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2016.02.15

【承認書と実態の自主点検通知 及び 後発品シェア】ASTROM通信<92号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

立春が過ぎ、春が待ち遠しいこの頃ですが、いかがお過ごしでいらっしゃいますか?

さて今回は、国内の2つの話題について取り上げます。
1つは1月19日付で発出された承認書と製造実態の自主点検に関する課長通知について、もう
1つは2月1日に発表された後発品シェアについてです。
最後までお付き合いいただければ幸いです。


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製造販売承認書と製造実態の整合性に係る自主点検通知について
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先月のことですが、血液製剤及びワクチン製剤の製薬メーカーにおいて、長年承認書と異なる
製造方法での製造が行われてきたことにより、「医薬品の製造販売承認書と製造実態の整合性
に係る点検の実施について(平成28年1月19日薬生審査発0119第1号)」が発出されました。

内容は、医薬品製造販売業者は、製造記録や製造現場の職員のヒアリング等により、製造実態
が承認書に則したものとなっているか、当該業者が国の承認を受けて、現在製造販売を行って
いるすべての医薬品について速やかに点検を行い、までに厚生労働省医薬・生活衛生局審査管理
課に電子メールで報告することを求めるものです。

点検対象となる医薬品製造販売業者は第一種医薬品製造販売業者及び第二種医薬品製造販売業者
で、点検対象となる医薬品には一般用医薬品も含まれますが、体外診断用医薬品は含まれません。
国内製造品については、平成28年2月19日まで、国外製造品目については、平成28年3月22日まで
に報告する必要があります。
国外製造品目とは、最終製剤が外国製造のものだけでなく、承認書に記載のある製造工程の中
に外国で行う行為があるものも含まれます。

点検の客観性という観点から、必ず製造部門以外で点検を行う必要があり、品質管理部門の方
などはかなりお忙しい状況にあると思われます。

今回の自主点検により、どれだけの相違がみつかるか気になるところです。

出典:
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T160121I0030.pdf
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T160121I0040.pdf


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平成27年9月の調剤医療費における後発品数量シェアは59.2%
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この2月1日に、平成27年9月の調剤医療費(電算処理分)が発表されました。

それによりますと、平成27年9月の調剤医療費(電算処理分に限る。以下同様。)は6,273億円
(伸び率(対前年度同期比、以下同様。)7.7%)で、処方せん1 枚当たり調剤医療費は9,591円
(伸び率8.4%)となりました。

後発医薬品の使用状況について見てみますと、後発医薬品薬剤料は680億円(伸び率:15.9%、
伸び幅94億円)となりました。
後発医薬品割合は、数量シェア(新指標)注)で、59.2%(伸び率3.1%)、調剤率で62.8%
(伸び率2.4%)となりました。

 注)数量シェア(新指標)の算出方法
 〔後発医薬品の数量〕/(〔後発医薬品のある先発医薬品の数量〕+〔後発医薬品の数量〕)

都道府県別に見ると、最高が、沖縄県で数量シェア(新指標)は71.6%、調剤率で74.1%、
最低は、徳島県で数量シェア(新指標)は49.9%、調剤率で56.1%でした。

平成27年6月に閣議決定された新たな後発品の数量シェア目標(平成29年央に70%以上、
平成30年度から平成32年度末までの間のなるべく早い時期に80%以上とする)に着実に近づいて
おり、沖縄県は、既に平成29年の目標をクリアしている状況にあります。

出典:
http://www.mhlw.go.jp/topics/medias/c-med/2015/09/pdf/gaiyou.pdf


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まとめ
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1つ目の話題について。
医薬品の製造販売承認書と製造実態の整合性を点検し報告せよという課長通知は、同様の問題
を防ぐための厚労省の迅速な予防措置と言えるかもしれませんが、その一方で、監督機関が
何度査察を行っても、今回のような問題の発見は難しいという現実を示しているようにも思え
ます。
今回の通知に対し期限内に回答することも大切ですが、今後、自主点検を効果的に行っていく
ためには、職務分掌の徹底や、内部監査の厳格化といった社内の組織やしくみの見直しも重要
ではないでしょうか。

2つ目の話題について。
後発品のシェアが、目標に着実に近づいていることを実感しました。
沖縄県だけは、既に平成29年の目標をクリアしていることに驚きました。
と同時に、後発医薬品のシェアの地域格差が大きい理由はなぜなのか、少々気になりました。

それから、少し話は変わるのですが、2016年2月8日付薬事日報に、愛媛県の医療機関に対して
実施したジェネリック医薬品に関するアンケート結果が載っていました。それによりますと、
医師の約40%が、情報提供不足、入手までの時間が長い、取扱い業者が少ない、包装単位が大きい
といった理由で、ジェネリック医薬品に不満を抱えているそうです。
後発品がこれから先もシェアを拡大していくためには、これらの不満を解消していく必要もある
ように思います。


最後までお読み頂き、ありがとうございました。
☆次回は、3/1(火)に配信させていただきます。


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2016.02.01

【PIC/S、WHO及びEMAの最近の話題】ASTROM通信<91号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

寒い日が続いていますがいかがお過ごしでいらっしゃいますか?

さて今回は、PIC/S、WHO(世界保健機構)、EMA(欧州医薬品庁)の最近の情報について取り上げ
たいと思います。

最後までお付き合いいただければ幸いです。


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香港とクロアチアのPIC/S加盟
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2016年1月1日付で、香港とクロアチアが、それぞれ47番目と48番目のPIC/S加盟当局となりました。

香港が加盟したとなると中国の動向も気になるところですが、2015年5月13日に行われたPIC/S
事務局と中国のCFDA(China Food and Drug Administration)の間のミーティングにて、CFDAの
PIC/Sへの加入のためのロードマップについて話し合われたようで、近い将来、中国もPIC/Sに
加盟すると思われます。

出典:
http://picscheme.org/news.php
http://picscheme.org/bo/commun/upload/document/press-release-geneva-2015.pdf


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WHOの計画:インドにレギュラトリー・サイエンスの研究拠点を作る
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2016年1月7日付のPHARMABIZ.comによると、WHO(世界保健機構)は、インドのグジャラート州 の
FDCA(食品医薬品管理局:Food and Drug Control Administration)のオフィスに、レギュラト
リー・サイエンスの CoE (卓越した研究拠点:centre of excellence)を作ることに強い関心を
示しているそうです。これができれば、グジャラート州は、WHOのアジア太平洋地域の最初のCoE
となるそうです。
事が計画通りにいけば、グジャラート州政府はFDCAの建物内にインフラの支援をする一方、WHOは
金銭及び技術上の支援を行う予定です。
グジャラート州FDCAオフィスの長官は、これによって、同州のFDCAがグローバル・スタンダード
に従って常に規制要件を変え改善しようとしているという証となるうえに、WHOの最新の規制情報
を得たり、専門家の教育を受けたりすることで、FDCAの信頼性が増すことを期待しています。
グジャラート州について少し調べたところ、インド国内で最も工業生産が盛んな州であり、かつ、
インドの医薬品の売上の42%、輸出医薬品の22%を製造しており、バルク及び調剤に関する
グローバルな医薬品の拠点をめざしているようです。
余談ですが、「インド独立の父」と呼ばれるマハトマ・ガンディーは、この地方で生まれたそう
です。

インドといえば、米国FDAのウォーニングレターが多く発行されている国ですが、このWHOの計画
が実現すれば、インドの医薬品の品質が向上することが期待されます。
グジャラート州が今後どう発展していくか興味深いところです。

出典:
PHARMABIZ.com
http://pharmabiz.com/ArticleDetails.aspx?aid=92654&sid=1
グジャラート州について
http://www.gujaratindia.com/about-gujarat/business-tourism.htm
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%83%88%E5%B7%9E


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EMA:GMP/GDP査察官のワーキンググループの2016年の計画
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EMA(欧州医薬品庁:European Medical Agency)は、GMP/GDP査察官のワーキンググループの
2016年の計画について発表しました。
注)GMP :Good Manufacturing Practice   GDP :Good Distribution Practice

主要な計画は下記の通りです。
1.統一に関する計画
・共同査察プログラム
 -合意された2016年の査察プログラムの実施を確実なものにすること
 -リスクベースの査察手順を導入し、実行すること
 -査察結果をモニタし、必要に応じて追跡調査を行うこと
 -PIC/S及びMRA(相互承認協定:Mutual Recognition Agreement)パートナーと共同査察に
  おいて協力すること
 -査察プログラムに対する査察官の要員分担を確実なものにすること

・査察の一致した手順の編集と情報交換
 -一致した手順として展開するためにGMP/GDP査察の確認を続けること
 -コンプライアンス管理についての統一アプローチを開発すること
 -重大なGDP違反の対処手順のまとめ
 -添加剤に関する不順守の取り扱い
 -“atypical actives”に関する統一アプローチについて議論を続けること

異なる医薬品の製造に共同使用されている製造設備における交差汚染のリスク管理に関する
  GMPガイドラインの遂行
 -EUの推進チームの設立

・ヘパリン
 -国際的パートナーと相談し、ヘパリンのサプライチェインに関する適切な管理計画を開発し
   実行すること

・GMP証明
 -GMP証明に記載する製品または有効成分の一覧に関する手続きを統一すること

・生物活性物質に関するGMP
 -GMPガイドラインPart1(製剤のGMP)とPart2(原薬のGMP)について、詳細でレベルが異なる点を
   考慮したGMPの期待を統一すること

・データの完全性
 -第三国の当局により公表されたデータの完全性の問題に因る、不順守の発見時または不順守
   の報告時の、査察当局の指針を作ること

2.GMP/GQPに関する計画
・GMPガイドライン1章
 -品質/製造問題により引き起こされる薬の不足を減らすために1章を改正する手続きを進めるか
   どうか決めること

・GMPガイドライン4章
 -GMPとの関連で、データの安全性を保証するために4章の改訂が必要かどうか検討すること

・GMPガイドライン Annex1(無菌医薬品の製造)
 -公の協議をするための草案文面を提供すること
 -逆浸透と生物膜による注射用水の製造に関するQ&A集を承認し発行すること

・GMPガイドライン Annex17(パラメトリック・リリース)
 -最新化を目指した改訂版をまとめること

・GMPガイドライン Annex21(新:医薬品の輸入)
 -公の協議をするための草案文面を提供すること

・データの完全性のGMPガイドライン
 -GMPに関わるデータの完全性に関する期待を明確化すること
 -高度の治療用医薬品に関するGMPガイドラインの開発に関して、EC
(European Commission)とCAT(Committee for Advanced Therapies) が協力を続けること

・GMP準拠と医薬品販売承認取得者
 -医薬品販売承認取得者の責任/活動とGMP準拠の間の関係を考慮した文章を作ること

・EudraGMDPデータベース(製造、輸入、卸売販売許可、GMP証明、GDP証明に関するECのデータ
  ベース)
 -EudraGMDPデータベースを監督し、EudraGMDPのITサブグループに提案をすること
 -国際的協力のためのツールとして、計画モジュールの更なる使用を促進すること
 -データの品質を高め、当局の情報管理戦略を調整するため、統一したデータ入力ルールを開発
   すること
 -異なる医薬品の製造に共同使用されている製造設備に関して最新化されたGMPガイドラインを
   踏まえて特別要求メニューの統一した使用を展開すること

出典:
http://www.ema.europa.eu/docs/en_GB/document_library/Other/2009/10/WC500004875.pdf


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まとめ
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1つ目と2つ目の話題について
今は、インド、中国で作られた医薬品や原薬の品質が不安視されていますが、中国のCFDAがPIC/S
に加盟したり、インドにWHOの研究拠拠点が設立されたりするようになれば、品質は一気に向上
すると思われます。そうなった時、日本はもちろん世界の製薬産業の構造が大きく変わるのでは
ないでしょうか。
5年後、10年後の状況が気になるところです。

3つ目の話題について
“GMP/GDP査察官のワーキンググループの2016年の計画”は、箇条書きで詳細は不明なのですが、
キーワードとして次の3点が気になりました。
【ヘパリン】
 ヘパリンといえば、2007年から2008年あたりに、中国産原料を使用したヘパリン製剤の副作用
 問題が大きく取り上げられましたが、それ以降、話題になっていなかったので、管理はうまく
 いっているのかと思っていました。しかし、今回の計画の中にあがっているところを見ると、
 まだまだリスクは高く、管理に課題があるということなのでしょう。
【データの完全性】
 “GMP/GDP査察官のワーキンググループの2016年の計画”の中で “データの完全性”という
 言葉が何回も登場しました。
 最近のFDAウォーニングレターにデータの完全性の問題を指摘するケースが多く、気になって
 いましたが、データの完全性はグローバルなテーマとなるかもしれません。
 今後の動きに注意が必要かもしれません。
【交差汚染のリスク】
 2014年8月13日発出、2015年3月1日施行のEU GMPガイドラインPart1の3章及び5章改訂版にて、
 交差汚染のリスクに関する内容がかなり追加されたことからもわかるように、このところの
 ヨーロッパでは交差汚染に対してかなり神経を使っているように思います。
 交差汚染のリスク管理も、今後、大きなテーマになるかもしれません。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。
☆次回は、2/15(月)に配信させていただきます。


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