に、テストの失敗に関する仮説をたてなかった。
・実験室のエラーと判断した調査には、将来、同じ実験室のエラーを避けることを確実にするための
 予防処置をいつも含まなかった。
■安定性試験の管理に関する不備
・多数の安定性試験の不具合(有効期限前の終了を含む)が見つかったがクオリファイドパーソン
 により正確に評価されず、安定性の証明への影響も考慮されなかった。
受託製造業者は安定性の不具合を医薬品販売承認取得者に知らせなかった。

●EU GMPガイドライン7章(外部委託作業)の不備の例
※2016年12月22日に7章は「委託製造及び分析」から「外部委託作業」に変わりました。
■外部委託作業の管理に関する不備
・重要なサービスの管理に関する手順が定められておらず、適格性評価やサプライヤの能力を
 モニタリングすることを可能にする仕組みがなかった。
・第三者の監査役により実施された監査レポートに、会社の職員のレビュのエビデンスがなかった。
会社の監査役に必要とされる訓練や能力評価について述べた手順がなかった。
・手順は、第三者によって用意された監査レポートを受け入れる根拠を述べていなかった。
■技術的な取り決めに関する不備
・A社とB社の間の技術的な取り決めが詳細でなかった。B社の作業を述べた箇条書はあったが、
 A社の責任は述べていなかった。
・A社とC社の間の技術的な取り決めは、顧客による検証の責任に関して矛盾する記述があった。
・D社との技術的な取り決めは、取り決め範囲内の製品の識別をしていなかった。
・E社との技術的な取り決めは、どの会社が委託者で、どの会社が受託者か明らかにしていなかった。
 さらに、F社への商品の出荷用の温度のモニタリング装置に関する明確な要求がなかった。

●EU GMPガイドライン8章(苦情及び製品回収)の不備の例
■苦情処理と調査に関する不備
苦情が偽造された薬に関するものかどうかを考慮していなかった。
・苦情に関係する製品を手に入れる要件がなかった。
・他のバッチが関係しているかどうかを検討する要件がなかった。
・苦情処理は、苦情が偽りによるものかどうかを考慮するためにチェックする要件がなかった。
・手順には、欠陥医薬品報告センタ(DMRC)への詳細の連絡や偽造薬の可能性を報告する要件を
 含んでいなかった。
・製造所で不十分な調査が実施された。例えば、製造や利用可能なデータのレビュをせず、苦情
 以外のバッチへのより大きな影響を考慮しなかった。
・製造所の調査の不足により、再発を防ぐためのCAPAが考慮されなかったり効果的に実施され
 かったりした。
■製品回収に関する不備
・回収手順において、回収作業がタイムリーに終わることを確実にするために、重要段階の最長の
 予定を定義しなかった。
通常の就業時間外に回収システムのテストを実施する要件がなかった。
・模擬回収はタイムリーに終わらず、最終の正式評価レポートは作成されなかった。
回収された可能性のある社内の製品在庫が隔離されていることを保証する手続きの指示がない。
・模擬回収作業がサプライチェインで効果的に実施されず、回収の有効性を検討するための調整や
 報告がなかった。

●EU GMPガイドライン9章(自己点検)の不備の例
■自己点検プログラムに関する不備
・2つの自己点検が実施されていたが、品質システムの重要側面はカバーしていなかった。
・自己点検のスケジュールが定められていなかった。


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まとめ
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いかがでしたでしょうか。
自社は大丈夫だったかなと気になる箇所もあったのではないでしょうか。
個人的には、4章(文書化)の不備は、結構よくある話なのではないかと思いました。
是非、自社の業務の見直しの参考にしていただければと思います。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。
☆次回は、6/30(金)に配信させていただきます。


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おしらせ
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
弊社は、今年も、6月28日(水)~6月30日(金)に開催される医薬品・化粧品・洗剤 研究・
製造技術展インターフェックスジャパン(会場:東京ビックサイト)に出展します。
ブースは、東1ホールのITソリューションゾーン【E25-26】となります。
お時間がおありの方は、是非弊社ブースにお立ち寄りいただければ幸いです。
よろしくお願いいたします。


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★弊社サービスのご案内
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本メルマガは、名刺交換させていただいた方に、毎月1日、15日(土日祝日に重なった場合
は前日)に配信いたしております。

今後このような情報が必要ない方は、お手数ですが、こちらに配信停止依頼のメールを
お願いいたします。
hashimoto@e-pros.co.jp

【発行責任者】
株式会社プロス
ASTROM通信』担当 橋本奈央子

2017.06.01

【MHRA発GMP査察時の不備報告 他 ヨーロッパ規制関連動向】ASTROM通信<123号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

一気に暑くなってきましたが、いかがお過ごしでいらっしゃいますか?

さて、前回と前々回は、米国食品医薬品局(FDA)のウォーニングレター(Warning Letter)を取り上げて
きたので、今回は、ヨーロッパの規制関連に関する下記3つの話題を取り上げたいと思います。
1.ATMP GMPガイドライン案の作成におけるECとPIC/Sの溝
2.英国のEU離脱について
3.英国医薬品庁による2016年実施GMP査察における不備の傾向レポート

最後までお付き合い頂ければ幸いです。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
1.ATMP GMPガイドライン案の作成におけるECとPIC/Sの溝
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欧州委員会(EC: European Commission)が単独で作成した、
先端治療医薬品(ATMP: Advanced Therapy Medicinal Products)のGMPガイドライン案が、ATMPのGMP要求を
下げ患者の健康リスクを増大させる点や、PIC/S GMPガイドラインとの調和がはかられていない点について、
PIC/Sは2017年2月24日ECに対し遺憾の意を表明する文書を発行しました。
ECは2017年4月5日に、書簡にて、ATMPの品質の保証と患者の安全の保護に加え、この件のイニシアチブに
ついてPIC/Sと約束をしました。
それに対し、PIC/Sは再度、2017年4月24日に、PIC/Sのポジションや、患者の安全に関する大きなギャップ
の再確認と、ECとPIC/Sの協力の範囲の明確化を求める書簡を送っています。
書簡の中には、下記のことが書かれています。
・EUのPIC/Sメンバ国以外も交え患者の安全に関する説明と議論の場を設けるというECの提案を受けて、
 PIC/Sは共同ワーキンググループを提案したが、それに対するECからの回答がないこと
・ECがPIC/Sとの協力の範囲を明確化してほしいこと
・最新のATMP GMPガイドラインのドラフトを送ってほしいこと
・このような状態で、ECが2017年4月26日にガイドライン案を仕上げる会議が計画されているとしらされたこと
・不調和のリスクは、現在のグローバルな規制の枠組みに重大な結果をもたらすかもしれない。
この内容を見ると、4月5日のECからPIC/Sにあてた回答は両者の溝を埋めるにはいたっていないことがわか
ます。

ATMP GMPガイドライン案
http://ec.europa.eu/health//sites/health/files/files/advtherapies/2016_06_pc/2016_06_draft_guideline.pdf
2017年2月24日 PIC/S→ECへの文書
file:///C:/Users/hashimoto/Downloads/PS_L_11_2017_Letter_to_EC_concerning_GMP_ATMP.pdf
2017年4月24日 PIC/S→ECへの文書
file:///C:/Users/hashimoto/Downloads/PS_L_20_2017_Letter_to_EC_concerning_GMP_ATMP.pdf


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2.英国のEU離脱について
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欧州医薬品庁(EMA)は、2017年4月27日に、その運営委員会のメンバ、EU/EEAメンバ国の管轄庁の代表と
会議を開き、EUを離脱するイギリスを考慮してメンバ国間で薬の評価やモニタリングに関する作業を分担
するかの議論を開始しました。
イギリスの離脱の期日の交渉はまだ公式に始まっていないし、その結果を前もって判断はできませんが、
2019年3月30日以後にイギリスはEMA及びヨーロッパの医薬品の規制システムに参加しないことを予測した
シナリオに基づき、作業を開始する予定です。
作業負荷の配布に関する原則として以下のことを含みます。
・事業継続性を保証すること
・科学的アセスメントの品質と安定性を維持すること
・法的タイムラインに従うこと
・既存のナレッジを強化、または、ナレッジの移転により、ナレッジの保持を保証すること
・容易な実施と、中長期の持続可能性を保証すること
2017年7月5日に次回の会議を開催します。

出典
http://www.ema.europa.eu/docs/en_GB/document_library/Press_release/2017/04/WC500226559.pdf


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3.英国医薬品庁による2016年実施GMP査察における不備の傾向レポート
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英国医薬品庁(MHRA : Medicines & Healthcare products Regulatory Agency)が、2016年に実施したGMP査察
における不備の傾向をまとめたレポートを発表しました。
このレポートは、製薬会社の自己点検と継続的改善に役立てることを目的に作られていて、製剤関連のみでは
ありますが、MHRAがEU GMPガイドラインをベースに不備の具体例が挙げられています。

2016年に取り上げられた不備のTOP10は下記の通りです。(クリティカルの件数順)
1位【品質システム】 クリィティカル:38件 メジャー:449件 その他:772件
2位【滅菌保証】 クリィティカル:34件 メジャー:190件 その他:162件
3位【製造】 クリィティカル:20件 メジャー:191件 その他:543件
4位【苦情と回収】 クリィティカル:11件 メジャー: 80件 その他:110件
5位【適格性評価/バリデーション】クリィティカル:10件 メジャー:123件 その他:232件
6位【建物及び設備】 クリィティカル: 9件 メジャー:113件 その他:464件
7位【コンピュータ化システム】 クリィティカル: 9件 メジャー: 44件 その他:120件
8位【職員】 クリィティカル: 8件 メジャー: 42件 その他:150件
9位【文書】 クリィティカル: 2件 メジャー:166件 その他:646件
10位【品質管理】 クリィティカル: 2件 メジャー: 42件 その他:192件

このTOP10を2015年と比較すると下記の通りです。
2016年 ⇔2015年
1位【品質システム】 ⇔1位【品質システム】
2位【滅菌保証】 ⇔2位【苦情と回収】
3位【製造】 ⇔3位【文書】
4位【苦情と回収】 ⇔4位【品質管理】
5位【適格性評価/バリデーション】 ⇔5位【コンピュータ化システム】
6位【建物及び設備】 ⇔6位【製造】
7位【コンピュータ化システム】 ⇔7位【建物及び設備】
8位【職員】 ⇔8位【バリデーション】
9位【文書】 ⇔9位【職員】
10位【品質管理】 ⇔10位【原料の管理】

●EU GMPガイドライン1章(医薬品の品質システム)に関する不備の例
■事象の調査及び是正処置・予防処置(CAPA : Corrective Action and Preventive Action)の実施に関する不備
・逸脱報告書は、実施された調査や、提示された根本原因を裏付けるエビデンスを示すのに十分な情報を含んで
 いなかった。
・あるケースでは正式なCAPAが実施されていなかった。また、他のケースでは、CAPAが適正でなかった。繰り返さ
 れる逸脱について、問題を解決するための、傾向のレビュやCAPA自体の不具合のレビュがされていなかった
・製造所が、工程や製品品質をモニタするための効果的な管理システムを制定し維持することを行っていなかった。
 また、根本原因を判断し、適切な是正処置及び予防処置を実施する目的のために、適切なレベルの調査を実施
 したり、すべての潜在的に重大な事象について完全に記録していなかったりした。
調査を適切かつ徹底的に確実に実施するための十分詳細な逸脱手順の不備
・バッチの逸脱の影響を確認するための要件がなかった。
・患者の安全への影響がある可能性のある問題の場合、タイムリーに上位レベルにエスカレートする手順がなかった。
・根本原因を“人的ミス”と特定する前に、手順、手続きまたはシステムのエラーが見過ごされないことを保証する
 要件がなかった。
・手順の中に、“タイムリーな方法で”という文言以外に、逸脱の処理を完了するタイムラインがなかった。
・記録された根本原因は、いつも、手順通りに確認されているわけではなかった。
・少なくとも8件の、査察前に終了せず延び延びになっているCAPAがみつかった。
・2件の延び延びになっているCAPAは、査察時に未処理だった。(186日と60日が経過)
134件の逸脱が2015年11月から2016年2月に発生していたが、CAPAは実施されていなかった。
1つのフォームに異なる期日が記載されていたが最新の日付のみが確認され、多数のCAPAについては、効果的な
 モニタリングが実施されていなかった。
CAPAの効果のレビュがマネジメントレビュの一部として行われていたが、そのプロセスの記述は不十分で、
 マネジメントレビュは年に1回行われているだけで、リスクに基づくプロセスではなかった。
■製剤の品質システム(PQS : Pharmaceutical Quality System)の効果的な実施と継続的な改善に関する経営陣の
監督の不足に関する不備
・正式なマネジメントレビュの手順がなかった。
・多数の工程改善が会社のいたるところで確認されたが、PQSの記録や管理がされていなかった。
多数のCAPAが以前のMHRAの査察以降完了していないことが証明するように、経営陣は効果的な品質マネジメント
 システムの実施を保証することを怠っていた。
品質システムの効果的な実施をレビュするための部門管理者たちによる月次品質会議に関する文書化された手順
 がない。
・マネジメントチームは、品質システムの効果的な実施や、成分・工程・システム自身の継続的な改善の機会を
 見いだすことを怠った。
・現在の品質測定の報告方法は、品質システムの効果的な実施を十分に確認し、モニタし評価することを考慮して
 いない。例えば、未処理または期限切れの品目は検討対象として報告されていない。
・マネジメントレビュの会議で報告された目立った品質項目は、アクション遅延の根本原因を特定しようとされて
 いなかった。リスクアセスメントが実施されていないか、アクションの遅延への取り組みが遅れることによる
 患者の安全への影響や、PQSの効果を評価するために正式に文書化されていなかった。
・マネジメントレビュの手順が不十分である。たとえば、クリーンルームの環境モニタリングの結果に明らかに
 問題のある傾向が増加しているにも関わらず、ミーティングのメモには全ての環境モニタリングの結果は問題
 ないと書かれていた。
・月次の品質システム測定は、供給者監査のステイタスを含まず、性能の変化の効果的なレビュを可能にし、
 品質システムが管理された状態にあることを確認するための製造所の経時的な性能を示さなかった。
■変更管理に関する不備
・変更の性質と、実施された活動を述べた詳細の記録が不十分であった。
どのレベルの変更管理にリスク評価や規制関連業務のレビュが求められ、どのレベルに求められないのかの定義
 がなかった。
・変更管理活動の実施後の効果のレビュがなかった。
・変更が会社の変更管理手順の外で実施されていた。
・計画された変更の予測評価に関する手順と、規制当局による通知を考慮した手順の実施前の承認が確実では
 なかった。
・有効性確認の実施後に文書化をする要件がなかった。
■製品品質レビュ(PQR : Product Quality Review)に関する不備
・PQR手順は、全供給ルートや製造者(仲介業者を含む)を考慮した原薬のサプライチェインのトレーサビリティ
 のレビュを要求していなかった。
・完了したPQRは、関連する技術契約が適切に実施されていることを確認していなかった。
・現在進行中の安定性調査において、問題のある傾向を示していないことや有効期限内で使用が維持されることが
 予想されるという確認がない。
・重大パラメータのレビュにおいて、傾向があるかどうかの判断をするためのデータの提供がなく、判断について
 のコメントもない。
・システムが要求通りに機能していることを判断する際に、精製水の検討がない。
・PQRがタイムリーな方法で完了されていなかった。
 -9件のPQRは6ヶ月以上、あるものは1年間近く未処理だった。
 -完了したPQRのうち少なくとも29件は、3ヶ月の期限を6ヶ月以上超えていた。
■規制の改訂をモニタせず、適切なアクションをとらなかったことに関する不備
・規制要件の変更を把握し、製造所への影響を考慮することを確実に行う仕組みがなかった。
・レビュ、評価、適切にEU GMPの改訂を実施するための正式なシステムがなかった。
・規制の改訂をレビュするための正式なシステムがなかった。
■製品の返品に関する不備
返品の手順に、返品された商品が、返品前、顧客により適切な温度条件で保管されていたことを検証することが
求められていなかった。
出典
https://www.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/609030/MHRA_GMP_Inspection_Deficiency_Data_Trend_2016.pdf


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
まとめ
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
今回は、ヨーロッパの話題でしたが、いかがでしたでしょうか。

1つ目の記事。ECが単独でGMPガイドライン案の作成作業を進めたことにより、ECとPIC/Sに溝が生まれていること
に驚きました。これまで、EU GMP ガイドラインが改訂されると、少し時間をおいてPIC/S GMPガイドラインも
EU GMP ガイドラインにならうように改訂されてきましたが、このまま溝が深まれば、それがなくなってしまう
可能性があります。
ECの今後の進め方によっては、せっかく出来上がりつつあるグローバルスタンダードが崩壊しかねない状態にある
のは気になるところです。

2つ目は、イギリスのEU離脱に関する内容でした。イギリスはEU離脱後もPIC/S加盟国ではありますが、日本-EU間
で締結されている相互承認協定が適用されなくなった場合、どのような影響が生じるのか気になるところです。

3つ目の英国医薬品庁による2016年実施GMP査察における不備の傾向レポートは、不備の具体例がのっていて興味深
かったです。不備の中には、日本の製薬会社様にも当てはまる内容がありますので、非常に参考になると思います。
次号では、EU GMPガイドラインの2章以降と、各Annexに関する不備をみていきますので、是非ご覧ください。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。

☆次回は、6/15(木)に配信させていただきます。


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おしらせ
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弊社は、今年も、6月28日(水)~6月30日(金)に開催される医薬品・化粧品・洗剤 研究・製造技術展
インターフェックスジャパン(会場:東京ビックサイト)に出展します。
ブースは、東1ホールのITソリューションゾーン【E25-26】となります。
お時間がおありの方は、是非弊社ブースにお立ち寄りいただければ幸いです。
よろしくお願いいたします。

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