ASTROM通信バックナンバー
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2023.02.15
【最近のウォーニングレター】ASTROM通信<260号>
こんにちは。
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。
三寒四温の季節となりましたが、いかがお過ごしでしょうか?
さて今回も、アメリカ食品医薬品局(FDA)がアメリカ国外の製薬会社向けに出したウォーニング
レター2件を見ていきたいと思います。
FDAがどのような点を問題視して指摘しているかをご確認いただければ幸いです。
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最近のウォーニングレターの概要
注:文中のXXはウォーニングレターでマスキングされている文言及び具体的な社名・品名等です。
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■Warning Letter 320-23-06■
2022年6月23日~7月1日のインドの製造所の査察でみつかった原薬製造の重大なCGMP違反について
発した2022年12月7日付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。
●指摘1
貴社の品質部門は、貴社の製造所で製造された原薬がCGMPを遵守していることを保証する責任を
果たしていない。
<指摘1詳細>
貴社の品質部門(QU)は、紙及び電子記録の適切な文書管理を保証することを怠った。例えば、我々
査察官は、貴社の微生物試験室近くの管理されていない一時保管室にて、多数のログブック、
記入フォーム、部分的に記入された“分析のためのサンプル依頼(SAP以外)”を見た。また我々
査察官は、シュレッダーにかけられた文書を含む“緊急使用”のラベルが貼られた文書シュレッダー
を、貴社の文書センタで見た。貴社の文書管理担当者は、文書に記録された相対湿度、温度、データ
に関する情報が含まれていると見受けられるシュレッダー内の文書が何か特定できなかった。
また貴社は、貴社のコンピュータ化システムを適切に管理することを怠った。例えば、複数ユーザの
ソフトウエアにログインするためのユーザ名とパスワードが、上級管理職の微生物学者の管理されて
いないノートに手書きされていた。そのログイン情報は、製品やXX水のサンプルを保管するための
インキュベータのような試験装置を管理するために使用されるソフトウエア用のものだった。
データ・インテグリティを保証するためには、実施されたアクションは、特定の個人に帰属可能で
ある必要がある。
貴社は複数の標準操作手順を改訂する予定で、新しい文書管理センタと文書管理チームを作ること
により、文書管理を一元化するつもりであると回答した。また貴社は、貴社の上級管理職の微生物
学者は“ICDAS”ソフトウエアの管理者の役割を持っていたが、その後オペレータの役割が再割り当て
されたと回答した。しかし貴社の回答は、今後の紙、電子記録、文書化手順がCGMPを遵守することを
保証するための詳細な計画を提出していない。また貴社の回答は、貴社の製造所の不適切な文書管理
の影響と範囲の包括的で回顧的なリスクアセスメントを含んでおらず、アクセスが各ユーザの役割と
管理者の役割を管理するのに適切であると保証するために、階層化されたユーザのアクセスと管理に
完全に対処していないので、不十分である。
貴社の文書化手順はCGMPに遵守している製造所の手順ではない。文書管理は、適切な品質システムを
維持するうえで不可欠である。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
貴社の文書化手順は、CGMPに遵守している製造所の手順ではない。文書管理は、適切は品質システム
を維持するために不可欠である。
・貴社のQUが効果的に機能するために権限とリソースを与えられていることを保証するための包括的
なアセスメントと改善のための計画
アセスメントはこれに限定さないが、以下のことも含むべきである:
〇貴社で使用されている手順が堅固で適切かどうかの判断
〇適切な手順に準拠していることを評価するための、貴社の作業全体のQUの監督の規定
〇QUがロットの処遇を決定する前の、各ロット及び関連情報の完全で最終的なレビュ
〇全ての製品の同一性、濃度、品質、純度を保証するための、調査の監督及び承認とその他全て
のQU職務の遂行
・文書化手順の不十分な場所を特定するための、貴社の製造及び試験の作業を通して使用される
文書化システムの完全なアセスメント
貴社の作業を通じて、貴社が帰属可能で判読可能、完全で原本性があり正確で同時性がある記録を
保持していることを保証するために、貴社の文書化手順を包括的に改善する詳細な是正処置・予防
処置(CAPA)の計画を含めよ。
・コンピュータシステムのセキュリティとインテグリティに関する包括的なアセスメントとCAPAの
計画
報告には、貴社の試験用の各コンピュータシステムに関する設計と管理の脆弱性の特定と貴社の
試験用の各コンピュータシステムの適切な改善を含めよ。
●指摘2
貴社の原薬が、品質及び純度に関し制定された基準に従うことを保証するのに、全ての試験手順が
科学的に理にかなって適切であると保証することを怠っている。
<指摘2詳細>
貴社は、貴社の試験手順が適切にバリデートされ、制定された手順が遵守されていると保証する
ことを怠った。例えば、貴社の回収の検証は、ベータラクタムの環境モニタリングの方法が綿棒の
サンプリングによりベータラクタムの残留物を回収できると示すのに不十分だった。さらに貴社の
制定した綿棒での収集手順は、守られていなかった。科学的に理にかなった試験手順は、ベータ
ラクタムで汚染された原薬が適切に検出できる保証を含んだ、交叉汚染を防ぐために効果的な
ベータラクタムの封じ込めプログラムに必要不可欠な部分である。
ベータラクタム医薬品による非ベータラクタム医薬品の汚染は、アナフィラキシーや死亡の可能性
もある、患者の安全性に対する大きなリスクをもたらす。ペニシリンの汚染に、許容可能なリスク
と判断された安全なレベルはない。非常に低いレベルのペニシリンやその他のベータラクタムに
さらされた敏感な患者には、重度のアレルギー反応が発生する可能性がある。
貴社の回答は、製品の品質に影響がないと述べている。しかし、貴社の正当化の理由は、非ベータ
ラクタム医薬品が製造されている建物内でベータラクタムを検知するために使用されている、
バリデートされておらず遵守もされてない方法によって実施された試験に基づいているので、貴社
の回答は不適切である。さらに、貴社の製造所の非ベータラクタム製造建物内でのベータラクタム
の環境モニタリングでペニシリンを検知するための貴社の方法は、非常に低いレベルの汚染を検知
するのに十分な感度がない。詳細は、FDAが公開している、0.2ppbのLOD(limit of detection)の
分析方法を見よ。
アレルギー反応が起こる可能性のある投与量の閾値が非常に低いため、ベータラクタムの施設は、
非ベータラクタムの施設と完全かつ包括的に分離されている必要がある。
詳細は、FDAのガイダンス文書
Non-Penicillin Beta-Lactam Drug : A CGMP Framework for Preventing Cross-Contamination
を見よ。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・貴社の試験業務、手順、方法、文書、分析者の能力に関する包括的なアセスメント
レビュに基づき、貴社の試験システムを改善し、その効果を評価するための詳細な計画を提出せよ。
・これに限定されないが、ベータラクタム製造建物と共用エリア(例:カフェテリア)の排気装置の
サンプリング及び試験を実施するかどうかの検討と、過去2年間の関連する試験結果を含めたベータ
ラクタムの交叉汚染を防ぐための封じ込めの管理の包括的な評価
・0.2ppbのLODを達成するために貴社の環境内及び非ベータラクタム医薬品内のベータラクタムの
汚染を分析するためのFDAの分析方法をバリデートし実装するか、0.2ppbと同等もしくはそれより
よい分析方法をバリデートし実装するという約束
●指摘3
貴社は、規格を満たすために、原薬の各ロットの重大な逸脱や不具合を調査するための文書化された
手順を制定し遵守することを怠った。
<指摘3詳細>
貴社は、原薬XXの2ロットにあった黒い粒子を適切に調査し、根本原因を特定することを怠った。
例えば、XXのロットXXに関する貴社の調査報告は、非金属の炭化した製品の残留物であったと述べた。
さらに貴社の報告は、分析者がサンプルを”溶液内に溶解する“際にみつかったと述べている。
しかし査察中、貴社はその結論を裏付けるデータを我々査察官に提出することができなかった。適切
なCAPAを実装するために、根本原因を特定するのに必要な十分に文書化され徹底的で科学的に正当な
調査が必要である。
貴社の回答は、原薬内の金属の粒子の存在を制限値内にとどめるためにXXをインストールしたことを
示している。しかし貴社は、貴社の提示した根本原因を裏付け、適切なCAPAを割り出すためのデータ
を提出しなかったので、貴社の調査は不十分なままである。具体的には、炭化した製品の残留物、
不十分な洗浄等の非金属汚染源、反応性が高く、相加作用があり、吸収力のある製品表面などの金属
汚染源に完全に対処しなかった。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・逸脱、不一致、苦情、規格外の結果(OOS)、不具合の調査をする貴社のシステム全体の包括的な
アセスメント
このシステムを改善するための詳細なアクションプランを提出せよ。貴社のアクションプランは、
これに限定されないが、調査能力、調査の範囲の決定、根本原因の評価、CAPAの効果、品質部門の
監督、文書化手順の大幅な改善を含むべきである。貴社が、調査の全ての段階が適切に実施される
ことをいかに保証するつもりか述べよ。
●データ・インテグリティの改善
貴社の品質システムは、貴社が製造した医薬品の安全性、有効性、品質を裏付けるデータの正確性
と完全性を適切に保証していない。CGMPを遵守したデータ・インテグリティ業務を確立し、それに
従うためのガイダンスとして、FDAのガイダンス文書Data integrity and Compliance with Drug CGMP
を見よ。
我々は、貴社が貴社の作業を監査しFDAの要件を満たす助けをするためのコンサルタントを使用して
いることを知っている。この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
A.アメリカに出荷された医薬品のデータのレビュ結果を含む、データ記録と報告の不正確な範囲の
包括的な調査
貴社のデータ・インテグリティの欠如の範囲と根本原因の詳細な記述を含めよ。
B.みつかった不具合の貴社の医薬品の品質への潜在的な影響についての現在のリスクアセスメント
貴社のアセスメントには、データ・インテグリティの欠如の影響を受けた医薬品のリリースに
よる患者のリスクの分析と、継続的な作業により引き起こされるリスクの分析を含めるべきで
ある。
C.全社的なCAPAの詳細を含む、貴社の経営戦略
是正処置の詳細な計画には、貴社が、微生物及び分析のデータ、製造記録、FDAに提出される
全てのデータを含む、貴社で生成された全てのデータの信頼性と網羅性をいかに保証するつもり
かも記述せよ。
●CGMPコンサルタントの推奨
我々が貴社で発見した逸脱の性質に基づき、もし貴社がアメリカ市場向け医薬品の製造を再開する
つもりであれば、CGMPの要件を満たすように貴社を支援するために適格性のあるコンサルタントを
雇うことを強く勧める。貴社がFDAと共に貴社のコンプライアンス状態の解決を達成しようとする前
に、適格なコンサルタントが貴社のCGMP遵守に関し貴社の全ての作業の包括的な監査を実施し、貴社
の是正処置・予防処置の完了と効果も評価すべきである。貴社のコンサルタントの使用は、CGMPを
順守するための貴社の義務を軽減するものではない。貴社の経営陣には、継続的なCGMP順守を保証
するために、全ての不備とシステムの欠陥を解決する責任が残る。
●結論
この文書で挙げた逸脱は、貴社の製造所に存在する違反の包括的なリストでもない。貴社には、
全ての逸脱を調査し、原因を判断し、再発やその他の逸脱の発生を防止する責任がある。
FDAは2022年11月21日に輸入警告措置66-40をとった。
全ての逸脱を速やかに是正せよ。完全に対応され、我々が貴社のCGMPの遵守を確認するまで、FDAは
貴社の製造業者としての新薬の申請やリストの補完の承認を保留するだろう。また、我々は、貴社
が全ての逸脱に対する是正処置を完了したことを確認するために再査察を行うかもしれない。
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■Warning Letter 320-23-07■
2022年7月18日~7月22日のブラジルの製造所の査察でみつかった原薬製造の重大なCGMP違反について
発した2022年12月8日付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。
●指摘1
貴社は、データへの不正なアクセスや変更を防ぐためにコンピュータ化システムに十分な管理を
怠った。また、貴社はデータの脱落を防ぐための適切な管理を怠った。
<指摘1詳細>
貴社には、電子データ及びソフトウエアシステムのシステムセキュリティとアクセス管理がなかった。
貴社の分析者たちはデータを削除し上書きするアクセス権を持っていた。我々査察官は、赤外線分光
光度計のコンピュータや、紫外線可視分光光度計のコンピュータのゴミ箱に100を超える削除された
ファイルをみつけた。具体的には、複数の削除された分析ファイルのファイル名には、ロット番号が
含まれ、貴社がアメリカに輸出している原薬XXに関するファイルが含まれていた。査察官は、紫外線
可視分光光度計及び赤外線分光光度計のスタンドアロンのコンピュータシステムは、特定の個人に
帰属するユーザ名を使用する代りに、共通のユーザ名を使っていることを確認した。ウインドウズの
オペレーティングシステムにサインインするためにパスワードは不要で、分析ソフトウエアは追加の
ユーザログインを必要としなかった。さらに貴社は、紫外線可視分光光度計及び赤外線分光光度計を
操作するために使用するスタンドアロンのコンピュータのバックアップをしていなかった。
データ・インテグリティを保証するために、実行されたアクションは貴社のCGMPコンピュータシステム
内の特定の個人に帰属する必要があり、装置は、権限を持つ者以外の削除や変更を防ぐために、適切に
管理される必要がある。
貴社は回答の中で、自動化されたデータシステムのアクセス許可を制限し、スタンドアロンの
コンピュータ化システムのバックアップ手順を実装し、ゴミ箱でみつかったファイルの内容をレビュ
するための調査を開始したと述べた。しかし、以前の医薬品の分析のトレーサビリティの全体的な
欠如に対応していないし、医薬品をリリースするために使用された以前の分析データの妥当性を確認
するための包括的な戦略も含んでいないため、貴社の回答は不十分である。さらに貴社は、これらの
管理が、ロットのリリースやその他の品質レビュの判断のために信頼した記録が完全で正確であること
をいかに保証するつもりかも示さなかった。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・コンピュータシステムのセキュリティと完全性についての、包括的な第三者のアセスメントと、
是正処置・予防処置(CAPA)の計画
貴社の試験用の各コンピュータシステムの設計と管理の脆弱性を特定し、適切な改善を確認する
レポートを提出せよ。レポートには、これに限定されないが、以下のことを含めよ:
〇貴社の試験室内のスタンドアロンとネットワークの機器を含む全てのハードウエアのリスト
〇ハードウエア、ソフトウエア、ネットワーク化されていないシステム(例:PLC)の脆弱性の特定
〇ソフトウエアの構成(機器のソフトウエアとLIMS)のリスト、管理者権限を含む全てのユーザの
権限の詳細、貴社の各試験システムの監督の役割
ユーザ権限については、試験室のコンピュータシステムにアクセスできる全ての職員の役割と
関連する権限(管理者権限を持つユーザに許された特定の権限を含む)、職員の組織上の所属と
肩書を明記せよ。
〇これに限定されないが、一意のユーザ名/パスワードが常に使用され、その機密性が保護されて
いるかどうかを含む、システムセキュリティの規定
〇ユーザの役割の割り当てと管理に関する手順の更新と関連する教育に関する詳細な概要
〇貴社の電子記録内の情報の全ての追加、削除、変更が承認され、全てのデータが保持されて
いることを保証するための、電子データの厳格で継続的な管理を保証する貴社の改善された
プログラム
〇貴社の電子記録内の情報の全ての追加、削除、変更が承認され、全てのデータが保持されて
いることを保証する、紙ベースのデータの厳格で継続的な管理を確実にする貴社の改善された
プログラム
〇品質保証(QA)マネージャ、経営幹部、適切なIT専門知識(例:インフラストラクチャ、構成、
ネットワーク要件、管理者権限を含む職務の分離)を持つ内部監査員の監督に関する規定
〇紙ベースのシステムや電子システムに記録されたかどうかに関わらず、全ての品質管理試験
が分析者によって適切に実施され、別の責任者(例:マネージャ)から第二層のレビュを受けて
いることを保証する、改良された標準操作手順(SOP)
〇スタンドアロンの機器(例:天秤、pHメータ、含水量試験)から電子システムを介して生成
されたデータのLIMSネットワークへの流し込みを増やすための技術的改善
〇監査証跡データのレビュの詳細な手順
〇試験データの管理、レビュ、全ての保持のための暫定的な管理手段と手順の変更
●指摘2
貴社の品質部門は、原薬のロットを出荷する前に、製造指図記録と試験管理の記録をレビュする
ことを怠った。
<指摘2詳細>
貴社の品質部門(QU)は、出荷のために原薬をリリースする前に、ロットに関連する文書の適切な
評価を保証するために、明確に定義されたプロセスまたは他の十分な管理システムを持つことを
怠った。
〇品質部門の責任
貴社のQUは、貴社のクロマトグラフィシステムのソフトウエア内で試験中に生成されたローデータ
の完全な記録のレビュをしなかった。例えば、QUは、適切な方法が使用され、シーケンスが適切に
設定され、マニュアルの積分が適切に実施されたことを保証するためにシステム内のスペクトル
データと該当する監査証跡をレビュしなかった。
貴社は回答で、クロマトグラフィのソフトウエアで生成されたデータの電子的レビュを実施し、
過去2年以内にアメリカに商業的に出荷された原薬のリリースと安定性のために生成された分析データ
のリスクアセスメントを実施するプロセスを実装する予定であると述べた。しかし、レビュ担当者が、
クロマトグラフィの方法、注入シーケンス、システムの適合性の観点から、クロマトグラフィの
システムから各試験中に生成されたローデータの完全な記録を評価するかどうかなど、既存のデータ
の電子的レビュをいかに実施するかのプロセスの詳細な記述に欠けていたため、貴社の回答は不十分
である。さらに貴社の回答は、ピークの面積の適切な判断を保証するために、いかにピークの定量中
に使用される手動の積分手順の検証を実施するつもりかを述べていない。
〇試験管理の記録
貴社のQUは、貴社のCGMP文書への変更を防ぐための基本的な管理が整っていることを保証するのを
怠った。例えば、品質管理(QC)の試験室内で試験結果を記録するのに使用される“分析ワークシート
フォーム”は、いつ、誰によって発行されたかを特定するために、フォーム自体に一意の番号、
サイン、またはその他のトレース可能な要素がないので、管理されていない。
貴社は回答で“分析ワークシートフォーム”のトレーサビリティを保証するための手順を実装する
予定であると述べた。しかし、貴社はこれらの文書が発行された後どのように管理されるかの手順
を述べた詳細を提出しなかったし、以前の医薬品の分析に関するトレーサビリティの全体的な欠如を
調査したり、不完全な原薬の品質評価の分析データの記録の影響をレビュするためにリスクアセス
メントを実行するという提案をしなかったため、貴社の回答は不十分である。
貴社のQUは、ロットのリリースを判断する際、テスト中に生成された全てのローデータと、完了した
試験管理記録をレビュしなければならない。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・手動の積分手順が、貴社のQUによって承認され監督された手順に従い、定義され限定された
状況下でのみ実施されることを保証するために貴社が実装しようとしている管理の概要
・使用期限内にあるアメリカに販売された製品の紫外線可視分光光度計及び赤外線分光光度計の
クロマトグラフィの手動積分の全ての事例の包括的なレビュ
貴社が分析のために使用した手動積分パラメータの科学的な正当性を提出せよ。科学的な正当性
が欠けた積分に関し、適切な再積分パラメータを使用して再積分をするための計画を提供せよ。
再積分結果が制定された原薬の合格基準に従っているかどうかを評価せよ。もしOOSの結果が確認
された場合、貴社の医薬品の品質を保証するためにとられるアクションを提出せよ。
・使用期限内にあるアメリカに販売された製品の、リテスト期限内のすべてのロットの再分析の
計画
・文書化手順が不十分な場所を特定するための、貴社の製造及び試験の運用中に使用される文書化
システムの完全なアセスメント
貴社の作業を通じて、貴社が帰属可能で判読可能、完全で原本性があり正確で同時性がある記録を
保持していることを保証するために、貴社の文書化手順を包括的に改善する詳細な是正処置・
予防処置(CAPA)の計画を含めよ。
●データ・インテグリティの改善
貴社の品質システムは、貴社が製造した医薬品の安全性、有効性、品質を裏付けるデータの正確性
と完全性を適切に保証していない。CGMPを遵守したデータ・インテグリティ業務を確立し、それに
従うためのガイダンスとして、FDAのガイダンス文書Data integrity and Compliance with Drug CGMP
を見よ。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
A.アメリカに出荷された医薬品のデータのレビュ結果を含む、データ記録と報告の不正確な範囲
の包括的な調査
貴社のデータ・インテグリティの欠如の範囲と根本原因の詳細な記述を含めよ。
B.みつかった不具合の貴社の医薬品の品質への潜在的な影響についての現在のリスクアセスメント
貴社のアセスメントには、データ・インテグリティの欠如の影響を受けた医薬品のリリースに
よる患者のリスクの分析と、継続的な作業により引き起こされるリスクの分析を含めるべきで
ある。
C.全社的なCAPAの詳細を含む、貴社の経営戦略
是正処置の詳細な計画には、貴社が、微生物及び分析のデータ、製造記録、FDAに提出される
全てのデータを含む、貴社で生成された全てのデータの信頼性と網羅性をいかに保証するつもり
かも記述せよ。
●CGMPコンサルタントの推奨
我々が貴社で発見した逸脱の性質に基づき、CGMPの要件を満たすように貴社を支援するために、
貴社は、21 CFR 211.34に記載されている適格性のあるコンサルタントを雇うべきである。貴社が
FDAと共に貴社のコンプライアンス状態の解決を達成しようとする前に、適格なコンサルタントが
貴社のCGMP遵守に関し貴社の全ての作業の包括的な監査を実施し、貴社の是正処置・予防処置の完了
と効果も評価すべきである。
●結論
この文書で挙げた逸脱は、貴社の製造所に存在する違反の包括的なリストでもない。貴社には、
全ての逸脱を調査し、原因を判断し、再発やその他の逸脱の発生を防止する責任がある。
全ての逸脱を速やかに是正せよ。完全に対応され、我々が貴社のCGMPの遵守を確認するまで、FDA
は貴社の製造業者としての新薬の申請やリストの補完の承認を保留するだろう。我々は、貴社が
全ての逸脱に対する是正処置を完了したことを確認するために再査察を行うかもしれない。
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まとめ
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いかがでしたでしょうか。
今回取り上げた2件のウォーニングレターは、どちらもデータ・インテグリティの不備の指摘が
含まれていました。何度も言われているデータ・インテグリティですが、今一度、お使いの
システムのユーザのアクセスの管理、ALCOA(※)の遵守状況をご確認頂ければと思います。
<ALCOA>
A:Attributable 帰属性
L:Legible 判読性
C:Contemporaneous 同時性
O:Original 原本性
A:Accurate 正確性
2023.02.01
【最近のウォーニングレター】ASTROM通信<259号>
こんにちは。
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。
厳しい寒さが続いていましたが、いかがお過ごしでいらっしゃいますか?
さて今回は、アメリカ食品医薬品局(FDA)がアメリカ国外の製薬会社向けに出したウォーニング
レター2件を見ていきたいと思います。
FDAがどのような点を問題視して指摘しているかをご確認いただければ幸いです。
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最近のウォーニングレターの概要
注:文中のXXはウォーニングレターでマスキングされている文言及び具体的な社名・品名等です。
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■Warning Letter 320-23-04■
2022年5月12日~5月20日のインドの製造所の査察でみつかった医薬品製造の重大なCGMP違反に
ついて発した2022年11月22日付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。
●指摘1
貴社は、そのロットが既に出荷されたかどうかに関わらず、ロットやその成分の、説明のつかない
規格との不一致や不具合を徹底的に調査することを怠った。(21 CFR 211.192)
<指摘1詳細>
A.貴社の不合格のロットの調査は、他のロットや、錠剤圧縮機、薬剤の濃度、錠剤圧縮機の
設定まで範囲を広げることを怠った。
2018年から2021年に、貴社は、0.1mgおよび0.2mgの濃度の酢酸デスモプレシン錠のXX及び含量
均一性試験の規格外の結果(OOS:Out-of-Specification)により、14ロットを不合格にした。
貴社は、2つの濃度の不具合の根本原因を分析するために、層別解析のサンプリングを実施し、
追加でテストロットを製造した。貴社は、酢酸デスモプレシン錠0.1mg、ロット20210776について、
錠剤圧縮のパラメータの定義の不足が含量均一性の不具合のせいであると考えたが、同じXX工程や
圧縮装置を使用した他のロットや製品の試験を実施することを怠った。
貴社は回答の中で、0.1mgおよび0.2mgの酢酸デスモプレシン錠のロットが不合格になり、0.2mgの
濃度の錠剤について、錠剤圧縮のパラメータの是正処置を適用しなかったことを認めた。この
査察の結果、貴社は回顧的レビュを実施し、酢酸デスモプレシン錠0.2mg、ロット20220121の
層別解析サンプルの分析結果の不具合を発見し、2022年6月10日にこのロットの自主回収を開始
した。しかし、貴社の回答は、問題発生時の分析の不具合と、市場への影響の調査の不履行に
適切に対処しておらず、貴社の調査の全ての段階の改善のための全体的な管理戦略は含まれて
いなかった。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・逸脱、不一致、苦情、OOSの結果、不具合を調査するためのシステム全体の包括的で独立した
アセスメント
これに限定されないが、調査能力、調査範囲の決定、根本原因の評価、是正処置・予防処置
(CAPA)の有効性、品質の管理、文書化された手順の大幅な改善を含むこのシステムの改善の
ための詳細なアクションプランを提供せよ。調査の全ての段階が適切に実施されることを貴社
がいかに保証するか検討せよ。
・貴社のCAPAプログラムの独立したアセスメントと改善の計画
プログラムが効果的な根本原因の分析を含み、CAPAの有効性を保証し、調査の傾向を分析し、
必要に応じてCAPAプログラムを改善し、品質保証の最終的な決定を実施し、経営陣によって
完全にサポートされているかどうかを評価するレポートを提供せよ。
●指摘2
貴社は貴社が製造する医薬品が、それが持つとされる、または持つと表示されている同一性、
濃度、品質、純度を持っていることを保証するために設計された製造及び工程管理のための
文書化された手順を制定することを怠った。(21 CFR 211.100(a))
<指摘2詳細>
貴社はXXゲルXX%の製造工程を適切にバリデートすることを怠った。具体的には、貴社の
プロセスバリデーションは、XXゲルXX%のロット間及びロット内のばらつきの評価が不足して
いる。貴社のこの医薬品に関する初回の工程の性能適格性評価は、3つのバリデーションロット
の充填のXXで収集されたチューブから採取された粘度について、XXのランダムなチューブを試験
しただけだった。この検証はロット内のばらつきを評価しておらず、バリデーションレポート内
には、XXチューブがどこで収集されたか述べていなかった。粘度に関するこのサンプリング計画
は、貴社の工程性能の統計的な信頼性を得られない。
2回目の工程の性能適格性評価の検証は、医薬品の粘度を管理するために使用される重要な添加剤
の適格性を評価するために実施された。検証は1ロットだったため、工程が一貫して高品質の
医薬品を製造することを保証するためのロット間のばらつきは評価できなかった。貴社は、
XXゲルXX%の粘度の規格の不適合により2020年から2021年の間に5ロットを不合格にした。
この文書への回答の中で以下の情報を提供せよ:
・継続的な管理状態を保証するためにロット間及びロット内のばらつきの慎重なモニタリングを
含む、設計、バリデーション、維持、管理、モニタリングに関する詳細なプログラムを提出せよ。
また、貴社の装置及び設備の適格性評価に関するプログラムも含めよ。
・製品のライフサイクルを通じて、関連する手順と共に、管理状態を保証するための、貴社の
バリデーションプログラムの詳細なサマリ
工程の性能適格性評価、継続的な管理状態を保証するためのロット間及びロット内のばらつきの
継続的なモニタリングに関する貴社のプログラムについて述べよ。
●指摘3
貴社は、必要な試験管理の方法を制定し、それに従うことを怠った。(21 CFR 211.160(a))
<指摘3詳細>
貴社は、クロマトグラフィーのピークの積分と、クロマトグラフィーのデータ処理のレビュに
関する適切な手順を持っていなかった。
A.我々査察官は、貴社が、適切な手順の管理や正当化の理由もなく、処理方法や合格結果の報告に、
指定時刻の積分の結果を手動で入力している事例を特定した。貴社の分析者は、錠剤XXロットXXの
不純物XXのピークのクロマトグラフィーのデータの処理を手動で変更した。自動積分処理が標準や
その他のピークと同じ方法で適用されていたら、不純物の結果はリリースの規格を満たしていなかっ
ただろう。
さらに、貴社のクロマトグラフィーデータの積分手順は、いつ分析者が手動で指定時刻の積分結果
を入力できるか、これらの結果はどのように使用されるべきか、それらがどのようにレビュされる
べきかを示していないので、不適切である。手順は、指定時刻の積分結果の手動入力の監督承認、
もともとシステムが積分したクロマトグラムのレビュと、指定時刻の結果を手動で入力するための
正当化の理由を必要としていない。
貴社は回答の中で、使用期限内のアメリカ向けロットについて実施した回顧的レビュを通じて、
既存のクロマトグラフィーデータの処理手順を使って実施した積分の精度をレビュした。貴社は、
錠剤XXとXX、ロットXXについて、不特定の不純物に関する追加の規格外の結果を確認した。報告
された結果はXX%で、「リフトオフ%の設定」と「タッチダウン%の設定」として確認された
指定時刻の積分の結果を削除した後に再処理された結果はXX%で、未知の不純物について規格外で
ある。(リリース規格は、XX%以下)
貴社は、再処理されたOOSの結果を、ノイズの多いベースラインのせいにした。しかし、貴社の調査
は、その結論を裏付けるデータに欠けていた。調査報告は、フルスケールのクロマトグラフィーの
実行、積分パラメータやサンプル標準及びブランクのクロマトグラムの情報を含んでいなかった。
これらのクロマトグラムは貴社の調査報告の中になく、説明もなかった。調査報告の中には、初期
処理時の装置の準備状態を保証するためにシステムの適合性が満たされているかの説明もない。
さらに、初期処理中にピークを無視するために使用される最小面積が適切に計算されていなかった。
貴社の手順に従った正しいXXの代りに、XXの最小面積が適用された。再処理の後、追加のピークは
見つからなかった。さらに、貴社の結論は、繰り替えし試験の中の同じピークの存在を説明する
ことを怠り、強制分解試験の情報を提出しなかった。
貴社は、クロマトグラフィー試験の対象となる原材料、有効成分、医薬品に関連する全てのクロマト
グラフィーデータの回顧的レビュの実施を約束しなかったので、貴社の回答は不十分である。
B.関連物質のピーク積分のための最小面積設定のための計算は記録されていないか、品質部門に
よってレビュされていない。査察中、分析者は、錠剤XXロットXXの最小面積を計算するよう依頼
された。分析中に使用された最小面積は正しく計算されていなかった。最小面積の変更は報告結果
を変化させなかった。しかし、計算が記録されていないため、誤った最小面積が計算され、分析に
使用されたかどうかをレビュで検知できなかった。クロマトグラフィーの分析において関係する
必要なピークが積分されたかどうかの保証が不足している。
貴社は、実際に計算された最小面積に対して処理の中で使用された最小面積を検証するために
アメリカ向け医薬品について回顧的レビュを実施し、使用された最小面積が、計算された最小面積
より大きい多数の医薬品のサンプルが特定された。しかし、規格外の結果はみつからなかった。
有効成分等の原材料を含む関連物質の最小面積の設定に関する全てのクロマトグラフィーデータの
回顧的レビュを実施することを約束しなかったので、貴社の回答は不十分である。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・貴社の試験の業務、手順、方法、装置、文書、分析者の能力の包括的で独立したアセスメント
貴社によって使用される全ての試験方法が適切な指示と方法の適合性の基準を持ち、目的に適合
しているかどうかを判断するために適切にバリデートされていることを保証するため、それらの
アセスメントを含めよ。このレビュに基づき、貴社の試験システムを改善し、その効果を評価
するための詳細な計画を提出せよ。
・貴社全体のCAPAの詳細を含む貴社の経営戦略
詳細な是正処置計画では、微生物及び分析のデータ、製造記録、FDAに提出される全てのデータ
を含む、貴社で生成される全てのデータの信頼性と網羅性をいかに保証するつもりか述べる必要
がある。
・錠剤XXとXXの分析方法のバリデーション報告書のコピー
方法のバリデーションが、手動の積分と商用ロットにおけるこの手順の合理性を含んでいたか
どうかを示せ。
・錠剤XXとXXの強制分解の検証のコピー
●指摘4
貴社は、製造された医薬品の各ロットの製造と管理に関する情報を含むロットの製造指図記録を
作成することを怠った。(21 CFR 211.188)
<指摘4詳細>
貴社の製造記録は不完全で、圧縮機の不合格のリミットに関するロット固有のデータを含んで
いなかった。
製造オペレータは、貴社の手順で要求されている通りにロット固有の不合格のリミットを計算
する
代わりに、錠剤圧縮の処方で初期値として事前設定された不合格値を使用したことを認めた。
不適合な錠剤と硬度の規格を満たしていない錠剤の調査があった。それぞれの調査の影響アセス
メントで、自動重量制御または圧縮力制御がオンになっているので、規格を満たさない錠剤が
見つかるリスクは低いと結論づけた。
しかし、調査は、不合格のリミットが適切に設定されていたかどうか判断しなかった。圧縮機が
規格を満たさない錠剤を正しく拒否していたかを確認するための保証が不足していた。
貴社は、製造所で製造された全ての錠剤に関して制定された圧縮機のパラメータに関する
検証プロトコルを開始した。しかし、貴社の回答は不十分である。貴社は、アメリカに出荷
された使用期限内のすべてのロットについて、不合格のリミットが適切に計算されて入力された
ことを保証するための、PLC(Programmable Logic Control)の処方データをレビュしなかった。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・全ての医薬品の製造ライフサイクルを通じて継続的な経営陣の監督をより確実にするための
改善計画
工程のばらつきの原因を特定し、製造及び包装作業の両方を含む製造が適切なパラメータと
品質基準を満たすことを保証する、よりデータ駆動型で科学的に理にかなったプログラムを
提出せよ。プログラムはこれに限定されないが、装置の使用目的への適合性の評価、投入原材料
の品質の保証、各製造工程の段階とその管理の能力と信頼性の判断、工程の性能と製品品質の
慎重で継続的な監視を含むべきである。
●結論
この文書で挙げた違反は、貴社の施設に存在する違反の包括的なリストではない。貴社には、
違反を調査し、原因を判断し、再発やその他の違反の発生を防止する責任がある。
貴社の施設で生産される医薬品の供給に支障をきたす可能性のある措置を検討している場合、
直ちにCDERの医薬品不足スタッフに連絡せよ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
■Warning Letter 320-23-05■
2022年6月20日~6月24日のカナダの製造所の査察でみつかった医薬品製造の重大なCGMP違反に
ついて発した2022年11月28日付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。
●指摘1
貴社は、そのロットが既に出荷されたかどうかに関わらず、ロットやその成分の、説明の
つかない規格との不一致や不具合を徹底的に調査することを怠った。(21 CFR 211.192)
<指摘1詳細>
貴社は、流通していないオンデマンドのシステムXXから採取されたサンプルを適切に調査する
ことを怠った。サンプルは貴社の医薬品XXの製造前にとられていた。サンプルは、バイオ
バーデンはXXCFU/mL(規格はXXCFU/mL以下)の高い値を得た。貴社は、根本原因の判断の文書化、
回収された微生物に基づく種の分析や製品への影響のアセスメントを実施せずに医薬品XXを
出荷した。
さらに、貴社は貴社のXXロットXXの使用以来炎症が発生したという顧客の苦情を適切に調査
することを怠った。貴社の調査は、全員貴社の従業員でXXを使用した4名の参加者による
パネル試験の実施だった。
貴社の従業員たちがXXの使用後にアレルギー反応を示さなかったと結論を出した後、貴社は
更なる調査は必要ないと判断した。そのロットの追加の試験や評価は実施されなかった。
貴社は回答の中で、苦情及び逸脱の管理に関する標準操作手順書(SOP)を改訂すると約束した。
貴社は、調査が包括的で適切なリスクアセスメントが実施されていることを保証するために、
前の調査(貴社のXXの少なくとも2ロットに関連した調査を含む)の回顧的レビュを実施すること
を怠ったので、貴社の回答は不十分である。さらに、貴社は、適切な根本原因を決定し、再発
を防ぐために適切な是正処置・予防処置(CAPA)が確認され実施され、CAPAの効果が測定される
ためにいかに調査システムを修正するかについて説明しなかった。
不十分な調査は、不適合の根本原因を特定または軽減しないことにつながる可能性があり、
安全で効果的な医薬品の一貫した製造を保証できない。
不合格、OOS、傾向外、または、他の予期しない分析結果の取り扱いや、貴社の調査の文書化
についての更なる情報については、FDAのガイダンス文書を参照せよ。
この文書への回答の中で以下の情報を提供せよ:
・逸脱、不一致、苦情、OOSの結果、不具合の調査に関する貴社のシステム全体の包括的で
独立したアセスメント
このシステムを修正するための詳細なアクションプランを提出せよ。貴社のアクション
プランは、これに限定されないが、調査者の能力、調査の範囲の決定、根本原因の評価、
CAPAの効果、品質の監視、文書化された手順の著しい改善を含めるべきである。貴社が
調査の全てのフェースが適切に実施されていることをいかに保証するかについて検討せよ。
・XXのロットXX及びXXのリスクアセスメント
●指摘2
貴社は、成分、医薬品の容器、蓋、工程内原料、ラベル、医薬品が、同一性、濃度、品質、純度
の適切な基準に従うことを保証するために設計された、科学的に妥当で適切な規格、標準サンプ
リング計画、試験手順を含む試験の管理を定めることを怠った。(21 CFR 211.160(b))
<指摘2詳細>
貴社は、貴社の全ての非滅菌医薬品の微生物試験及び規格を含む適切な試験の管理を定めること
を怠った。例えば、貴社は、貴社の手の除菌用ジェル医薬品の微生物試験をリリース前に実施する
ことを怠った。さらに、貴社の医薬品XXについては、微生物試験は実施されたが、一般生菌数の
規格が製品の使用目的に適していない。
貴社は回答の中で、微生物試験の手順と規格を改訂することを約束した。貴社は、前に出荷した
医薬品が改訂した微生物の試験手順と規格を満たすことを保証するための計画を提出しなかった
ので、貴社の回答は不十分である。貴社の回答は、既に出荷された医薬品が改訂された微生物試験
の手順や規格を満たさなかった場合にとる予定のアクションを含んでいなかった。
この文書への回答の中で以下の情報を提供せよ:
・貴社の各医薬品の微生物学的に適切なロットのリリース規格(例:総菌数、セパシア菌群好ま
しくない微生物を検知するためのバイオバーデンの確認);貴社のXXシステムで使用されている
総菌数及び好ましくない微生物に関する現在のアクション/アラート限界
・貴社の各医薬品を分析するために使用される全ての微生物試験の方法とXXシステム
・使用期限内にある全ての医薬品の保管サンプルの試験から得られた結果のサマリ
貴社は各ロットの微生物の品質(総菌数と好ましくなく微生物を検知するためのバイオバーデン
の確認)を試験すべきである。試験でOOSの結果を得たら、顧客への通知や回収の開始を含む、
貴社がとろうとしている是正処置を示せ。
・査察終了以降のXXシステムの全ての結果のサマリ
●指摘3
貴社は、各成分について、同一性と、純度、濃度、品質に関する文書化された全ての規格への一致
について試験することを怠った。(21 CFR 211.84(d)(1), 21 CFR 211.84(d)(2))
<指摘3詳細>
貴社は、有効成分であるエタノールを含む貴社の手の除菌用医薬品の製造に使用される各成分に
ついて適切な同一性試験を実施することを怠った。さらに、貴社の有効成分であるエタノールは、
メタノール含有量について試験されず、貴社の手順は、ジエチレングリコール(DEG)の存在について
グリセリンを試験することを保証していなかった。
貴社は回答で、成分の試験手順と規格を改訂することを約束した。貴社は、過去に出荷された医薬品
が、改訂された同一性試験及び純度試験の要求を満たす入荷成分で製造されたことを保証するための
詳細な計画を提出することを怠ったので、貴社の回答は不十分である。
成分試験は品質の基本である。適切な試験をせずに、入荷した成分が、医薬品の製造に使用する前に、
適切な規格に従うという科学的なエビデンスを貴社は持っていない。
◇エタノールを含む製品
貴社はエタノールを含む複数の医薬品を製造している。メタノールで汚染されたメタノールの使用は、
世界中の人々にさまざまな致命的中毒事件をもたらしてきた。
エタノールを含む医薬品を製造する場合、貴社がCGMPの要件を満たす助けとして、FDAのガイダンス
文書Policy for Alcohol (Ethanol) and Isopropyl Alcohol for Methanol, Including During the Public Health Emergency (COVID-19)
を見よ。
◇グリセリンを含む製品
貴社はグリセリンを含む医薬品を製造している。ジエチレングリコール(DEG)で汚染されたグリセリン
の使用は、世界中の人々にさまざまな致命的中毒事件をもたらしてきた。
グリセリンを含む医薬品を製造する場合、貴社がCGMPの要件を満たす助けとして、FDAのガイダンス
文書Testing of Glycerin for Diethylene Glycolを見よ。
この文書への回答の中で以下の情報を提供せよ:
・製造に使用するために入荷した成分の各ロットを試験しリリースするのに使用している化学及び
微生物学的品質管理の規格
・同一性、濃度、品質、純度の全ての規格への一致について、貴社が各成分をいかに試験するかの
記述
もし濃度、品質、純度について各成分を試験する代わりに、貴社の供給者の分析証明書(COA)の
結果を受け入れるつもりであれば、初期のバリデーションと定期的な再バリデーションを通じて、
貴社の供給者の分析結果の信頼性をいかに確実に立証するつもりか明記せよ。さらに、入荷した
成分の各ロットについて少なくとも1つの特定の同一性試験を常に実施すると約束せよ。
・各成分の製造業者から得たCOAの信頼性を評価するために、全ての成分の試験から得られた試験
結果のサマリ
このCOAのバリデーションプログラムを述べた貴社のSOPも提出せよ。
・貴社が製造した医薬品を試験する、契約施設の適格性評価と監督のための貴社のプログラムの
サマリ
・メタノール、XX、XX、XXとリリースされ出荷された手の除菌用医薬品の全てのロットに関する
試験結果
●医薬品の製造中止
アメリカ市場向けの手の除菌用医薬品の製造を中止するという貴社の約束を認める。この文書の
日付時点で、貴社の手の除菌用医薬品は、FDAのリストにのっている。さらに、貴社がこれらの
医薬品の製造を中止するという貴社の決定をFDAに伝えた後、貴社の手の除菌用医薬品の積み荷が
アメリカに入ってきた。
FDAはそれ以来貴社に輸入警告措置66-40をとった。
この文書への回答の中で、貴社が手の除菌用医薬品の製造とアメリカ向けの出荷を止めるつもり
かどうかを明確にせよ。これらの医薬品の製造と販売を中止するつもりなら、既にリストに
のっている全ての手の除菌用医薬品をリストから除外せよ。
●CGMPコンサルタントの推奨
貴社で確認した違反の性質に基づき、もし貴社がアメリカ市場向け医薬品の製造を再開するつもり
であれば、貴社は、CGMPの要件を満たすように貴社を支援するために21 CFR 211.34に記載されて
いる適格性のあるコンサルタントを雇うべきである。また適格性のあるコンサルタントは、FDAと
共に貴社のコンプライアンス状態の解決を達成しようとする前に、CGMPの遵守について貴社の
製造作業全体の包括的な監査を実施し、是正処置・予防処置の完了と効果を評価するべきである。
貴社のコンサルタントの使用は、CGMPを遵守するための貴社の義務を軽減するものではない。
貴社の経営陣には、継続的なCGMP遵守を保証するために、全ての不備とシステムの欠陥を解決
する責任が残る。
●結論
この文書で挙げた違反は、貴社の施設に存在する違反の包括的なリストではない。貴社には、
違反を調査し、原因を判断し、再発やその他の違反の発生を防止する責任がある
FDAは2022年10月28日に輸入警告措置66-40をとった。
全ての違反を速やかに是正せよ。全ての違反に完全に対応がされ、我々が貴社のCGMPの遵守を
確認するまで、FDAは貴社の医薬品製造業者としての新しい申請やリストの補完の承認を保留する
だろう。我々は、貴社が全ての違反に対する是正処置を完了したことを確認するために再査察を
行うかもしれない。
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まとめ
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いかがでしたでしょうか。
今回取り上げた2件のウォーニングレターは、手順や規格の制定の不備、不具合等が発生した
際の調査不足といった、目新しくない指摘が多かったように思います。
こういう一般的な内容ほど、自己点検で見落としがちなのかもしれません。
2023.01.15
【令和3年薬事工業生産動態統計】ASTROM通信<258号>
こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。
2023年がいよいよ動き出しましたが、いかがお過ごしですか?
さて、今回は、2022年12月23日に厚生労働省から発表された令和3年(2021年)の薬事工業生産動態統計
年報について取り上げたいと思います。
最後までお読みいただければ幸いです。
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令和3年薬事工業生産動態統計年報
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2022年12月23日に厚生労働省より令和3年の薬事工業生産動態統計年報が発表されました。
以下に主な内容をピックアップしました。
出典: https://www.mhlw.go.jp/topics/yakuji/2021/nenpo/
■医薬品■
1.生産金額について
令和3年の医薬品の国内生産金額は、9兆1,802億円で、前年の9兆2,641億円と比べると、0.9%の減
少となっています。
内訳は、医療用医薬品は0.6%の減少、要指導医薬品・一般用医薬品は4.7%の減少、要指導医薬品・一
般用医薬品のうちの配置用家庭薬は3.1%の増加となっています。
国内の医薬品生産金額は、令和2年に引き続いての減少となります。配置用家庭約は、ずっと減少し
続けてきましたが、令和3年に増加に転じているのが興味深いです。
生産金額の多い医薬品(薬効大分類別)は、以下のようになりました。
1位 その他の代謝性薬品(1兆3,425億円、前年比+7.9%)前年1位
2位 腫瘍用薬(1兆2,990億円、前年比+8.1%)前年2位
3位 中枢神経系用薬(9,400億円、前年比-11.2%)前年3位
4位 循環器官用薬(8,987億円、前年比-4.3%)前年4位
5位 血液・体液用薬(6,168億円、前年比-3.8%)前年5位
生産金額の多い医薬品薬効中分類は以下の通りです。
1位 その他の腫瘍用薬(1兆2,377億円、前年比+8.1%)前年1位
2位 他に分類されない代謝性医薬品(7,768億円、前年比+14.0%)前年2位
3位 糖尿病用剤(4,383億円、前年比+3.0%)前年3位
4位 血液凝固阻止剤(3,678億円、前年比-1.8%)前年4位
5位 血圧降下剤(3,228億円、前年比-4.3%)前年5位
医薬品薬効中分類別で生産金額の増減を見てみますと、58分類のうち23分類で増加していました。
前年に対して増え方が多いのは、多い順に、
一般検査用剤 前年比+55.8%
免疫血清学的検査用剤 前年比+31.1%
利尿剤 前年比+29.6%、
甲状腺、副甲状腺ホルモン剤 前年比+25.9%、
ワクチン類 前年比+22.6%
で、逆に減り方が多いのは、多い順に、
総合感冒剤 前年比-46.9%
ビタミンA及びD剤 前年比-44.2%
主としてグラム陽性・陰性菌に作用する抗生物質製剤 前年比-26.7%
その他の化学療法剤 前年比-26.1%
抗ウイルス剤 前年比-25.2%
でした。
2.輸出入金額
医薬品の輸出金額は、5,631億円、前年比+9.9%で、金額で見た主な輸出国は
1位 スイス(1,466.1億円、前年比-5.3%)
2位 アメリカ(1,395.0億円、前年比+29.9%)
3位 中国(777.3億円、前年比+10.5%)
4位 台湾(258.4億円、前年比+13.8%)
5位 韓国(242.4億円、前年比+6.9%)
でした。
輸入金額は、3兆393億円、前年比+5.6%で、金額で見た主な輸入国は
1位 アメリカ(6,883億円、前年比+28.3%)
2位 ドイツ(6,344億円、前年比+5.9%)
3位 スイス(3,778億円、前年比+16.1%)
4位 アイルランド(2,077億円、前年比+31.9%)
5位 イギリス(1,864億円、前年比-12.1%)
でした。
3.都道府県ランキング
生産金額の多い都道府県は、
1位 埼玉県(8,465億円、前年比-3.5%)前年1位
2位 栃木県(8,127億円、前年比-6.3%)前年2位
3位 静岡県(6,998億円、前年比-16.5%)前年3位
4位 山口県(6,933億円、前年比+45.4%)前年6位
5位 富山県(6,204億円、前年比-6.1%)前年4位
でした。
生産金額の前年からの増加率が大きい都道府県のトップ5は、
1位 山口県 前年比+45.4%
2位 群馬県 前年比+34.9%
3位 石川県 前年比+26.6%
4位 島根県 前年比+12.8%
5位 山形県 前年比+12.6%
でした。逆に前年からの減少率が大きい都道府県のトップ5は、
1位 福井県 前年比-58.2%
2位 長崎県 前年比-35.9%
3位 岩手県 前年比-22.4%
4位 鹿児島県 前年比-20.9%
5位 愛知県 前年比-19.4%
でした。
4.医薬品の生産規模別構成
製造のあった製造業者数は、前年は1,212でしたが、令和3年は1,181と減少しています。
1カ月間における自社 生産金額及び受託生産金額1億円未満の製造業者数は780(66.0%)ですが、
その生産金額 は1,370億円で自社生産及び受託生産の総額の1.5%にすぎません。これに対し、
1億円以上の 製造業者数は501(34.0%)ですが、その生産金額は9兆432億円で98.5%を占めています。
(全体版一部引用)
■医療機器■
1.生産金額について
令和元年の医療機器の国内生産金額は、2兆6,019億円で、前年の2兆4006億円と比べると、8.4%の
増加となっています。
生産金額の多い医療機器類は以下の通りでした。
1位 医療用鏡(3,606億円、前年比+26.5%)前年1位
2位 医療用嘴管及び体液誘導管(2,576億円、前年比-6.2%)前年2位
3位 医療用エックス線装置及び医療用エックス線装置用エックス線管
(2,566億円、前年比+21.6%)前年4位
4位 内臓機能代用器(2,306億円、前年比-0.3%)前年3位
5位 血液検査用器具(1,638億円、前年比-8.8%)前年5位
2.輸出入金額
医療機器の輸出金額は、1兆30億円で前年比+3.0%で、金額で見た主な輸出国は
1位 アメリカ(1,619億円、前年比+35.1%)
2位 中国(1,251億円、前年比-26.8%)
3位 ドイツ(672億円、前年比+12.9%)
4位 オランダ(462億円、前年比-2.2%)
5位 ベルギー(289 億円、前年比-14.3%)
でした。
輸入金額は、2兆8,151億円、前年比+8.4%で、金額で見た主な輸入国は
1位 アメリカ(9,616億円、前年比-2.9%)
2位 アイルランド(3,267億円、前年比+18.7%)
3位 中国(2,593億円、前年比+12.8%)
4位 ドイツ(1,979億円、前年比+22.5%)
5位 タイ(1,063億円、前年比+22.2%)
でした。
3.都道府県ランキング
医療機器の生産金額の多い都道府県は、
1位 静岡県(3,391億円、前年比-7.2%)前年1位
2位 栃木県(2,744億円、前年比+21.1%)前年2位
3位 福島県(2,521億円、前年比+25.2%)前年3位
4位 茨城県(1,519億円、前年比-5.6%)前年4位
5位 埼玉県(1,516億円、前年比+6.9%)前年5位
でした。
生産金額の前年からの増加率が大きい都道府県のトップ5は、
1位 神奈川県 前年比+62.8%
2位 鳥取県 前年比+57.6%
3位 青森県 前年比+40.2%
4位 新潟県 前年比+26.9%
5位 福嶋県 前年比+25.2%
でした。逆に生産金額の前年からの減少率が大きい都道府県のトップ5は、
1位 沖縄県 前年比-100.0%
2位 和歌山県 前年比-17.1%
3位 熊本県 前年比-14.2%
4位 徳島県 前年比-10.9%
5位 岩手県 前年比-10.3%
でした。
4.医療機器の生産規模別構成
製造のあった製造業者数は前年は1,707でしたが、令和3年は1,716とわずかに増加しています。
1カ月間における生産金額 1億円未満の製造業者数は1,497(87.2%)ですが、
その生産金額は2,117億円で自社生産及び受託生産の総額の8.1%にすぎません。これに対し、
1億円 以上の製造業者数は219(12.8%)ですが、その生産金額は2兆3,902億円で91.9%を占めて
います。(全体版一部引用)
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
まとめ
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
いかがでしたでしょうか。
令和3年は、山口県の医薬品生産金額が大幅に増加しており、日本の製薬業界が新型コロナウイルス
の影響を受けていることをあらためて実感しました。
私の住む静岡は、医薬品生産金額の都道府県ランキングは3位、医療機器生産金額の都道府県ランキング
は1位と去年と変わらない状態ですが、医薬品生産金額が1,386億円と大幅に減少している点が気になり
ました。
2023.01.01
【EU及びPIC/S GMP ガイドラインAnnex11改訂の動き】ASTROM通信<257号>
明けましておめでとうございます。
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。
本年もよろしくお願いいたします。
2023年最初のメールマガジンは、前回のメールマガジンの冒頭で少し触れた、EU及びPIC/S の
GMPガイドラインAnnex11(コンピュータ化システム)の改訂にむけた動きを確認していきます。
現在Annex11は、改訂にむけてコンセプトペーパーのパブリックコメントが募集されています。
そこで、本メールマガジンでも、コンセプトペーパーのうち、改訂の理由や方向性、今後の
スケジュールが書かれた1章から4章を確認しておきたいと思います。
厚労省は、近年の医薬品の品質確保に対する国際的な動向の変化に対応し、品質確保の手法と
してPIC/S GMPガイドラインを活用する姿勢をとっています。
よって、もしこのコンセプトペーパーに書かれた方向に向かってAnnex11が改訂された場合、
輸出の有無に関わらず、どの製薬会社様にも影響のある大きな変化が生じる可能性があります。
最後までお付き合いいただければ幸いです。
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GMPガイドラインAnnex11(コンピュータ化システム)改訂のコンセプトペーパー
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〇1.序論
このコンセプトペーパーは、GMPガイドラインAnnex11(コンピュータ化システム)を改訂すると
いうニーズに対応している。Annex11は、欧州連合(EU)/欧州経済地域(EEA)の加盟国、PIC/S
に参加している当局に普及している。現バージョンは2011年に発出されたが、いくつかの分野に
おいて、十分なガイダンスを与えていない。現バージョンの発出以来、新しい技術の使用に
おいて広範囲な進展があった。
Annex11の改訂の理由は、これに限定されないが、以下に盛り込んでいる (優先順ではない)。
改訂のドラフトを作成しているグループはパブリックコメントを受け取り、より多くの改善が
必要であることがわかるかもしれない:
注1)文中の[]内には、関連する2011年版のAnnex11の章が書かれていて、[新]は今回新しく
検討されている内容です。
注2)文中の★補足★は、コンセプトペーパーの記載だけではわかりづらい部分について、
2011年版のAnnex11と比較して追記した内容です。
1.[新]EMA GMPウェブサイトのAnnex11のQ&Aとデータ・インテグリティのQ&Aの関連部分を
リプレイスするために文書は更新されるべきである。
2.[新]データ・インテグリティに関して、Annex11は『流れているデータ(data in motion)』
と『保存データ(data at rest)』(バックアップ、アーカイブ、処分)の要件を盛り込む
予定である。データ・インテグリティを支え、保護するために、強固な構成設定と統合
した管理が期待される;手動の管理に代わる技術的なソリューションと自動化が好ましい。
3.[新]規制上の期待から、文書の『デジタル・トランスフォーメーション(DX)』や同様の
新しいコンセプトへの最新化が検討される予定である。
4.[原則]範囲はコンピュータ化システムの“手動の作業のリプレイス”だけでなく“他の
システムや手動プロセスのリプレイス”も網羅する予定である。
★補足★2011年版の原則には、手動の作業をコンピュータ化システムにリプレイスする
場合、製品の品質、プロセスコントロ ールや品質保証を低下させたり、プロセスのリスク
を増加させたりしてはいけないとされていますが、改訂版ではシステムのリプレイスや
プロセスの変更にも適用される予定であると言っています。
5. [1章] ICH Q9への引用がされなければならない。
6. [3.1章] サービスのリストには、コンピュータ化システムの運用(例:『クラウド』サービス)
を含むべきである。
7.[3.1章]サービスプロバイダ(例:『クラウド』サービス)によりバリデート/運用されている
重要なシステムについては、”正式な契約が存在すること”以上でなければならない。
規制対象ユーザは、システムのバリデーションと安全な運用のために完全な文書にアクセス
しなければならず、査察中は例えばサービスプロバイダの助けを借りて、文書を提出できな
ければならない。
8.[3.3章] 用語集で言及されているにもかかわらず、既製ソフトウエア(COTS:commercial
off-the-shelf product)は適切に定義されていないし、あまりにも広い意味で簡単に理解
されているかもしれない。重要なCOTS製品は、それが”広い範囲のユーザ“により使用されて
いても、ベンダや規制対象ユーザにより適格性評価がされ、この文書は査察時に利用可能で
なければならない。適格性評価(Qualification)、バリデーション(Validation)、
(例:『クラウド』)のようなシステムの安全な運用に関する用語と期待は、明確にしな
ければならない。
9.[4.1章]バリデーション(と適格性評価)の言葉の意味は明確にされる必要がある。両方の活動は、
ユーザ要求仕様書(URS)または類似のものに記載された通りの必須の指定された機能の検証
から成ることが重要視されなければならない。
10. [4.1章] リスクベースのアプローチに従い、システムの適格性評価とバリデーションは、
システムの重要な、GMPの判断をするために使用される部分、製品の品質とデータ・インテ
グリティを保証する部分、特別に設計されたりカスタマイズされたりした部分を特に確認
しなければならない。
11. [4.4章] 何が「ユーザ要件は、ライフサイクルを通してトレースできなければならない」
という文は、十分に明らかではない。全ての実装されたり要求されたGMPの自動化された
重要な機能が述べられ規制対象ユーザが信頼しているユーザ要求仕様や類似のものは、
規制対象ユーザ/ベンダのどちらに実施されたかに関わらず、システムのいかなる適格性
評価やバリデーションの強固な基盤でなければならない。ユーザ要求仕様は、ライフサイ
クルを通じて更新され実装されたシステムと同調し、ユーザ要求、基礎となる機能仕様、
テストケースとのトレーサビリティが文書化されていなければならない。
12. [4.5章] 今日のソフトウエア開発は、非常にしばしばアジャイル開発プロセスに従って
いることが認められ、対処されなければならない。また、従来の文書を構成しない、それら
の合格基準と対応する文書は明確にされるべきである。
13.[6章] ガイドラインには、重要なデータと重要なシステムの分類が含まれなければならない。
★補足★2011年版の6章(正確性チェック)では、チェックの対象となる重要なデータや
リスク管理をすべきシステムの判断が明確になっていないため、そこを改善しようとして
いると思われます。
14. [7.1章] システム、ネットワークとインフラは、GMPプロセスとデータ・インテグリティ
を保護しなければならない。データ・インテグリティの意図的・非意図的な喪失からデータ
を保護するために必要な物理的・電子的な方法の実例が含まれるべきである。
15. [7.2章] バックアップからシステムデータの(そして、特に簡単に再現されないならば、
システムそのもの)リストアできる能力のテストは極めて重要であるが、この能力について
要求されている定期的なチェックは、バックアップやリストア手順に変更がなかった場合は、
必要とみなされない。揮発性媒体への長期のバックアップ(またはアーカイブ)は、
バリデートされた手順(例:加速試験を通じて)に基づかなければならない。この場合、
テストはバックアップがまだ読めるかを重視するのではなく、定められた期間で読めるかの
バリデートを重視すべきである。
16. [7.2章] バックアップへの重要な期待が見当たらない。例:バックアップで何がカバー
されるか(データのみか、データとアプリケーションか)、どんなタイプのバックアップが
されるか(増分か、一式か)、バックアップがどれくらいの頻度でなされるか(すべてのタイプ)、
バックアップがどれくらい保持されるか、どのメディアがバックアップのために使われるか、
そして、バックアップがどこで保持されるか(物理的隔離)
17. [8章]8章には、完全な監査証跡を含むデータが、電子的な形式で得られる期待を含めるべき
である。データを印刷する要件が再考されるかもしれない。
★補足★2011年版の8章(印刷物)は、電子的に保管されたデータを印刷できることを要求して
いますが、電子的に提出できることは要求されていません。
18.[9章] ユーザ、データ、設定が手動で変えられるGMPの重要なシステム上で、全ての手動の
操作を自動的に記録する監査証跡機能は必須であり、リスクアセスメントに基づいて検討
されるべきでない。監査証跡機能のないシステムで電子データの処理、取込、保存または
転送は許容できない。この分野の全ての猶予期間は既に期限切れになっている。
★補足★2011年版の9章(監査証跡)では、監査証跡はリスクアセスメントに基づいて検討
されるべきとされています。
19. [9章]監査証跡は変更を行ったユーザを確実に特定できなければならない。何が変更された
か一部始終が提供できなければならない。即ち、新しい値と全ての古い値は明確に目に見え、
変更がなされた全ての日付と時間を含み、空欄に値が入力された場合もしくは入力値が
完全に明らかな場合以外は、全ての変更は理由またはなぜ変更がなされたかの論理的根拠の
入力を促すべきである。
20.[9章] 監査証跡データを編集したり、システムを操作している通常のユーザや特権的ユーザ
により監査証跡機能を無効化できたりしてはならない。もし無効化できるのであれば、
GMPの製造またはシステムの日常的な作業に関係していないシステム管理者のみアクセ
ス可能であるべきである。(『職務の分離』参照)
21.[9章] 監査証跡レビュの概念と目的の記述が不十分である。レビュのプロセスは、システム
への手動の変更の完全性のレビュ(例えば、変更の理由の確認や、普通でない日時に、
普通でないユーザによって変更がなされたかどうか)に重点を置くべきである。
22. [9章] 監査証跡のレビュの許容可能な頻度に関するガイドラインが提供されなければなら
ない。例えば無菌充填に関する差圧の警報を出すBMSシステムの警報の設定のような重要な
パラメータの監査証跡について、監査証跡のレビュは、リスクベースドアプローチに従って
バッチリリースの一部として実施すべきである。
23. [9章] 監査証跡機能は、事象の完全で正確な状況を記録するために、十分詳細かつ実際の
時間と共に入力データを保存しなければならない。例えばシステムが、エラーメッセージを
出して、入力されたデータの不一致を規定されたユーザに通知し、その後ユーザが入力値
を変更し通知が消える場合、全てのイベントは記録されなければならない。
24.[9章] 多くのシステムが膨大な量のアラームとイベントのデータを生み出し、さらに、
監査証跡の記録でしばしばごちゃごちゃになることに対応しなければならない。アラームと
イベントが自身のログ、承認、レビュを必要とする場合、システムの手動の操作の監査証跡
のレビュと混同されてはならない。そのため、最低でも、これらはソートできなければ
ならない。
25.[11章] 構成設定のレビュの概念が追加されなければならない。システムの既知の変更回数
(アップグレードの履歴)をのはじまりをとらえる代わりに、ハードウエアとソフトウエア
の経時的な基準値の比較に基づくべきである。これは、全ての変更の説明と再適格性評価/
再バリデーションの必要性の評価を含むべきである。
26. [12.1章] 現在の12.1章は、システムへのアクセスを許可された個人に制限することだけに
重点を置いているが、その他にも重要なテーマがある。ISO 27001に従って、ITセキュリティ
に関するセクションは、システムとデータの秘密性、完全性、利用可能性の視点も含むべき
である。
27. [12.1章] 現在の12.1章は、「コンピュータ化システムのアクセスを許可された個人に制限
するために物理的・論理的な管理がととのっていなければいけない」と言っている。
しかし、もっと具体的で、例えば、多元的な認証、ファイアウォール、プラットホームの
管理、セキュリティパッチ、ウイルス・スキャン、侵入の検知/防止のようないくつかの
管理が必要である。
28. [12.1章] 重要なシステムの認証は、規定されたユーザを高い確実性で識別すべきである。
したがって、落として誰かに見つけられることもありうる『パスカード』だけによる認証
は十分でないかもしれない。
29. [12.1章] システムのアクセスの割り当てに関する2つの重要な期待、即ち、システムを
日常的に使用するユーザは管理者権限を持たない『職務の分離』と、業務の機能で必要な
もの以上のアクセス権を持たないという『最小の特権の原則』はあちこちに追加されるべき
である。
30. [12.3章] 現在の12.3章は、「アクセス権限の付与、変更および取消は記録されるべきで
ある」と言っている。しかし、誰がシステムへのアクセス権を持っているかを単に記録
する以上のことが必要である。忘れられたアクセス権や、好ましくないアクセス権が確実
に取り除かれるためにシステムへのアクセス権や役割は、反復したレビュの対象とすべき
である。
31. [17章] 7.2章で述べた通り、アーカイブされたデータのアクセス可能性、可読性、完全性
についてアーカイブされたデータを後でチェックしても十分ではない。(これらが維持
されていないとわかっても遅すぎる)そのかわりにアーカイブは、バリデートされた
プロセスに頼るべきである。使われる記憶媒体に応じて、一定期間後に媒体が読めること
をバリデートすることが必要かもしれない。
32. [新]産業界では既に実装している人工知能(AI)と機械学習(ML)モデルを、重要なGMP
のアプリケーションに使用することについての法的規制上のガイダンスと期待値が緊急
で必要である。最大の焦点は、モデルの選択、訓練、最適化のプロセスよりも、これらの
モデルをテストするために使用されるデータの妥当性、適切性、完全性と、それらの
テストから得られる結果(測定基準)が最大の焦点となるべきである。
33. [新]このコンセプトペーパーが起草され、EMA GMP/GDP査察官のワーキンググループと
GMDP調和に関するPIC/S小委員会の承認の準備が出来た後、FDAは
Computer Software Assurance for Production and Quality System Software (CSA) ガイダンス
のドラフトをリリースした。このガイダンス及び全ての関連事項はGMP Annex11の
法規制上の関連性の面で検討されるだろう。
〇2.考察
現在のAnnex11は対象とするいくつかの分野で十分なアドバイスを与えていない。また、GMPに
とって重要性を増してきているその他の分野を全く対象としていない。改訂される文書は、
ガイダンスを拡大し、既存のバージョンのリリース以降に躍進を遂げている新しい技術の活用を
受け入れるだろう。
可能なら、改訂文書は、重要なGMPのアプリケーションにAI/MLのアルゴリズムを使用すること
を受け入れるガイドラインを含むだろう。これは、製薬業界の既存の規制ガイダンスでカバー
されておらず、製薬会社が既にアルゴリズムを実装しているために、非常に必要とされている
分野である。
〇3.推奨
EMA GMP/GDP査察官のワーキンググループとGMDP調和に関するPIC/S小委員会は、共同で、
Annex11(コンピュータ化システム)の現バージョンがこのコンセプトペーパーにより改訂される
ことを推奨する。
〇4.提案されたタイムテーブル
コンセプトペーパーのドラフトの準備:2021年10月~
EMA GMP/GDP査察官のワーキンググループによるコンセプトペーパーのドラフトの承認:2022年10月
コンセプトペーパードラフトのコメント募集のためのリリース:2022年10月
コンセプトペーパーのコメントの締切:2022年12月(※実際には2023年1月16日になっています)
EMA GMP/GDP査察官のワーキンググループとPIC/S委員会のドラフトグループの検討:2023年3月~
ガイドラインドラフトのコメント募集のためのリリース: 2024年12月
ガイドラインドラフトのコメントの締切:2025年3月
EMA GMP/GDP査察官のワーキンググループによる適用:2026年3月
欧州共同体による公布:2026年6月
GMDP調和に関するPIC/S小委員会による適用:2026年9月
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まとめ
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いかがでしたでしょうか。
これまで、Annex11の漠然とした記述のせいで、
・QualificationとValidationの違いは何か?
・監査証跡のレビュはどれくらいの頻度で最低限何をしたらいいのか?
等、いろいろ頭を悩ませてきましたが、これは万国共通の悩みだったことがわかり安心しました。
コンセプトペーパーの通りにAnnex11の改訂が進んだ場合、製薬業界のコンピュータ化システムは、
アジャイル開発が可能になり、細かい機能単位に柔軟に設計→テスト→実装を行えるようになる
かもしれません。
また、バリデーションの観点で実装が難しいとあきらめてきた人工知能(AI)や機械学習(ML)
の活用が可能になるかもしれません。
そして、悩ましかったデータのバックアップとリストアの定期的なチェックは、そのプロセスに
変更がなければ不要という合理的な方向に向かうかもしれません。
柔軟な部分が生じる反面、これまでリスクに応じて対応すればよかった電子の監査証跡の対応が
必須になる可能性が高いです。また、昨今利用が拡大しているクラウドサービスの、わかりづらい
サービス内容を文書化する必要が生じる可能性があります。
2026年9月まで時間はありますが、場合によっては大きなインパクトがあるため、今後の動向には
十分注意が必要かと思います。
2022.12.15
【最近のウォーニングレター】ASTROM通信<256号>
師走のあわただしい時期になりましたが、いかがお過ごしでいらっしゃいますか?
2022年11月16日から、EU-PIC/S GMP Annex11の改訂にむけて、コンセプトペーパーのパブリック
コメントの募集が始まりました。
参照先:https://picscheme.org/docview/4967
今のAnnex11は2011年に発出されましたが、昨今の新しい技術の登場に対応していく必要が出て
きているため、2026年の適用にむけて、改訂が進められていくようです。
クラウド、AI(人口知能)、 ML(機械学習)などに対応した内容になるようで、非常に興味深いです。
さて今回もアメリカ食品医薬品局(FDA)がアメリカ国外の製薬会社向けに出したウォーニングレター
2件を見ていきたいと思います。
FDAがどのような点を問題視して指摘しているかをご確認いただければ幸いです。
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最近のウォーニングレターの概要
注:文中のXXはウォーニングレターでマスキングされている文言及び具体的な社名・品名等です。
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■Warning Letter 320-22-25■
2022年3月22日~4月4日のインドの製造所の査察でみつかった原薬製造の重大なCGMP違反について
発した2022年9月27日付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。
●指摘1
中間体及び原薬の製造に使用する装置の洗浄及びそのリリースに関する適切な文書化された手順の
制定の不履行
<指摘1詳細>
貴社は貴社の原薬の中に不純物XXを検出した後、既存の洗浄手順と業務が、医薬品XXを製造する
過程で発生する不純物XX及びXXを含む遺伝毒性不純物を除去または削減できるのかを確認する目的
で複数のリスクアセスメントを実施した。また貴社は既存の洗浄手順が中間体と原薬の交叉汚染を
削減することを評価するために、非専用製造装置や回収溶媒内の残留物を評価するリスクアセス
メントを実施した。貴社のリスクアセスメントは、既存の装置の洗浄手順が、装置の各部品から
残留原薬とXXを許容できるレベルまで除去するのに効果的であることを裏付けるデータが不足して
いた。
例えば、原薬XXの製造後の建物XXとXX内の非専用装置で起きる可能性のある交叉汚染を評価する
ための貴社の仮説検定プロトコルと、装置のタイプA(製品管の切替)の洗浄は、次の点で不十分で
ある:
・実施された2つのプロトコルは、2019年から2021年に、原薬XXの製造後に非専用装置で製造された
原薬XXのXXロットを確認した。XXの4ロットで、XX以下という限界値付近で計測可能なレベルのXX
が確認された。これらの結果について、更なる調査は実施されなかった。
・原薬XXの製造から切り替えた後に非専用装置で製造された原薬XX、XXまたはXXの最初のロットの
特定を裏付ける文書が不足していた。
・プロトコルは、溶媒を回収するために使用される非専用装置を含む非直接の汚染源からの交叉
汚染に対処していない。
制定された限界値付近の遺伝毒性不純物が確認されたことは、逸脱が起こりうることを示唆して
いる。医薬品XXの製造に使用される、非専用装置で製造された全ての中間体及び原薬は、それらが
遺伝毒性不純物に許容できないレベルで汚染されていないことを保証するために、バリデートされた
サンプリングと分析試験の対象にされるべきである。
貴社は、原薬XXの製造からの切替後に原薬XX内での遺伝毒性不純物の検出・計量に関し、矛盾する
データを提出した。例えば、原薬XXの製造からの切替後に、遺伝毒性の残留物の累積したキャリー
オーバーの可能性の調査中に試験された原薬XXのXXの全てのロットの中に、定量化可能なレベルの
不純物XX、XX、XXがあることを報告した。しかし、貴社の品質のリスクアセスメントでは、同じ
製品のロット内で不純物XXは検出されなかったと述べた。貴社は、適切な科学的な正当化の理由も
なく、好ましくない分析結果を無視した。貴社は、非専用装置で製造された他の中間体や原薬に
これらの遺伝毒性不純物のキャリーオーバーのリスクはないと結論づけた。
貴社は回答の中で、原薬XX、XXの製造を専用装置に制限し、専用の溶媒回収ユニットを使用すると
約束した。しかし貴社は、特定の製品の製造キャンペーン中にだけ専用の溶媒回収タンクを使用
すると述べた。溶媒回収タンクが特定の製品専用ではないために交叉汚染のリスクは残るので、
貴社は非専用の溶媒回収装置から交叉汚染が発生しないことを保証するために、適切にリスクを
評価して手順をバリデートする必要がある。
この文書への回答の中で以下の情報を提供せよ:
・交叉汚染の危険性の範囲を評価するための、洗浄の効果の包括的で独立した回顧的なアセスメント
残留物、不適切に洗浄された可能性のある他の製造装置の特定と、交叉汚染された製品が出荷の
ためにリリースされた可能性があるかどうかのアセスメントを含めよ。アセスメントは、洗浄の
手順と業務の不備を特定し、原薬や最終製品を含む、複数製品を製造するために使用されている
製造装置を網羅する必要がある。
・貴社の洗浄プログラムの回顧的なアセスメントに基づく、洗浄プロセスと手順の適切な改善を
含む是正処置・予防処置の計画と、完了のタイムライン
装置の洗浄のライフサイクル管理のプロセスにおける脆弱性のサマリを提出せよ。洗浄効果の
向上、全ての製品及び装置の適切な洗浄実施の継続的な検証の改善、その他全ての必要な改善を
含む、貴社の洗浄プログラムの改善について述べよ。
・貴社の医薬品製造作業におけるワーストケースとして特定された条件を取り入れることに特に
重点を置いた洗浄バリデーションプログラムへの適切な改善
改善には、これに限定されないが、以下の全てのワーストケースの特定と評価を含むべきである:
〇より高い毒性を持つ医薬品
〇より高い有効性を持つ医薬品
〇洗浄溶液の中でより低い溶解度の医薬品
〇洗浄を難しくする特性を持った医薬品
〇洗浄を最も難しくする拭き取り場所
〇洗浄前の最大ホールドタイム
〇さらに、新しい製造装置や新しい製品を導入する前に、貴社の変更管理システムでとられる
べき手順を述べよ。
〇製品、工程、装置の洗浄手順の検証とバリデーションのための適切なプログラムが実施されて
いることを保証する最新の標準操作手順(SOP)のサマリ
●指摘2
中間体及び原薬の品質特性にばらつきをもたらす可能性のある工程ステップの性能の進捗をモニタ
し管理するための文書化された手順の制定の不履行
<指摘2詳細>
原薬XX、XXの製造のためのXX工程で、不規則な頻度でXXの定量化可能なレベルで不純物XXが発生した。
例えば、貴社は、XX工程で製造された原薬XXのXXとXXのXX内の不純物を検出して定量化するために
サンプリングをして分析試験を実施した。XX(XXppmの制限に対してXXppm)とXX(XXppm以下の制限に対し
てXXppm)であるロットでXXの定量化可能なレベルの不純物XXを得た。
貴社は、不純物XXを含む遺伝毒性不純物を理論的に減らす工程ステップの効果を評価するために、一連
の卓上試験と、商用レベルの検証も実施した。これらの検証では、全ての不純物は効果的に除去され、
不純物XX、XXの工程内のモニタリングの追加の必要性はないと結論づけた。これは原薬の商用ロット
から得た前述の分析結果にもかかわらずである。貴社は、製造工程がこの不純物を効果的に除去できる
と宣言したが、XXとXXのいくつかの一部のロットで不純物XXの定量化可能なレベルの出現について
更なる調査を実施しなかった。
貴社の卓上試験のデータは貴社の不純物除去が効果的であることを示唆しているが、貴社の商用の
製造データは、一貫したレベルで全ての遺伝毒性不純物を除去していないことを示している。原薬の
中の不純物のレベルに見られるばらつきは、特別な原因によるばらつきの可能性があるため、貴社は
次のいずれかを実施する必要がある:
・原薬内で不純物XXが許容限度のXX%未満であることを示すための、不純物XXまたはその前駆体のXX
に関する試験の追加
・または、原薬の規格への不純物XXのXXに関する試験の追加
改善されたプロセスの確認は、不純物XXに関するロットのリリース試験のようなロットのリリースを
裏付ける追加データを収集することによって実施されるべきである。
我々は、貴社がプロセスの性能分析を実施し、現在製造されている製品について包括的なリスクベース
のレビュを実施すると約束したと認識している。
この文書への回答の中で以下の情報を提供せよ:
・是正処置・予防処置と、そのそれらの完了予定日を含む、製造された中間体及び原薬内の遺伝毒性
不純物の構成、モニタリング、管理を含む調査
・原薬XX、XXの製造中に遺伝毒性不純物の低減または除去に関する工程性能分析から得られたデータと
結論
分析では、特別な原因によるばらつきと、医薬品の品質を保証するためにどのような管理を実施する
かについても考察すべきである。
・現在製造されている全ての製品に関するリスクベースのレビュの手順
●指摘3
全ての重大な逸脱の調査の不履行
<指摘3詳細>
貴社は制限値の逸脱を含む全ての重大な逸脱を確認し調査することを怠った。例えば、貴社はXXに
関する洗浄の確認プロトコルの実施中にXXppm未満という制限に対しXXppmのOOS (Out-of-Specification)
の結果を得た。最終報告には、ロットXXの製造とタイプBの洗浄の完了後にXXから採取された拭き取り
サンプルのOOSを記録した。最終報告の10章は、OOSの結果にもかかわらず、逸脱もOOSの結果も見つ
からなかったと述べている。報告は、不適のデータとその後のレビュとこのレポートの承認があった
にもかかわらず、タイプBの洗浄は装置から化学的な残留物は効果的に除去されていることがバリデート
されたと結論づけている。
この文書への回答の中で以下の情報を提供せよ:
・貴社の品質部門(QU)が効果的に機能するために権限とリソースを与えられていることを保証するため
の包括的なアセスメントと改善計画
アセスメントには、これに限定されないが以下のことを含めるべきである:
○貴社で使用されている手順が安定していて適切かどうかの判断
○適切な手順の遵守を評価するための、貴社の作業全体のQUの監督に関する規定
○QUによるロットの処遇の判定前の、各ロット及びそれに関連する情報の完全で最終的なレビュ
○調査の監督と承認と、全ての製品の同一性、濃度、品質、純度を保証するための、QUのその他の
業務の遂行
・不適合な結果の全ての案件を特定しそれらが適切に対処されていることを保証するために、使用期限
内の原薬の製造または使用期限内のリリースされた原料に関連した工程の適格性またはバリデートの
ために使用された全てのデータの回顧的なレビュ
●医薬品の製造停止
貴社がアメリカ市場向け医薬品の製造を停止することを約束したと認識している。この文書への回答
の中で、貴社が今後この施設で医薬品の製造を再開するつもりかを明確にせよ。
もしアメリカ市場向け医薬品の製造を再開するつもりなら、作業を再開する前に通知せよ。
●結論
この文書で挙げた逸脱は、貴社の施設に存在する逸脱の包括的なリストではない。貴社には、逸脱を
調査し、原因を判断し、再発やその他の逸脱の発生を防止する責任がある。
全ての逸脱を速やかに是正せよ。全ての逸脱に完全に対応がされ、我々が貴社のCGMPの遵守を確認
するまで、FDAは貴社の医薬品製造業者としての新しい申請やリストの補完の承認を保留するだろう。
我々は、貴社が全ての逸脱に対する是正処置を完了したことを確認するために再査察を行うかもしれ
ない。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
■Warning Letter 320-23-02■
2022年4月18日~4月19日のメキシコの製造所の査察でみつかった医薬品製造の重大なCGMP違反に
ついて発した2022年10月5日付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。
●指摘1
貴社は、公式な、またはその他の制定された要求を超えて医薬品の安全性、同一性、濃度、品質、
純度を変える可能性のある誤動作や汚染を防ぐために、適切な間隔で装置や器具を洗浄、メンテ
ナンス、必要に応じて消毒/殺菌することを怠った。 (21 CFR 211.67(a))
<指摘1詳細>
貴社は、XXやXXのようなOTC医薬品を製造している。また貴社は、商用の化学溶液XXをOTC医薬品と
同じ製造装置で製造している。洗浄時の製造装置からの残留物の不十分な除去は、その後に非専用
装置で製造された医薬品の汚染につながる可能性がある。さらに貴社は、文書化された洗浄手順や
医薬品の製造に使用されているタンクXXに関する装置使用ログを保持していなかった。
交叉汚染のリスクにより、商用の化学溶液XXやその他の非医薬品を製造するのに使用しているのと
同じ装置を使って医薬品の製造を続けるのは、CGMP上受け入れられない。
この文書に応えて、貴社の施設内の非医薬品と共有している装置での医薬品の製造を中止せよ。
貴社が貴社の施設で医薬品と非医薬品の製造を再開するつもりなら、医薬品製造と工業用製品製造
のために専用の製造装置を保持するエリアをいかに分離するかを示す計画を提出せよ。
さらに、非医薬品と共有する装置で以前製造された全ての医薬品のリスク評価を実施せよ。各製品
について、共有装置による潜在的な汚染のリスクを評価し、まだ販売中の製品の品質と患者の安全
のリスクに対応するための、回収や市場からの撤退の可能性を含む計画を提出せよ。
●指摘2
貴社の品質管理部門は、製造された医薬品がCGMPに準拠し、同一性、濃度、品質、純度に関して
制定された規格を満たすことを保証するために、その責任を果たすことを怠った。(21 CFR 211.22)
<指摘2詳細>
貴社の品質部門(QU)は貴社の医薬品の製造に関して適切な監視を行わなかった。例えば、貴社のQU
は以下のことについて保証するのを怠った:
・ベンダの適格性評価、ロットのリリース、保存検体、調査、苦情、CGMPの訓練の取り扱いを含む、
QUの役割と責任について述べた適切な手順 (21 CFR 211.22(a)と(d))
・入荷した成分の同一性、純度、濃度、その他の適切な品質特性に関する適切な試験
(21 CFR 211.84(d)(1)と(2))
・安定性プログラムの遵守 (21 CFR 211.166(a))
・ロットの記録の適切な保持 (21 CFR 211.188)
貴社の品質システムは不十分である。CGMPの規制要件21 CFR part 210, 211を満たすために
品質システムとリスクマネジメントのアプローチを実装する助けとして、
FDAのガイダンス文書Quality Systems Approach to Pharmaceutical CGMP Regulationsを見よ。
この文書への回答の中で以下の情報を提供せよ:
・貴社のQUが効果的に機能するために権限とリソースを与えられていることを保証するための
包括的なアセスメントと改善計画
アセスメントには、これに限定されないが以下のことを含めるべきである:
○貴社で使用されている手順が安定していて適切かどうかの判断
○適切な手順の遵守を評価するための、貴社の作業全体のQUの監督に関する規定
○QUによるロットの処遇の判定前の、各ロット及びそれに関連する情報の完全で最終的なレビュ
○調査の監督と承認と、全ての製品の同一性、濃度、品質、純度を保証するための、QUのその他
の業務の遂行
●医薬品の製造停止
貴社がこの施設での医薬品の製造を停止し、医薬品製造業者として貴社の施設の登録を抹消する
ことを約束したと認識している。もしアメリカ市場向け医薬品の製造を再開するつもりなら、作業
を再開する前に通知せよ。
●CGMPコンサルタントの推奨
貴社で確認した違反の性質に基づき、貴社は、CGMPの要件を満たすように貴社を支援するために
21 CFR 211.34に記載されている適格性のあるコンサルタントを雇うべきである。貴社がFDAと共に
貴社のコンプライアンス状態の解決を達成しようとする前に、適格性のあるコンサルタントは、
CGMPの遵守について貴社の製造作業全体の包括的な監査を実施し、貴社の是正処置・予防処置の
完了と効果も評価するべきである。
貴社のコンサルタントの使用は、CGMPを遵守するための貴社の義務を軽減するものではない。貴社
の経営陣には、継続的なCGMP遵守を保証するために、全ての不備とシステムの欠陥を解決する責任
が残る。
●結論
この文書で挙げた違反は、貴社の施設に存在する違反の包括的なリストではない。貴社には、違反
を調査し、原因を判断し、再発やその他の違反の発生を防止する責任がある。
FDAは2022年8月12日に輸入警告措置66-40をとった。
全ての違反を速やかに是正せよ。全ての違反に完全に対応がされ、我々が貴社のCGMPの遵守を確認
するまで、FDAは貴社の医薬品製造業者としての新しい申請やリストの補完の承認を保留するだろう。
我々は、貴社が全ての違反に対する是正処置を完了したことを確認するために再査察を行うかもしれ
ない。
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まとめ
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いかがでしたでしょうか。
今回は2件とも、医薬品と非医薬品の製造で共用されている非専用装置の交叉汚染対策に関する
指摘が含まれていました。
医薬品・非医薬品の製造で装置を共用することはあまりないかもしれませんが、複数の医薬品で
装置を共用することはよくある話かと思います。交叉汚染を防ぐ意味で、洗浄バリデーションの
重要性をあらためて感じました。
ところで、最近、FDAが海外の製造所に出すウォーニングレターの数が増えつつあり、少しずつ
コロナ以前の状態に戻りつつあるように思います。
来年こそコロナが終息することを願うばかりです。
皆様、良いお年をお迎えください。
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