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2014.03.14

【気になるEU GMP Annex15改訂案】ASTROM通信<46号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

桜の開花予想が気になる季節となってきましたが、いかがお過ごしでいらっしゃいますか?

少し前の話になりますが、EC(EUROPEAN COMMISSION)は、2014年2月6日付でEU GMP ガイド
ラインAnnex15:適格性評価及びバリデーション(Qualification and Validation)の改訂案
を発表し、そのコメントの募集を開始しました。
改訂案は、現Annex15が11ページであるのに対して、大幅にボリュームアップして17ページと
なり、その内容もかなり変わっています。

ご存知の通り、EU GMPガイドラインは、PIC/S GMPガイドラインのベースになっています。
従って、EU GMPガイドラインが改訂されれば、いずれはPIC/S GMPガイドラインも改訂される
ので、EU GMPガイドラインの動向は非常に重要です。

そこで今回は、EU GMPガイドラインAnnex15改訂案に何が書かれているのかを見ていきたい
と思います。


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Annex15改訂案発出の経緯と今後について
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今回の改訂案は、EU GMPガイドラインPart1 Annex11(コンピュータ化システム)、ICH Q8
(製剤開発に関するガイドライン)、Q9(品質リスクマネジメントに関するガイドライン)、
Q10(医薬品品質システムに関するガイドライン)、Q11(原薬の開発と製造(化学薬品とバイオ
テクノロジー応用医薬品/生物起源由来医薬品)ガイドライン)、プロセスバリデーションに
関するQWPガイダンスの変更、製造技術の変化を考慮して発出されました。

今後の予定としては、2014年5月に最終的なコメント募集終了、2014年9月に再審議、2014年
10月に採択予定となっています。

出典
http://ec.europa.eu/health/files/gmp/2014-02_pc_draft_gmp_annex.pdf


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現Annex15と改訂案の目次の比較
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現Annex15と改訂案の目次を比較してみると、かなり変わっていることがおわかり頂けると
思います。

■現Annex15の目次 <2001年9月施行目次>
1.適格性評価及びバリデーション
2.バリデーション計画
3.文書化
4.適格性評価
5.プロセスバリデーション
   予測的バリデーション
   同時的バリデーション
   回顧的バリデーション
6.洗浄バリデーション
7.変更管理
8.再バリデーション
9.用語

■改訂案の目次
原則
一般
1.適格性評価及びバリデーションに関する組織と計画
2.VMPを含む文書化
3.装置、設備、施設の適格性評価段階
4.プロセスバリデーション
   一般
   同時的バリデーション
   従来のアプローチ
   連続的なプロセス検証
   継続的なプロセス検証
5.輸送の検証
6.包装のバリデーション
7.施設の適格性評価
8.テスト方法のバリデーション
9.洗浄バリデーション
10.再適格性評価
11.変更管理
12.用語


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変更の注意点
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変更の注意点について、いくつか重要と思われるポイントをピックアップします。

1.ICH Q9の影響
ICH Q9の影響で、「ライフサイクル」、「品質リスクマネジメントシステム」という言葉が
登場します。
・ライフサイクルを通じた適格性評価とバリデーション(一般、1.1章 他)
・適格性評価とバリデーションは、品質リスクマネジメントシステムの一環としてリスク評価
 に基づいて実施すること(一般)
→ライフサイクル全体を通じたリスクを管理と、それに基づいた適格性評価とバリデーション
 が必要です。

2.施設(utility)のバリデーション
現行のAnnex15は、バリデーション対象に、設備、システム、装置、工程(facilities,
systems, equipment and processes)しか登場しませんが、改訂案では、施設(utility)が
追加され、バリデーション範囲が、工場のインフラ的な部分にまで及んでいます。

3.ICH Q8の影響
プロセスバリデーションにおいて、デザインスペースの考え方、PAT(Process Analytical
Technology)の活用の記述があります。
※デザインスペース、PATに興味をお持ちの方は、よろしければ、ASTROM通信39号内の用語集
 をご覧ください。→ http://astrom.jp/astromnews/2013/11/

4.適格性評価
現行のAnnex15に書かれている適格性評価は、DQ、IQ、OQ、PQから構成されていますが、
改訂案では、URS(ユーザ要求仕様)やFAT/SAT(工場出荷試験/現場受入試験)も適格性評価
の中に含まれています。
ご存知の通り、2013年版GMP事例集やコンピュータ化システム適正管理ガイドラインの中では、
適格性評価は、DQ、IQ、OQ、PQから構成されていますので、Annex15と乖離が生じるのが気に
なります。
その代りと言ってはなんですが、改訂案では、IQとOQを一緒に実施することが可能となって
います。ここは作業の効率化が期待できます。

5.プロセスバリデーション全般
現行のAnnex15では、プロセスバリデーションには、予測的バリデーション、同時的バリデー
ション、回顧的バリデーションという明確な分類がありましたが、改訂案では、ここが大きく
変わっています。
例えば、大きなリスクがないと言える特別な場合は、患者の利益のために、定常製造前に
バリデーションが終わっていなくてもよく、同時的バリデーションの実施が可能となって
います。
但し、当然のことながら、同時的バリデ-ションを実施することが正当化され、それが、
バリデーションマスタプランに文書化され、権限者の承認が必要です。
またQbD(クオリティ・バイ・デザイン)法で開発された製品については、従来のプロセス
バリデーションの代わりに、連続的なプロセス検証がよいとされています。
改訂案の4章.プロセスバリデーションは、一度目を通しておくことをお勧めします。

6.輸送の検証(★改訂案で追加★)
下記の規定が明記されています。
・製品となった医薬品、治験薬、バルク品およびサンプルは、製造承認された条件、製品
 仕様書や製造業者が定めた条件に従って輸送されなければいけないこと
・大陸を横切って輸送される場合、季節変動を考慮すべきこと
・輸送の間の温度以外の条件の影響(例えば、湿度、振動、受け渡し、遅れ、データロガー
 の故障)を考慮したリスク評価を実施すべきであること
・輸送中に製品がさらされるであろう、あらゆる重大な環境条件について、連続的なモニタ
 リングが行われるべきであること

7.包装のバリデーション(★改訂案で追加★)
下記の規定が明記されています。
包装設備のパラメータの変化は包装機能に影響を与えるだろうから、主要な包装工程は
 バリデーションを実施すべきであること
・包装機械の設定に関する適格性評価は、温度、マシン速度、密閉圧力、またはその他の
 重要パラメータに関して定義された最小・最大の動作範囲で行なわれるべきであること


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まとめ
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今回の改訂案は、ICHの考え方と相まって、製剤開発時から蓄積されたデータや知識の活用、
工程で得られるデータの活用により、非常に合理的なバリデーション・検証を実施する方向
に向かっているという印象を受けました。
今後の改訂案の動向が楽しみなところです。
その反面、”輸送の検証”は、EU GMPガイドラインAnnex15がPIC/S GMPガイドラインAnnex15
に取り入れられた場合、かなりインパクトがあると考えられます。
特に、国内向けにしか製造・販売を行っていない製薬会社様にも輸送中の環境条件の連続的な
モニタリングが求められるとなると、運送業者も含め、相当な対応が必要になると思われます。


最後までお読み頂き、ありがとうございました。
☆次回は、4/1(火)に配信させていただきます。

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