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2017.06.30

【続 MHRA発GMP査察時の不備報告】ASTROM通信<125号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。
今年もあっという間に折り返し地点まできてしまいましたが、皆様いかがお過ごしですか?

さて、今回も、前回に引き続き、
英国医薬品庁(MHRA : Medicines & Healthcare products Regulatory Agency)が2016年に
実施したGMP査察における不備の傾向をまとめたレポートについて取り上げたいと思います。
今回は、ガイドラインのAnnex部分をみていきます。

製剤関連のみの内容ではありますが、EU GMPガイドラインに基づいた不備の具体例が挙げられ
ているので、自社の自己点検等の参考にもできると思います。
最後までお付き合い頂ければ幸いです。

出典
https://www.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/609030/MHRA_GMP_Inspection_Deficiency_Data_Trend_2016.pdf


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英国医薬品庁による2016年実施GMP査察における不備の傾向レポート
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●EU GMPガイドラインAnnex1(無菌医薬品の製造)の不備の例
微生物汚染の増加するリスク及び無菌保証を確実にするのを怠ったことに関する不備
・充填装置の入った袋(例:充填用針)は、繊維が装置/ライン、その後、製品に取り込まれる
 リスクが存在するのに、破られて開放されていた。
・繊維がストッパー、その後、製品に移るリスクが存在するのに、充填ラインに投入される前に、
 最内部のバッグが破損していた。
滅菌後に無菌接続の数が最小化されていることを示す文書化されたエビデンスが不十分であった。
・衣服が触られ着用された後、手の消毒がされていなかった。
・Grade Bゾーンで、作業者が、屋外の服を無菌服の下に来ていた。
・更衣手順は、Grade D及びCエリアに入る時、靴を脱ぐことを作業者に要求していた。
 使用されている足カバーの性質上、クリーンルームの床を歩いた操作者の足から微生物汚染が
 起きることを防ぐことはできないだろう。
・Block Bのメインオフィスで、製造作業者は、靴または靴下の上にかかとのないサンダルをはく
 ことが認められていたことが見て取れる。
・製造エリア内での作業着を着ている間、ベンチは座る前に消毒されていなかった。
・消毒した手袋を着用しGrade Bエリアに入る前に、作業者が手袋の外側を何度か触っているのを
 発見した。
・製造前、作業者が触れたり、コンパウンダー上の化学成分が接触したりする表面のみが消毒され
 が、全ての表面の消毒が望ましい。
・ボトルやバッグをつるすためのフックは、作業者の手で握られ、個々にではなくまとめて消毒されて
 いて適切に清掃されていない。
・消毒用の拭き取り繊維は、全体ではなく中心だけが湿っているだけで十分に湿っていなかった
・数人の作業者は、フードとマスクの間の隙間があり、特に、LAF(Laminar Air Flow)キャビネット
 で作業する時に製品の汚染の可能性をもたらす顔の肌の露出があった。
一方向流が維持されていることを保証するためのLAFキャビネットやアイソレータ内で物の位置が
 定義された図面や図表が現在ない。
・調合が、開放したLAFキャビネットで実施されているにも関わらず、作業者はゴーグルを着用して
 いなかった。また、アンプルは、閉じた環境ではなく、オープンな環境の調合工程で使用されていた。
・EU Grade Bエリアで、無菌ではなく消毒されたゴーグルの着用が許可されていた。
・針の据付、充填、チューブへの接続の一連作業が、汚染リスクを最小化していなかった;
 連続作業で、何回か、RABS(Restricted Access Barrier System)の手袋の指の間や、針の露出した
 先端と接触していた。
■培地充填作業に関する不備
・培地充填の試験の不合格は、時系列の記録に含まれず、作業者の評価、作業者の再訓練といった
 是正処置にも含まれなかった。
・汚染されたバッグのサンプルは保管されず、汚染細菌の種類は特定できなかった。
・培地充填のバッチサイズは60バッグだったが、充填のラベルが貼られず、汚染された容器の位置が
 特定できなかった。
・培地充填とプロセスバリデーションの研究では、無菌製造工程の全ての複雑さを記録していなかった
 ため、製造工程をしっかりと類似させられず、最悪ケースを考慮できなかった。

●EU GMPガイドラインAnnex2(生物学的製剤の製造)の不備の例
■汚染のリスクと不十分な管理に関する不備
・接触面の消毒の回数がモニタされておらず、殺胞子剤に関する5分の接触時間は、消毒物質の製造者
 によって定義されておらず、会社によってバリデートされていなかった。
・ビル管理システムの警報用ケーブルが、キャンペーン生産終了時の効果的な洗浄を助けるために
 外されていなかった。
・EU Grade Bの部屋で着用されている作業着は消毒されておらず、ゴーグルを着用せず肌は露出して
 いた。
・EU Grade Bエリアへ移送用ハッチに殺菌原料を入れる作業者は、消毒した手袋をしていなかった。
・屋外の服がEU Grade Bエリアで着用されていた。
設備はEU Grade A/B無菌工程作業に不適切であった。
・エアロックドアはインターロックされず、ドアの開放を警告するシステムも設置されていなかった。
・個々のエアの等級の切り替えロックがなかった。
・エアの供給の不具合を示す警報がEU Grade Bの部屋になかった。

●EU GMPガイドラインAnnex3(放射性医薬品の製造)の不備の例
■洗浄、確認、バリデーションの管理に関する不備
・装置が清潔で再利用できることを確認するための、洗浄され分解された装置の目視検査の
 記録が保管されていなかった。
査察に先立ち実施された交差汚染のリスクを抑えるための組織的で技術的な対策の適合性に
 関するリスク評価は、適合性や管理の潜在的な不具合の可能性を確認するための現在の管理の
 課題に生かされていなかった。
・新しい装置は、その設計や構造、洗浄目的で必要な分解に関し、完全かつ適切に評価されて
 いなかった。
装置をどのように洗浄し分解するかを開発するという手順がなかった。
傾向やバリデーションのレビュに使用する目視試験段階の不具合の記録が無かった。
・洗浄室で、洗浄済装置のドアの外側に、製品Xに関係する製造所職員に起因すると考えられる粉末の
 大きな堆積があった。全体の洗浄は装置が洗浄室に到達する前に完了されているはずなので、これは
 要求される手順の違反を意味する。
 さらに、洗浄室には大きな汚染が残されているべきでない。

●EU GMPガイドラインAnnex6(医療用ガスの製造)の不備の例
■バッチリリースと受領、保管に関する不備
バッチのリリースが、規格外の酸素含有量の記録と共に、不適切に管理されていた。
権限の与えられた品質管理者とクオリファイドパーソンのどちらも、OOS(Out Of Specification)
 の結果が記録されていることに気付かず、製品品質レビュの準備中になってはじめて取り上げられた。
・ヒューマンエラーが根本原因とされたが、これを確認する試みはなされなかった。
・所轄官庁に(欠陥医薬品報告センタ経由で)市場の欠陥製品の潜在的リスクの検討について
 報告しなかった。
・医療用酸素の入った容器が、クリーンで、使用される環境に準拠した状態で届けられるよう、
 カバーのついた状態で保管されていなかった。
・中身の入った容器に貼る発送用の製品ラベルは、登録された詳細が完全に見えないほど汚れていた。
・現在のタンカーへの充填作業は、顧客への配送前またはQPの証明の前に、予想される品質を保証して
 いなかった。
入荷した容器の残圧チェックの不足の正当性の証明が文書化されておらず、洗浄手順の
 バリデーション報告書が製造所で利用できず、そのため査察ができなかった。

●EU GMPガイドラインAnnex8(原料及び包材のサンプリング)の不備の例
■サンプリングと包材の受領の管理に関する不備
・印刷された包材の部品のサンプリング計画は、統計に基づいたものでなかった。
・印刷された包材のサンプリング場所の指示がなかった。それらは、倉庫の保管パレットの上で
 サンプリングされている。
・印刷された包材の部品のサンプリングに、印刷会社の製造方法が考慮されていなかった。
印刷された包材の部品をチェックするために使われるシェードカードは、適切に管理されていなかった。

●EU GMPガイドラインAnnex9(液剤、クリーム剤及び軟膏剤の製造)の不備の例
■製造管理に関する不備
・製造室5のミキサーは、較正されておらず、その速度は定期的に点検されていないため、定期的な
 製造工程のバリデートが確認できなかった。

●EU GMPガイドラインAnnex11(コンピューター化システム)の不備の例
■データバックアップに関する不備
・ソフトウエアのバックアップ後、オートクレーブ(加圧滅菌器)コントロールシステムのデータが
 失われた。バックアップは3ヶ月毎にだけ作られていたので、失われたデータの復元はできなかった。
・オートクレーブコントロールシステムのバックアップCD/DVDは、その完全性を保証するための管理
 された環境には保管されていなかった。
・完全性試験で得られたデータはバックアップされていなかった。システムは過去のデータに上書きしていた。
・バックアップは、データの保管期間中、アクセスできることを保証するために、5年の間、
 年1回アクセス可能性についてレビュすることが求められていたが、これを怠った。
・バックアップは、同じコンピュータドライブに作られることが許可されていたが、それは、
 ドライブの障害や破損後に、コピーが利用できることを保証することができない。
■コンピュータ化システムの不十分な管理に関する不備
全てのユーザがファイルやハードドライブのシステム時計にアクセスできた。
・ロックしたスクリーンに共有パスワードが使われていた。もし、スクリーンのロックの後に、
 ユーザがソフトウエアにログインし、別のユーザがコンピュータを開いたら、彼らは、最初のユーザの
 ログインの状態で操作ができた。
・ユーザは、SOPで許可されている以上に、クロマトグラフィデータシステムの操作権限を持っていた。
・アクセスコントロールシステムは、GMPエリアへのアクセスを管理するためのものであるのにかかわらず、
 GMPを考慮していなかった。
実験室内のHPLCのソフトウエアはGMPに従って構成設定されていなかった:
・ユーザ固有のパスワード管理が実施されていなかった。
・ユーザは、監査証跡の初期値を変更することが許されていた。
・ユーザは、“要求されるユーザコメント”の初期値を変更することが許されていた。
・ユーザは、無関係のプロジェクトのデータをコピーすることが許されていた。
・ユーザは、注釈をつけるツールを使うことを許されていた。

●EU GMPガイドラインAnnex12(医薬品製造における電離放射線の使用)の不備の例
■線量計の読み方に関する不備
・6%の変動が見られた場合、線量計が読み直され、個々の濃度がSADA(Shared-Arm Dipole Array)
 システムに入力されていた。これは、前回の合格結果の信頼性をレビュする際の逸脱にはならなかった。
・新しい濃度の読取に、データの正確性を保証するための第二の人間の確認がなかった。

●EU GMPガイドラインAnnex13(治験薬の製造)の不備の例
■治験薬の輸入に関するQPの申告の管理に関する不備
非EU加盟国からの対照薬の輸入に関するQPの申告の発行に関する責任部門が明確でなかった。
・それぞれの技術的な取り決めの中の要件であるにもかかわらず、最近輸入された製品に関し、
 申告と証明がされていなかった。
■製品規格ファイル(PSF: Product Specification File)に関する不備
PSFは臨床試験や現在のバージョン番号に関する全ての文書への参照のサマリを含んでいないので、
 不十分である。PSFと呼ばれている現在の“Manufactured Product Specification”
 という文書は適切ではない。
・治験薬の関連書類(IMPD:Investigational Medicinal Product Dossier))は、
 F国のプラスチックのバイアルのみを使わなければならないと述べているが、G国の別の
 製造所のバイアルもまた使用されている。
・IMPDは、臨床試験の申請の最初の却下や次の規格や工程の変更後に更新されていない。

●EU GMPガイドラインAnnex15(適格性評価及びバリデーション)の不備の例
■適格性評価及びバリデーションに関する不備
・現存の製造所、設備、原料の取得に関し、変更管理や全体的なプロジェクト管理がなかった。
 L設備と対照的に、A設備にはユーザ要求仕様書(URS)がなかった。
・L設備のURSは、例えば、製造用の容器の数や容量に関し、不正確だった。
・L設備の精製水システムの再適格性評価は、IQとOQのレビュで2つの品目を対象としていた。
 これらの品目は、次のPQでは対象とされず、
 製剤の品質システム(PQS: Pharmaceutical Quality System)にも記録されていなかった。
・バリデーションマスタープランは、求められる高水準の設備のバリデーション、プロセス
 バリデーション、洗浄バリデーションを考慮していなかった。
・製造工程の定期的な再バリデーションが行われていなかった。
非専用のサンプリングツールの洗浄バリデーションが行われていなかった。
バリデーション中と再適格性評価中にアイソレータの漏れ試験に用いられた方法では、漏れを
 検知できない。
・例えば、コーティングの流量や造粒のチョッパーの速度のような、バッチのプロセスパラメータ
 の範囲は、プロセスバリデーションデータにより立証されたものではなかった
・プロセスバリデーションの手順に、バリデーション用バッチが商業ベースで出荷可能になる可能性
 があることを事前に定義する明確な表示がなかった。

●EU GMPガイドラインAnnex16(QP(クオリファイドパーソン)と出荷判定)の不備の例
■輸入とバッチの保証に関する不備
・EUの品質試験のために、第三国でサンプルをとる手順が許容されていたが、このアプローチに関し、
 技術的な正当性の理由も、第三国でとられるサンプルが適切であることを証明するために定期的に
 輸入品のサンプリングをする要件もなかった。
・空輸の温度モニタリングに関する取り決めは、全てのパレットにデータロガーが必要ない理由の
 正当性を証明していなかった。
・手順上、平均運動温度(MKT: Mean Kinetic Temperature)を温度の逸脱の評価に使用すること
 は許可されていたが、逸脱の原因の調査は定められていなかった。
・いくつかの製品は、アメリカからEUに定期的に輸入され、別の第三国に輸出されるために製造所に
 保管されていたが、輸出に際し、出荷前のQPの証明の対象としていなかった。
・輸入されたバッチについて、第三国でとられたサンプルの継続的な信頼性を正当化するために、
 輸入後にサンプルの無作為の定期的な分析を行う定めがなかった。
■QPが職務を全うすることを怠ったことに関する不備
・会社は、出荷された製品に関する製造業許可について、いかなる情報も持っていなかった。
・会社は、サプライチェインの確認に関するいかなる情報も持っていなかった
・QPの証明に関する手順や管理の詳細がなかった。
・出荷証明が、会社のレターヘッドのある用紙上で文書化されていなかった。
 また、相互認証協定(MRA: Mutual Recognition Agreement)の通りにバッチの保証の内容の詳細を
 含んでいなかった。
・分析証明書の詳細がファイルに保管されていなかった。
・QPは、自身が会社の製剤の品質システム(Pharmaceutical Quality System)の最新の知識を
 持っていることを保証しなかった。

●EU GMPガイドラインAnnex19(参考品及び保存サンプル)の不備の例
■手順と管理に関する不備
保存サンプルに関する取り決めが完全には定義されていなかった。


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まとめ
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3回にわたって、英国医薬品庁がGMP査察中にみつけた不備の具体例をみてきましたが、いかがで
したでしょうか。
EU GMPガイドラインの本文からAnnexまで非常に広範囲にわたり不備の具体例があげられていました。
EU GMPガイドラインとPIC/S GMPガイドラインはほぼ同じ内容ですので、たとえEUに輸出がない会社様
でも、PIC/S GMPガイドラインに則った運用ルール構築のために参考にしていただければと思います。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

☆次回は、7/14(金)に配信させていただきます。


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お願いいたします。
hashimoto@e-pros.co.jp

【発行責任者】
株式会社プロス
ASTROM通信』担当 橋本奈央子

2017.06.15

【続 MHRA発GMP査察時の不備報告】ASTROM通信<124号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

梅雨らしくない天気が続いていますが、いかがお過ごしですか?

さて、今回は、前回に引き続き、
英国医薬品庁(MHRA : Medicines & Healthcare products Regulatory Agency)が2016年に
実施した、GMP査察における不備の傾向をまとめたレポートについて取り上げていきます。
レポートの中身がかなり多いので、今回は2章~9章、次回はAnnex部分と2回に分けてみて
いきたいと思います。
製剤関連のみの内容ではありますが、EU GMPガイドラインに基づいた不備の具体例が挙げられて
いるので、自社の自己点検等の参考にもできると思います。
最後までお付き合い頂ければ幸いです。

出典
https://www.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/609030/MHRA_GMP_Inspection_Deficiency_Data_Trend_2016.pdf


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英国医薬品庁による2016年実施GMP査察における不備の傾向レポート
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●EU GMPガイドライン2章(人員)の不備の例
■従業員の訓練に関する不備
・製造担当者は、原材料の評価について、実際の教育評価なしに、質問表の読みと理解に
 基づいて、教育済みとされていた。
複合設備の清掃のような全ての関連業務の教育が完了していない製造担当者が、溶剤や
 懸濁液の製造の能力があるとされていた。
・手順の認識度評価フォームは、訓練手順書に要求された通りにトレーナによって全てサイン
 されていなかった。
訓練が必要な全ての従業員が訓練されていることを確認するシステムがなかった。
最近採用された品質保証幹部のGMP教育に関する能力評価のエビデンスがなかった。
・製造オペレータの訓練記録は、無菌製造をするにも関わらず、アイソレータの操作を訓練
 されたことが示されていなかった。
・分析者の教育と適格性をモニタする確固とした手順がなかった。
・あるクロマトグラフィシステムに適任とされた分析者が、製造所にある他の2つのシステム
 についても、システム間の違いの理解に関する能力のチェックがされないまま、適任とされた。

●EU GMPガイドライン3章(建物及び設備)の不備の例
■汚染や交差汚染のリスクを最小化することを怠った不備
・過酸化水素による消毒中、手袋と部品に、隠蔽面ができた。例えば、
 -アイソレータ用手袋にしわがあった
 -たくさんのプラスチックの結び目がきつく固定されていた。
 -アイソレータ用手袋が製品バッグに接触しておかれていた。
 -はさみやさじのような小さな機器が金属の台の上に水平に置かれていた
 これは、効果的な消毒を妨げる可能性がある。
・製造所で使われる微粒子の暴露限度または
 PDE値(1 日に許容される摂取限度値:Permitted Daily Exposure)に基づく健康予測や、
 製造施設内で要求される組織的で技術的な手段の評価がされていなかった。
・利用可能な建物内の圧力のカスケードを示した図がなかった。
・製品が接触する設備の洗浄状態や、製品の残留物からの汚染の可能性に関する文書化された
 評価がなかった。
・設備が、製品の切り替えに関する標準的アプローチを満たして清掃されていなかった。
■建物に関する不備
・倉庫は、取り違えのリスクを生じさせる、同じ原料で異なるロット番号の物が混じった
 パレットを保管することが許されていた。
・原料の入出庫の間の覆いとなる張り出し屋根がなかった。
・製剤エリアに入るところに、清潔・不潔の間の境界がなかった。
・液体プールが、保全不良(漏れ)または清掃不足(こぼれ)の状態で製剤エリアの廊下の
 端にあった。
■設備に関する不備
いくつかの清潔な篩をかけるためのスクリーンが1つのプラスチックのバッグの中に保管
 されていた。バッグは、1つのスクリーンを取り出すために開いていて、他の清潔なスクリーン
 の汚染の潜在的なリスクを生んでいた。
前にどの製品の製造に使われたことを特定するような篩の使用の履歴がなかった。
・コーティング機のドアの密封材に傷があり、欠けた部分があった。
・装置は、必ずしも手順で要求されたようにカバーをかけて保管されていなかった。
包装ラインの錠剤ホッパーの点検窓をとめておくために粘着性のテープが使用されていた。
■温度制御された保管設備に関する不備
いくつかの原料と最終製品は2度から25度での保管が求められているのに、製造エリア内の
 温度アラームは18度から26度に設定されていた。製造所は25度から26度の間の逸脱を通知されない
 状態だった。
・温度と相対湿度が、瞬間測定により、製造中の日に2回だけ保存されていた。どんな時でも
 温度と相対湿度の要件を満たすことを保証するための最大/最小データは利用できなかった。
・会社は、分類されたエリア内のHEPA(High Efficiency Particulate Air Filter)フィルター
 をテストするために請負業者が使用している方法を評価していなかった。
・倉庫の温度・湿度プローブ、精製水の流量計を含む外部のキャリブレーション活動のために、
 文書化された予め定められた基準がなかった。
・車両が医薬品/原料の輸送に適していることを保証するために、配送車両のチェックのための
 要件がなかった。

●EU GMPガイドライン4章(文書化)の不備の例
■文書管理及び完了に関する不備
・文書の保存ポリシーに一貫性がない。例えば、文書管理手順では、文書は会社の存続期間中
 保存しなければならないと定めていたが、苦情の手順では保存期間を3年と述べていた。
・プラセボの製造中、実際に工程が完了する前に、バッチの製造記録に完了日付が入力されて
 いるような非同時の記録があった。
・QCの予防保全記録とキャリブレーショントラッカーの記録に、乖離や、適切な説明のない
 追加があった。
・ボトル包装ラインの外のごみ入れの中に、パレットの積み方に関するバッチシートのページの
 コピーがあったが、これは、使用中のバッチ記録のページの管理されていないコピーという、
 容認できない行為のしるしである。
・各ワークステーションに、作業のトレーサビリティを保証するための所定のログブックが
 なかった。
・セットアップの詳細やパスワードが書かれた生産技術ノート、エリア内の物品についての
 壁のカンニングペーパー、ラインに持ち込まれた構成物の数が書かれた紙くずといった管理
 されていない書類がいたるところにあった。
■データの完全性に関する不備
・データの完全性の評価がシステムコンプライアンスに集中し、例えば、電子システム間の
 データのマニュアルの転送といったビジネス・プロセスについて、データの完全性への影響を
 考慮していない。
どのようにして偽のユーティリティのモニタリングデータが記録されたかというデータの
 完全性の不具合に関する調査で、故意が疑われるかどうかを示すための詳細が欠けていた。
HEPAフィルターテストから得られた粒子の数のデータのプリントアウトは、保存期間中記録の
 完全性を保証するために感熱紙から不揮発性の媒体に移されなかった。

●EU GMPガイドライン5章(製造)の不備の例
■原料の管理とコントロールに関する不備
・供給者の適格性評価や監査の手順は、重要な原料や供給者の定義に欠けていた。
・製品の容器にラベルが二重に貼られていて、GMPデータがよく見えなかった。
・倉庫の受入エリアは温度がモニタされていないため、32度未満という温度の許容範囲である
 ことを立証できなかった。
乾燥粉末薬品の大きなドラムの最上層からしかサンプリングをしていないため、バルク原料
 のサンプルになっていなかった。
・インドの供給者から出荷された原薬は、保管温度が25度以下と定められているにも関わらず、
 モニタリングや管理の対象とされていなかった。
・承認された供給者のリストにはメーカの住所が含まれていない。従って、製造所は、原料が
 正しい供給者及びメーカから受け取ったことを確認できない。
不正開封の跡がわかる開封明示シールの番号が原薬の受け取りにおいて期待通りであること
 を確認する要件がなかった。
・精製水システムに追加された試薬より得られる
 TSE(伝達性海綿状脳症。Transmissible Spongiform Encephalopathy)証明書がなかった。
・倉庫の入荷場所及び荷下し場所は、悪天候時に原料を保護するものがなかった。
■交差汚染を防ぐための不十分な管理に関する不備
・アイソレータの使用に関し、洗浄バリデーションが実施されなかった。
・洗浄バリデーションをしないことの正当性の根拠は弱く、関連するリスクアセスメントに
 おいてリスクを低減すると考えられたファクタは実際の業務に反映されなかった。
ミストのシャワーによる洗浄が残留汚染を取り除くのに効果的であると証明するデータが
 なかった。
ミストシャワーの中にドラムをどのように置くかを示す図がなかった。これでは、ドラムが
 ぎっしりと詰められ、シャワーにより濡れない閉塞表面を作ることにつながるおそれがある。
・アイソレータの使用中に、原材料払出ブースを使用することを防ぐための指図がなかった。
・ミストシャワーの配水の周りのビニルに亀裂があった。これは、化学及び微生物汚染の蓄積を
 起こすかもしれないトラップポイントを作りうる。
・非常に効能がある原料の製造に使用された装置が、一般の保管場所に移動する前にクリーン
 であることが確認されなかった。
管理がいかに実施されるかを詳しく述べたり評価したりせずにSOPを参照することで、
 FMEA(故障モード影響解析。Failure Mode and Effect Analysis)のリスクアセスメントは
 適切なリスク低減を証明することを怠っていた。
・健康に基づく曝露制限が実施されず、リスクアセスメント作業が適切に実行されず、
 ADE(交叉汚染限度値)レベルで装置内に保持される場合、リスクアセスメントとの関連で
 記録されることはなかった。
洗浄不足が2番目の製造の検査者による目視試験でみつかったが、逸脱として記録されなかった。
洗浄済と未洗浄の物の間で交差汚染のリスクが管理されていることを保証するための洗浄室の
 使用のルールの文書化された指示がなかった。
・洗浄方法をどのように開発すべきか(すなわち、技術的図面の使用や装置の物理的な試験により)
 や、一貫性のあるアプローチがされることを確実にするためにどのように検証すべきかを
 定義する手順がなかった。
新製品の導入手順に健康に基づく暴露制限やハザードアセスメントを作ることは、査察官
 により知らされていたが、手順の中で要求しなかった。
■製造に関する不備
・包装場所のラベルの保管場所で、異なるラベルが適切に分離されず、多数の異なるラベルが
 同じ場所に保管されていた。
・カプセル殻は、倉庫内で製造者が推奨する湿度条件(35-65%RH)で保管されていなかった。

●EU GMPガイドライン6章(品質管理)の不備の例
■QC試験室の作業に関する不備
・QC試験室のサンプル受領ログブックは、数日後にサンプルが試験室に受領された時ではなく
 試験依頼を受領した時に完成されていた。そのため、サンプルのトレーサビリティは維持
 されず、データ入力は同時ではなかった。
・安定性チャンバーは、間違った温度と相対湿度の書かれたラベルが貼られていた。
・洗浄済ガラス器具は、再汚染を防ぐためにカバーされていなかった。また洗浄の有効期限
 が定義されていなかった。
・Grade Bのガラス器具はGMP試験用に実験室で使用されていた。
・微生物実験室は、正確なコロニーのカウントをすることを保証するための拡大鏡付の
 微生物学的プレートリーダを持っていなかった。
・試薬の12ヶ月の有効期限の正当性の根拠がなかった。
・開封された薬品の有効期限を設定する際、試薬の化学的安定性は考慮されなかった。
水溶液の移動相の2ヶ月の有効期間はデータによって立証されなかった。
・実験室の天秤は年次のキャリブレーションと、週に1度の1個のおもりの確認だけで、製品の
 リスクを最小化されていなかった。
・標準的な冷蔵庫の温度は、週に1回の確認だけで、プローブには最大/最小の読取がなかった。
■OOS(Out of Specification)やOOT(Out of Trend)調査に関する不備
滴定法による水分分析で不合格になったバルク製品に関する実験室のインシデントレポート(LIR)
によれば、最初のサンプルを再テストするか、妥当な疑いが解決されたことを証明せずに、
フェーズIIの試験の一部として再サンプリングをした。
約定の再テスト計画は、仮説検証の一部として、硬度と摩損度(H&F)の試験用に既に抜き取った
同等のサンプルの試験を含んでいた。H&Fサンプルと再サンプルは合格しOOSは覆ったが、
LIRには、再サンプルがどのように実施されたか記録されず、再サンプルの記録は、そのサンプル
が品質を代表するものではないことを示唆していた。
従って、全体的に見て、バッチの均一性は適正であったかどうかの疑いの要素は残ったままである。
原薬XYZのバッチ123実験室の未知の不純物による不合格に関するインシデントレポート(LIR)は、
最初にオリジナルサンプルが汚染されていたかを判断するための適切なエビデンスを作らずに、
フェーズIIの試験のために再サンプリングをした。
再サンプルによる試験は、LIRに含まれていなかった。また、再サンプルで何がされたかを説明する
コメントがなかった。
・OOSの結果は、合格結果を作るために、2つの結果が平均された。
・再サンプルと再試験が実施され、最大3セットの分析が許可された。この再試験の数は、統計的に
 大きな影響を与えるものと考えられなかった。
・OOSの手順は、原料の再サンプルに関する適切な管理を含んでいなかった。
・潜在的に原因となる要素を識別するために、製造により調査を実施する要件がなかった。
・調査は、再テスト前に、テストの失敗に関する仮説をたてなかった。
・実験室のエラーと判断した調査には、将来、同じ実験室のエラーを避けることを確実にするための
 予防処置をいつも含まなかった。
■安定性試験の管理に関する不備
・多数の安定性試験の不具合(有効期限前の終了を含む)が見つかったがクオリファイドパーソン
 により正確に評価されず、安定性の証明への影響も考慮されなかった。
受託製造業者は安定性の不具合を医薬品販売承認取得者に知らせなかった。

●EU GMPガイドライン7章(外部委託作業)の不備の例
※2016年12月22日に7章は「委託製造及び分析」から「外部委託作業」に変わりました。
■外部委託作業の管理に関する不備
・重要なサービスの管理に関する手順が定められておらず、適格性評価やサプライヤの能力を
 モニタリングすることを可能にする仕組みがなかった。
・第三者の監査役により実施された監査レポートに、会社の職員のレビュのエビデンスがなかった。
会社の監査役に必要とされる訓練や能力評価について述べた手順がなかった。
・手順は、第三者によって用意された監査レポートを受け入れる根拠を述べていなかった。
■技術的な取り決めに関する不備
・A社とB社の間の技術的な取り決めが詳細でなかった。B社の作業を述べた箇条書はあったが、
 A社の責任は述べていなかった。
・A社とC社の間の技術的な取り決めは、顧客による検証の責任に関して矛盾する記述があった。
・D社との技術的な取り決めは、取り決め範囲内の製品の識別をしていなかった。
・E社との技術的な取り決めは、どの会社が委託者で、どの会社が受託者か明らかにしていなかった。
 さらに、F社への商品の出荷用の温度のモニタリング装置に関する明確な要求がなかった。

●EU GMPガイドライン8章(苦情及び製品回収)の不備の例
■苦情処理と調査に関する不備
苦情が偽造された薬に関するものかどうかを考慮していなかった。
・苦情に関係する製品を手に入れる要件がなかった。
・他のバッチが関係しているかどうかを検討する要件がなかった。
・苦情処理は、苦情が偽りによるものかどうかを考慮するためにチェックする要件がなかった。
・手順には、欠陥医薬品報告センタ(DMRC)への詳細の連絡や偽造薬の可能性を報告する要件を
 含んでいなかった。
・製造所で不十分な調査が実施された。例えば、製造や利用可能なデータのレビュをせず、苦情
 以外のバッチへのより大きな影響を考慮しなかった。
・製造所の調査の不足により、再発を防ぐためのCAPAが考慮されなかったり効果的に実施され
 かったりした。
■製品回収に関する不備
・回収手順において、回収作業がタイムリーに終わることを確実にするために、重要段階の最長の
 予定を定義しなかった。
通常の就業時間外に回収システムのテストを実施する要件がなかった。
・模擬回収はタイムリーに終わらず、最終の正式評価レポートは作成されなかった。
回収された可能性のある社内の製品在庫が隔離されていることを保証する手続きの指示がない。
・模擬回収作業がサプライチェインで効果的に実施されず、回収の有効性を検討するための調整や
 報告がなかった。

●EU GMPガイドライン9章(自己点検)の不備の例
■自己点検プログラムに関する不備
・2つの自己点検が実施されていたが、品質システムの重要側面はカバーしていなかった。
・自己点検のスケジュールが定められていなかった。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
まとめ
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いかがでしたでしょうか。
自社は大丈夫だったかなと気になる箇所もあったのではないでしょうか。
個人的には、4章(文書化)の不備は、結構よくある話なのではないかと思いました。
是非、自社の業務の見直しの参考にしていただければと思います。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。
☆次回は、6/30(金)に配信させていただきます。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
おしらせ
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
弊社は、今年も、6月28日(水)~6月30日(金)に開催される医薬品・化粧品・洗剤 研究・
製造技術展インターフェックスジャパン(会場:東京ビックサイト)に出展します。
ブースは、東1ホールのITソリューションゾーン【E25-26】となります。
お時間がおありの方は、是非弊社ブースにお立ち寄りいただければ幸いです。
よろしくお願いいたします。


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【発行責任者】
株式会社プロス
ASTROM通信』担当 橋本奈央子

2017.06.01

【MHRA発GMP査察時の不備報告 他 ヨーロッパ規制関連動向】ASTROM通信<123号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

一気に暑くなってきましたが、いかがお過ごしでいらっしゃいますか?

さて、前回と前々回は、米国食品医薬品局(FDA)のウォーニングレター(Warning Letter)を取り上げて
きたので、今回は、ヨーロッパの規制関連に関する下記3つの話題を取り上げたいと思います。
1.ATMP GMPガイドライン案の作成におけるECとPIC/Sの溝
2.英国のEU離脱について
3.英国医薬品庁による2016年実施GMP査察における不備の傾向レポート

最後までお付き合い頂ければ幸いです。


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1.ATMP GMPガイドライン案の作成におけるECとPIC/Sの溝
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欧州委員会(EC: European Commission)が単独で作成した、
先端治療医薬品(ATMP: Advanced Therapy Medicinal Products)のGMPガイドライン案が、ATMPのGMP要求を
下げ患者の健康リスクを増大させる点や、PIC/S GMPガイドラインとの調和がはかられていない点について、
PIC/Sは2017年2月24日ECに対し遺憾の意を表明する文書を発行しました。
ECは2017年4月5日に、書簡にて、ATMPの品質の保証と患者の安全の保護に加え、この件のイニシアチブに
ついてPIC/Sと約束をしました。
それに対し、PIC/Sは再度、2017年4月24日に、PIC/Sのポジションや、患者の安全に関する大きなギャップ
の再確認と、ECとPIC/Sの協力の範囲の明確化を求める書簡を送っています。
書簡の中には、下記のことが書かれています。
・EUのPIC/Sメンバ国以外も交え患者の安全に関する説明と議論の場を設けるというECの提案を受けて、
 PIC/Sは共同ワーキンググループを提案したが、それに対するECからの回答がないこと
・ECがPIC/Sとの協力の範囲を明確化してほしいこと
・最新のATMP GMPガイドラインのドラフトを送ってほしいこと
・このような状態で、ECが2017年4月26日にガイドライン案を仕上げる会議が計画されているとしらされたこと
・不調和のリスクは、現在のグローバルな規制の枠組みに重大な結果をもたらすかもしれない。
この内容を見ると、4月5日のECからPIC/Sにあてた回答は両者の溝を埋めるにはいたっていないことがわか
ます。

ATMP GMPガイドライン案
http://ec.europa.eu/health//sites/health/files/files/advtherapies/2016_06_pc/2016_06_draft_guideline.pdf
2017年2月24日 PIC/S→ECへの文書
file:///C:/Users/hashimoto/Downloads/PS_L_11_2017_Letter_to_EC_concerning_GMP_ATMP.pdf
2017年4月24日 PIC/S→ECへの文書
file:///C:/Users/hashimoto/Downloads/PS_L_20_2017_Letter_to_EC_concerning_GMP_ATMP.pdf


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2.英国のEU離脱について
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欧州医薬品庁(EMA)は、2017年4月27日に、その運営委員会のメンバ、EU/EEAメンバ国の管轄庁の代表と
会議を開き、EUを離脱するイギリスを考慮してメンバ国間で薬の評価やモニタリングに関する作業を分担
するかの議論を開始しました。
イギリスの離脱の期日の交渉はまだ公式に始まっていないし、その結果を前もって判断はできませんが、
2019年3月30日以後にイギリスはEMA及びヨーロッパの医薬品の規制システムに参加しないことを予測した
シナリオに基づき、作業を開始する予定です。
作業負荷の配布に関する原則として以下のことを含みます。
・事業継続性を保証すること
・科学的アセスメントの品質と安定性を維持すること
・法的タイムラインに従うこと
・既存のナレッジを強化、または、ナレッジの移転により、ナレッジの保持を保証すること
・容易な実施と、中長期の持続可能性を保証すること
2017年7月5日に次回の会議を開催します。

出典
http://www.ema.europa.eu/docs/en_GB/document_library/Press_release/2017/04/WC500226559.pdf


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3.英国医薬品庁による2016年実施GMP査察における不備の傾向レポート
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英国医薬品庁(MHRA : Medicines & Healthcare products Regulatory Agency)が、2016年に実施したGMP査察
における不備の傾向をまとめたレポートを発表しました。
このレポートは、製薬会社の自己点検と継続的改善に役立てることを目的に作られていて、製剤関連のみでは
ありますが、MHRAがEU GMPガイドラインをベースに不備の具体例が挙げられています。

2016年に取り上げられた不備のTOP10は下記の通りです。(クリティカルの件数順)
1位【品質システム】 クリィティカル:38件 メジャー:449件 その他:772件
2位【滅菌保証】 クリィティカル:34件 メジャー:190件 その他:162件
3位【製造】 クリィティカル:20件 メジャー:191件 その他:543件
4位【苦情と回収】 クリィティカル:11件 メジャー: 80件 その他:110件
5位【適格性評価/バリデーション】クリィティカル:10件 メジャー:123件 その他:232件
6位【建物及び設備】 クリィティカル: 9件 メジャー:113件 その他:464件
7位【コンピュータ化システム】 クリィティカル: 9件 メジャー: 44件 その他:120件
8位【職員】 クリィティカル: 8件 メジャー: 42件 その他:150件
9位【文書】 クリィティカル: 2件 メジャー:166件 その他:646件
10位【品質管理】 クリィティカル: 2件 メジャー: 42件 その他:192件

このTOP10を2015年と比較すると下記の通りです。
2016年 ⇔2015年
1位【品質システム】 ⇔1位【品質システム】
2位【滅菌保証】 ⇔2位【苦情と回収】
3位【製造】 ⇔3位【文書】
4位【苦情と回収】 ⇔4位【品質管理】
5位【適格性評価/バリデーション】 ⇔5位【コンピュータ化システム】
6位【建物及び設備】 ⇔6位【製造】
7位【コンピュータ化システム】 ⇔7位【建物及び設備】
8位【職員】 ⇔8位【バリデーション】
9位【文書】 ⇔9位【職員】
10位【品質管理】 ⇔10位【原料の管理】

●EU GMPガイドライン1章(医薬品の品質システム)に関する不備の例
■事象の調査及び是正処置・予防処置(CAPA : Corrective Action and Preventive Action)の実施に関する不備
・逸脱報告書は、実施された調査や、提示された根本原因を裏付けるエビデンスを示すのに十分な情報を含んで
 いなかった。
・あるケースでは正式なCAPAが実施されていなかった。また、他のケースでは、CAPAが適正でなかった。繰り返さ
 れる逸脱について、問題を解決するための、傾向のレビュやCAPA自体の不具合のレビュがされていなかった
・製造所が、工程や製品品質をモニタするための効果的な管理システムを制定し維持することを行っていなかった。
 また、根本原因を判断し、適切な是正処置及び予防処置を実施する目的のために、適切なレベルの調査を実施
 したり、すべての潜在的に重大な事象について完全に記録していなかったりした。
調査を適切かつ徹底的に確実に実施するための十分詳細な逸脱手順の不備
・バッチの逸脱の影響を確認するための要件がなかった。
・患者の安全への影響がある可能性のある問題の場合、タイムリーに上位レベルにエスカレートする手順がなかった。
・根本原因を“人的ミス”と特定する前に、手順、手続きまたはシステムのエラーが見過ごされないことを保証する
 要件がなかった。
・手順の中に、“タイムリーな方法で”という文言以外に、逸脱の処理を完了するタイムラインがなかった。
・記録された根本原因は、いつも、手順通りに確認されているわけではなかった。
・少なくとも8件の、査察前に終了せず延び延びになっているCAPAがみつかった。
・2件の延び延びになっているCAPAは、査察時に未処理だった。(186日と60日が経過)
134件の逸脱が2015年11月から2016年2月に発生していたが、CAPAは実施されていなかった。
1つのフォームに異なる期日が記載されていたが最新の日付のみが確認され、多数のCAPAについては、効果的な
 モニタリングが実施されていなかった。
CAPAの効果のレビュがマネジメントレビュの一部として行われていたが、そのプロセスの記述は不十分で、
 マネジメントレビュは年に1回行われているだけで、リスクに基づくプロセスではなかった。
■製剤の品質システム(PQS : Pharmaceutical Quality System)の効果的な実施と継続的な改善に関する経営陣の
監督の不足に関する不備
・正式なマネジメントレビュの手順がなかった。
・多数の工程改善が会社のいたるところで確認されたが、PQSの記録や管理がされていなかった。
多数のCAPAが以前のMHRAの査察以降完了していないことが証明するように、経営陣は効果的な品質マネジメント
 システムの実施を保証することを怠っていた。
品質システムの効果的な実施をレビュするための部門管理者たちによる月次品質会議に関する文書化された手順
 がない。
・マネジメントチームは、品質システムの効果的な実施や、成分・工程・システム自身の継続的な改善の機会を
 見いだすことを怠った。
・現在の品質測定の報告方法は、品質システムの効果的な実施を十分に確認し、モニタし評価することを考慮して
 いない。例えば、未処理または期限切れの品目は検討対象として報告されていない。
・マネジメントレビュの会議で報告された目立った品質項目は、アクション遅延の根本原因を特定しようとされて
 いなかった。リスクアセスメントが実施されていないか、アクションの遅延への取り組みが遅れることによる
 患者の安全への影響や、PQSの効果を評価するために正式に文書化されていなかった。
・マネジメントレビュの手順が不十分である。たとえば、クリーンルームの環境モニタリングの結果に明らかに
 問題のある傾向が増加しているにも関わらず、ミーティングのメモには全ての環境モニタリングの結果は問題
 ないと書かれていた。
・月次の品質システム測定は、供給者監査のステイタスを含まず、性能の変化の効果的なレビュを可能にし、
 品質システムが管理された状態にあることを確認するための製造所の経時的な性能を示さなかった。
■変更管理に関する不備
・変更の性質と、実施された活動を述べた詳細の記録が不十分であった。
どのレベルの変更管理にリスク評価や規制関連業務のレビュが求められ、どのレベルに求められないのかの定義
 がなかった。
・変更管理活動の実施後の効果のレビュがなかった。
・変更が会社の変更管理手順の外で実施されていた。
・計画された変更の予測評価に関する手順と、規制当局による通知を考慮した手順の実施前の承認が確実では
 なかった。
・有効性確認の実施後に文書化をする要件がなかった。
■製品品質レビュ(PQR : Product Quality Review)に関する不備
・PQR手順は、全供給ルートや製造者(仲介業者を含む)を考慮した原薬のサプライチェインのトレーサビリティ
 のレビュを要求していなかった。
・完了したPQRは、関連する技術契約が適切に実施されていることを確認していなかった。
・現在進行中の安定性調査において、問題のある傾向を示していないことや有効期限内で使用が維持されることが
 予想されるという確認がない。
・重大パラメータのレビュにおいて、傾向があるかどうかの判断をするためのデータの提供がなく、判断について
 のコメントもない。
・システムが要求通りに機能していることを判断する際に、精製水の検討がない。
・PQRがタイムリーな方法で完了されていなかった。
 -9件のPQRは6ヶ月以上、あるものは1年間近く未処理だった。
 -完了したPQRのうち少なくとも29件は、3ヶ月の期限を6ヶ月以上超えていた。
■規制の改訂をモニタせず、適切なアクションをとらなかったことに関する不備
・規制要件の変更を把握し、製造所への影響を考慮することを確実に行う仕組みがなかった。
・レビュ、評価、適切にEU GMPの改訂を実施するための正式なシステムがなかった。
・規制の改訂をレビュするための正式なシステムがなかった。
■製品の返品に関する不備
返品の手順に、返品された商品が、返品前、顧客により適切な温度条件で保管されていたことを検証することが
求められていなかった。
出典
https://www.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/609030/MHRA_GMP_Inspection_Deficiency_Data_Trend_2016.pdf


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
まとめ
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
今回は、ヨーロッパの話題でしたが、いかがでしたでしょうか。

1つ目の記事。ECが単独でGMPガイドライン案の作成作業を進めたことにより、ECとPIC/Sに溝が生まれていること
に驚きました。これまで、EU GMP ガイドラインが改訂されると、少し時間をおいてPIC/S GMPガイドラインも
EU GMP ガイドラインにならうように改訂されてきましたが、このまま溝が深まれば、それがなくなってしまう
可能性があります。
ECの今後の進め方によっては、せっかく出来上がりつつあるグローバルスタンダードが崩壊しかねない状態にある
のは気になるところです。

2つ目は、イギリスのEU離脱に関する内容でした。イギリスはEU離脱後もPIC/S加盟国ではありますが、日本-EU間
で締結されている相互承認協定が適用されなくなった場合、どのような影響が生じるのか気になるところです。

3つ目の英国医薬品庁による2016年実施GMP査察における不備の傾向レポートは、不備の具体例がのっていて興味深
かったです。不備の中には、日本の製薬会社様にも当てはまる内容がありますので、非常に参考になると思います。
次号では、EU GMPガイドラインの2章以降と、各Annexに関する不備をみていきますので、是非ご覧ください。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。

☆次回は、6/15(木)に配信させていただきます。


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おしらせ
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弊社は、今年も、6月28日(水)~6月30日(金)に開催される医薬品・化粧品・洗剤 研究・製造技術展
インターフェックスジャパン(会場:東京ビックサイト)に出展します。
ブースは、東1ホールのITソリューションゾーン【E25-26】となります。
お時間がおありの方は、是非弊社ブースにお立ち寄りいただければ幸いです。
よろしくお願いいたします。

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