ASTROM通信バックナンバー

2017.08.01

【中国発 2016年医薬品査察の年次報告書(2)】ASTROM通信<127号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

うだるような暑さが続いていますが、いかがお過ごしでいらっしゃいますか?

さて、今回も前回に続いて、
中国国家食品薬品監督管理局(CFDA:China Food and Drug Administration)が2016年に実施した
医薬品関連の査察の年次報告書を見ていきたいと思います。

前回のメールマガジンで、CFDAの管理レベルの高さに驚かれた方が多かったようですが、中国は
2017年6月にはICHにも加盟するなど、グローバルスタンダードに対応してきているので、今後の
動向は非常に興味深いところです。
是非、今回のメールマガジンも最後までお付き合い頂ければ幸いです。

出典
http://eng.sfda.gov.cn/WS03/CL0757/173386.html


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
2016年に実施した査察について ※Part1~Part3は前回のメルマガをご参照ください。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
Part4. 無通告査察
I. 概略
CFDAの関連部署の要求により、製薬GMPの無通告査察の作業手順に基づき、2016年はCFDAから45社の
無通告査察の仕事を受け、そのうち39社は完了し、残りは、現在実施中である。39社のうち、9社は
バイオ医薬品の製造業者、20社はTCM(Traditional Chinese Medicine:中国の伝統薬)の製造業者、
9社は化学薬品の製造業者、2社は血液製剤の製造業者である。
2016年の無通告査察において、21社(54%)が不合格となった。14社の企業の製薬GMP認証の取り消しと、
10社の取り調べの開始が示唆された。7社の問題の多い製品は、回収が命じられた。製薬GMP無通告査察
において、TCM薬品と化学薬品は、より多くの問題があると判断された。無通告査察で発見された全て
の問題は、法律に従って対処された。
II. 主な結果
(1)TCM製造業者で見つかった主な問題
20のTCM製造業者のうち12社は製薬GMPの要件を満たしていなかった。
 1.中国漢方薬の製造業者
 ①工程の正式に許可されていない変更の問題が目立った。
  経口剤の製造コストを減らすため、前処理と抽出処理の許可されていない変更が目立った。
  今年の無通告査察は、処方にある植物薬が抽出されなかったことにより実施された。
  この植物薬は、技術的な手段により抽出されるべきだが、粉砕後に直接加えられていた。
 ②植物薬及び薄切りの生薬は管理がされていなかった。
  全レベルの医薬品の規制当局による査察に対処するために、中国漢方薬の製造業者は、倉庫の原料
  のシステム在庫数と、在庫品と欠品の記録を改ざんした。
  企業の内部操作により、関連するシステム在庫と原料の記録は一致させることができたが、購入に
  関するインボイスや領収書の対応をし損ねた。また、そのような企業は、植物薬が農家から直接
  買うことができることを悪用し、逆に、中国漢方薬の製造分から植物薬を使用し、また、原料の
  システム在庫数を改ざんした。
 ③購入された植物薬と薄切りの生薬は厳格な検査の対象ではなく、データの完全性が疑わしい。
  中国漢方薬の昔ながらの製造業者は、たくさんの製品品種を持ち、その中には、多様な植物薬と
  薄切りの生薬を含んでいる。詳細の分析装置とQC職員は生産規模に適応していないため、
  購入された植物薬と薄切りの生薬の各バッチが検査されたことを保証することができない。
 2.人工牛黄
  人工牛黄は、中国薬局方で“医薬原料と薄切りの生薬”の分類のもとで販売されているので、
  それは中国漢方薬の原料に属し、人工牛黄の製造業者は製薬GMPの要件に従って製品を作ることが
  できない。特に、人工牛黄の上流サプライチェインの供給者の監査や管理に関し、製薬GMP要件が
  非常に不十分で、加工場所の衛生状態は悪く、原料はトレースできず、加工工程は管理されていない。
  主な問題は下記の通りである。
 ①供給者の管理が弱い
 ②微生物限度の信頼性試験が疑わしい
 ③品質保証システムに含まれていない
 3.薄切りの生薬
  外注委託された薄切りの生薬の販売は非常に一般的である。購入された植物薬や加工製品の含有量
  定量の問題は非常に突出している。時々、染色や重さの問題が発生し、バッチの製造記録の信ぴょう
  性が疑わしい。
 ①信頼できないバッチの製造記録
 ②疑わしい外部委託された薄切り生薬の販売
 ③データインテグリティの信ぴょう性
(2)バイオ医薬品
 1. 抗ganglioside GM1抗体ナトリウムの査察
  2016年、抗ganglioside GM1抗体ナトリウムの製造業者4社が査察を受け、原料の品質の管理と、
  豚の脳の供給者にリスクがあることがわかった。
 ①企業による供給者の管理は、効果的なトレーサビリティが保証できていないので、供給者の管理を
  向上させなければならない。
 ②豚の脳の低温輸送のモニタリング用電子データの管理が不十分だった。
 2.肝細胞の成長促進因子の注射剤の査察
  2016年、肝細胞の成長促進因子の注射剤の製造業者4社が査察を受け、2社は製薬GMP認証を取り
  消され、2社は、ワーニングレターが発行された。
 ①記録ファイルの偽造
 ②データインテグリティの問題
 ③登録された製造工程の不一致
 ④原料としての肝臓の品質の有効な保証ができないこと

Part5. 海外査察
I. 概略
(1)年間査察業務の概略
CFDAの2016年の海外査察の合計は49件だった。
 1.2016年の査察は19か国に及び、ヨーロッパ33件、北米6件、東南アジア6件、南米2件、インド
  1件、オーストラリア1件だった。ヨーロッパと北米は相対的に薬の種類が多かったこと、インドと
  ベトナムは品質リスクが高いことから査察件数が多かった。
 2.査察は、評価と承認に役立ち、市販されている製品の安全性の要件を考慮に入れるべきであるとい
  原則に従った。審査中の薬の割合が増え、査察の範囲には、治験の申請中の製品、製造や再登録
  の申請、追加申請の段階のものがすべて含まれる。販売されている製品を査察する理由は、主に通関地
  の品質試験の問題だった。海外の会社で製造された副作用のリスクが高いiodoprestamine注射剤が査察
  に追加された。
 3.査察業務は、包括的でさまざまな剤型に及び、化学製剤にも及んだ。注射剤、固形製剤、インプラント、
  スプレー式点鼻薬を含む40の化学薬品が含まれ、その中にはバイオ薬品が3件、原薬が6件、
  ワクチン・血液製剤・治療用バイオ薬品が11件、植物薬が4件含まれる。
(2)2016年の査察の実施
上半期のCFDAとCFDI(The Center for Food and Drug Inspection)の査察ツアー、関連する海外の状況や、
企業の製品の準備により、CFDIは年間を通じて37件の医薬品の査察業務を提案した。7件の現地査察を含む
15件の査察業務が完了し、そのうちの3件(42%)は、不合格になり、8件の医薬品の企業は、輸入登録認証を
取り下げるか、査察中に申請を返上した。21件については、企業の製造スケジュールにより、査察が2017年
の第1四半期に完了するよう計画された。その他の12件は、2017年の第1四半期に査察を受けられないため、
CFDIは2017年の海外査察にそれらを含めることを監督部門に報告した。
II. 主な結果
査察した7件のうち、3件が不合格になり、その率は前年に比べてわずかに増えた。査察では117の不
備が確認された。そのうちの3件はクリティカル、18件はメジャーの不備だった。問題は主に、品質
管理と品質保証、原料システム、変更管理に集中した。クリティカルの不備は主に、製造プロセスの一
貫性とデータインテグリティだった。海外査察で発見された全ての問題は、法律に従って対処された。
主な重大な問題は下記の通りである。
 1.実際の製造プロセスと製造施設が登録申請の内容と不一致で、大きな変更が中国での申請の提出なしに
  実施されていた。
 2.データインテグリティについて、製品品質に深刻な影響を与えるような重大な問題があった。
 3.オフサイトの査察で処理された品目が多数あった。

Part6. GSP(Good Supply Practice)無通告査察
I. 概略
2016年、CFDAは医薬品の流通フィールド内での違法な販売の集中的な改善を実施し、さらに、会社の
自己点検と改正、県の管理組織による管理と査察、CFDAによる無通告査察を通じて、医薬品の流通規
則を再編成し管理し、違法な販売を解決した。年間を通じて、53の医薬品卸売販売業者で査察を実施
した。無通告査察の結果はCFDAから発表された。
II. 主な結果
(1)CFDA通知No.94の違反
 1.規制に則って医薬品を保管・輸送し、温度・湿度をモニタすることを怠った。
 2.医薬品の購入・販売に関し、認証(ライセンス証明書)、請求書(インボイス、商品に添付される
  シート)、勘定(原料の数量、金融勘定)、商品(医薬品)とお金(医薬品の支払い)が一致しない
  か、または、お互いに矛盾がある。隠し口座の医薬品を倉庫に入れることを怠った。品質マネジメント
  システムに含まれた後も医薬品を管理することを怠った。ビジネスの取引に個人の口座を使用した等が
  みつかった。
 3. 企業は、医薬品の調達源を改ざんし、医薬品の販売の流れをねつ造し、コンピュータシステムや、
  温度及び湿度のモニタリングシステムのデータを改ざんし、本物の医薬品の購買―販売―保管の記録、
  請求書、領収書やデータを隠匿した。医薬品の購買―販売―保管の記録は不完全で信用できず、
  販売はトレースができなかった。
(2)企業によるCFDAの製薬GSP(Good Supply Practice for Pharmaceuticals)の違反の状況
 医薬品流通企業のGSPの問題は、主に、一般規定、保管、維持管理、販売に集中していた。主な問題は下記
 の通りである。
 1.法律に従ったビジネスの実施を怠り、虚偽や不正行為があった。
  企業は許可なく、登録された住所を変更した。許可の範囲を超えて医薬品を保管するための倉庫を
  作った。医薬品の不法な販売の条件を備えていた。医薬品の調達源と販売の流れを改ざんした。請求書
  を隠匿し、偽の原料を提供した。信用できない自己点検記録を提供した。納税申告書を改ざんした。
  温度と湿度のモニタリングデータを改ざんした。
 2.規制に従って医薬品を保管することを怠り、倉庫の温度と湿度を効果的にモニタリングすることを怠った。
 3.請求書、入出金、商品と支払が、購入した医薬品と販売した医薬品と矛盾している。企業は、特定の医薬
  品の販売に関し、国の規制を実践することを怠った。

Part7. 海外の組織によるGMP査察の観察
I. 概略
CFDAの国際協力部門からの文書に基づき、CFDIは2016年に81件の査察の観察を計画した。そのうち76社80%は
浙江 、山東、江蘇、広東、湖北、海南、および河北を含む20県におよび、これは昨年と基本的に一致している。
2016年は、査察の観察を行った査察組織は、世界保健機構(WHO)、欧州医薬品品質理事会(EDQM)、アメリカ
の食品医薬品局(FDA)、ドイツのBGV、ブラジルのANVIA、フランスのANSMなど、海外の医薬品規制当局の12個
の国際組織を含んでいた。医薬品製造業者9社(11%)でクリティカルな不備がみつかり、海外の規制当局/査察
組織による現地査察が不合格になった。
2015年と比較すると、不合格の率はわずかに増加した。査察に不合格になった9社のうち、最もクリティカルな
不備は、適格と評価されるまで、繰り返し試験を実施する、システムの時刻を変えた後に試験をする、監査証跡
の記録を消す、信用できない記録、データや記録の紛失、不十分なファイル記録管理等を含むデータインテグリ
ティだった。そして、いくつかの企業では、不当に作られた原料の基準、交差汚染を防ぐためにとっている
不適切な方法がみつかった。
全体的に、データインテグリティの問題が突出していた。2016年の国内企業の不合格の増加の主な理由は、現在
の医薬品の査察の傾向の変化を反映している。
今年の査察の観察は合計172の医薬品で、原薬が119、経口固形製剤が23、注射剤が19、バイオ医薬品が5、
その他製品が6だった。査察した81件のうち、62件(69%)が原薬、12件(13%)が経口固形製剤で、原薬の割合が最も
多かった。
II. 主な結果
2016年の査察の観察において、1108件の不備が確認され記録された。中国GMP(2010年版)に基づき、不備を分類
すると、すべての不備の88%が、①品質管理と品質保証②文書管理③装置④原料と製品⑤検証と適格性評価
⑥建物と設備の6つのカテゴリに入った。現在の海外の査察において、データインテグリティの要件が広がり
厳しくなっているという懸念を反映し、企業が徐々にデータインテグリティの管理を強化するムードの中で
2015年に比べ文書管理の不備が7%増加し、4位から2位になった。
海外の組織による製薬GMP査察において、“品質管理と品質保証”の不備は、トップの27.3%だった。主な問題は、
実験室内のコンピュータ化分析装置、逸脱の取り扱いとCAPA、製品品質レビュ、変更管理、OOS/OOTの結果の処理、
実験室の管理手順の規定との不一致、微生物試験の管理、品質リスクマネジメントと安定性試験に集中した。
2位の“文書管理”は、主に、記録の完全性と追跡可能性、文書のライフサイクルマネジメント、文書の完全性、
記録の運用の4点に集中した。
3位の“装置”の不備は、使用と洗浄、装置の保守と修理、水の準備システムで83.6%を占めた。
“原料と製品”の不備は、供給者の管理、原料と製品の識別、原料の加工の管理、原料と製品の基準への準拠、
リリース管理に集中した。
”検証と適格性評価“は主に、バリデーションの科学性、バリデーションの管理とバリデーションの文書と記録
の問題を含んでいた。”建物と設備“の不備は主に、環境の管理、保管エリアの管理、汚染及び交差汚染を防ぐ
ための手段、建物と設備のライフサイクルマネジメントを含んでいた。
III.異なる組織の製薬GMP査察の分析
査察内容の観点から、異なる製薬GMP査察機関の間で、査察の焦点に違いがあったが、2016年の査察の観察でみつ
かった不備の分析の結果、①品質管理と品質保証②文書管理③装置④原料と製品⑤検証と適格性評価⑥建物と
設備の6点により多くの不備があったことがわかった。
EDQMとWHOは、より多くの不備のデータを提出し、各査察で平均すると20件あった。各不備については査察中に
発見された問題が説明された。
査察の終了後、そのような問題は、最終査察報告の準備のためにまとめられた。アメリカのFDAは、査察において
相対的に提出した不備が少なく、各査察で平均すると7件だった。また、すべての問題を査察中に不備として
取り上げなかった。査察官は、製品リスクとの関連において識別された問題にもとづく判断の後に不備を提出した。
そして、最後の査察ミーティングの時に、Form 483の形式で企業に通知した。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
まとめ
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
2回にわたって、中国国家食品薬品監督管理局(CFDA:China Food and Drug Administration)が2016年に実施
した医薬品関連の査察の年次報告書をみてきましたが、いかがでしたでしょうか。
データインテグリティへの対応を強化しつつも査察の中で不備が多く見つかっている状況は、日本と全く変わらず
興味深かったです。
査察の中で、在庫、購入インボイス、領収書、納税申告書等を確認し、不法な販売を行っていないかをチェック
している点も非常に興味深かったです。
日本でも、もっとこのようなチェックを行っていけば、アセトアミノフェン問題のような事案が防げるのではない
かと感じました。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。
☆次回は、8/15(火)に配信させていただきます。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
★弊社サービスのご案内
https://drmarketing.jp/cch/73/82/3/426/50158/e61c34
★ブログ毎日更新中!
◆ PROS.社長の滋養強壮ブログ
https://drmarketing.jp/cch/73/82/1/426/50158/d39f92
◆ 営業ウーマンの営業報告ブログ
https://drmarketing.jp/cch/73/82/2/426/50158/861062
※URLクリック数の統計をとらせていただいております。
本メルマガは、名刺交換させていただいた方に、毎月1日、15日(土日祝日に重なった場合 は前日)に配信
いたしております。
今後このような情報が必要ない方は、お手数ですが、こちらに配信停止依頼のメールを お願いいたします。
hashimoto@e-pros.co.jp

【発行責任者】
株式会社プロス
ASTROM通信』担当 橋本奈央子