ASTROM通信バックナンバー

月別アーカイブ

2013.03.15

【忘れていませんか?コンピュータ化システムのBCP!】ASTROM通信<22号>

~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

寒暖の差は激しいものの、少しずつ春めいてきましたが、皆様いかがお過ごしで
いらっしゃいますか?

さて、この3/11で東日本大震災の発生から2年がたちました。
震災をきっかけに、BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)を策定したり、
見直しをかけられたりした製薬会社様が多いのではないかと思います。
そこで今回は、製薬会社様のBCPについて、取り上げたいと思います。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
製薬会社様のBCPの状況
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ちょうど2013年3月11日付の薬事日報1面に「製薬企業の災害対策進む」という記事が
載っていました。
それによりますと、震災による直接的な被害は受けなかった製薬会社様も含め、多く
の製薬会社様が、医薬品を安定供給するという社会的使命を果たすために、今後起こり
得る大規模災害に備えて社内体制を整備しているようです。

具体的には以下のことが挙げられます。
・BCPの策定をはじめとする社内規定やマニュアルの整備
・建物の耐震対策
・立体自動倉庫の製品落下防止策(積荷の結束、組み込み方法の変更)
・不測の停電を想定した電力確保
・水源(水道・地下水)の整備
・二重生産体制の構築(バックアップ生産体制の整備、委託製造の活用)
・拠点間の機械の共通化
・原料調達ルートや流通センターの複数化
・製品の分散保管
・在庫水準の見直し(緊急性や代替性から優先品目を決めて在庫量を引き上げる等)
・社員・家族の安否確認手順の充実(安否確認システムや二重連絡網の整備、衛星電話
  の設置)
・防災備品の整備(食料、水、毛布等)

在庫水準について、キッセイ薬品様では、今後の工場被災に備えて、製品在庫量を
6か月に引き上げたそうです。
各製薬会社様が、かなり災害対策を強化されていることがよくわかります。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
コンピュータ化システムに関するBCP
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
上記災害対策の中に、コンピュータ化システムに関するものが含まれていませんが、
コンピュータ化システムについても、当然BCPを検討しておく必要があります。

ご存知の通り、近年、日常業務へのコンピュータ化システムの活用が進んでいます。
“いざとなったら、人間がどうにかするさ”と思っていても、実際にはシステムなし
の業務は難しいと思います。

システムに入っているデータが消滅してしまったら、どうなるでしょうか。
製造ラインが止まった時を想定してどんなに製品在庫を十分に確保していても、製品の
保管場所の情報が消えてしまったり、出荷先の住所がわからなくなってしまったり
すれば、出荷は難しいです。

ということで、2012年2月1日に厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課の事務連絡
で活用が決まったPIC/S GMPガイドラインのANNEX11には以下の記述があります。

■14章
データは定期的にバックアップすることにより保護しなければならない。バックアップ
データは必要な限り、離れた安全な場所に保管しなければならない。

■15章
システムが故障した場合に運用する適切な代替手段を準備しておかなければならない。
代替手段を使用に移すために要する時間は、それらの使用を必要とする緊急度に関連して
いなければならない。例えば、回収を実行するため必要な情報は、すぐに利用できるよう
にしておかなければならない。

■16章
システムが故障した場合に遵守する手順が規定され、バリデーションを実施しなければ
ならない。いかなる不具合、及び実施した改善措置も記録しなければならない。

実は、このPIC/S GMP ANNEX11は、ヨーロッパでは、2013年1月1日に改訂され、多少、
記述が変わっていますので、一応、最新のANNEX11についても引用しておきます。

14章の、バックアップデータを必要な限り、離れた安全な場所(at a separate and
secure location)に保管しなければならないという記述はなくなり、代わりに
新ANNEX11の7.1章では、データは物理的・電子手段によって損害から守られるべきで
あるという条文になっています。

また、新ANNEX11の16章には、事業継続(Business Continuity)という独立した条文
が作られています。

■新ANNEX11 16章
重大なプロセスを支援するコンピュータ化システムの利用については、システムが
機能停止した場合のプロセスの支援の継続性を保証するための対策がとられなければ
ならない。(例:マニュアルまたは代替システム)代替手段を手配し使い始めるのに
必要な時間は、リスクに基づき、個々のシステム毎にそのシステムがサポートする
ビジネスプロセスにふさわしいものでなければならない。
これらの代替手段の手配は、適切に文書化されテストされていなければならない。

新旧いずれの条文を見ても、以下のことだけは必ず実施しておいたほうがいいでしょう。
1.システムに保存しているデータが全て消滅してしまうことがないように、
  バックアップデータをもつ
2.コンピュータ化システムが使えなくなった場合のリスクを評価し、リスクに応じた
  BCPを策定する。

そして、新しい条文にあるように、策定したBCPが実際に運用できるものなのか、テスト
しておく必要があります。
通常業務と並行して検証するのは難しいかもしれませんが、せめて机上での
シミュレーションを実施しておくべきでしょう。

大手企業に比べ、中小企業のBCP策定が遅れているということをよく聞きます。
しかし、日本の製薬業界において、中小製薬会社様の担う役割は非常に大きいです。
是非、中小製薬会社様も、医薬品の安定供給のためにBCPを策定されることをお勧めします

最後までお読み頂き、ありがとうございました。
☆次回は、4/1 (月)に配信させていただきます。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

★弊社サービスのご案内
http://e-mktg.jp/~pros/_dm/cc.php?ccd=3.181.430

★ブログ毎日更新中!
◆ PROS.社長の滋養強壮ブログ
http://e-mktg.jp/~pros/_dm/cc.php?ccd=1.181.430
◆ 営業ウーマンの営業報告ブログ
http://e-mktg.jp/~pros/_dm/cc.php?ccd=2.181.430

※URLクリック数の統計をとらせていただいております。

本メルマガは、名刺交換させていただいた方に、毎月1日、15日
(土日祝日に重なった場合は前日)に配信いたしております。
今後このような情報が必要ない方は、お手数ですが、こちらに
配信停止依頼のメールをお願いいたします。
hashimoto@e-pros.co.jp

【発行責任者】
株式会社プロス
ASTROM通信』担当 橋本奈央子
info@e-pros.co.jp

2013.03.01

【あるある!購買品の受入にまつわるちょっとグレーな話題】ASTROM通信<21号>

~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

花粉症の人間にとっては苦しい季節になってきましたが、皆様、お変わりなくお過ごしで
いらっしゃいますか?

さて今回は、ちょっと細かいテーマではあるのですが、いろいろな製薬会社様でよく議論
される購入品の受入に関する話題を取り上げたいと思います。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
購入資材の受入に関してよくある話
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
例えば、ある資材を1枚10円で100枚(注文金額1000円)注文したとします。
しかし、実際に仕入先から納品された数が105枚だった時、皆様の会社では、この5枚を
どう扱いますか?

製造中に何らかの仕損が起きる可能性がありますから、多めにもらえる物はもらって
おこうというのが一般的ではないでしょうか。
仕入先にしても、5枚を手元に残しておいたところで邪魔なだけですので、納品したい
ところだと思います。

問題は、この5枚の受入方法です。
お客様からよくうかがうのは以下の受入方法です。
1)100枚を1000円、5枚を0円で別々に受け入れる
2)105枚を注文金額の1000円で受け入れる(つまり、単価は9.52円になります)
3)単価10円で105枚(金額は1050円)で受け入れる
4)105枚受け入れても100枚しか受け入れなかったことにし、場合によっては後で棚卸
  調整する。

1)は、経理上はすっきりしますが、別々に受け入れを行うために、社内管理ロットが
分かれ、受入検査を別々に行ったり、在庫管理を別々に行ったりしなければならなくな
り、現場の管理が煩雑になります。

2)は、仕入先と契約単価が決まっている場合、単価が下がることは、下請法の観点から
よろしくないという考え方もあると思います。
また、納品される数により、評価単価が変わるのは、製造原価や在庫金額への影響を判断
しにくいという考え方もあると思います。

3)は、資材が多めに完成したらその分は買い取るという契約を最初から締結している
場合は、何の問題もない話ですが、契約がない場合は、メーカー都合で受入金額が変わる
ことを好まない会社も多いのではないでしょうか。

とはいえ、1)~3)は、あくまで、メーカーとの取り決めや、社内の取り決めである
ため、手順が標準化されれば、後で問題になるということはないでしょう。

しかし、4)の5枚を管理対象外にしてしまう方法には、根本的な問題があります。
というのも、この5枚がよからぬことに使われるリスクがないとはいえないからです。
昨今のPIC/S GMPが資材の管理を非常に厳しくしているのは、そのためです。

日本では偽薬が出回るということがまずないですが、海外の製薬会社や査察官は偽薬に
非常に神経質です。我々はともすると、“5枚なんて、ちょっと数え間違えたって発生
する誤差だよ”と考えがちですが、人が故意に一部の受入品を管理対象外とするという
事の重大性を理解しておく必要があると思います。

そんな面倒なことをするならば、双方合意のうえに、いっそ105枚であろうと何枚であろう
と100枚で伝票を切ってしまえ!なんてことは考えないでください。
万が一この5枚がおかしなことに使われた時、大変なことになります。

経理データは経理部門で、生産関連データは製造部門でという風に、別々に管理していれ
ば、部門毎にデータの入力も可能ですが、統合型の業務ソフトウエア(ERP)を使って
ワンストップでデータを管理しようとすると、この種の問題がよく発生します。
その際は、是非GMPの観点から、その方法で本当に問題がないかを検討することをお勧め
します。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
同一日に複数回、同一品・同一メーカーロットの受入について
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
同一日に複数回、例えば、午前と午後に、同一品・同一メーカーロットの物を受け入れた
場合、それらに同一の社内管理ロットを付けて、まとめて管理してしまっているケースが
時々あります。

同一の社内管理ロットを付けて管理するということは、午前と午後に受け入れた物の品質
が同一であるとみなしているということです。

しかし、本当に午前と午後に入荷したものの品質を同一とみなしていいのでしょうか?
極端な例を言えば、昼から降りだした雨のせいで、午後に入荷した物は、一時でも
雨ざらしの場所に置かれていた可能性だってあるのです。

PIC/S GMPでは、4.22章(旧4.19章)で、配送ごとの受入(receipt of each delivery)
を求めています。

配送のタイミングが違えば、品質は別物とみなし、別々の社内管理ロットをつけて管理を
行うべきです。別々に管理したうえで、同一メーカーロットに対する省略試験を適用する
というのがあるべき姿ではないでしょうか。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。
☆次回は、3/15 (金)に配信させていただきます。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

★弊社サービスのご案内
http://e-mktg.jp/~pros/_dm/cc.php?ccd=3.172.430

★ブログ毎日更新中!
◆ PROS.社長の滋養強壮ブログ
http://e-mktg.jp/~pros/_dm/cc.php?ccd=1.172.430
◆ 営業ウーマンの営業報告ブログ
http://e-mktg.jp/~pros/_dm/cc.php?ccd=2.172.430

※URLクリック数の統計をとらせていただいております。

本メルマガは、名刺交換させていただいた方に、毎月1日、15日
(土日祝日に重なった場合は前日)に配信いたしております。
今後このような情報が必要ない方は、お手数ですが、こちらに
配信停止依頼のメールをお願いいたします。
hashimoto@e-pros.co.jp

【発行責任者】
株式会社プロス
ASTROM通信』担当 橋本奈央子
info@e-pros.co.jp