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2015.05.15

【EC発 医薬品添加剤のガイドライン】ASTROM通信<74号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

あっという間にゴールデンウィークも終わってしまいまいたが、いかがお過ごしですか?

さて、ASTROM通信前号の【ヨーロッパ、原薬GDPガイドライン発出】について、読者様より、
『原薬GDPガイドラインで、注意すべき条文をピックアップします。』とあったが、何に基づいて
判断したのか?というご質問をいただきましたので、まずは、それについて回答させていだきます。
前号は、今まであまりGDPを意識されていなかった配送業者様が、これから対応しなければならない
事項、もしくは、意識していかなければいけない事項をお伝えする目的で、条文をピックアップ
いたしました。(その結果、概念や条文の参照箇所に関する記述以外はほぼ全てピックアップす
ことになってしまいました)
今後、条文をピックアップする際は、ピックアップの目的や判断の根拠も明確にするよう注意して
まいります。
また何かお気づきの点などありましたら、ご指摘いただければ幸いです。

さて、今回は、ECから2015年3月19日に発出された“人用医薬品の添加剤のための適切なGMPを確認
するための様式化されたリスクアセスメントに関するガイドライン”について取り上げたいと思い
ます。

医薬品添加剤については、ちょうど2015年4月27日付薬事日報にも、国内製薬7社が、医薬品添加剤
メーカの監査情報を共有化する「監査情報共有化検討会」の運用を開始したという記事がありまし
た。

国内でも海外でも、医薬品添加剤の品質確保が求められてきていますので、今回のECのガイドライン
の内容を是非参考にしていただければと思います。

出典:下記PDF14ページ目から
http://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=OJ:C:2015:095:FULL&from=EN


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ガイドライン概要
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ECから2015年3月19日に “人用医薬品の添加剤のための適切なGMPを確認するための様式化された
リスクアセスメントに関するガイドライン”が発出されました。
ガイドラインでは、医薬品製造販売業者に対し、1)添加剤のためのGMPの規定 2)添加剤製造業
者のリスク分析の規定 3)継続的なリスク照査によるGMPの適用の確認 を行うことを求めていい
ます。
ガイドラインで規定されたリスク分析は2016年3月21日までに実施することが求められています。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ガイドライン訳
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
序文
EC指令によれば、医薬品製造販売業者は、適切なGMPかを確認することにより、添加剤を医薬品用に
用いることが適切かを保証することが求められている。
人用医薬品の添加剤のための適切なGMPは、本ガイドラインに従って様式化されたリスクアセスメン
トに基づいて確認されなければならない。
リスク評価には、添加剤の原料や、添加剤の使用目的、過去の品質欠陥の事例はもちろん、他の品質
システムの要件も考慮しなければならない。医薬品製造販売業者は、確認された適切なGMPが適用さ
れていることを保証しなければならない。医薬品製造販売業者は、講じた手法を文書化しなければ
ならない。
添加剤のリスクアセスメント/リスクマネジメントの手順は、医薬品製造販売業者の医薬品品質シス
テムに組み込まれているべきである。
医薬品製造販売業者は、GMP査察官によるレビュに備え、製造所において、添加剤の適切なGMPに関す
るリスクアセスメント/リスクマネジメントの文書を入手可能にしておかなければならない
継続的な改善を促進するために、リスクアセスメントから得られた情報について、添加剤メーカとの
共有が考慮されるべきである。
認可された人用医薬品に使用される添加剤について、本ガイドラインに提示されたリスクアセスメン
トが2016年3月21日までに実施されなければならない。

1章 範囲
1.1
本ガイドラインは、人用医薬品の添加剤のための適切なGMPを確かめるためのリスクアセスメントに
適用する。EC指令によれば、添加剤とは、有効成分と包装資材を除く医薬品の物質である。
1.2
本ガイドラインは、そのままでは存在できない有効成分を安定させるために加えられた物質には及ば
ない。

2章 添加剤のタイプと使用に基づく適切なGMPの規定
2.1
EU GMPガイドライン(EudraLex Volume4)Part3:GMP関連文書や、ICH Q9 品質リスクマネジメントに
おいて、品質リスクマネジメントの原則及び手法は、添加剤を含む医薬品品質の様々な側面に適用で
きるという記述がある。
2.2
これらの品質リスクマネジメントの原則は、添加剤の品質、安全性、機能のリスクを評価し、添加剤
を分類(たとえば、低リスク、中リスク、高リスク)するために用いられなければならない。EU GMP
ガイドライン(EudraLex Volume4)Part3やICH Q9に挙げられている品質リスクマネジメントの手法
(たとえば、ハザード分析と重要管理点(HACCP))は、この目的のために使用されるべきである。
2.3
各製造業者から得た添加剤の使用について、医薬品製造販売業者は、添加剤の動物、鉱物、野菜、
合成品といった原料から、最終製品の剤型への混入にいたるまで、品質、安全性、機能のリスクを
特定しなければならない。検討範囲には下記を含まなければならない。但し、下記に限定しない:
(i)     感染性海綿状脳症
(ii)    ウイルス混入の可能性
(iii)   微生物またはエンドトキシン/発熱物質混入の可能性
(iv)    一般的に、原料由来(たとえばアフラトキシンまたは農薬)の不純物、または、処理の過程
での不純物の生成、溶剤や触媒等の残留物のキャリーオーバーによる不純物の可能性
(v)     無菌と公言されている添加剤の無菌状態の保証
(vi)    専用の装置及び/又は設備がない場合、他の工程からの不純物のキャリーオーバーの可能性
(vii)   環境管理 及び 該当する場合はコールドチェーン管理を含む保管/輸送状態
(viii)  サプライチェーンの複雑さ
(ix)    添加剤の安定性
(x)     包装の完全性の根拠
2.4
さらに、個々の添加剤の使用と機能について、医薬品製造販売業者は次のことを考慮すべきである:
(i)     添加剤を含む医薬品の調剤の形と使用
(ii)    処方における添加剤の機能(錠剤の中の潤沢剤や液剤の中の防腐剤等)
(iii)   医薬品の配合の中の添加剤の割合
(iv)    患者の日々の添加剤の摂取量
(v)     添加剤に関係する、グローバル/ローカルな会社の既知の品質欠陥/不正な粗悪品
(vi)    添加剤が合成物かどうか
(vii)   医薬品の重大な品質特性に与える既知または潜在的な影響
(viii) その他、患者の安全性の保証に関係する、特定された、または、既知の要因
2.5
医薬品製造販売業者は、添加剤のリスク分析を規定し文書化し、添加剤の品質を管理し維持するため
に必要と思われるEU GMPガイドライン(EudraLex Volume4)のAnnex1 及び/又はAnnex2、Part2(出発
原料として使用される原薬に関する基本要求事項)等の要素を規定し文書化しなければならない。
2.6
下記の要素は、添加剤の原料、サプライチェーン、その後の使用により異なる。しかし、少なくと
も、次のハイレベルなGMPの要素は、医薬品製造販売業者により考慮されるべきである。
(i)     効果的な製薬の品質システムの制定と実施
(ii)    十分な数の有能かつ適切に適格性が確認された人員
(iii)   製造及び品質活動に関して責任を負う経営陣及び監督職員の明確な職務記述書
(iv)    製造及び品質活動に関与する全スタップの訓練プログラム
(v)     意図した業務に必要と認められる健康、衛生、衣服に関する訓練プログラム
(vi)    意図した業務に適した建物及び設備の規定及び維持
(vii)   全ての工程及び種々の製造及び品質作業に関する規格書を管理する文書システム
(viii) 完全なトレーサビリティを可能にする、出発原料、中間体及び添加剤を符号化し識別する
システム
(ix)    供給者の適格性確認プログラム
(x)     添加剤の品質管理のためのプログラム 及び 製造から独立した出荷可否判定責任者
(xi)    入荷した原料及び添加剤の記録の保持と、EU GMPガイドライン(EudraLex Volume4)Part2で
求められる期間中の添加剤のサンプルの保持
(xii)   文書化された契約の対象となる外注作業を保証するシステム
(xiii)苦情を照査し、添加剤を回収する効果的なシステムの維持
(xiv)   変更管理及び逸脱管理のためのシステム
(xv)    自己点検プログラム
(xvi)   環境管理と保管状態

3章 添加剤製造業者のリスク分析の規定
3.1
適切なGMPの規定後、要求されるGMPと、添加剤製造業者の業務活動や能力とのギャップ分析が行わ
れなければならない。
3.2
ギャップ分析を裏付けるデータ/エビデンスを、査察または添加剤製造業者から受け取った情報から
得る必要がある。
3.3
添加剤製造業者の品質システム及び/又はGMPの評価と基準が考慮されるべきである。
3.4
要求されるGMPと添加剤製造業者の業務活動や能力の間に認められたいかなるギャップも文書化され
なければならない。更に、医薬品製造販売業者は、例えば、低・中・高といったリスクを測定する
ために、添加剤製造業者の更なるリスク評価を実施しなければならない。この目的のためにEU GMP
ガイドライン(EudraLex Volume4)Part3、ICH Q9が用いられ、そこに挙げられているHACCPのような
品質リスクマネジメントの手法が使用されるべきである。
3.5
医薬品製造販売業者は、様々なリスク分析や、監査、文書検索、試験等の管理方法に基づき、合格
から不合格までの区分を持つ必要がある。

4章 適切なGMPの適用の確認
4.1
一度、添加剤のための適切なGMPと添加剤製造業者のリスク分析が定義されたら、継続的なリスク
照査が、次のようなメカニズムを通じて実行されるべきである:
(i)     受入した添加剤のバッチと関係のある欠陥の数
(ii)    それらの欠陥のタイプと重大性
(iii)   添加剤の品質のモニタとトレンド分析
(iv)    関連する品質システム及び/又は添加剤製造業者によるGMP証明の喪失
(v)     医薬品の品質特性の傾向の観察:これは、添加剤の性質と役割によるかもしれない
(vi)    添加剤製造業者において観察された組織上、手続上、または技術的なプロセスの変更
(vii)   添加剤製造業者の監査/再監査
(viii) アンケート
リスク照査の結果に基づき、制定された管理方法は照査され、必要に応じて改訂されなければなら
ない。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
まとめ
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日本では、医薬品添加剤はGMPが規制要件として規定されておらず、自主基準にとどまっています。
しかし、今回のECのガイドラインの発出からもわかるように、今後、国内でも、添加剤の品質管理
レベルの向上が求められていくと思われます。
ECでは2016年3月21日までにガイドラインに基づいた添加剤のリスク分析を実施することが求めら
れていますが、ECへの輸出のない製薬会社様も、この機会に是非、添加剤のリスクアセスメントを
実施されてみてはいかがでしょうか。


最後までお読み頂き、ありがとうございました。
☆次回は、6/1(月)に配信させていただきます。


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ASTROM通信』担当 橋本奈央子
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2015.05.01

【ヨーロッパ、原薬GDPガイドライン発出】ASTROM通信<73号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

ゴールデンウィークの真っ只中ですが、いかがお過ごしですか?

さて、前回のメールマガジンで、EU Annex15(Qualification and Validation:適格性評価
及びバリデーション)について取り上げ、いずれはPIC/S GMPガイドラインも改訂されると
お伝えしましたが、早速PIC/S委員会は、EU Annex15の改訂版と同じ2015年10月1日に、
PIC/S GMPガイドラインのAnnex15も改訂すると発表しました。
内容は、EU Annex15 5.17章のQualified Personが、PIC/S GMPガイドライン Annex15では
Authorised Personになっている以外は同じものです。

新PIC/S GMPガイドライン Annex15
http://picscheme.org/bo/commun/upload/document/ps-inf-11-2015-pics-gmp-revised-annex-15.pdf

そして今回は、ECから2015年3月19日に発出された人用医薬品の原薬に関するGDPガイドライン
(以下、原薬GDPガイドラン)について取り上げたいと思います。


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EC:原薬GDPガイドラインの概要
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このガイドラインは、人用医薬品の原薬の輸入業者及び配送業者に適用され、2015年9月21日
に施行となります。

2013年11月5日に人用医薬品のGDPガイドラインが施行されたのに続き、原薬についてもGDP
ガイドラインが施行されることになりますが、その目的は、人用医薬品と同じく、偽造品の
市場への流入を阻止することにあります。

原薬GDPガイドラインは、下記8つの章からなっています。
 1章 範囲
 2章  品質システム
 3章 人員
 4章 文書化
 5章 建物・装置
 6章 業務
 7章 返品、苦情及び回収
 8章 自己点検


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EC:原薬GDPガイドラインの注意点
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
原薬GDPガイドラインで、注意すべき条文をピックアップします。
■1章 範囲
1.2章
本ガイドラインにおいて、原薬の配送とは、原薬の調達、輸入、保持、仲介を除く供給または
輸出に関する全ての活動からなる。

■2章 品質システム
2.1章
原薬の配送業者は、責任、手順、リスクマネジメントの原則を明確にした品質システムを作り、
維持しなければならない。
2.2章
品質システムは、担当業務の遂行能力のある人員、適切かつ充分な建物・装置および設備が装備
されていなければならない。品質システムは、下記のことを保証しなければならない:
(i)原薬が原薬GDPガイドラインに従って調達、輸入、保持、供給または輸出されること
(ii)管理責任が明確に規定されること
(iii)原薬が正しい受領者に適切な期間内に配送されること
(iv)記録が同時に作成されること
(v)定めた手順からの逸脱は文書化され調査されること
(vi)逸脱を是正するために適切な是正措置・予防処置(CAPA)がとられ、品質リスクマネジ
  メントの原則に従って予防されること
(vii)原薬の保管と配送に影響を与えるであろう変更は評価されること

■3章 人員
3.1章抜粋
配送業者は、配送活動が行われる各場所において、品質システムを実行し維持することを保証
するために、明確な権限と責任を持った人間を指定しなければならない。
指定された人間は職務を委任できるが、責任は委任できない。
3.2章
原薬の配送に関係する全ての人員の責任が文書により指定されなければならない。人員は
原薬GDPの要件に基づいて訓練されなければならない。人員は、原薬が適切に取り扱われ、
保管され、配送されることを保証するために適切な能力と経験を持っていなければならない。
3.3章
人員は、文書化された手順と訓練プログラムに従い、役割に応じた初期及び継続的訓練を受け
なければならない。
3.4章
訓練の記録は保管され、教育の効果は、定期的に評価され文書化されなければならない。

■4章 文書化
4.1章
文書は、文書化された、紙または電子の手順、指図、記録、データからなる。文書は、すぐに
利用可能または検索可能でなければならない。配送業者のガイドライン準拠に関する全ての
文書は、管轄当局の求めがあった場合は、利用可能でなければならない。
4.2章
文書は、配送業者の活動を包括し、理解できる明白でわかりやすい言語で、誤りがなく作成
されていなければならない。
4.3章
文書内のいかなる変更も署名し、日付が記載されなければならない。変更はもとの情報が読める
ように行わなければならない。適切な場合は、変更の理由を記録しなければならない。
4.4章
各従業員は、業務を実行するために必要な全ての文書にすぐにアクセスできなければならない。

■手順
4.5章
原薬の品質に影響を与える配送活動は文書化された手順に記載されなければならない。
これは、受領、配送のチェック、保管、建物の清掃・メンテナンス(防虫・防鼠を含む)、
保管状態の記録、保管場所での在庫品及び輸送中の物のセキュリティ、販売可能な在庫からの
引き戻し、返品された製品の引き渡し、回収計画等を含んでいなければならない。
4.6章
品質システムの責任を負う人物により、手順は承認され、署名されなければならない。
4.7章抜粋
有効な承認された手順の使用には注意が払われなければならない。文書は定期的に照査され
更新されなければならない。バージョン管理にも手順が適用されなければならない。文書の
改訂後に不注意による廃版の使用を防ぐシステムがなければならない。

■記録
4.8章
記録は明確で、各作業が行われた時に作られなければならない。全ての重要な活動や事象は
トレースできなければならない。記録は、原薬のバッチの有効期限の少なくとも1年後まで
保持されなければならない。再試験日付を持つ原薬については、記録はバッチの配送完了後
少なくとも3年保管されなければならない。
4.9章抜粋
購入または供給の日付、原薬の名前、購入または供給されたバッチ番号と数量、供給者の名前
と住所、もし、供給者と製造業者が異なる場合は、原製造業者の名前と住所、または海運業者
及び/または荷受人の名前と住所を示す、購入及び販売の記録が保管されなければならない。
記録は、製品の起源と送り先のトレーサビリティを保証しなければならない。下記の記録は
保持され利用可能でなければならない。
(i)供給者、原製造業者、海運業者及び/または荷受人の特定
(ii) 供給者、原製造業者、海運業者及び/または荷受人の住所
(iii)購買オーダ
(iv)船荷証券、輸送及び配送記録
(v)受取文書
(vi)原薬の名前または記号表示
(vii)製造業者のバッチ番号
(viii) 原製造業者の試験成績書
(ix)再試験または有効期限

■5章 建物・装置
5.1章抜粋
建物及び装置は、適切な保管、交差汚染からの保護を保証するのにふさわしいものでなければ
ならない。
未許可のアクセスを防ぐために保護されなければならない。原薬の品質特性を保証するために
必要なモニタリング装置は、認証された計量基準の承認されたスケジュールに従って校正され
なければならない。

■6章 業務
■受領
6.2章
原薬を受け取る場所は、荷卸し中、配送品が気候条件から守られる場所でなければならない。
受け取る場所は、保管エリアと独立していなければならない。配送品は、受領時、下記の
チェックがされなければならない。
(i)コンテナが損なわれていないこと
(ii)セキュリティシールが存在し、改変の印がないこと
(iii)試験成績書等の必要な情報が利用可能であること
(iv)原薬や引き渡された物が注文と一致していること
6.3章
封印が壊されたり、梱包が損なわれていたり、汚染の可能性が疑われる原薬は、物理的に、
または、電子システムにより隔離され、原因が調査されなければならない。
6.4章
特別な保管方法が必要な原薬(例:麻薬、特別な保管温度や湿度が求められる製品)は直ちに
識別され、文書化された指図や関連する法規定に従って保管されなければならない。
6.5章
配送業者は、自身により調達または輸入した原薬の偽造が疑われる場合、物理的に、または、
電子的システムにより隔離し、国の管轄当局に知らせなければならない。
6.6章
受領を拒否する原薬は識別して管理され、製造に使用されたり、配送されたりするのを防ぐ
ために隔離されなければならない。破棄の記録はすぐに利用可能でなければならない。

■保管
6.7章
原薬は、製造業者によって指定された状態、例えば、温度や湿度のもとで、汚染や取り違え
を防ぐ方法によって保管されなければならない。保管状態はモニタされ、記録は保持されなけ
ればならない。記録は品質システムの責任を負う人物により定期的に照査されなければならない。
6.8章
特別な保管条件が要求される場合、保管エリアは適格性が確認され、指定された限界値以内で
運用されなければならない。
6.9章
保管設備は清潔で、ゴミ、塵埃、虫・鼠のない状態でなければならない。微生物や交差汚染
から守るために、漏出や破損に対して適切な注意が払われるべきである。
6.10章
在庫の回転、例えば、“先の使用期限(再試験日付)からの先出”を、定期的かつ頻繁に
チェックして保証するシステムがあり、それが正しく運用されているべきである。
電子倉庫管理システムは、バリデートされていなければならない。
6.11章
使用期限を超えた原薬は、出荷が許可された在庫から、物理的に、または、電子的システムに
より隔離し、供給されてはならない。
6.12章
原薬の保管や輸送を外注に出す場合、配送業者は受託者が適切な保管条件と運送条件を知り、
それに従うことを保証しなければならない。委託者と受託者の間に、各当事者の義務を明確に
確立する文書化された契約書がなければならない。受託者は、委託者による文書化された許可
なしに、契約で委託された作業を下請けに出してはならない。
6.14章
原薬は製造業者により指定された条件に従い、品質に悪影響を及ぼさない方法で輸送されなけ
ればならない。製品、バッチ及び容器の識別は常に維持されなければならない。もともとつい
ている全ての容器ラベルは読める状態でなければならない。
6.15章
回収の際、原薬の各バッチの配送が迅速に確認できるよう、システムが整っていなければなら
ない。

■情報の伝達
6.16章
配送業者が気付いた、供給の妨げになる可能性があるいかなる情報や事象も、関連する顧客に
通知されなければならない。
6.17章
配送業者は、全ての製品の品質情報及び規制情報を、製造業者から顧客、顧客から製造業者に
伝えなければならない。
6.18章
原薬を顧客に供給する配送業者は、原薬の原製造業者の名前と住所、バッチ番号を顧客に提供
しなければならない。原製造業者から受け取った試験成績書原本のコピーを顧客に提供しなけ
ればならない。
6.19章
配送業者は、要求があった場合は、管轄当局に、原薬の原製造業者に関する情報を提供しなけ
ればならない。原製造業者は、管轄当局に直接または委任代理人を通じて回答することができる。

■7章 返品、苦情及び回収
■返品
7.1章
返品された原薬は、識別され、調査中は隔離されなければならない。
7.2章
配送業者に託された原薬は、次の全ての条件を満たす場合、許可された棚に戻される。
(i)原薬がもともとのコンテナに、開封されていない状態で入っていて、もともとのセキュリティ
  シールがよい状態で全て存在していること
(ii)原薬が適切な条件下で保管され引き渡されたことが証明されていること。顧客から提供され
    た文書化された情報が、証明のために利用可能であること
(iii)残っている棚保管期間が許容可能な範囲にあること
(iv)訓練され権限を与えられたものによって原薬が検査され評価されていること
(v)情報やトレーサビリティの欠如がないこと
上記の評価において、原薬の性質、要求される特別な保管条件、供給後に経過した時間が考慮
されなければならない。返品された原薬の品質に少しでも疑いがある場合は製造業者にアドバイス
を求めなければならない。
7.3章
返品された原薬の記録は保管されなければならない。返品のたびに、以下を含む文書化がされ
なければならない。
(i)返品原薬の荷受人の名前と住所
(ii)原薬の名前または記号、原薬のバッチ番号と返品数量
(iii)返品理由
(iv) 返品原薬の使用/廃棄に関して実施された評価の記録
7.4章
適切に訓練され権限を与えられた人員のみが返品原薬の在庫への戻しに関する作業を行わなけ
ればならない。その場合、返品された原薬は、在庫の回転システムが効果的に運用されるよう、
販売可能な在庫に戻されなければならない。

■苦情及び回収
7.5章
口頭または文書で受け取った全ての苦情は、文書化された手順に従って記録され調査されな
ければならない。原薬の品質に関する苦情の場合、配送業者は、当該原薬を受け取ったかも
しれない他の顧客または管轄当局と共にさらなる対応が必要かを判断するために、原薬の
原製造業者と共に苦情を照査しなければならない。苦情の原因調査は適切な当事者によって
実施され、文書化されなければならない。
7.6章
苦情の記録は下記のことを含んでいなければいけない。
(i) 苦情申立人の名前と住所
(ii)苦情を提出した人の名前、肩書、電話番号
(iii)原薬の名前とバッチ番号を含む苦情の性質
(iv)苦情を受けとった日付
(v)最初にとった措置(日付及び措置を行った人物の特定を含む)
(vi)その後とった措置
(vii)苦情発信者への回答(日付を含む)
(viii)原薬のバッチについての最終判断
7.7章
苦情の記録は、追加措置や即時の是正措置の実施を視野に入れ、傾向、頻度、重大性を評価
するために保持されなければいけない。管轄当局による査察の間、これらの記録は利用可能
でなければならない。
7.8章
苦情が原薬の原製造業者に関連する場合、配送業者で保持する記録には、原薬の原製造業者
から受け取った日付と情報を含む回答が含まれていなければならない。
7.9章
重大、または、生命に関わる可能性のある状況の場合、地域、国、及び/または、国際当局
にしらせ、彼らのアドバイスを求めなければならない。
7.10章
原薬の回収が考えられる状況を定義した、文書化された手順が存在しなければならない。
7.11章
回収手順には、誰が情報を評価するか、いかに回収を開始するか、誰に回収をしらせるか、
回収された原薬をどのように取り扱うかを指定しなければならない。3.1章で指定された
人間は、回収に参加しなければならない。

■8章 自己点検
8.1章
配送業者は、GDPガイドラインに準拠していることをモニタするために、自己点検を実施し、
記録しなければならない。定期的な自己点検は、承認されたスケジュールに従って実施しな
ければならない。

EC 原薬に関するGDPガイドライン原文
http://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=OJ:C:2015:095:FULL&from=EN


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
まとめ
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
長文になってしまいましたが、いかがでしたでしょうか。
2013年の人用医薬品のGDPガイドラインもインパクトがありましたが、今回の人用医薬品の
原薬のGDPガイドラインもかなりインパクトがある内容だと思います。
ECへ輸出・配送されている業者様は、2015年9月21日までに、下記の項目を含む様々な対応が
必要になりますので、早急に本ガイドラインの確認をされることをお勧めします。
・品質システムの作成
・是正措置・予防処置(CAPA)の実施
・人員の訓練と訓練記録の保管
・手順の文書化
・作業実施時の記録の作成、及び 重要な活動や事象のトレーサビリティ
・逸脱の記録と調査
・原薬のバッチの有効期限の少なくとも1年後までの記録の保管
・封印が壊されたり、梱包が損なわれていたり、汚染の可能性が疑われる原薬、使用期限切れ
 原薬、返品された原薬の隔離保管
・原薬の偽造が疑われる場合の管轄当局への通報
・保管や輸送を外注に出す場合、委託者と受託者間の文書化された契約、受託者の管理
・定期的自己点検の実施

また、ECに輸出・配送をされていない業者様も、今後、国内の規制が本ガイドラインに準拠
することが予想されますので、是非一読されることをお勧めします。

それから、もう一点。
冒頭にも書きましたが、PIC/SがEU GMPガイドラインAnnex15を導入することが決まったニュース
も要注目です。まだ先の話と思っていましたが、EUと同じ2015年10月1日にPIC/S GMP
ガイドラインAnnex15も施行されます。このAnnex15には、“輸送の検証”というインパクトの
ある条文が入っていますので、是非、ご確認ください。


最後までお読み頂き、ありがとうございました。
☆次回は、5/15(金)に配信させていただきます。


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