ASTROM通信バックナンバー

2017.06.15

【続 MHRA発GMP査察時の不備報告】ASTROM通信<124号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

梅雨らしくない天気が続いていますが、いかがお過ごしですか?

さて、今回は、前回に引き続き、
英国医薬品庁(MHRA : Medicines & Healthcare products Regulatory Agency)が2016年に
実施した、GMP査察における不備の傾向をまとめたレポートについて取り上げていきます。
レポートの中身がかなり多いので、今回は2章~9章、次回はAnnex部分と2回に分けてみて
いきたいと思います。
製剤関連のみの内容ではありますが、EU GMPガイドラインに基づいた不備の具体例が挙げられて
いるので、自社の自己点検等の参考にもできると思います。
最後までお付き合い頂ければ幸いです。

出典
https://www.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/609030/MHRA_GMP_Inspection_Deficiency_Data_Trend_2016.pdf


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英国医薬品庁による2016年実施GMP査察における不備の傾向レポート
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●EU GMPガイドライン2章(人員)の不備の例
■従業員の訓練に関する不備
・製造担当者は、原材料の評価について、実際の教育評価なしに、質問表の読みと理解に
 基づいて、教育済みとされていた。
複合設備の清掃のような全ての関連業務の教育が完了していない製造担当者が、溶剤や
 懸濁液の製造の能力があるとされていた。
・手順の認識度評価フォームは、訓練手順書に要求された通りにトレーナによって全てサイン
 されていなかった。
訓練が必要な全ての従業員が訓練されていることを確認するシステムがなかった。
最近採用された品質保証幹部のGMP教育に関する能力評価のエビデンスがなかった。
・製造オペレータの訓練記録は、無菌製造をするにも関わらず、アイソレータの操作を訓練
 されたことが示されていなかった。
・分析者の教育と適格性をモニタする確固とした手順がなかった。
・あるクロマトグラフィシステムに適任とされた分析者が、製造所にある他の2つのシステム
 についても、システム間の違いの理解に関する能力のチェックがされないまま、適任とされた。

●EU GMPガイドライン3章(建物及び設備)の不備の例
■汚染や交差汚染のリスクを最小化することを怠った不備
・過酸化水素による消毒中、手袋と部品に、隠蔽面ができた。例えば、
 -アイソレータ用手袋にしわがあった
 -たくさんのプラスチックの結び目がきつく固定されていた。
 -アイソレータ用手袋が製品バッグに接触しておかれていた。
 -はさみやさじのような小さな機器が金属の台の上に水平に置かれていた
 これは、効果的な消毒を妨げる可能性がある。
・製造所で使われる微粒子の暴露限度または
 PDE値(1 日に許容される摂取限度値:Permitted Daily Exposure)に基づく健康予測や、
 製造施設内で要求される組織的で技術的な手段の評価がされていなかった。
・利用可能な建物内の圧力のカスケードを示した図がなかった。
・製品が接触する設備の洗浄状態や、製品の残留物からの汚染の可能性に関する文書化された
 評価がなかった。
・設備が、製品の切り替えに関する標準的アプローチを満たして清掃されていなかった。
■建物に関する不備
・倉庫は、取り違えのリスクを生じさせる、同じ原料で異なるロット番号の物が混じった
 パレットを保管することが許されていた。
・原料の入出庫の間の覆いとなる張り出し屋根がなかった。
・製剤エリアに入るところに、清潔・不潔の間の境界がなかった。
・液体プールが、保全不良(漏れ)または清掃不足(こぼれ)の状態で製剤エリアの廊下の
 端にあった。
■設備に関する不備
いくつかの清潔な篩をかけるためのスクリーンが1つのプラスチックのバッグの中に保管
 されていた。バッグは、1つのスクリーンを取り出すために開いていて、他の清潔なスクリーン
 の汚染の潜在的なリスクを生んでいた。
前にどの製品の製造に使われたことを特定するような篩の使用の履歴がなかった。
・コーティング機のドアの密封材に傷があり、欠けた部分があった。
・装置は、必ずしも手順で要求されたようにカバーをかけて保管されていなかった。
包装ラインの錠剤ホッパーの点検窓をとめておくために粘着性のテープが使用されていた。
■温度制御された保管設備に関する不備
いくつかの原料と最終製品は2度から25度での保管が求められているのに、製造エリア内の
 温度アラームは18度から26度に設定されていた。製造所は25度から26度の間の逸脱を通知されない
 状態だった。
・温度と相対湿度が、瞬間測定により、製造中の日に2回だけ保存されていた。どんな時でも
 温度と相対湿度の要件を満たすことを保証するための最大/最小データは利用できなかった。
・会社は、分類されたエリア内のHEPA(High Efficiency Particulate Air Filter)フィルター
 をテストするために請負業者が使用している方法を評価していなかった。
・倉庫の温度・湿度プローブ、精製水の流量計を含む外部のキャリブレーション活動のために、
 文書化された予め定められた基準がなかった。
・車両が医薬品/原料の輸送に適していることを保証するために、配送車両のチェックのための
 要件がなかった。

●EU GMPガイドライン4章(文書化)の不備の例
■文書管理及び完了に関する不備
・文書の保存ポリシーに一貫性がない。例えば、文書管理手順では、文書は会社の存続期間中
 保存しなければならないと定めていたが、苦情の手順では保存期間を3年と述べていた。
・プラセボの製造中、実際に工程が完了する前に、バッチの製造記録に完了日付が入力されて
 いるような非同時の記録があった。
・QCの予防保全記録とキャリブレーショントラッカーの記録に、乖離や、適切な説明のない
 追加があった。
・ボトル包装ラインの外のごみ入れの中に、パレットの積み方に関するバッチシートのページの
 コピーがあったが、これは、使用中のバッチ記録のページの管理されていないコピーという、
 容認できない行為のしるしである。
・各ワークステーションに、作業のトレーサビリティを保証するための所定のログブックが
 なかった。
・セットアップの詳細やパスワードが書かれた生産技術ノート、エリア内の物品についての
 壁のカンニングペーパー、ラインに持ち込まれた構成物の数が書かれた紙くずといった管理
 されていない書類がいたるところにあった。
■データの完全性に関する不備
・データの完全性の評価がシステムコンプライアンスに集中し、例えば、電子システム間の
 データのマニュアルの転送といったビジネス・プロセスについて、データの完全性への影響を
 考慮していない。
どのようにして偽のユーティリティのモニタリングデータが記録されたかというデータの
 完全性の不具合に関する調査で、故意が疑われるかどうかを示すための詳細が欠けていた。
HEPAフィルターテストから得られた粒子の数のデータのプリントアウトは、保存期間中記録の
 完全性を保証するために感熱紙から不揮発性の媒体に移されなかった。

●EU GMPガイドライン5章(製造)の不備の例
■原料の管理とコントロールに関する不備
・供給者の適格性評価や監査の手順は、重要な原料や供給者の定義に欠けていた。
・製品の容器にラベルが二重に貼られていて、GMPデータがよく見えなかった。
・倉庫の受入エリアは温度がモニタされていないため、32度未満という温度の許容範囲である
 ことを立証できなかった。
乾燥粉末薬品の大きなドラムの最上層からしかサンプリングをしていないため、バルク原料
 のサンプルになっていなかった。
・インドの供給者から出荷された原薬は、保管温度が25度以下と定められているにも関わらず、
 モニタリングや管理の対象とされていなかった。
・承認された供給者のリストにはメーカの住所が含まれていない。従って、製造所は、原料が
 正しい供給者及びメーカから受け取ったことを確認できない。
不正開封の跡がわかる開封明示シールの番号が原薬の受け取りにおいて期待通りであること
 を確認する要件がなかった。
・精製水システムに追加された試薬より得られる
 TSE(伝達性海綿状脳症。Transmissible Spongiform Encephalopathy)証明書がなかった。
・倉庫の入荷場所及び荷下し場所は、悪天候時に原料を保護するものがなかった。
■交差汚染を防ぐための不十分な管理に関する不備
・アイソレータの使用に関し、洗浄バリデーションが実施されなかった。
・洗浄バリデーションをしないことの正当性の根拠は弱く、関連するリスクアセスメントに
 おいてリスクを低減すると考えられたファクタは実際の業務に反映されなかった。
ミストのシャワーによる洗浄が残留汚染を取り除くのに効果的であると証明するデータが
 なかった。
ミストシャワーの中にドラムをどのように置くかを示す図がなかった。これでは、ドラムが
 ぎっしりと詰められ、シャワーにより濡れない閉塞表面を作ることにつながるおそれがある。
・アイソレータの使用中に、原材料払出ブースを使用することを防ぐための指図がなかった。
・ミストシャワーの配水の周りのビニルに亀裂があった。これは、化学及び微生物汚染の蓄積を
 起こすかもしれないトラップポイントを作りうる。
・非常に効能がある原料の製造に使用された装置が、一般の保管場所に移動する前にクリーン
 であることが確認されなかった。
管理がいかに実施されるかを詳しく述べたり評価したりせずにSOPを参照することで、
 FMEA(故障モード影響解析。Failure Mode and Effect Analysis)のリスクアセスメントは
 適切なリスク低減を証明することを怠っていた。
・健康に基づく曝露制限が実施されず、リスクアセスメント作業が適切に実行されず、
 ADE(交叉汚染限度値)レベルで装置内に保持される場合、リスクアセスメントとの関連で
 記録されることはなかった。
洗浄不足が2番目の製造の検査者による目視試験でみつかったが、逸脱として記録されなかった。
洗浄済と未洗浄の物の間で交差汚染のリスクが管理されていることを保証するための洗浄室の
 使用のルールの文書化された指示がなかった。
・洗浄方法をどのように開発すべきか(すなわち、技術的図面の使用や装置の物理的な試験により)
 や、一貫性のあるアプローチがされることを確実にするためにどのように検証すべきかを
 定義する手順がなかった。
新製品の導入手順に健康に基づく暴露制限やハザードアセスメントを作ることは、査察官
 により知らされていたが、手順の中で要求しなかった。
■製造に関する不備
・包装場所のラベルの保管場所で、異なるラベルが適切に分離されず、多数の異なるラベルが
 同じ場所に保管されていた。
・カプセル殻は、倉庫内で製造者が推奨する湿度条件(35-65%RH)で保管されていなかった。

●EU GMPガイドライン6章(品質管理)の不備の例
■QC試験室の作業に関する不備
・QC試験室のサンプル受領ログブックは、数日後にサンプルが試験室に受領された時ではなく
 試験依頼を受領した時に完成されていた。そのため、サンプルのトレーサビリティは維持
 されず、データ入力は同時ではなかった。
・安定性チャンバーは、間違った温度と相対湿度の書かれたラベルが貼られていた。
・洗浄済ガラス器具は、再汚染を防ぐためにカバーされていなかった。また洗浄の有効期限
 が定義されていなかった。
・Grade Bのガラス器具はGMP試験用に実験室で使用されていた。
・微生物実験室は、正確なコロニーのカウントをすることを保証するための拡大鏡付の
 微生物学的プレートリーダを持っていなかった。
・試薬の12ヶ月の有効期限の正当性の根拠がなかった。
・開封された薬品の有効期限を設定する際、試薬の化学的安定性は考慮されなかった。
水溶液の移動相の2ヶ月の有効期間はデータによって立証されなかった。
・実験室の天秤は年次のキャリブレーションと、週に1度の1個のおもりの確認だけで、製品の
 リスクを最小化されていなかった。
・標準的な冷蔵庫の温度は、週に1回の確認だけで、プローブには最大/最小の読取がなかった。
■OOS(Out of Specification)やOOT(Out of Trend)調査に関する不備
滴定法による水分分析で不合格になったバルク製品に関する実験室のインシデントレポート(LIR)
によれば、最初のサンプルを再テストするか、妥当な疑いが解決されたことを証明せずに、
フェーズIIの試験の一部として再サンプリングをした。
約定の再テスト計画は、仮説検証の一部として、硬度と摩損度(H&F)の試験用に既に抜き取った
同等のサンプルの試験を含んでいた。H&Fサンプルと再サンプルは合格しOOSは覆ったが、
LIRには、再サンプルがどのように実施されたか記録されず、再サンプルの記録は、そのサンプル
が品質を代表するものではないことを示唆していた。
従って、全体的に見て、バッチの均一性は適正であったかどうかの疑いの要素は残ったままである。
原薬XYZのバッチ123実験室の未知の不純物による不合格に関するインシデントレポート(LIR)は、
最初にオリジナルサンプルが汚染されていたかを判断するための適切なエビデンスを作らずに、
フェーズIIの試験のために再サンプリングをした。
再サンプルによる試験は、LIRに含まれていなかった。また、再サンプルで何がされたかを説明する
コメントがなかった。
・OOSの結果は、合格結果を作るために、2つの結果が平均された。
・再サンプルと再試験が実施され、最大3セットの分析が許可された。この再試験の数は、統計的に
 大きな影響を与えるものと考えられなかった。
・OOSの手順は、原料の再サンプルに関する適切な管理を含んでいなかった。
・潜在的に原因となる要素を識別するために、製造により調査を実施する要件がなかった。
・調査は、再テスト前に、テストの失敗に関する仮説をたてなかった。
・実験室のエラーと判断した調査には、将来、同じ実験室のエラーを避けることを確実にするための
 予防処置をいつも含まなかった。
■安定性試験の管理に関する不備
・多数の安定性試験の不具合(有効期限前の終了を含む)が見つかったがクオリファイドパーソン
 により正確に評価されず、安定性の証明への影響も考慮されなかった。
受託製造業者は安定性の不具合を医薬品販売承認取得者に知らせなかった。

●EU GMPガイドライン7章(外部委託作業)の不備の例
※2016年12月22日に7章は「委託製造及び分析」から「外部委託作業」に変わりました。
■外部委託作業の管理に関する不備
・重要なサービスの管理に関する手順が定められておらず、適格性評価やサプライヤの能力を
 モニタリングすることを可能にする仕組みがなかった。
・第三者の監査役により実施された監査レポートに、会社の職員のレビュのエビデンスがなかった。
会社の監査役に必要とされる訓練や能力評価について述べた手順がなかった。
・手順は、第三者によって用意された監査レポートを受け入れる根拠を述べていなかった。
■技術的な取り決めに関する不備
・A社とB社の間の技術的な取り決めが詳細でなかった。B社の作業を述べた箇条書はあったが、
 A社の責任は述べていなかった。
・A社とC社の間の技術的な取り決めは、顧客による検証の責任に関して矛盾する記述があった。
・D社との技術的な取り決めは、取り決め範囲内の製品の識別をしていなかった。
・E社との技術的な取り決めは、どの会社が委託者で、どの会社が受託者か明らかにしていなかった。
 さらに、F社への商品の出荷用の温度のモニタリング装置に関する明確な要求がなかった。

●EU GMPガイドライン8章(苦情及び製品回収)の不備の例
■苦情処理と調査に関する不備
苦情が偽造された薬に関するものかどうかを考慮していなかった。
・苦情に関係する製品を手に入れる要件がなかった。
・他のバッチが関係しているかどうかを検討する要件がなかった。
・苦情処理は、苦情が偽りによるものかどうかを考慮するためにチェックする要件がなかった。
・手順には、欠陥医薬品報告センタ(DMRC)への詳細の連絡や偽造薬の可能性を報告する要件を
 含んでいなかった。
・製造所で不十分な調査が実施された。例えば、製造や利用可能なデータのレビュをせず、苦情
 以外のバッチへのより大きな影響を考慮しなかった。
・製造所の調査の不足により、再発を防ぐためのCAPAが考慮されなかったり効果的に実施され
 かったりした。
■製品回収に関する不備
・回収手順において、回収作業がタイムリーに終わることを確実にするために、重要段階の最長の
 予定を定義しなかった。
通常の就業時間外に回収システムのテストを実施する要件がなかった。
・模擬回収はタイムリーに終わらず、最終の正式評価レポートは作成されなかった。
回収された可能性のある社内の製品在庫が隔離されていることを保証する手続きの指示がない。
・模擬回収作業がサプライチェインで効果的に実施されず、回収の有効性を検討するための調整や
 報告がなかった。

●EU GMPガイドライン9章(自己点検)の不備の例
■自己点検プログラムに関する不備
・2つの自己点検が実施されていたが、品質システムの重要側面はカバーしていなかった。
・自己点検のスケジュールが定められていなかった。


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まとめ
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いかがでしたでしょうか。
自社は大丈夫だったかなと気になる箇所もあったのではないでしょうか。
個人的には、4章(文書化)の不備は、結構よくある話なのではないかと思いました。
是非、自社の業務の見直しの参考にしていただければと思います。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。
☆次回は、6/30(金)に配信させていただきます。


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おしらせ
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弊社は、今年も、6月28日(水)~6月30日(金)に開催される医薬品・化粧品・洗剤 研究・
製造技術展インターフェックスジャパン(会場:東京ビックサイト)に出展します。
ブースは、東1ホールのITソリューションゾーン【E25-26】となります。
お時間がおありの方は、是非弊社ブースにお立ち寄りいただければ幸いです。
よろしくお願いいたします。


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https://drmarketing.jp/cch/73/70/3/426/39931/ca9f03

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