ASTROM通信バックナンバー
月別アーカイブ
2022.11.15
【EU GMP/GDPノンコンプライアンスレポート】ASTROM通信<254号>
こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。
秋も深まり紅葉が美しいこの頃ですが、いかがお過ごしでいらっしゃいますか。
さて、今回は、EUのGMP及びGDPのノンコンプライアンスレポート(Non-Compliance Report)を
取り上げたいと思います。
ウォーニングレターに比べて指摘の内容が詳しくないのですが、EUの規制当局がどんな点を指摘
しているのか、参考にしてみていただければと思います。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
1.EU GMPノンコンプライアンスレポート
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
EU GMPノンコンプライアンスレポートは、EUの当局による製薬会社の製造所の査察において、
EU GMPに不適合と判断される問題が見つかった場合に発行されるもので、3部構成になっています。
Part1に確認した当局の名前、製造業者の名前、製造所の住所等、Part2にノンコンプライアントな
製造オペレーション、Part3に不適合の内容、EUの対策等が書かれています。
査察結果を報告するという点ではウォーニングレターと似ていますが、前述の通り、ウォーニング
レターに比べて、指摘の内容があまり詳しくありません。また、不適合を、クリティカル(Critical)、
メジャー(Major)、その他(Others)に分類して、クリティカルとメジャーが何件あったかを明記
しているという特徴があります。Part3の不適合の内容をみていきたいと思います。
■Report No.BE/NC/2022/02
ベルギーの当局が2022/5/19にトルコの製薬会社を査察し、2022/5/31付で以下のノンコンプライ
アンスレポートを発行した。
●ノンコンプライアンスの性質
クリティカルな欠陥:危険な製品の交叉汚染のリスク管理の不履行
●当局によりとられた/提案された行動
・GMP証明書の取り消し
現在有効なGMP証明書の制限
・既に出荷されたロットの回収
潜在的な品質不良と供給制限のアセスメントにより回収を検討
・供給禁止
EU市場に供給されるロットは他になし
■Report No.IT/NCR/API/1/2022
イタリアの当局が2022/5/27にイタリアの製薬会社を査察し、2022/10/26付で以下のノンコンプライ
アンスレポートを発行した。
●ノンコンプライアンスの性質
査察中、メジャー13件、その他1件の不備がみつかった。メジャーの不備は、不十分な医薬品品質
システムと建物及び装置のメンテナンスに関するものだった。
具体的には、
1)査察中、許可されていない製造や装置の記録が見つかった。
製造施設内でみつかった記録は、GMP文書に記録されていないロットや装置の製造作業や装置の
使用/メンテナンスに関する非GMP文書だった。
2)建物や装置のメンテナンス・使用・洗浄作業の欠陥
ほとんどの施設は汚れており、使用目的のために適切に設計されておらず、装置は適切に洗浄も
メンテナンスもされていない。
その他に関連する調査結果は、原材料の管理、ユーティリティ、文書管理で見つかっている。
AIFA(イタリア医薬品庁)は会社の要請により、製造所を一時停止とした。市場からの回収は実施
されていない。査察した会社で製造されている原薬を含む医薬品は重要で、医薬品の不足が真の
リスクと考えられる。
●とられた/提案された行動
・現在有効なGMP証明書の取り消し
・要求された製造承認の変更
関連する各当局は、MAHと共同で医薬品の回収が必要か評価を実施する必要がある。
・供給禁止
評価には、代替の供給者がいるかと、医薬品の不足の潜在的なリスクを考慮する必要がある。
AIFAの査察時点で既にリリースされていたが、まだ出荷されておらず、会社から情報が提供され
ているロットのリテスト結果に基づき、査察した会社で製造された原薬を含む重要な医薬品の
不足の真のリスクを考慮し、販売を許可するだろう。
・その他
この会社は、新規/進行中の申請が承認されるべきでない。関連する各当局は、この会社が現在
の製造承認から削除する必要があるかどうか評価する必要がある。会社は、9月29日に、製造所
での製造作業の復活要求を提出した。AIFAの評価は進行中である。
■Report No.2022052722
デンマークの当局が2022/6/2にトルコの製薬会社を査察し、2022/9/2付で以下のノンコンプライ
アンスレポートを発行した。
●ノンコンプライアンスの性質
会社は、無菌状態で調製または最終的に滅菌された小容量の無菌医薬品を受託製造している。
会社は、1つのカプセルと国内またはDCP(Decentralized Procedure)/MRP(Mutual Recognition
Procedure)で許可されたその他の製品を含む多数の原薬と賦形剤を取り扱っている。
2022年5月30日から6月2日に実施されたオンサイトの査察で、メジャー7件を含む47件の指摘が
あった。
7件のメジャーのGMPの不備は、製品の品質と安全性にリスクをもたらす可能性があると考えられ、
2022年6月17日に監督リスクアセスメントのドラフトとノンコンプライアンスレポートのドラフト
が発行された。それ以来、会社は、査察の指摘事項で挙げられた懸念に対処する機会を得た。
会社は、いくつかのメジャーの不備の今後のアプローチについて許容可能な回答を提出した。
しかし、EU GMPに準拠しない状態で製造され、現在EU/EEA市場にある製品に関していまだに大きな
懸念が残っている。これらの懸念は、ノンコンプライアンスレポートを発行する必要があるレベル
の懸念であり、市場に対応を起こさせる可能性がある。特に、多目的装置の洗浄プロセスの不十分
な管理から生じる交叉汚染のリスクは、このノンコンプライアンスレポートの根拠となっている。
ノンコンプライアンスレポートの根拠となるその他の残りのリスクは、手作業の目視検査の不十分
な管理と、継続的な工程の検証の不足から生じる不十分なプロセスバリデーションの管理である。
これらの不備は、使用されている充填技術(BFS(成形同時充填), PFS(プレフィルドシリンジ),
バイアル、アンプル))に関わらず、製造される全ての製品にあてはまる。メジャーの不備の詳細
なリストは、監督リスクアセスメント内で見ることができる。
●とられた/提案された行動
・現在有効なGMP証明書の取り消し
・既にリリースされたロットの回収
品質不良の可能性と、製品の重要性及び供給制限の可能性に関する当局のアセスメントに従い、
会社が製造した医薬品の全てのロットの回収の検討が推奨される。
・供給禁止
品質不良の可能性と、製品の重要性及び供給制限の可能性に関する当局のアセスメントに従い、
会社が製造した医薬品のロットの更なる流通とクオリファイド・パーソンによる認証の停止の
検討が推奨される。
・その他
当局は、契約提供者と受託製造業者の間の契約上の責任が明確で、両当事者により遵守されている
ことを確実にするために、影響を受ける医薬品販売承認取得者/契約提供者と連絡をとることを
推奨している。
■Report No.IT/NCR/API/02/2022
イタリアの当局が2022/9/1にイタリアの製薬会社を査察し、2022/10/7付で以下のノンコンプライ
アンスレポートを発行した。
●ノンコンプライアンスの性質
製造されたほとんど全ての原薬は、社内で注射剤を製造するのに使用されていたが、登録ファイル/
販売承認は、どの医薬品販売承認取得者からも提出されていなかった。
以下の懸念が生じる:HVACシステムの欠如による、ウイルス不活性化活動の前と後の交叉汚染の
リスク。さらに、同じ装置が、ウイルス不活性化活動前後のステップで仕様されていた。
ウイルス不活性化活動前の汚染管理の不備:一部の作業は、密閉システム内で実施されていなかった。
洗浄活動の管理の不備:不活性化剤(NaOH 1M)の接触時間は、装置の接触部品についてバリデートされ
ていなかった。不活性化活動の前後、仕上げ段階で使用された装置の洗浄や、洗浄された装置の保管
で使用できる洗浄室は1つだけだった。
供給者のバリデーション管理の不備:供給者は監査されたことがなかった。有効成分の製造に関する
リスク評価のための、ウイルスの安全性に関すリスクアセスメントは実施されなかった。最終的な
不定の化学物質を特定するための分析試験は業務用ロットでは行われず、試験室での試験のみが実施
された。2021年9月21日に、製造許可が停止された。
●とられた/提案された行動
・現在有効なGMP証明書の取り消し
・既にリリースされたロットの回収
原薬は医薬品製造用に出荷されていなかった。原薬は、社内で注射剤を製造するために使用された。
出典:
http://eudragmdp.ema.europa.eu/inspections/gmpc/searchGMPNonCompliance.do
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
EU GDPノンコンプライアンスレポート
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
EU GDPノンコンプライアンスレポートは、EUの当局による医薬品卸売販売業者の査察において、
EU GDPに不適合と判断される不備がみつかった場合に発行されるもので、3部構成になっています。
Part1に確認した当局の名前、卸売販売業者の名前、卸売販売業者の住所等、Part2にノンコンプライ
アントな作業、Part3に不備の内容、当局の対策等が書かれています。
Part3の不備の内容をみていきたいと思います。
■Report No.2022_NCS_001
フランスの当局が2022/1/6にフランスの卸売販売業者を査察し、2022/6/16付で以下のノンコンプライ
アンスレポートを発行した。
●1.ノンコンプライアンスの性質
欠陥のある品質システム、安全対策が実施されておらず、コールドチェイン製品の管理されていない
保管条件(温度)、シリアルナンバリングの不履行
●2.当局によりとられた/提案されたアクション
卸売販売業許可の差し止め
■Report No.24.05.17-07-0030
ドイツの当局が2022/1/12にドイツの卸売販売業者を査察し、2022/1/18付で以下のノンコンプライ
アンスレポートを発行した。
●1.ノンコンプライアンスの性質
必要とされる専門知識を持った責任者の不在
-卸売販売業者が、法令で規定された適切な業務が遵守されていることを保証することができない
-供給者と顧客の適格性評価がない
-卸売販売許可に含まれない医薬品の取引
●2.当局によりとられた/提案されたアクション
-卸売販売業許可の差し止め
●3.追加コメント
-顧客はドイツのみに存在する
■Report No.G3-5423/dubrau-roge_20220601
ドイツの当局が2022/5/2にドイツの卸売販売業者を査察し、2022/6/1付で以下のノンコンプライ
アンスレポートを発行した。
●1.ノンコンプライアンスの性質
・医薬品品質システムが使用できない
・責任者の不在
●2.当局によりとられた/提案されたアクション
-卸売販売業許可の差し止め
■Report No. NCD/012/RO
ルーマニアの当局が2022/6/8にルーマニアの卸売販売業者を査察し、2022/8/16付で以下のノン
コンプライアンスレポートを発行した。
●1.ノンコンプライアンスの性質
会社が行った活動がGDPを遵守していなかった。(例:卸売販売活動を許可されていない事業体
からの調達)
●2.当局によりとられた/提案されたアクション
-卸売販売業許可の差し止め
●3.追加コメント
最新の査察中に得られた情報によれば、会社はルーマニアの顧客にのみ医薬品を供給した。
■Report No. DE_BW-03_: WDA_2018_0012_2022_07_12
ドイツの当局が2022/7/7にドイツの卸売販売業者を査察し、2022/7/12付で以下のノンコンプライ
アンスレポートを発行した。
●1.ノンコンプライアンスの性質
卸売販売業に関する責任者の不在
●2.当局によりとられた/提案されたアクション
卸売販売業許可の差し止め
■Report No. BE/NC/2022/03
ベルギーの当局が2022/10/7にベルギーの卸売販売業者を査察し、2022/10/21付で以下のノンコン
プライアンスレポートを発行した。
●1.ノンコンプライアンスの性質
輸入許可の無い医薬品の輸入/許可されていない団体への医薬品の販売/許可されていな部屋での
医薬品の保管/原薬の登録のない原薬の販売/責任者の適切な職務の不履行
●2.当局によりとられた/提案されたアクション
卸売販売業許可の差し止め
■Report No. 32973
アイルランドの当局が2022/10/11にアイルランドの卸売販売業者を査察し、2022/11/2付で以下の
ノンコンプライアンスレポートを発行した。
●1.ノンコンプライアンスの性質
これに限定されないが、会社は、サプライチェインの完全性と、供給された医薬品の安全性を
保証するために、医薬品の調達、保持、供給に関し、以下のことを含む、適切な管理を証明する
ことを怠った。
・許可されていない施設での医薬品の保管
・責任者が卸売販売業者の管理のもとで発生する活動の管理と、GDPの記録の正確性や品質を証明
することを怠った。
・許可されていない施設での調達及び供給活動の実施
・卸売販売業者の敷地で、卸売販売業者の管理のもとで実施された卸売販売活動に関連する記録が
ない。
・現場で品質マネジメントシステムが維持されいない、もしくは、使用されていない。
・卸売販売業者の施設が厳重に警備されておらず、医薬品が保管されているエリアは目的に適して
いない。
●2.当局によりとられた/提案されたアクション
卸売販売業許可の即時差し止め
●3.追加コメント
N/A
出典:
http://eudragmdp.ema.europa.eu/inspections/view/gdp/viewGDPCertificate.xhtml
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
まとめ
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
いかがでしたでしょうか。
GDPノンコンプライアンスレポートの1件目(Report No.2022_NCS_001)に、シリアルナンバリング
の不履行の指摘が含まれていました。
シリアルナンバリングは、偽造医薬品対策の一貫として2019年2月を期限にEUが導入した、医薬品
のパッケージに製品コード、シリアル番号、ロット番号、有効期限を印字する制度で、日本から
EUに輸出する際にも適用されるのですが、現時点で徹底されていないケースがあるようで興味深い
です。
2022.11.01
【最近のウォーニングレター】ASTROM通信<253号>
こんにちは。
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。
今年も残すところ2ヶ月となりましたが、いかがお過ごしでいらっしゃいますか。
さて今回は、アメリカ食品医薬品局(FDA)がアメリカ国外の製薬会社向けに出したウォーニング
レター2件を見ていきたいと思います。
FDAがどのような点を問題視して指摘しているかをご確認いただければ幸いです。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
最近のウォーニングレターの概要
注:文中のXXはウォーニングレターでマスキングされている文言及び具体的な社名・品名等です。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
■CMS#624255■
2021年11月1日~11月18日のオランダの製造所の査察でみつかった原薬製造の重大なCGMP違反に
ついて発した2022年6月14日付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。
●指摘1
潜在的な交叉汚染を避けるために、適切なCGMPのもとで原薬の再包装を実施していなかった。
<指摘1詳細>
テストステロン、エストラジオール、ベタメゾン、タモキシフェン、オピオイドなどの非常に
強力な医薬品を含む原薬の再包装及び再ラベル貼付作業中、貴社は、非専用キャビン(製造室)の
洗浄手順が、潜在的な交叉汚染を防ぐために適切である事を示すための洗浄バリデーションを
実施することを怠った。
例えば貴社は、現在の洗浄手順を裏付ける完了した洗浄バリデーションを提出することが出来な
かった。
査察中、貴社は、2008年の洗浄バリデーションの検証は現在の洗浄手順を表しておらず、貴社の
洗浄手順は再バリデートする必要があることを認めた。潜在的なキャリーオーバーに関して
ワーストケースのシナリオであると判断されたキャビンXXの2020年の洗浄バリデーションプロトコル
のリスク評価を提出した。採取場所は、汚染のリスクレベルに基づいて決定された。貴社は、
我々査察官に、許容可能な規格を著しく超えたキャリーオーバーレベルのナイアシンと
プロゲステロン(強力な化合物)の残留物に関する予備試験の結果を提出した。貴社は、補足的な
バリデーションを実施中であると我々査察官に知らせた。
貴社は、貴社の装置が十分に洗浄されていると保証することを怠った。例えば、査察中、
プロゲステロンの再包装に続いて、洗浄が完了したと文書化された後、我々査察官は、
非専用装置(格納フードのXX)上に目に見える粉末の残留物を発見した。また、査察官は、洗浄活動
が開始されていなかったにも関わらず、リドカインHClの再包装中にキャビンXXの洗浄ログはXXで
あることを発見した。後で貴社は、従業員が洗浄ログを破棄し、我々査察官にコピーを提供でき
ないと述べた。
貴社は回答の中で、ナイアシンのふき取りサンプルのキャリーオーバーのみ評価し、最初の洗浄
バリデーションに含まれていたプロゲステロンについては評価していない、フォローアップの
洗浄バリデーション報告を提供した。貴社が査察官に提出した誤った残留物の結果を考えると、
プロゲステロンXXの考慮の欠如は、許容できないレベルのプロゲステロンの交叉汚染をもたらす
ことになるかもしれない。さらに、貴社は、現在のバリデーションに含まれていない他の
製造エリアで許容レベルを超える医薬品の残留物を検出していたにもかかわらず、貴社が提出した
ナイアシンのサンプルデータは、容器XXの表面のみに限定されていた。また貴社は、細胞毒性
化合物の破壊工程を含む洗浄手順の改訂中であると述べた。また貴社は、追加の洗浄バリデー
ション活動の実施をコミットしていて、特定の部屋で再包装された特定の原材料の分離を評価する
つもりであると述べた。
貴社の洗浄手順が再包装された原薬の交叉汚染を防ぐために適切であるという証明を怠っている
ので、貴社の回答は不十分である。貴社は、貴社が販売している様々な原薬の交叉汚染の可能性
を評価するための包括的なリスクアセスメントを実施していなかったし、洗浄の再バリデーション
を実施しながら貴社の装置が適切に洗浄されたことを保証するための暫定的な計画の詳細を説明
しなかった。
洗浄中の製造装置からの有効成分や残留物の不十分な除去は、貴社の原薬の交叉汚染につながる
可能性がある。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・交叉汚染の危険の範囲を評価するための貴社の洗浄効果の包括的で独立した回顧的アセスメント
残留物、不適切に洗浄されていたかもしれない他の製造装置の特定と、交叉汚染された製品が
販売のためにリリースされたかどうかの情報を含めよ。
アセスメントは、洗浄手順と業務の不備を特定し、複数製品を製造するために使用されている
製造装置の各部品を網羅すべきである。
・貴社の洗浄プログラムの回顧的なアセスメントに基づく貴社の洗浄手順と業務の適切な改善と、
完了までのタイムラインを含んだ、是正処置・予防処置(CAPA)の計画
装置洗浄のライフサイクルマネジメントに関する貴社の手順の脆弱性の詳細なサマリを提出
せよ。
洗浄効果の向上、全ての製品と装置に関する適切な洗浄の実施の検証、その他必要とされる
全ての修正を含む、貴社の洗浄プログラムの改善について述べよ。
・貴社の医薬品製造作業におけるワーストケースとして特定された条件を取り入れることに特に
重点を置いた洗浄バリデーションプログラムへの適切な改善
改善には、これに限定されないが、以下の全てのワーストケースの特定と評価を含むべきで
ある:
〇より高い毒性を持つ医薬品
〇より高い有効性を持つ医薬品
〇洗浄溶液の中でより低い溶解度の医薬品
〇洗浄を難しくする特性を持った医薬品
〇洗浄を最も難しくする拭き取り場所
〇洗浄前の最大保持時間
さらに、新しい製造装置や新しい製品を導入する前に、貴社の変更管理システムでとられる
べき手順を述べよ。
・製品、工程、装置の洗浄手順の検証とバリデーションのための適切なプログラムが実施されて
いることを保証する最新の標準操作手順(SOP)のサマリ
・強力な化合物の交叉汚染に関する各ロットの保管サンプルから得られた全ての結果のサマリ
もしそれらの試験で基準を下回る品質の医薬品が見つかった場合、顧客への通知や製品の回収
などの迅速な是正措置をとること。
●指摘2
規格外の結果を適切に調査・文書化し、適切な是正処置を実施することを怠った。
<指摘2詳細>
貴社の規格外(OOS)の試験結果の調査は不十分である。貴社はOOSの結果の調査や、適切なCAPAの
実施を怠った。例えば貴社は貴社の精製水システム(医薬品の成分として使用)のバイオバーデン
の総数のOOSについて調査を開始しなかった。貴社の試験手順には、アクションには過去のデータ
とXXのサンプリングと試験の頻度のレビュ、微生物の特定、最後に合格の試験結果が出た日以降
に使用された装置と製造された医薬品の隔離を含めるべきであると述べている。2020年6月5日、
製造XXのバイオバーデンの約XX CFU/mLの総数は、XX CFU/mL以下というアクションリミットを
超えている。貴社は調査を開始しなかった。
貴社は回答の中で、CAPA(XXの調査を含む)はXXであると認め、結果の回顧的な分析を実施し
適切なアクションを決定するつもりであると述べた。貴社は、潜在的な根本原因を評価し、患者の
安全性と製品品質のリスクを評価し、不具合の範囲と重大さを判断し、CAPAを実施し効果を検証
するために、不適合な結果を調査することを怠った。
不十分な調査は、不適合の根本原因の特定や緩和につながらず、安全で有効な医薬品の一貫した
製造を保証しない。
不具合、OOS、傾向外、その他の予期しない分析結果の取り扱いや、調査の文書化に関する更なる
情報について、
FDAのガイダンス文書Investigating Out-of-Specification (OOS) Test Results for Pharmaceutical Production
を見よ。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・この文書の日付時点で使用期限内かつアメリカ市場にあるアメリカ向け製品について、全ての
無効化したOOS(工程内試験、リリース試験、安定性試験を含む)の結果の回顧的で独立したレビュ
と、各OOSに関する下記の情報を含む分析結果をまとめたレポート
〇無効化されたOOSの結果に関する科学的な正当化の理由とエビデンスが、断定的もしくは
非断定的でも、原因となる試験のエラーを示しているかどうかの判断
〇試験の根本原因が最終的に確認された調査について、論理的根拠を提出し、同じまたは類似の
根本原因に対して脆弱な他の全ての試験方法が改善のために特定されていることを保証せよ。
・回顧的レビュで、試験室にて決定的な根本原因がみつかっていない、または、根本原因が特定
されていない全てのOOSについて、製造の徹底的なレビュ(例:バッチ製造記録、製造ステップの
適格性、装置/設備の適合性、原材料のばらつき、工程の能力、逸脱の履歴、苦情の履歴、ロット
の不具合の履歴)を含めよ。各調査について、潜在的な製造の根本的原因と、製造作業の改善の
サマリを提出せよ。
・貴社のOOSの結果の調査システムに関する包括的なレビュと改善の計画
CAPAには、これに限定されないが、以下のことへの対応を含めるべきである:
〇試験の調査の品質部門の監督
〇有害な試験管理の傾向の特定
〇試験のばらつきの原因の解決
〇試験の原因が決定的に特定できない場合は、製造の潜在的な原因の徹底的な調査の開始
〇各調査の適切な範囲の決定とそのCAPA
〇これら及びその他の改善を伴う、OOSの調査手順の改訂
●指摘3
品質部門は、施設で製造される原薬がCGMPに従っていることを保証する責任を果たしていなかった。
<指摘3詳細>
貴社の品質部門(QU)は、貴社が再包装し販売している原薬がCGMPの要件を満たしていることを保証
するための重要ないくつかの機能を果たしていなかった。例えば、査察官は、CGMP関連の試験装置
につなげられたコンピュータが、制限なしで医薬品のリリースを裏付けるために生成されたデータ
の変更や削除が許されていることを発見した。
さらに査察中、貴社は貴社のQUがリソースの問題で、製品リリースを裏付けるために貴社が使用
している契約試験機関の適格性評価をしていなかったことを認めた。これは、2017年の査察の
繰り返しの指摘事項である。
貴社は回答の中で、CGMP関連の作業で使用されている装置を評価し、21 CFR Part11に従っている
ことを保証するために必要なアクションを実施するつもりであると述べた。我々は、貴社の
契約試験機関の適格性評価を実施、供給者の適格性評価をサポートするために追加のQUの職員を
すぐに雇うという貴社の約束を認識している。
試験装置の不備に対する単純な対応では、全体的なCGMP遵守を達成するには不十分であるため、
貴社の回答は不適切である。これらのステップは、貴社が、貴社のQUがロットのリリース作業の
一貫として、全ての製造と管理データとそれに関連する監査証跡をレビュすることを確実にする
適切な手順とシステムを確立してそれに従う場合に限って有効である。さらに貴社は、上記の
欠陥がどのように医薬品の品質に影響したかを評価し、追加の職員がいかに適切にQUの不備を
改善するかを特定することを怠った。
適切なQUが全てのCGMP作業を監督することは、一貫した製品品質を保証するために必要である。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・貴社のQUが効果的に機能するために権限とリソースを与えられていることを確実にするための、
包括的で独立したアセスメントと改善計画
アセスメントは、これに限定されないが、以下の情報を含むべきである:
○貴社で使用されている手順が安定していて適切かどうかの判断
○適切な手順の遵守を評価するための、貴社の作業全体のQUの監督に関する規定
○QUによるロットの処遇の判定前の、各ロット及びそれに関連する情報の完全で最終的な
レビュ
○調査の監督と承認と、全ての製品の同一性、濃度、品質、純度を保証するための、QUの
その他の業務の遂行
〇また、経営陣が、これに限定されないが、新たな製造/品質の問題に積極的に対処し、継続的
な管理状態を保証するためのリソースのタイムリーな提供を含む品質保証と信頼可能な作業を
いかにサポートするかについて述べよ。
・貴社の試験の業務、手順、包装、装置、文書、分析者の能力の包括的で独立したアセスメント
このレビュに基づき、貴社の試験システムを改善し、効果を評価するための詳細な計画を提出せよ。
・成分、容器、蓋の全ての供給業者が、それぞれ適格であり、原材料には適切な使用期限または
リテスト
日付が付与されているかどうかを判断するための、貴社の原材料システムの包括的で独立した
レビュ
レビュには、不適切な成分、容器、蓋の使用を防ぐために入荷した原材料の管理が適切かどうか
を判断することも含むべきである。
・入荷した成分の各ロットを製造に使用するために試験してリリースするために貴社が使用して
いる化学及び微生物学上の品質管理の規格
・同一性、濃度、品質、純度の全ての規格への一致について、入荷した成分の各ロットを貴社が
いかに試験するつもりかの記述
もし貴社が濃度、品質、純度に関しXXを試験する代わりに、供給者の分析証明書(COA)の結果を
受け入れるつもりなら、初期のバリデーションとXXの再バリデーションを通じて、いかに
確実に供給者の分析結果の信頼性を確認するかを明記せよ。さらに、入荷した成分のロットの
XXについて、特定の同一性試験をXXで常に実施するという約束を含めよ。
・成分の各製造業者から得たCOAの信頼性を評価するための、全ての成分の試験から得られた
結果のサマリ
このCOAのバリデーションプログラムについて述べた貴社のSOPも含めよ。
・貴社が製造した医薬品を試験する契約試験機関の適格性評価と監督のためのプログラムの
サマリ
●追加の原薬CGMPのガイダンス
FDAは、原薬がCGMPに則って製造されたかどうかを判断する際、ICH Q7に概説されている期待を
考慮する。
FDAのガイダンス文書Q7 Good Manufacturing Practice Guidance for Active Pharmaceutical Ingredients
を見よ。
●CGMPコンサルタントの推奨
貴社で確認した逸脱の性質に基づき、我々は、CGMPの要件を満たすように貴社を支援するために
コンサルタントを雇うことを強く勧める。貴社のコンサルタントの使用は、CGMPを順守するため
の貴社の義務を軽減するものではない。貴社の経営陣には、継続的なCGMP順守を保証するために、
全ての不備とシステムの欠陥を解決する責任が残る。
●結論
この文書で挙げた逸脱は、貴社の施設に存在する逸脱の包括的なリストではない。貴社には、
逸脱を調査し、原因を判断し、再発やその他の逸脱の発生を防止する責任がある。
この文書内の逸脱を速やかに是正せよ。これらの逸脱の即座の是正の不履行は、制限のない
差し押さえ、強制命令を含む、さらなる通知のない制限または法的なアクションにつながる
かもしれない。未解決の逸脱は、他の連邦機関の契約授与も妨げるかもしれない。
逸脱への対処の不履行は、FDAの輸出証明の発行の差し控えにもつながるかもしれない。全ての
逸脱に完全に対応がされ、我々が貴社のCGMPの遵守を確認するまで、FDAは貴社の医薬品製造業者
としての新しい申請やリストの補完の承認を保留するだろう。我々は、貴社が全ての正処置を
完了したことを確認するために再査察を行うかもしれない。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
■CMS#629115■(320-22-20)
2022年1月31日~2月4 日のスペインの製造所の査察でみつかった原薬製造の重大なCGMP違反に
ついて発した2022年6月30日付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。
●指摘1
貴社の中間体及び原薬の品質特性のばらつきを引き起こす可能性のある製造ステップの進捗を
モニタし性能を管理するための文書化された手順を制定することを怠った。
<指摘1詳細>
貴社は、USP原薬XXのリワークしたロットに関し適切なモニタリングと管理を達成すること
を怠った。2020年と2021年、USP原薬XXの約23ロットが、微生物規格外、XXの高度の不一致、
クラス3の残留溶媒の含有量により、貴社の産業用XX内でリワークされた。産業用XXの使用は、
USP原薬XXに関して確認されたプロセスバリデーションに含まれていなかった。査察官は、
このXXが、合格の結果が得られるまでXX回からXX回、複数のロットをリワークするために
使用されたことを記録した。このリワークのステップの有効性を確認するための検証は実施
されていなかった。さらに貴社の産業用XXは、XXの性能をモニタするための、リアルタイムの
XXモニタリングや、XXサマリを装備していなかった。
貴社のリワークの作業が一貫した医薬品の品質を維持できることを保証するために工程管理の
モニタリングに関する継続的なプログラムは不可欠である。貴社が製造しているUSP原薬XXは、
XXを治療するための医薬品を製造するために使用されている。これらの製品の治療域の狭さに
より、適切な混合、プロセスバリデーションを通じて適切に評価された製品の製造は、患者の
不十分または過剰な投薬を防ぐために不可欠である。
貴社は回答の中で、XX工程の不十分な管理とモニタリングがあったことを認めた。さらに、
貴社は、微生物汚染減数工程のバリデーションを実施することを約束した。
貴社の回答は不十分である。貴社の回答は、実行された追加のXXは再処理であると繰り返
し説明した。しかし、バリデートされた製造工程にない装置の使用はリワークとみなされる。
さらに貴社は、バリデーションが実施できるまで、貴社の製造工程が適切に微生物汚染と
XX含有量を低減できることを保証するための暫定的措置をとることを怠った。また貴社は、
リワーク中に使用された産業用XXに関し、工程管理の欠如に対処するための是正処置をとる
ことも怠った。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・貴社の製造工程が適切な規格と製造標準を一貫して満たすような、全てのばらつきの原因
を特定し監視する、データ駆動型の科学的に妥当なプログラムが存在することを保証する
ための、実施されたリメイク作業を含む、USP原薬XXの製造工程のアセスメント
アセスメントは、これに限定されないが、装置の使用目的への適合性の評価、貴社のモニタ
リング及び試験システムの検出可能性の十分性、投入原材料の品質、製造工程の各ステップ
の信頼性と管理、貴社の製造工程の再バリデーションの必要性を含む。
・管理状態が適切に完全に確認されずに販売されている医薬品のための改善された工程の
性能適格性評価の完了のタイムライン
・貴社の製造作業の、詳細で徹底的な全ての微生物の危険性のレビュを含む、設計と管理の
包括的で独立したアセスメント
●指摘2
リワークされた原材料が、元の工程で製造されたのと同等の品質であることを示すために、
リワークされたロットが適切な評価と安定性試験を受けていることを保証することを怠った。
<指摘2詳細>
リワークされたUSP原薬XXは、安定性試験を受けていなかった。2020年と2021年に、
USP原薬XXの約23ロットは、バリデートされた製造工程でない産業用XX内でリワークされた。
これらのロットは、微生物規格外や、XXの結果の高度の不一致によりリワークされた。
リワークされたロットのいずれも、バリデートされた工程で製造されたのと同等の品質である
ことを保証するための安定性試験を受けていなかった。
貴社は回答の中で、不純物プロファイルパラメータと安定性を示す分析方法を開発すると約束
した。
しかし貴社は、貴社が提案したアクションが完了するまでの暫定的な手段をとることを怠った。
さらに現在販売されているリワークされたロットの安定性は評価されていない。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・是正処置・予防処置が完了するまでに実施される暫定手段
・貴社の安定性プログラムの妥当性を保証するための包括的で独立しアセスメントとCAPAの
計画
貴社の修正されたプログラムは、これに限定されないが、以下のことを含むべきである:
〇出荷許可前の、市販の容器施栓システムの中のリワークされたUSP原薬XXの安定性の検証
〇うたわれている品質保証期限が妥当かどうかを判断するために、各製品の代表的なロット
が毎年プログラムに追加されていくような継続的なプログラム
〇各ステーション(タイムポイント)で試験される特定の属性の詳細な定義
・貴社の改善された安定性プログラムのこれら及びのその他の要素を述べた全ての手順
・バリデートされた工程との同等性を判断するために、リワークされたロットをどのように
評価するかを述べたリワークの手順
●工程管理
貴社は、安定した製造作業と一貫した製品品質を保証すために、工程管理をモニタリングする
ための適切な継続的プログラムを持っていない。
FDAがプロセスバリデーションの適切な要素とみなす一般的な原則とアプローチについて、
FDAのガイダンス文書Process Validation : General Principles and Practicesを見よ。
●CGMPコンサルタントの推奨
貴社で確認した逸脱の性質に基づき、我々は、CGMPの要件を満たすように貴社を支援するため
にコンサルタントを雇うことを強く勧める。貴社のコンサルタントの使用は、CGMPを順守する
ための貴社の義務を軽減するものではない。貴社の経営陣には、継続的なCGMP順守を保証する
ために、全ての不備とシステムの欠陥を解決する責任が残る。
●結論
この文書で挙げた逸脱は、貴社の施設に存在する逸脱の包括的なリストではない。貴社には、
逸脱を調査し、原因を判断し、再発やその他の逸脱の発生を防止する責任がある。
この文書内の逸脱を速やかに是正せよ。全ての逸脱に完全に対応がされ、我々が貴社のCGMPの
遵守を確認するまで、FDAは貴社の医薬品製造業者としての新しい申請やリストの補完の承認を
保留するだろう。
我々は、貴社が全ての正処置を完了したことを確認するために再査察を行うかもしれない。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
まとめ
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
いかがでしたでしょうか。
今回は2件とも原薬製造に関する指摘事項でした。
再包装時の洗浄の管理、リワーク時の管理など、通常と違って手順があいまいになりがちな
部分の指摘が含まれていて興味深かったです。
是非参考にしていただければと思います。