ASTROM通信バックナンバー

2017.06.30

【続 MHRA発GMP査察時の不備報告】ASTROM通信<125号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。
今年もあっという間に折り返し地点まできてしまいましたが、皆様いかがお過ごしですか?

さて、今回も、前回に引き続き、
英国医薬品庁(MHRA : Medicines & Healthcare products Regulatory Agency)が2016年に
実施したGMP査察における不備の傾向をまとめたレポートについて取り上げたいと思います。
今回は、ガイドラインのAnnex部分をみていきます。

製剤関連のみの内容ではありますが、EU GMPガイドラインに基づいた不備の具体例が挙げられ
ているので、自社の自己点検等の参考にもできると思います。
最後までお付き合い頂ければ幸いです。

出典
https://www.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/609030/MHRA_GMP_Inspection_Deficiency_Data_Trend_2016.pdf


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英国医薬品庁による2016年実施GMP査察における不備の傾向レポート
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●EU GMPガイドラインAnnex1(無菌医薬品の製造)の不備の例
微生物汚染の増加するリスク及び無菌保証を確実にするのを怠ったことに関する不備
・充填装置の入った袋(例:充填用針)は、繊維が装置/ライン、その後、製品に取り込まれる
 リスクが存在するのに、破られて開放されていた。
・繊維がストッパー、その後、製品に移るリスクが存在するのに、充填ラインに投入される前に、
 最内部のバッグが破損していた。
滅菌後に無菌接続の数が最小化されていることを示す文書化されたエビデンスが不十分であった。
・衣服が触られ着用された後、手の消毒がされていなかった。
・Grade Bゾーンで、作業者が、屋外の服を無菌服の下に来ていた。
・更衣手順は、Grade D及びCエリアに入る時、靴を脱ぐことを作業者に要求していた。
 使用されている足カバーの性質上、クリーンルームの床を歩いた操作者の足から微生物汚染が
 起きることを防ぐことはできないだろう。
・Block Bのメインオフィスで、製造作業者は、靴または靴下の上にかかとのないサンダルをはく
 ことが認められていたことが見て取れる。
・製造エリア内での作業着を着ている間、ベンチは座る前に消毒されていなかった。
・消毒した手袋を着用しGrade Bエリアに入る前に、作業者が手袋の外側を何度か触っているのを
 発見した。
・製造前、作業者が触れたり、コンパウンダー上の化学成分が接触したりする表面のみが消毒され
 が、全ての表面の消毒が望ましい。
・ボトルやバッグをつるすためのフックは、作業者の手で握られ、個々にではなくまとめて消毒されて
 いて適切に清掃されていない。
・消毒用の拭き取り繊維は、全体ではなく中心だけが湿っているだけで十分に湿っていなかった
・数人の作業者は、フードとマスクの間の隙間があり、特に、LAF(Laminar Air Flow)キャビネット
 で作業する時に製品の汚染の可能性をもたらす顔の肌の露出があった。
一方向流が維持されていることを保証するためのLAFキャビネットやアイソレータ内で物の位置が
 定義された図面や図表が現在ない。
・調合が、開放したLAFキャビネットで実施されているにも関わらず、作業者はゴーグルを着用して
 いなかった。また、アンプルは、閉じた環境ではなく、オープンな環境の調合工程で使用されていた。
・EU Grade Bエリアで、無菌ではなく消毒されたゴーグルの着用が許可されていた。
・針の据付、充填、チューブへの接続の一連作業が、汚染リスクを最小化していなかった;
 連続作業で、何回か、RABS(Restricted Access Barrier System)の手袋の指の間や、針の露出した
 先端と接触していた。
■培地充填作業に関する不備
・培地充填の試験の不合格は、時系列の記録に含まれず、作業者の評価、作業者の再訓練といった
 是正処置にも含まれなかった。
・汚染されたバッグのサンプルは保管されず、汚染細菌の種類は特定できなかった。
・培地充填のバッチサイズは60バッグだったが、充填のラベルが貼られず、汚染された容器の位置が
 特定できなかった。
・培地充填とプロセスバリデーションの研究では、無菌製造工程の全ての複雑さを記録していなかった
 ため、製造工程をしっかりと類似させられず、最悪ケースを考慮できなかった。

●EU GMPガイドラインAnnex2(生物学的製剤の製造)の不備の例
■汚染のリスクと不十分な管理に関する不備
・接触面の消毒の回数がモニタされておらず、殺胞子剤に関する5分の接触時間は、消毒物質の製造者
 によって定義されておらず、会社によってバリデートされていなかった。
・ビル管理システムの警報用ケーブルが、キャンペーン生産終了時の効果的な洗浄を助けるために
 外されていなかった。
・EU Grade Bの部屋で着用されている作業着は消毒されておらず、ゴーグルを着用せず肌は露出して
 いた。
・EU Grade Bエリアへ移送用ハッチに殺菌原料を入れる作業者は、消毒した手袋をしていなかった。
・屋外の服がEU Grade Bエリアで着用されていた。
設備はEU Grade A/B無菌工程作業に不適切であった。
・エアロックドアはインターロックされず、ドアの開放を警告するシステムも設置されていなかった。
・個々のエアの等級の切り替えロックがなかった。
・エアの供給の不具合を示す警報がEU Grade Bの部屋になかった。

●EU GMPガイドラインAnnex3(放射性医薬品の製造)の不備の例
■洗浄、確認、バリデーションの管理に関する不備
・装置が清潔で再利用できることを確認するための、洗浄され分解された装置の目視検査の
 記録が保管されていなかった。
査察に先立ち実施された交差汚染のリスクを抑えるための組織的で技術的な対策の適合性に
 関するリスク評価は、適合性や管理の潜在的な不具合の可能性を確認するための現在の管理の
 課題に生かされていなかった。
・新しい装置は、その設計や構造、洗浄目的で必要な分解に関し、完全かつ適切に評価されて
 いなかった。
装置をどのように洗浄し分解するかを開発するという手順がなかった。
傾向やバリデーションのレビュに使用する目視試験段階の不具合の記録が無かった。
・洗浄室で、洗浄済装置のドアの外側に、製品Xに関係する製造所職員に起因すると考えられる粉末の
 大きな堆積があった。全体の洗浄は装置が洗浄室に到達する前に完了されているはずなので、これは
 要求される手順の違反を意味する。
 さらに、洗浄室には大きな汚染が残されているべきでない。

●EU GMPガイドラインAnnex6(医療用ガスの製造)の不備の例
■バッチリリースと受領、保管に関する不備
バッチのリリースが、規格外の酸素含有量の記録と共に、不適切に管理されていた。
権限の与えられた品質管理者とクオリファイドパーソンのどちらも、OOS(Out Of Specification)
 の結果が記録されていることに気付かず、製品品質レビュの準備中になってはじめて取り上げられた。
・ヒューマンエラーが根本原因とされたが、これを確認する試みはなされなかった。
・所轄官庁に(欠陥医薬品報告センタ経由で)市場の欠陥製品の潜在的リスクの検討について
 報告しなかった。
・医療用酸素の入った容器が、クリーンで、使用される環境に準拠した状態で届けられるよう、
 カバーのついた状態で保管されていなかった。
・中身の入った容器に貼る発送用の製品ラベルは、登録された詳細が完全に見えないほど汚れていた。
・現在のタンカーへの充填作業は、顧客への配送前またはQPの証明の前に、予想される品質を保証して
 いなかった。
入荷した容器の残圧チェックの不足の正当性の証明が文書化されておらず、洗浄手順の
 バリデーション報告書が製造所で利用できず、そのため査察ができなかった。

●EU GMPガイドラインAnnex8(原料及び包材のサンプリング)の不備の例
■サンプリングと包材の受領の管理に関する不備
・印刷された包材の部品のサンプリング計画は、統計に基づいたものでなかった。
・印刷された包材のサンプリング場所の指示がなかった。それらは、倉庫の保管パレットの上で
 サンプリングされている。
・印刷された包材の部品のサンプリングに、印刷会社の製造方法が考慮されていなかった。
印刷された包材の部品をチェックするために使われるシェードカードは、適切に管理されていなかった。

●EU GMPガイドラインAnnex9(液剤、クリーム剤及び軟膏剤の製造)の不備の例
■製造管理に関する不備
・製造室5のミキサーは、較正されておらず、その速度は定期的に点検されていないため、定期的な
 製造工程のバリデートが確認できなかった。

●EU GMPガイドラインAnnex11(コンピューター化システム)の不備の例
■データバックアップに関する不備
・ソフトウエアのバックアップ後、オートクレーブ(加圧滅菌器)コントロールシステムのデータが
 失われた。バックアップは3ヶ月毎にだけ作られていたので、失われたデータの復元はできなかった。
・オートクレーブコントロールシステムのバックアップCD/DVDは、その完全性を保証するための管理
 された環境には保管されていなかった。
・完全性試験で得られたデータはバックアップされていなかった。システムは過去のデータに上書きしていた。
・バックアップは、データの保管期間中、アクセスできることを保証するために、5年の間、
 年1回アクセス可能性についてレビュすることが求められていたが、これを怠った。
・バックアップは、同じコンピュータドライブに作られることが許可されていたが、それは、
 ドライブの障害や破損後に、コピーが利用できることを保証することができない。
■コンピュータ化システムの不十分な管理に関する不備
全てのユーザがファイルやハードドライブのシステム時計にアクセスできた。
・ロックしたスクリーンに共有パスワードが使われていた。もし、スクリーンのロックの後に、
 ユーザがソフトウエアにログインし、別のユーザがコンピュータを開いたら、彼らは、最初のユーザの
 ログインの状態で操作ができた。
・ユーザは、SOPで許可されている以上に、クロマトグラフィデータシステムの操作権限を持っていた。
・アクセスコントロールシステムは、GMPエリアへのアクセスを管理するためのものであるのにかかわらず、
 GMPを考慮していなかった。
実験室内のHPLCのソフトウエアはGMPに従って構成設定されていなかった:
・ユーザ固有のパスワード管理が実施されていなかった。
・ユーザは、監査証跡の初期値を変更することが許されていた。
・ユーザは、“要求されるユーザコメント”の初期値を変更することが許されていた。
・ユーザは、無関係のプロジェクトのデータをコピーすることが許されていた。
・ユーザは、注釈をつけるツールを使うことを許されていた。

●EU GMPガイドラインAnnex12(医薬品製造における電離放射線の使用)の不備の例
■線量計の読み方に関する不備
・6%の変動が見られた場合、線量計が読み直され、個々の濃度がSADA(Shared-Arm Dipole Array)
 システムに入力されていた。これは、前回の合格結果の信頼性をレビュする際の逸脱にはならなかった。
・新しい濃度の読取に、データの正確性を保証するための第二の人間の確認がなかった。

●EU GMPガイドラインAnnex13(治験薬の製造)の不備の例
■治験薬の輸入に関するQPの申告の管理に関する不備
非EU加盟国からの対照薬の輸入に関するQPの申告の発行に関する責任部門が明確でなかった。
・それぞれの技術的な取り決めの中の要件であるにもかかわらず、最近輸入された製品に関し、
 申告と証明がされていなかった。
■製品規格ファイル(PSF: Product Specification File)に関する不備
PSFは臨床試験や現在のバージョン番号に関する全ての文書への参照のサマリを含んでいないので、
 不十分である。PSFと呼ばれている現在の“Manufactured Product Specification”
 という文書は適切ではない。
・治験薬の関連書類(IMPD:Investigational Medicinal Product Dossier))は、
 F国のプラスチックのバイアルのみを使わなければならないと述べているが、G国の別の
 製造所のバイアルもまた使用されている。
・IMPDは、臨床試験の申請の最初の却下や次の規格や工程の変更後に更新されていない。

●EU GMPガイドラインAnnex15(適格性評価及びバリデーション)の不備の例
■適格性評価及びバリデーションに関する不備
・現存の製造所、設備、原料の取得に関し、変更管理や全体的なプロジェクト管理がなかった。
 L設備と対照的に、A設備にはユーザ要求仕様書(URS)がなかった。
・L設備のURSは、例えば、製造用の容器の数や容量に関し、不正確だった。
・L設備の精製水システムの再適格性評価は、IQとOQのレビュで2つの品目を対象としていた。
 これらの品目は、次のPQでは対象とされず、
 製剤の品質システム(PQS: Pharmaceutical Quality System)にも記録されていなかった。
・バリデーションマスタープランは、求められる高水準の設備のバリデーション、プロセス
 バリデーション、洗浄バリデーションを考慮していなかった。
・製造工程の定期的な再バリデーションが行われていなかった。
非専用のサンプリングツールの洗浄バリデーションが行われていなかった。
バリデーション中と再適格性評価中にアイソレータの漏れ試験に用いられた方法では、漏れを
 検知できない。
・例えば、コーティングの流量や造粒のチョッパーの速度のような、バッチのプロセスパラメータ
 の範囲は、プロセスバリデーションデータにより立証されたものではなかった
・プロセスバリデーションの手順に、バリデーション用バッチが商業ベースで出荷可能になる可能性
 があることを事前に定義する明確な表示がなかった。

●EU GMPガイドラインAnnex16(QP(クオリファイドパーソン)と出荷判定)の不備の例
■輸入とバッチの保証に関する不備
・EUの品質試験のために、第三国でサンプルをとる手順が許容されていたが、このアプローチに関し、
 技術的な正当性の理由も、第三国でとられるサンプルが適切であることを証明するために定期的に
 輸入品のサンプリングをする要件もなかった。
・空輸の温度モニタリングに関する取り決めは、全てのパレットにデータロガーが必要ない理由の
 正当性を証明していなかった。
・手順上、平均運動温度(MKT: Mean Kinetic Temperature)を温度の逸脱の評価に使用すること
 は許可されていたが、逸脱の原因の調査は定められていなかった。
・いくつかの製品は、アメリカからEUに定期的に輸入され、別の第三国に輸出されるために製造所に
 保管されていたが、輸出に際し、出荷前のQPの証明の対象としていなかった。
・輸入されたバッチについて、第三国でとられたサンプルの継続的な信頼性を正当化するために、
 輸入後にサンプルの無作為の定期的な分析を行う定めがなかった。
■QPが職務を全うすることを怠ったことに関する不備
・会社は、出荷された製品に関する製造業許可について、いかなる情報も持っていなかった。
・会社は、サプライチェインの確認に関するいかなる情報も持っていなかった
・QPの証明に関する手順や管理の詳細がなかった。
・出荷証明が、会社のレターヘッドのある用紙上で文書化されていなかった。
 また、相互認証協定(MRA: Mutual Recognition Agreement)の通りにバッチの保証の内容の詳細を
 含んでいなかった。
・分析証明書の詳細がファイルに保管されていなかった。
・QPは、自身が会社の製剤の品質システム(Pharmaceutical Quality System)の最新の知識を
 持っていることを保証しなかった。

●EU GMPガイドラインAnnex19(参考品及び保存サンプル)の不備の例
■手順と管理に関する不備
保存サンプルに関する取り決めが完全には定義されていなかった。


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まとめ
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3回にわたって、英国医薬品庁がGMP査察中にみつけた不備の具体例をみてきましたが、いかがで
したでしょうか。
EU GMPガイドラインの本文からAnnexまで非常に広範囲にわたり不備の具体例があげられていました。
EU GMPガイドラインとPIC/S GMPガイドラインはほぼ同じ内容ですので、たとえEUに輸出がない会社様
でも、PIC/S GMPガイドラインに則った運用ルール構築のために参考にしていただければと思います。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

☆次回は、7/14(金)に配信させていただきます。


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【発行責任者】
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