ASTROM通信バックナンバー

2013.08.15

【EU GMP Annex16ドラフト版の考察】ASTROM通信<32号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

連日、とんでもない猛暑が続いていますが、お変わりなくお過ごしでいらっしゃいますか?

さて本日は、2013年7月10日に発表されたEU GMP Annex16(QPによる証明及びバッチリリ
ース)のドラフトについて取り上げたいと思います。


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EU GMP Annex16の位置づけ
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先ず注意しなければならいのは、EU GMP Annex16は、PIC/S GMP Annex16には採用されてい
ない条文であるということです。
というのも、EU GMPとPIC/S GMPでは、バッチリリースに関わる人物に課せられた責任が異
なるためです。
EU GMPでは、バッチリリースに関わる人物はQP(Qualified Person:資格要件を満たす
人)であり、QPは、薬剤師、生物学者、あるいは、数年間、製薬の製造作業を行った経験
があり、試験に合格した人間でなければならないと定めています。
それに対してPIC/S GMPでは、EU GMPほどの資格要件は定めず、AP(Authorized Person:
権限を与えられた人)としているのです。

しかし、EU GMPもPIC/S GMPも、GMPについての基本的な考え方は同じです。
この機会に、EU GMPのバッチリリースに関する条文の変更を把握しておくのもよいかと思い
ます。


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ドラフト版EU GMP Annex16のポイント
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今回のドラフト版では、次のことが明記されています。
・認可された医薬品の安全性、品質、効能に関する最終的な責任は、医薬品販売承認取得者
 にあること
・しかしながら、特定のバッチが、販売承認・EU GMPまたはそれと同等の基準に従って製造
 されたことを保証する責任、また、EU加盟国及び行き先国の現行法に従っていることを
 保証する責任は、バッチが出荷に適していることを証明したQPにあること

また、他のAnnexの改訂と同様に、本ドラフト版にも品質リスクマネジメントの考え方が取り
入れられています。
具体的には、QPが第三者(例えば監査)のGMP評価を利用する場合は、品質リスクマネジメ
ントの考え方に従って、外部委託活動が製品品質に与える影響を考慮しなければいけないと
書かれています。

この他、予想外・計画外の偏差の取り扱いについてのQPの役割が明確にされています。
予想外・計画外の偏差が発生しても、適切なリスク評価を行って製品の品質、安全性、効能
に悪影響を及ぼさないという結論に達した場合、QPはそのバッチの保証をしても差支えな
いと書かれています。

→今回のドラフト版でQPの責任が明記されたことにより、EUにおいてQPがいかに大きな
 権限を持ち、同時に、いかに大きな責任を負っているかがわかります。

出典:http://www.gmp-compliance.org/enews_03783_EU-GMP%3A%20New%20Annex%2016%20released.html


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ドラフト版EU GMP Annex16におけるコンピュータ化システムへの期待
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「6章 バッチのリリース」に、”6.2 出荷に適すると証明されていないバッチがリリース
されないことを保証するため、隔離保管やラベルの使用による物理的手段、または、バリデ
ートされたコンピュータ化システムの使用による保護手段がとられるべきである”という
条文があります。

この部分は、現Annex16にはない、今回新たに追加された記述です。

たとえQPによる出荷判定が正確に行われても、出荷判定前のバッチの出荷を防ぐ手段が
なければ、片手落ちになるため、コンピュータ化システムの使用を推奨しています。


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まとめ
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先日参加したイーコンプライアンス社主催のシステム信頼性保証研究会の中で、村山浩一
先生が、自動倉庫におけるバッチ番号の管理は、患者の生命に影響を与える非常に重要な
機能であり、リスクが高いとおっしゃっていました。

なるほど、自動倉庫システムは、バッチ番号が正しく管理できていれば、誤ったバッチの
出荷防止になるため、ドラフト版EU GMP Annex16の6.2に書かれている保護手段として非常
に有効ですが、バッチ番号の管理がうまくいかないと、逆にリスクの発生源となってしまう
ため、バリデーションが非常に重要となってくると思われます。


最後までお読み頂き、ありがとうございました。
☆次回は、8/30(金)に配信させていただきます。


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