ASTROM通信バックナンバー

2015.07.15

【ICH Q7(原薬GMPガイドライン)のQ&A集】ASTROM通信<78号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

台風の進路が気がかりですが、いかがお過ごしですか?

2015年6月10日、ICH(日米EU医薬品規制調和国際会議)より、ICH Q7(原薬GMPガイドライン)
のQ&A集が発表されました。
このQ&A集は、現在ステップ4の段階(運営委員会の規制当局代表者によって最終的に合意、採択)
にあり、あとは、各地域・国の規制当局がそれぞれの手続きにしたがって通知され、適用される
だけの状態にあります。

ICH Q7自体は、2000年11月に最終合意に達し、日本では、2001年11月2日に通知されています。
しかし、ICH Q7を世界的に導入するなかで、解釈により生じる不確かさを明確化してほしいという
リクエストが生じました。そこで、このQ&A集は、それらのリクエストに対応することを意図して
作成されています。

全部で55個のQ&Aが記載されていますが、その中から、いくつかピックアップしてみました。
ピックアップの基準は特になく、個人的になるほどと思ったようなものを載せています。
今回ピックアップした21個のQ&A以外にも興味深い内容がたくさんありますので、ご興味のある
方は是非原文もご覧ください。

ICH Q7は原薬に関するものですが、原薬製造業者様以外の方でも、原薬製造業者様の監査をする
際などの参考にしていただければと思います。

●ICH Q7 Q&A原文
http://www.ich.org/fileadmin/Public_Web_Site/ICH_Products/Guidelines/Quality/Q7/ICH_Q7-IWG_QA_v5_0_14Apr2015_FINAL_for_publication_17June2015.pdf


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Q&A集の具体的な中身について
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Q&Aの回答部分のうち、ICH Q7の参照箇所や、類似記述、例示等につきましては、一部省略して
ありますので、ご了承ください。

1章 序文-適用範囲
1.1 Q.ICH Q7に基づくGMPを原薬出発物質の前の製造段階から適用すべきか?
   A.原薬出発物質の導入の前段階からICH Q7を適用しないが、原薬出発物質の製造に適した
    適切な管理レベルが適用されることを期待している。

1.2 Q.ICH Q7では原薬に物質を加える製造にもICH Q7を適用するか?
     A.混合物が使用される地域や国で原薬として分類されている場合は、ICH Q7はこれらの混合
       物の製造に適用されるべきである。

2章 品質マネージメント
2.1 Q.製造から独立した品質部門とはどういう意味か?
     A.”独立した“という言葉の意図は、組織において、いかなる利害の対立も防止し、品質
       関連の決定において公平な意思決定を保証することにある。バッチリリースの決定など、
      最終的な意思決定に責任を負う品質部門の人間は、生産活動に関する責任を負うべきで
       ない。
2.2 Q.ICH Q7では品質部門が原薬のリリーステストの実施をすることを求めているか?
   A.品質部門が、試験や結果の管理も含め、原薬のリリースに関する責任を負うが、ICH Q7
       では誰がテストを実施するかについて特に規定していない。

2.3 Q.品質部門以外の部署が原料、中間体のリリースの責任を負うことはできるか?
   A.できる。但し、品質部門は原料、中間体、包装、表示材料のリリース/リリース拒絶を
       するシステム構築の責任を負っていて、この責任を委譲することはできない。
       システムの管理と全体的な責任が品質部門に残るということであれば、“他の部門”が
       原料、中間体のリリースをしてもよい。

2.4 Q.ICH Q7は品質部門によるサンプリングを求めているか?
   A.求めていない。ICH Q7は、誰がサンプリングを行うべきか特に記述していない。しかし、
       品質部門は、サンプリング計画と手順を照査し承認する責任を負っている。サンプリング
       は適切に教育訓練を受けた従業員によって実施され、適切に文書化されなければならない。

2.5 Q.製品の品質の照査の頻度はどれくらいにすべきか?
   A.製品の品質照査は、一般的に年1回とされている。照査の時間枠は、製造やキャンペーン
       の継続期間に基づき、適切な根拠により、調整可能である。期間中に製造がなかった場合
       も品質照査は、部署により実施すべきであり、安定性、返品、苦情、回収の照査も含むべき
       である。
       例えば、製品品質照査は、製品のキャンペーン生産の継続期間により、おおよそ12ヶ月を
       包含すればいい。

2.6 Q.検査の結果の製品の品質照査には傾向分析を含むべきか?
     A.傾向分析は、通常、製品の品質照査における工程の恒常性の確認において、重要な要素で
      ある。

3章 従業員
3.1 Q.ICH Q7 3.12章の“教育訓練は定期的に評価すること”の目的は何か?
     A.“教育訓練は定期的に評価すること”という記述は、従業員が、自身の業務と役割分担に
       おいて、熟達し有能であり続けているかを評価し、もっと頻繁に、追加的に、または、
       新たな教育訓練が必要か、また、反復的教育訓練が最新の状態を保っているかを評価する
       システムのことを言っている。

3.2 Q.ICH Q7は、コンサルタントの利用を求めているか?企業は、職務と(または)責任を
       コンサルタントに委託することはできるか?
    A.ICH Q7は、コンサルタントの利用を求めていない。コンサルタントは委託された職務を
       実行し(または)アドバイスの提供を行うだろう。しかし、原薬の品質に関する最終的な
       責任は委託できない。

6章 文書化及び記録
6.1 Q.ICH Q7 6.13章の“出荷が完全に終了した後少なくとも3年記録を保存する”とあるが、
      “出荷が完全に終了”とはどういう意味か?
   A.リテスト日を設定している原薬について、ICH Q7 6.13章では、製造、管理、出荷に
       関する記録は、原薬のロットの出荷が完全に終了してから少なくとも3年記録を保持する
       こととされていて、それは、原薬製造業者からサプライチェインの次の業者にロットの
       出荷が完了したことと理解されている。
    原薬が、代理店、仲介業者、貿易業者、流通業者、再包装業者及び再表示業者によって
       取引される場合、“出荷が完全に終了”とは、受領した原薬を販売することを言う。
    ICH Q7の意図は、原薬のいかなる問題及び(または)製品の苦情を調査するために、原薬
       が市場に出ている期間、記録を持ち続けることにある。ICH Q7が書かれた当時の業界の
       慣行に基づけば、原薬製造業者がリテスト日を3年以上に設定することを予測してい
       かった。しかし、ICH Q7のこの章の“少なくとも3年”という文言の使用は、市場に原料が
       出回っている全ての期間において記録を保持するという、基本的なGMPの原則と(または)
       地域的な要求と調査させ、記録の保持期間が3年より長い場合もカバーしている。

6.2 Q.バッチ番号の付番システムはシーケンシャル(連続的)でなければいけないか?
   A.いいえ。ICH Q7 6.5章は、バッチの製造記録がユニークなバッチ番号またはID番号を
       持っていなければいけないと言っているだけである。

6.3 Q.バッチの製造記録の発行に誰が責任を負うのか?
   A.発行手順が文書化され、品質部門に承認されている必要があるが、ICH Q7では、バッチ
       の製造記録の発行について誰が責任を負うか明記していない。

7章 原材料等の管理
7.6 Q.原材料の使用期限またはリテスト日を延長することは可能か?また、どれくらい延長する
       かを決定するための容認される手順は何か?
     A.原薬製造業者で使用される原材料の製造及び表示は、ICH Q7の適用外である。
    ICH Q7で定義された使用期限とリテスト日は、原材料に厳格には適用せず、それらは、
       原料の供給者により異なる方法で使用される。
    原薬製造業者は、適切な科学的かつリスクベースの妥当性(例:原材料の属性の理解、
       試験、安定性)に基づいて、ICH Q7 7.5章の再評価を実施したうえで、使用期限や
       リテスト日を過ぎた原材料を使用してもよい。妥当性は、原材料の延長の日付の判断にも
       使用されていい。原材料の使用の時と使用の目的が適切であることを保証するのは原
       製造業者の責任である。

8章 製造及び工程内管理
8.1 Q.同一キャンペーン内で、最初のバッチのために設定した収量が、後のバッチと異なって
       いいか?
   A.よい。製造手順/マスタにて、バッチの異なる収量の幅が規定され、収量の幅の説明が
       あり、妥当性が示されていればよい。例えば、同じ原材料(キャンペーン)のバッチ製造品
       の一連の工程で、最初のバッチは、装置に残留原料があり、最初のバッチは低い収量と
       なり、キャンペーンの後続バッチにおいては、収量が増えることになっていい。

11章 試験室管理
11.2 Q.原薬の試験方法が変わった場合、どの方法が、進行中の安定性試験に使われるべきか?
   A.企業が、どの試験方法を使うかを決め、正当化しなければならない。安定性試験に関する
        全ての試験方法は、使用前にバリデートされ、安定性を示すことが立証されなければ
    ならない。
        安定性試験方法に対するいかなる変更も文書化されなければならない。既存の安定性試験
        に対する変更は、評価されなければならない。

11.3 Q.原薬製造業者は、原薬のリテスト日を延長することが、いつ認められるか?
   A.リテスト日の目的は、原薬がまだ使用に適していることを保証することにある。原薬製造
        業者は、原薬の科学的な長期の安定性試験の結果と、表示の状態に照らして保管されて
        いる特定のバッチの試験に基づいて、そのバッチのリテスト日を延長できる。ある地域
        では、リテスト日の延長について、規制当局の承認が必要となる。
    原薬製造業者が更なるバッチのリテスト日の変更(延期)をしたい場合、変更を指示する
        ために十分安定性試験を実施しなければならない。

12章 バリデーション
12.3 Q.原薬の出発物質の変更には、追加のプロセスバリデーションが必要か?
      A.原薬の出発物質のいかなる変更も、原薬の製造工程における影響や原薬の品質試験結果に
        ついて評価されなければならない。原薬の出発物質の変更が重要とみなされる場合、原薬
        工程の追加的バリデーションを必要とする。大抵の場合は、出発物質の変更について、
        バリデーションが必要となる。

12.4 Q.回顧的バリデーションはまだ認められるか?
   A.回顧的バリデーションは、ICH Q7回顧的バリデーションの概念は、ICH Q7の実施の前に
        確立された工程につき、例外的に認められる。

17章 代理店、仲介業者、貿易業者、流通業者、再包装業者及び再表示業者
17.3 Q.オリジナルの製造業者の情報を含むオリジナルの表示を付け替えることは認められるか?
      A.ICH Q7 20章の定義において、いかなる表示作業も製造とみなされ、適切なGMP管理課で
        実施されなければならない。適切な正当性をもって、再包装業者や再表示業者を含む製造
        業者がオリジナルの表示を付け替えてもよい。新しい表示には、ICH Q7の9.42章、9.43章
        に書かれた情報を含んでいなければならない。流通業者は、追加の表示を加えてもいい
        が、オリジナルの表示を取り除いてはならない。オリジナルの製造業者の情報は、顧客に
        提供されなければならない。サプライチェイン全体のトレーサビリティは保持されなけれ
        ばならない。

17.4 Q.分析証明書(CoA:Certificate of Analysis)のために、オリジナルの製造業者は誰と
        みなされるか?
      A.CoAは、サプライチェイン全体のトレーサビリティを立証するためにオリジナルの製造
        業者を記録しなければならない。
        オリジナルの製造業者とは、最終の精製された原薬/中間体が作られる設備を持つもの
        となる。原薬の更なる物理的工程(乾燥、微粉砕、粉砕、篩過等)は製造ではない。


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まとめ
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今回のICH Q7のQ&A集は、ICH Q7が出てから10 年以上たってから出てきているため、6.1章には、
“ICH Q7が書かれた当時”というような言葉も登場してなかなか面白いです。
ただ、条文の意図が解説されていて、なるほどと思う部分があり、勉強になる内容だと思います。
是非、参考にしていただければと思います。


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インターフェックスジャパンのお礼
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今年のインターフェックスジャパンは3日間ともあいにくの雨となりましたが、多数のメールマガ
ジン読者様に弊社ブースにお立ち寄りいただきました。
直接お会いしてメールマガジンの感想をおうかがいできて、とてもうれしかったです。
どうもありがとうございました。心よりお礼申し上げます。
引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。


最後までお読み頂き、ありがとうございました。
☆次回は、7/31(金)に配信させていただきます。


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