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2015.11.30

【最近のFDAウォーニングレター】ASTROM通信<87号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

明日から師走。慌ただしい季節になってきましたが、いかがお過ごしでいらっしゃいますか?

さて、今回は、これまでも何回か取り上げているFDAの製造及び製品品質オフィスから発行された
ウォーニングレター(Warning Letter)について見ていきたいと思います。
※文中の“XX”は、ウォーニングレター中でマスキングされている文言です。

最後までお付き合いいただければ幸いです。


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ウォーニングレター(1)
WL:320-15-15 2015年9月2日 インドの製薬会社に対して(一部抜粋)
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2014年7月14日~18日に行われたインドの製造所査察において、原薬の製造に関し、CGMPからの
重大な逸脱が確認され、2014年8月4日付の貴社の回答の是正処置が不十分であった。

1.開放系の装置の使われている原薬製造用建物の汚染を防止し、適切に維持・修理し、清浄さ
を保つことを怠った。例えば、
a.査察官は、製造エリアの製造装置の近くで、壁の穴や、ハトが通ることのできる天井の穴を
見つけた。
b.外壁に、汚染物が建物に入ることを可能にする管や通風路の隙間や穴があった。

2.開放系の原薬製造用装置の適切な維持と、汚染リスクを最小化することが不十分であった。
例えば、
a.査察官は、開放系の医薬品製造装置の上や周りに、さび、ほこり、潤滑油の漏れ、絶縁材の
露出を見つけた。
我々は、貴社が、設備や装置の修理がされておらず、CGMPの要件に従っていないことを認識した
後も、アメリカ市場向けの製造を続けたことに注目している。
2014年6月6日付の変更管理に、“GMP標準を達成するために倉庫と設備を改良する”とあるが、
2014年7月に、貴社は原薬を製造した。
貴社は、関連するバッチを国内(インド)市場向けに転用すると述べた。
貴社は、FDAの製造設備の査察の通知に基づき、2014年7月12日に製造をやめた。また、貴社は、
さまざまな修理や改築を60~90日以内に終えると約束した。しかし、設備は、2011年5月の前回の
FDA査察で同様の回答をした時からずっと改修中である。
この違反に対する回答において、貴社は設備を完全に回収すると言う約束を果たしたことを示す
写真のエビデンスを提供し、全ての設備がCGMPの要件を満たしていることを示してください
答には、貴社の製品がCGMP条件のもとで継続的に製造されるように設備や装置が維持されること
を保証するための計画も入れてください。

3.      全てのテストから得られる完全なデータの保持と、制定された仕様書や標準への合致を
保証すること
を怠った。
2012年6月に製造されたロットについて、重金属分析、残留溶媒分析、分析者名、結果のレビュ者
名を含むテストの結果を記録するために”分析試験手順“が用いられた。しかし、査察官に提供
された文書は、下記の通りだった。
a.重金属分析は実施されていなかった。
b.残留溶媒分析者の名前がなかった。
c.正確さ、完全性、制定された標準への準拠をレビュした者の名前がなかった。
貴社は、後続ロットのテスト結果を提供したうえで、分析テストに関係する職員を再教育している
と回答した。また、貴社は“現在のバッチまでの全分析記録をチェックし、見落としエラーの是正
処置を実施する”と回答した。しかし、貴社の回答は、分析テストの情報が欠けたロットが出荷
されたかどうか、また、情報が欠けているのはテストが実施されていないからなのか、データが
記録されていないからなのかを特定していない。また、制定された標準に準拠することを保証する
レビュなしに出荷されたかどうかも示してない。
期限内に、アメリカに出荷された全てのロットのリストを提供してください。各ロットについて、
完全なテストの情報やレビュの無い状態で出荷されたかどうかを示してください。もし、制定され
た標準に従わないで出荷されたことを示すデータが見つかった場合は、それらのロットに関する
対策の計画を提供してください。

出典:
http://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2015/ucm462075.htm


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ウォーニングレター(2)
WL:320-15-16 2015年9月4日 ニュージーランドの製薬会社に対して(一部抜粋)
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2014年7月7日~10日に行われたニュージーランドの製造所査察において、最終医薬品の製造に関し、
CGMPからの重大な逸脱が確認された。加えて、貴社は不正商標表示の医薬品を製造していた。
2014年7月17日付の貴社の回答の詳細レビュをしたところ、貴社の是正処置が不十分であった。

■CGMP違反
1.複数の供給者から提供されるXXの有効成分を含む構成成分の品質の保証を怠った。
2.製造中、XXをモニタするための、適切な文書化された管理手順の制定を怠った。
3.最終製品のバッチの有効成分の属性や濃度のテストを怠った。
4.化学的・物質的属性が有効期間を通して満足できる状態を維持していることを示すデータを
持っていなかった。

貴社の品質部門は、上記違反があるにも関わらず、少なくともXXのバッチを出荷した。
2014年7月17日の貴社の回答によれば、テストを実施するために、貴社はサードパーティの研究所
と契約すると回答した。また、安定性試験を実施し、製品の有効期限の正当性を証明することを
保証するために、行動計画を作り実行すると回答した。更に、貴社は、構成成分や製品の薬が
仕様書に従って適切にテストされることを保証すると回答した。
しかし貴社は、品質部門が、仕様書に従っていない構成成分、製造過程の材料、製品の薬を不合格
にし、調査するという本質的な機能を果たすことをいかに保証するかを含む計画を提供することを
怠った。
更に、貴社はアメリカに配送された全ての薬の、有効期限内の回顧的レビュを怠った。貴社は、
XXのばらつきの原因と影響を評価すべきである。また、貴社は貴社の製品が仕様書に準拠して
いること、仕様書と手順の適合性、製造手順の妥当性、文書化手順の妥当性、不具合の調査の
十分性を判断すべきである。

■不正商標表示
貴社の日焼け止め製品は、診断、治療、緩和、手当、疾病予防を意図した薬であるが、表示の
フォントスタイルやサイズ、テキスト、表示情報等が21 CFRの要件を満たしていない。

出典:
http://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2015/ucm462371.htm


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ウォーニングレター(3)
WL:320-15-17 2015年9月28日 インドの製薬会社に対して(一部抜粋)
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2014年3月18日~21日に行われたインドの製造所査察において、原薬の製造に関し、CGMPからの
重大な逸脱が確認され、2014年4月8日、2014年6月5日、2014年9月16日、2014年11月28日の貴社の
回答における是正処置が不十分であった。

1.製造及び分析試験実施時に文書化することを怠った。
査察中、テスト結果や、その他の製造記録の入力がバッチ製造中に行われていないことをみつけ
た。例えば、
a. 2014年3月18日にバッチXXの製造が行われていたが、同時に、バッチの開始、停止、
手順XXの記録・サインがされていなかった。
b.外部のコメントにより返品された製品につき、査察官は再加工されたバッチの記録に多くの
矛盾を見つけた。具体的に言うと、作業者が製造所にいない時に、その作業者がバッチの記録に
サインをしていた。これは、製造を行っていない人員により、活動が文書化されていることを
示している。査察中及び貴社の回答文書において、貴社のマネージャはバッチの記録が製造後に
作られたことを認めた。
c.2014年3月19日のサンプリングポイントにおける水質試験の記録が不完全だった。具体的に
言うと、分析者は2014年3月18日に実施した分析を記録していなかった。微生物試験の記録は、
誰がサンプルを準備し、いつ培養をはじめ、誰がサンプルを確認したか、また、サンプルがいつ
確認されたかを特定していなかった。
貴社の回答によれば、貴社の製造スタッフは、適切な文書化手順を示さず、また、化学分析担当者
も微生物分析担当者も業務を軽視していた。貴社には、作業者及びその他の職員の活動を含む
製造及びテスト業務の所定の管理について責任があるが、貴社の回答は、管理の不履行や、貴社の
品質システムの欠陥には触れていなかった。
このウォーニングレターへの回答において、貴社は、不十分な文書化手順について包括的調査を
実施し、調査結果を提出してください。調査は、文書の重大な不備につながった品質システムの
欠陥や管理ミスを対象としてください。全てのCGMPの業務が、それが実施された時に文書化される
ように、文書化手順を見直す計画を提供してください。また、バッチ記録のオリジナルまたは
コピーのデータを保存するための手順を見直す計画を提供してください。また、適切な文書化手順
からの逸脱に対処するための教育や職員の監視を含む手順を提供してください。

2.データの無許可のアクセスや変更を防いでいない。また、データ削除を防ぐ適切な管理を
行っていない。
貴社の実験室のシステムは、削除や変更からローデータを守るアクセスコントロールが不足して
いる。例えば、
a.分析者は、システムに対する固有のユーザネーム、パスワード、アクセスレベルを持っていな
い。実験室の全職員は、コンピュータシステムへの全ての権利を与えられていて、クロマトグラム
や手順、積分パラメータ、データ取得日やタイムスタンプを消したり変更したりできる。貴社は、
原薬の品質を評価するために、保護も管理もされていないシステムで生成されるデータを使用して
いる。
b.複合機器は、データの変更を記録する監査証跡の機能を持っていない。
貴社は、実験室の機器やシステムが完全にCGMPに準拠することを保証するために2015年1月15日
までに是正処置・予防処置を行うと約束した。このウォーニングレターへの回答において、貴社の
電子データシステムが電子データの削除は変更を防いでいることを示すために、システムの適格性
評価のコピーを提供してください。適格性評価の取り組みの中で、現行システムの基礎構造が
データの完全性を保証しないと判断した場合、取るべき手段(例:よりよいシステムやソフト
ウエアのインストール)を述べてください。これらの問題に対処するために貴社が実装した
文書保管の手順及びこれらの是正処置の効果をいかに評価しようとしているかを説明してください。
コンピュータ化システムを適切に使用するように職員を教育するための手順の詳細を提出してくだ
さい。

3.全てのテストから得られる完全なデータの保持と、制定された仕様書や標準への合致を保証
することを怠った。
テスト記録から積分パラメータやインジェクション順序のような必要なクロマトグラフィック情報
を捨てたため、原薬の品質を評価し、制定した仕様書や標準に合致しているかを判断するために
不完全なデータに頼らなければならない。例えば、
a.安定性評価用サンプルに関するマニュアルの積分処理や、電子または印刷した分析データの
レビュに関する手順がみつからなかった。電子的に積分パラメータは保存されておらず、マニュ
アルでも記録されていなかった。次のサンプルが分析される時、前回のパラメータは、上書きされ
ていた。
b.一部の分析テストデータは不適切に保管され、レビュされていた。
i)HPLCの14のファイルに、2013年12月30日に分析された文書化されていない安定性評価用サン
プルのローデータが含まれていたが、これらのサンプルがどこから来て、なぜテストされたか示す
ものがなかった。
ii)2013年5月22日に作られたデータファイルフォルダの中に、安定性評価用サンプルとして23の
クロマトグラムがあったが、結果は文書化されていなかった。さらに、サンプルがテストされた
6週間以上後の2013年7月7日がデータ取得日になっていた。(←テスト後すぐに分析機器から
データを取得していない)
iii)安定性評価用のチャンバーから移動された3ロットからとったサンプルの記録がなかった。
貴社は“データ取得に関する記録の矛盾に関して推定される理由は、データ取得時のコンピュータ
システムの何らかの故障によるものだ”と回答した。しかし、この回答を裏付けるエビデンスは
ないし、不完全な分析記録が原薬の品質の評価に与える影響の回顧的レビュも行われていないので、
貴社の回答は不適切である。このウォーニングレターへの回答において、実験室の全ての機器や
装置の完全な電子ローデータの保持を保証するため、見直した手順を提出し、職員の再教育の手順
を述べなさい。また、貴社の実験室をマネジメントする品質管理と、分析データをレビュし実験室
で生成された全てのデータの完全性を保証する品質保証部門の責任の詳細な記述を提出してくだ
さい。

4.中間体及び原薬の製造に使用される建物や設備を清浄な状態に保っていなかった。
我々は、製造所内に有害生物の痕跡をみつけた。製造用建物は有害生物に対して密閉されていな
かった。外部から入るパイプに大きな複数の隙間があった。査察官は天井近くに鳥の巣と思われる
ものを発見した。2014年3月18日、査察官は棚の上と、原材料倉庫#2の袋の上に鳥のフンを発見し
た。同じ日、原材料倉庫#1の中でトカゲを発見した。
貴社は有害生物の管理に関する文書化した手順を持っていなかった。貴社の回答によれば、貴社は
製造所において是正処置を実施したというが、回答には貴社の製品に対する潜在的なダメージの
評価が含まれてない。
建物の適切な設計と、規則として定められた清掃・維持管理手順に従ったオペレータの教育を含む
建物の維持は、製造所の操業の必須要素である。このウォーニングレターに対する回答において、
有害生物の予防と管理プログラムの詳細を提出してください。また、製造所内における有害生物の
存在が原薬の品質に与える影響のレビュ結果を提出してください。

出典:
http://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2015/ucm465626.htm


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
まとめ
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今回のウォーニングレターには、鳥の巣やフン、トカゲが登場し、少々びっくりしました。加えて、
指摘事項への回答における、担当者が業務を軽視していた
(原文:…,and your chemist or microbiologist each neglected his work.)という説明にも
驚かされました。
しかし、これを“インドの話だから・・・”と片付けてはいけないと思います。
製薬会社様は、自社の原薬供給者が同様の状態にないか、あらためて見直す必要があると思います。
また、原薬メーカ様は、管理の緩みや設備の老朽化により有害生物の侵入の可能性がないか
再確認する必要があるのではないでしょうか。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

☆次回は、12/15(火)に配信させていただきます。


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ASTROM通信』担当 橋本奈央子
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2015.11.15

【注射剤のパッケージタイプに関するFDAドラフト版ガイダンス】ASTROM通信<86号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

今年も残すところ1ヶ月半となりましたが、いかがお過ごしでいらっしゃいますか?

先日、日薬連主催の第35回GQP/GMP研究会に参加し、あらためて“6つのギャップ”の継続的対応
と、将来必ず施行されるであろうPIC/S GDPガイドラインへの対応準備の必要性を感じました。

さて、本日は、10月21日にFDAより発出された、Selection of the Appropriate Package Type
Terms and Recommendations for Labeling Injectable Medical Products Packaged in
Multiple-Dose, Single-Dose, and Single-Patient-Use Containers1 for Human Use
Guidance for Industry(ヒト用注射剤のパッケージタイプの選択と、複数回投与用/一回投与
用/一患者用容器のラベリングに関する勧告の業界向けガイダンス)のドラフトについて取り
上げたいと思います。
※現在、このドラフトに対するパブリックコメントが募集されている状態です。

最終版が発出されると、これまで使われてきた注射剤のパッケージタイプであるSingle-Use
(単一使用)が廃止となり、新しいタイプに変更する必要があるため、アメリカ向け注射剤を
製造している企業にはインパクトのある内容だと思いますが、注射剤の製造に関係の無い方も
”へー、そういう理由で変更になるのか”と思いながらお読みいただければ幸いです。

ガイダンス案の原文
http://www.fda.gov/downloads/Drugs/GuidanceComplianceRegulatoryInformation/Guidances/UCM468228.pdf


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ドラフト版ガイダンスの内容
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I.序文
このガイダンスは、適切なパッケージタイプの選択と、複数回投与用/一回投与用/一患者用の
容器に包装されたヒト用注射剤に関する適切な廃棄の記述の選択に関するFDAの勧告を提供する。
特にこのガイダンスは、FDAの複数回投与用/一回投与用の容器に関して改訂された定義を示し、
新しいパッケージタイプである一患者用容器の定義を紹介する。
一般にFDAのガイダンス文書は法的履行責任を定めない。その代わりに、ガイダンスは、当局の
現在の考えを述べたものであり、規制当局の要件または法的な要件としてではなく勧告として
見なすべきである。

II.背景
注射針、注射器、バイアルの複数患者に対する不適切な使用を含む危険な注射の実施は、患者の
安全を脅かし、血液による細菌やウイルスの感染症の流行につながった。一回投与用の容器が
不適切に使用された時に、中味が汚染され、これが複数の患者に投与され、細菌感染症が伝染
した。また、標準的な使用上の注意の不履行や、無菌手法の不履行が、複数回投与用バイアルに
関する感染症の数回の流行と関係している。一回投与用や複数回投与用バイアルの事故例は以下
の通りである:
・1998年から2008年にかけて、アメリカ国内の病院外のヘルスケアの場で、危険な注射の実施に
 よる患者間の血液感染性の病原菌の伝染により、ウイルス性肝炎が33人に流行した。
・疾病対策センター(CDC)によれば、5年の間に、外来患者施設において、一回投与用注射剤の
 不適切な使用により少なくとも26件の事故が起き、95,000人以上の患者が感染性疾病の感染の
 可能性にさらされた。
・2002年、オクラホマのペインクリニックにおける危険な注射針/注射器の使用が、71件のC型
 ウイルス肝炎(HCV)の感染と、31件のB型ウイルス肝炎(HBV)の感染につながった。
・2008年、ネバダにおけるHCV流行は、複数患者への注射針の再使用と、一回投与用の容器の複数
 患者への使用が原因と考えられる。
上記の通り、一人の患者への使用を意図した一回投与用容器が過去に複数の患者に使用され、この
使用が細菌性感染症やウイルス性感染症の流行の原因の一つになった。更に、既存のパッケージ
タイプは、複数回投与に使用されるある種の容器(例:インスリンのペン型注入器)が一人の
患者の使用を意図していることを適切に伝えきれていないという懸念がある。

III.考察
医薬品のレビュの一環として、FDAは、パッケージタイプと、注射剤のラベルの一部に廃棄の記述
を明確にするか、または、承認する。FDAは正しいパッケージタイプの一貫性のある使用と、ヒト
用注射剤の廃棄の記述が、注射剤の適切な使用を促進し、血液媒介の病原菌の伝染を減らすための
教育努力の基盤を提供すると信じる。以下の章は、ヒト用の、複数回投与用/一回投与用/一患者
用注射剤、生物学的製剤、及び、注射のための医療機器として規定される併用製品に関する適切
なパッケージタイプについて述べる。
<定義>
1.Single-Dose Container(一回投与用容器)
 一回投与用容器は、非経口投与用(注射または点滴用)の無菌薬用の容器で、抗菌有効性試験
 の要件を満たす必要はない。一回投与用容器は、一人の患者が1回の注射/点滴に使用するため
 に設計されている。スペースが許せば、一回投与用容器に、使用条件や適切な廃棄の記述を含ん
 だラベルが貼付されるべきである。
 一回投与用容器の例は、バイアル、アンプル、あらかじめ充填された注射器である。

2.Multiple-Dose Container(複数回投与用容器)
 複数回投与用容器は、非経口投与用(注射または点滴用)の無菌薬用の容器で、抗菌有効性試験
 の要件を満たすものか、FDAに規制要件により試験の要件を除外されたものである。複数回投与
 用容器は、医薬品が2投与分以上入れることを意図している。スペースが許せば、複数回投与用
 容器には、そのことが記載されたラベルが貼付されるべきである。複数回投与用容器は、一般に
 30mLまたはそれ以下の薬剤を入れる。開封済または注射針の入った複数回投与容器の使用期限
 は、製造業者がラベルに指定している場合以外は28日である。
 複数回投与用容器の例は、バイアルである。

大部分の場合、“一回投与用”と“複数回投与用”のパッケージタイプは適切に使用される。
しかし、ある特殊な状況は、一人の患者の使用を意図しているが、複数投与分の薬剤を含んでいる。
このパッケージタイプの容器は防腐剤を含んでいないかもしれない。また、もし試験を実施したら
抗菌有効性試験に合格できないかもれない。このパッケージタイプの例は、ドラッグカートリッジ
である。パッケージタイプは複数投与を管理するために設計されているので、“一回投与用”の
パッケージタイプは適切でない。しかし、パッケージの中味は、抗菌有効性試験の要件を満たす
ことができないので、“複数回投与用”のパッケージタイプも適切でない。

その他のケースで、防腐剤を含み抗菌有効性試験を合格することが期待されるが、一人の患者に
よる使用に限定されているパッケージがある。“複数回投与用”のパッケージタイプでは、一人の
患者の使用に限定することを適切に伝えられない。そのような製品の例は、個々の患者用の、
複数投与分を含んだインスリンのペン型注入器である。

過去に、複数投与分を含むが、一人の患者に使用されることを意図したパッケージタイプについて
定義するために、Single-Use(単一使用)容器という言葉がFDAにより使用された。
しかし、残念ながら、“単一使用”は、当局のもともとの意図と異なる“一回投与用”に変換可能
なパッケージタイプとして不適切に使用された。
用語の混乱に対処するために、当局は“単一使用”という言葉をやめ、複数投与分の注射剤を含み、
一人の患者に使用されることを意図したパッケージのために、新しく“一患者用”容器という言葉
を作った。

3.Single-Patient-Use Container(一患者用容器)
 一患者用容器は、非経口投与用(注射または点滴用)の無菌薬用の容器で、一患者が複数回使用
 することを意図している。スペースが許せば、一患者用容器には、そのことが記載され、適切な
 廃棄の記述を含んだラベルが貼付されるべきである。一患者用容器の例は、患者が管理する鎮痛
 用カートリッジや、ある種のペン型注入器である。

“複数回投与用”と“一患者用”容器について、抗菌有効性試験が実施されれば、試験の結果は、
ラベルに印字された使用期限や廃棄の記述の根拠として使われるだろう。

<容器の決定>
製造業者が意図する投与回数が1回                                   : “一回投与用”
製造業者が意図する投与回数が2回以上かつ一患者のみの使用を意図    : “一患者用”
製造業者が意図する投与回数が2回以上かつ一患者のみの使用を意図しない : “複数回投与用”

IV.ラベリングの要件及び勧告
申請者は、ヒト用注射剤の適切なパッケージタイプ(“一回投与用”、“複数回投与用”、
“一患者用”)を決定し、ラベリング時に適切なパッケージタイプの名前を使用しなければな
ない。
FDAは、ヒト用注射剤のラベルの全てに適切なパッケージタイプが表示されることで、使用者が
簡単にパッケージのタイプを識別できるようにすることを勧めている。ラベルは、容器ラベル、
カートンを含み、可能であれば、処方情報を記載する。

“一回投与用”は、スペースがあれば、United States Pharmacopeia(アメリカ薬局方:USP)
モノグラフのついた注射剤の容器ラベルに表示されることが求められる。スペースが無い場合は、
カートンまたは、外側の容器または包装に表示されなければならない。その際、可能であれば処方
情報をのせる。FDAの経験により、たいていカートンラベルにはこの情報をのせる十分なスペース
がある。

スペースが許せば、“複数回投与用”と“一患者用”の容器ラベルにも、“一回投与用”と同様
に、パッケージタイプが表示されるべきである。十分なスペースが無い場合、カートンラベルの
見やすい場所に、パッケージタイプを表示しなければならない。

適切な情報があれば、“一患者用”と“一回投与用”の注射剤の処方情報に、廃棄の記述を含ま
なければならない。廃棄の記述は、スペースがあれば容器とカートンにも含まれていなければなら
ない。例えば
“一回投与用”容器のラベルには、一般的には、”未使用分は捨てること“という記述を含む。

“複数回投与用”容器は、他の指示が無い限り、開封済または注射針の入った容器の使用期限は
28日を前提としているため、通常は廃棄の記述はない。もし、使用期限が28日でない場合、適切
なデータで裏付けられた適切な廃棄の記述が容器ラベル、カートンラベルに含まれ、処方情報も
含まれなければならない。“複数回投与用”容器には、例えば次の記述が含まれるだろう。
 ・“開封後、または、針を入れた後、XX時間以内に捨てること” または
 ・初回仕様後、XX日を超えない間、冷蔵またはXX度を超えない温度で保管すること“

当局は、このガイドライン発出後、2年以内に勧告に従って必要なラベルの変更をするよう勧める。
全ての提出物(年次報告と補足資料)は、実施する変更を明確に特定しなければならない。
さらに、ガイダンスの勧告に従った補足資料は、“パッケージタイプガイダンスに従ったラベル
変更”という位置づけで提出しなければならない。承認済品については、ガイダンスの勧告に従っ
たラベルの変更を、FDAに提出しなければならない。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
まとめ
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
Single-Useという言葉を使うと、一患者用という意味合いが不明確になるので、
Single-Dose/Multiple-Dose/Single-Patient-Useという言葉に変えて定義を明確にしようとする
FDAの取り組みは非常に興味深かったです。
我々の日常業務においても、言葉の使い方が不明確で、人によって混同することが多いのだけれど、
ドキュメントを修正するのが面倒で、結局わかりづらい言葉をそのまま使い続けていることがある
のではないでしょうか。
FDAが行おうとしている変更は、業界にはインパクトがあると思いますが、それでも変更をしよう
とするところがすごいなと思いました。
皆様はいかが思われましたか?

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

☆次回は、11/30(月)に配信させていただきます。


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