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2013.10.15

【FDAのワーニングレター】ASTROM通信<36号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

台風26号が接近中で、お天気が心配なところですが、いかがお過ごしですか。

9月の中旬に、米食品医薬品局(FDA)がインドの後発医薬品メーカに対して輸入警告を
発し、一部製品の輸入差し止めを行う意向であるというニュースを目にされた方は多いの
ではないでしょうか。

警告につながった具体的な違反内容は明らかになっていないようですが、何らかの品質管理
上の不備があった可能性があります。

そこで今回は、最近FDAが発したワーニングレターを見ながら、FDAがどんな点を指摘
しているのかを確認していきたいと思います。
ワーニングレターは、毎年、マーケティング、コンプライアンス、セキュリティ等、色々な
な分野で発せられていますが、今回は2013年の生産及び製品品質に関する20件のうちの
一部を取り上げることにします。


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WL: 320-13-07 2013年1月29日 ジャマイカの会社に対して
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1.不合格のバッチの調査を行わず、出荷した。
  品質保証責任者は、薬の治療活性には影響がないと述べたが、この結論を裏付けるエビ
  デンスを提供しなかった。
2.品質部門が出荷前に、バッチの記録をレビュ・承認していなかった。
  たとえば、あるロットの文書の間違いの訂正や、あるロットの製造工程でとられた変更
  について、品質部門がレビュ・承認していなかった。
3.サプライヤの分析結果を利用する場合は、少なくとも1つの成分の同一性試験を行わな
  ければいけない(21 CFR 211.84(d)(2))が、それをせずに原料を出荷した。
4.微生物汚染を防ぐ承認された文書化手順が不足していた。
5.設備の洗浄及びメンテナンスに関する適切な文書化手順を作成することを怠っていた。
  例えば、多種製品製造装置および器具に用いられる洗浄方法が、製剤と洗剤の残留物を
  取り除くことの有効性をバリデートしていなかった。
6.OTC薬品の製造手順についてバリデートしていないうえに、品質部門の承認がなく、
  品質に与える影響を評価せずに、これらの製品のいくつかのバッチの再加工を行った。


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WL: 320-13-08 2013年2月20日 カナダの会社に対して
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1.不合格のバッチの調査を行わず、予防処置を実施しなかった。
2.外観検査で不合格になったにもかかわらず、そのロットを発売した。
3.SOPに、品質の欠陥の許容率が書かれているが、許容範囲を超えた場合の是正措置・
  予防措置がなく、実際に、許容範囲を超えたロットにつき、追加の評価を行わず市場に
  出荷した。


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WL: 320-13-09 2013年2月21日 カナダの会社に対して
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1.無菌薬の微生物汚染を防ぐため、適切な文書化手順とバリデーションが必要だが、
  無菌充填ラインのエアフローの一方向流のパターン調査が実施されていなかった。
  さらに、充填ラインのクラス100エリアのエアフロー調査では、乱流の明らかな
  エビデンスがあるのに、適切なアクションをとっていなかった。
2.問題のあるバッチについて、部分的出荷を判断するための特別基準がないのに、適切
  な調査をせずに、アメリカ市場に対してバッチの一部を出荷した。
3.スペックや標準書に合致することを確かめるためのテストデータを含む実験記録が保証
  されていなかった。
  例えば、貴社の微生物学者は、環境モニタプレートの数値を0と報告したが、FDA
  査察官は、1であるとみて指摘したところ、その後、微生物学者は結果を訂正した。
  貴社は、環境モニタプレートの不正確な報告についての調査や、不正確な報告のバッチ
  リリースに対する影響の判断を行っていなかった。


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WL: 320-13-11 2013年3月22日 日本の会社に対して
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1.品質部門が、レビュ、出荷、最終製品の不合格判定をせず、年次の製品品質レビュを
  行っていなかった。品質部門が、プロセスバリデーション、変更管理文書、原料の出荷、
  バッチの承認または不合格のための手順書を持っていなかった。さらに、重大な製造
  装置をキャリブレートするための有効なシステムの使用を確実に実施せず、従業員に
  GMPのトレーニングを実施していなかった。
2.製造設備が腐食し、さびて、ペンキが削り取られ、未確認の白い粉で覆われていた。
3.API生産に使用される受入原料の同一性試験をせず、かつ適切な間隔でこれらの原料の
  分析証明書の信頼性を確認していなかった。さらに、原料についても完成APIにつても
  スペックが作られていなかった。
4.バッチの記録が出荷前に管理・レビュされていなかった。
  バッチの記録が、API製造の間に完成されていなかった。
5.安定特性のモニタ、安定性試験をもとにした有効期限やリテス日付の設定に問題が
  あった。
6.API製品の製造に関するプロセスバリデーションの実施に問題があった。


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WL: 320-13-18 2013年5月28日 アメリカの会社に対して
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1.無菌薬品の微生物汚染を防ぐための手順が守られていない。
オペレータが外部から持ち込んだ運搬用ベルトを殺菌せずに使用していた。
・ラインクリアランスが行われていない。
・一方向流であることを示すためのエアフロー調査と、滅菌の製造を行うためのリスクの
 判断が行われていなかった。
2012年5月に充填工程で272のバイアルを検査不合格としているが、その理由を示す文書
 がなかった。
・無菌製造工程で使用される手袋が、滅菌の保証がない状態で使われていた。


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WL: 320-13-22 2013年7月30日 インドの会社に対して
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1.品質活動の記録に問題がある。
・オペレータがバッチの重さをまだ計っていなかったので、数量がわからないにも関わ
 らず、従業員がバッチの最終包装数を記録していた。
・オペレータが開始時間を12:15PMと書いたが、査察官が見た時は11:00AMだった。
2.製造やQC試験室の逸脱がレビュ・調査されていない。
・停電時、バックアップ発電機は自動的に動かないので、従業員が手動でスタートしない
 といけない。2012年に30回以上の停電が発生していたが製造中の製品品質への影響が
 調査されていない。
文書にQCの試験室には中断されない電源を使っているため停電の影響を受けないと
 書かれていたが、QC試験室は停電の影響を受けた。しかし、試験室内で保管されて
 いるサンプルの停電による影響の評価が実施されていなかった。
3.スペックや標準書に合致することを確かめるためのテストデータを含む実験記録の保管に
 問題があった。
・予め定義され、科学的に有効とされた手順の無い状態で、HPLCの処理や再検出が実施
 されていた。
 同じ検出パラメータが各分析で使用されることを保証するためのロックがされていな
 かった。
・生データが残っていない。
・QC試験室のデータの完全性・信頼性を保証するための管理者の役割と責任が定義され
 ていない。
・QC分析者は、分析データをワークシートではなく、小さな紙切れに書き、ワークシート
 に転写すると紙切れは捨ててしまう。これは、不適切な手順である。
4.試験室のコンピュータシステムのアクセス管理と監査証跡に問題がある。
・QC試験室の人員は、オペレーティングシステムと分析ソフトについて、同じユーザ名と
 パスワードを使用していた。
許可されてない人間がオペレーティングシステムにアクセスを防ぐメカニズムがない。
・ユーザは、データを消去できるうえに、消去の監査証跡が残らない。


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WL: 320-13-23 2013年8月2日 インドの会社に対して
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1.コンピュータのデータに許可されていない人間からのアクセスや変更を防げない。
・試験室のデータにアクセス制限がない。変更や消去を防げないし、監査証跡が残ら
 ない。
2.バリデートされていない分析資料を、重要出発原料のテストや、APIの製造に使われ
 る中間品のテストに使用している。
3.品質関連の活動の記録に問題がある。
保管サンプルのログブックに誤った外観検査データを記録していた


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まとめ
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冒頭にも書いたのですが、2013年の生産及び製品品質に関するワーニングレターは全部で
20件ありました。
その内訳は、インド6件、カナダ3件、ドイツ2件、日本2件、アメリカ1件、
イタリア1件、オーストラリア1件、ジャマイカ1件、スイス1件、スペイン1件、
香港1件。
インドが多いですが、必ずしもリスクの高い国の製薬会社に集中しているわけではないこ
がわかります。

アメリカへの輸出の有無に関わらず、査察をする人がどんな点を見ているのかを知る参考に
していただければ幸いです。

2013年のワーニングレター原文は、下記URLからご覧いただけます。http://www.fda.gov/Drugs/GuidanceComplianceRegulatoryInformation/EnforcementActivitiesbyFDA/WarningLettersandNoticeofViolationLetterstoPharmaceuticalCompanies/ucm339597.htm

最後までお読み頂き、ありがとうございました。
☆次回は、11/1 (金)に配信させていただきます。

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