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2016.10.31

【日欧規制当局の情報共有 及び 中国のデータの完全性への取り組み】ASTROM通信<109号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

今年の残りもあと2ヶ月になってしまいましたが、いかがお過ごしですか?

さて、今回は、次の2件の話題を取り上げたいと思います。
1)ヨーロッパと日本のGMP査察情報等の共有の強化について、
2)中国CFDAがリリースしたデータ管理基準ガイドラインドラフトの概要

最後までお付き合いいただければ幸いです。


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ヨーロッパと日本のGMP査察情報等の共有の強化について
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EDQM(European Directorate for the Quality of Medicines:欧州医薬品品質部門)は、
ヨーロッパと日本で共通の治療的製品に関する情報共有を向上し、ヨーロッパと日本の薬局方の
協力を強化することにつき、日本の当局と合意した。

2016年9月13日、日本の厚生労働省(MHLW)、医薬品医療機器総合機構(PMDA)と、EDQMは、
公開されていない情報の機密性に配慮しつつ、組織間のコミュニケーションをいかに強化して
いくかを詳しく述べた書簡を交換した。情報の共有は、主に、ヨーロッパと日本にとって興味の
ある、原薬の製造所のGMP査察の結果に関係する。

さらに、EDQMと厚生労働省は、ヨーロッパと日本の薬局方の間の協力を強化するための具体策を
定義した5年間の協力の覚書にサインをした。これは、検証している承認基準と方法の開発に
関する経験と情報を共有するため、二国間協議、ワークショップ、ヨーロッパ・日本の薬局方と
さまざまな日本の各地域/国の規制機関の間の実務研修)を企画するオプションを含む。この
目的のために、EDQMと厚生労働省は、関連する専門家及びEDQMと日本の規制機関のスタッフを
含む特別な技術ワーキンググループを設けることにも合意した。

この強化された関係は、各国や地域の人々の健康と安全を守り促進するために、厚生労働省、
PMDA、EDQMの能力を高めるだろう。パートナーの持続する目的は、ヨーロッパと日本の安全で
効果的で高い品質の製品へのアクセスの増加を促進するだろう。

出典:
https://www.edqm.eu/en/news/edqm-enhances-sharing-information-japanese-regulatory-authorities-and-strengthens-collaboration


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中国CFDAがリリースしたデータ管理基準のガイドラインドラフトの概要
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2016年10月10日、中国の国家食品薬品監督管理総局(CFDA)は、薬のデータ管理基準に関する
ガイドラインのドラフトをリリースした。ドラフト文書は、医薬品の開発、製造、販売に関わる
組織が、正確で、タイムリーで、追跡可能なデータ記録を保持することを助けるために設計され
ている。

ドラフト文書は、データ・インテグリティ(データの完全性)を重んじる文化を育てる経営陣
の必要性から、CFDAの標準を満たすための技術面のシステムが必要とするものまでをカバーして
いる。CFDAは、従業員が問題に気付いた時に届け出ることを奨励するオープンで透明な文化だけ
でなく、組織レベルで、会社がデータの完全性のリスクを特定する体制や手順を持つことを推奨
している。会社は、逸脱の対処手順に従って、潜在的な違反を調査し、品質や安全性に影響する
問題をCFDAに報告しなければならない。

CFDAは、データの完全性を重視することは、会社が行う他の優先事項と衝突するかもしれない
ことに気付いているようである。当局は、データの信頼性を保証するために、商業的、政治的、
財政的、組織的な圧力が、作業に影響を及ぼしてはならないと述べている。前述の品質文化は、
CFDAは、会社がこの目的を達成することのできる1つの方法と考える。他の推奨事項としては、
十分な数の人と技術的資源を配置し、GXPに関与する全ての職員がデータの信頼性について訓練
されていることを保証することを含む。

ドラフト文書は、個人がデータの完全性を損なう可能性を最小化するシステムを制定することも
含んでいる。CFDAは、誰がデータを作り、修正したかを特定するために、署名の使用を会社に
求めている。データの修正の場合、システムは、変更が承認され、修正の理由のログが残されて
いることを要求するべきである。これは、トレーサビリティにフォーカスした要求の一部である。
存在しているコンピュータ化システムがCFDAの要求に達しない場合、会社は規制に適合するため
に、代わりの方法を導入しなければならない。
CFDAは2016年10月31日までドラフトについてのコメントを受け付けている。

出典:
http://raps.org/Regulatory-Focus/News/2016/10/18/26018/Asia-Regulatory-Roundup-CFDA-Releases-Draft-Guidance-on-Data-Management-18-October-2016/?utm_source=Email&utm_medium=Informz&utm_campaign=Informz%2DEmails


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まとめ
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1つ目の、日本とヨーロッパの規制当局の情報共有の話について。
2014年に日本がPIC/Sに加盟して以来、すでに、ヨーロッパ規制当局との情報共有はされている
と思いますが、それが今後更に強化されていくようです。
具体的にどのような影響があるかはわかりませんが、ヨーロッパの規制当局が査察した製薬会社
のGMP不適合情報をスピーディに入手できるメリットが生じる可能性がある反面、日本の規制当局
が査察してみつけた日本の製薬会社のGMP不適合情報もスピーディに拡散するかもしれません。

2つ目の、中国規制当局がデータの完全性に関するガイドラインのドラフトを作成したことについて。
ご存知の通り、昨今 “データの完全性”が非常に重要視されていて、FDA査察でもEU GMP査察
でも、データの完全性に関する指摘が多くなっています。そのような状況で、今回の中国規制
当局によるガイドラインのドラフト版リリースは、グローバルな規制動向に対応した素早い動き
といえるのではないでしょうか。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。
☆次回は、11/15(火)に配信させていただきます。


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【発行責任者】
株式会社プロス
ASTROM通信』担当 橋本奈央子

2016.10.14

【最近のFDAウォーニングレター12通の傾向】ASTROM通信<108号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

めっきり涼しくなってきましたが、いかがお過ごしですか?

さて、2016年8月1日配信のASTROM通信<103号>では、2016年4月1日から6月22日に
FDAの製品品質オフィスから出された12通のウォーニングレターについて取り上げましたが、
今回はその後に出された12通のウォーニングレターについて、その概要を確認していきたいと
思います。

最後までお付き合いいただければ幸いです。


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12件のウォーニングレターの概要
注:文中のXXはウォーニングレターでマスキングされている文言です
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■WL:320-16-21 英国の原薬製造の重大なCGMP違反に関する2016/6/30付ウォーニングレター
1.ぺニシン製造専用エリアから非専用エリアへの交差汚染を防ぐための適切な手順(または
    実践)を怠った。
  A.ペニシリンの交差汚染
    非ペニシリン製造エリアで、2012年は69回、2013年は72回、2014年は30回、2015年は7月7日
    までに16回、ペニシリンをみつけた。貴社の設備や非ペニシリン薬の汚染を防ぐための管理
       は完全に不適切である。
    非ベータラクタム薬のベータラクタム薬による汚染は、アナフィラキシーや死を含む重大な
    リスクを患者に与える。
  B.ペニシリン検出方法のバリデーション
       非ペニシリン製造設備内で、設備内で製造されたいろいろなタイプのぺニシリンを検出する
       ための方法がバリデートされていない。
  C.ペニシリン洗浄バリデーション
    貴社は全ての表面からペニシリンを除染するためにXXを使っているが、洗浄バリデーション
       が製造をやめた原薬の除去に効果的であることしか示さなかった。貴社は洗浄バリデーショ
       ンを改訂せず、製造をやめた原薬に用いた最初の方法が、査察時に製造していたペニシリン
       薬にも有効か示さなかった。貴社は、貴社の洗浄バリデーションを立証するデータや正当な
       理由を提供しなかった。
    ペニシリンの製造に使用した建物について次の2つの選択肢のうちのどちらかを実施せよ。
   ・設備をぺニシリン専用にする
   ・設備を完全に除染する
2.重大な逸脱の適切な調査や是正処置・予防処置を怠った。
  A.水システムの微生物汚染
    2014年4月20日から2015年2月17日まで、水システムの微生物汚染は、少なくとも25回、
       警戒レベルまたは対策レベルを超えて調査したが、根本原因を確かめなかった。25回の調査
       のうち16回は、裏付けする証拠がないのに、根本原因をサンプリングミスと結論づけ、残り
       の9回については、根本原因を究明しなかった。
  B.バイオバーデン(薬液の生菌数試験)の規格外の原薬のバッチ
    査察官は、3つのXXが規格を超えているのを発見した。しかし、バッチは生菌数試験が合格
       とされ、出荷された。
  C.原薬の中の異物
    異物試験でバッチの中に次の異物を発見した:
    ・研磨パッドの緑の繊維
    ・製造工場の塗料の赤い断片
    ・ガラスの小片の黒い微粒子
    貴社は、これらはそれ自体に内在する許容可能な汚染と結論づけた。
http://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2016/ucm511838.htm

■WL:320-16-22 中国の原薬製造の重大なCGMP違反に関する2016/7/19付ウォーニングレター
1.品質を管理するための効果的なシステムの制定、文書化、実装を怠った。
  供給者の品質、ラベルの貼り替え作業、サンプリング、製品出荷、文書保存、教育に関する
    文書化された手順がなかった。また、2014年9月以前のラベル貼り替え作業の記録を査察官に
    提出できなかった。
2.原薬製造者から受け取った品質や規制当局の情報を顧客に伝えることを怠った。
  貴社が顧客に発行するCoA(Certificate of Analysis:分析証明書)の情報をたびたび偽造、
    削除した。
  たとえば、従業員の名前を偽造し、CoAの署名者の名前として使った。また、もともとの原薬
    製造者の名前と住所を削除し、もともとのバッチの証明書のコピーを付けなかった。また、
    貴社はリテストや使用期間の延長に関する基準を持っていないにも関わらず、製造者が表示した
    使用期限を超えた“使用期限”をCoAに載せた。
3.原薬の製造に使用する建物を清潔な状態に保つことを怠った。
  査察中、査察者は、汚れた倉庫保管スペースについて記録し、設備内の倉庫に隣接した部屋で
    ネズミをみつけた。
〇査察中の情報へのアクセス
  査察中、貴社は判断を誤らせたり、だまそうとしたりする発言をし、査察官が正確で本当の情報
    にアクセスすることを遅らせた。たとえば:
    ・査察中、従業員は、製造所内に医薬品はないと言ったが、査察官は、ラベルを貼り替えた医薬
      品のための倉庫として使われている部屋を発見した。
  ・同じ従業員が査察官に、2015年1月に医薬品のラベルの貼り替えをやめたと言ったが、査察中、
      査察官は2015年1月以降2016年1月まで医薬品を売っていたことを示す輸出医薬品リストを
      レビュした。
http://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2016/ucm512814.htm

■WL:320-16-23 中国の最終医薬品製造の重大なCGMP違反に関する2016/7/26付ウォーニングレター
1.リリース前に、医薬品の各バッチに関し、医薬品の同一性や有効成分の濃度を含む、最終仕様へ
    の適合についての実験室による適切な判定を行っていない。
2.貴社は、品質管理部門により、ロットがサンプリングされ、試験され、使用のためのリリースが
    されるまで、ロットの使用を差し控えることを怠った。
3.医薬品の安定性を評価するために設計し文書化したテスト計画を定め、それに従うこと、安定性
    試験の結果を適切な保管条件や使用期限を決定するために使用することを怠った。
4.バリデーション手順や、貴社の医薬品が同一性、濃度、品質、純度を持っていることを保証する
    ために設計され、工程を説明した報告を含む、製造や工程管理のための文書化された手順を制定
    することを怠った。
5.製造、加工処理、包装または製品の装置の洗浄および保守管理のための文書化された手順を制定
    し従うことを怠った。
http://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2016/ucm514420.htm

■WL:320-16-24 中国の原薬製造の重大なCGMP違反に関する2016/8/4付ウォーニングレター
1.制定した仕様や規格に従っていることを確実にするために実施した全てのテストから得られた
    完結したデータを含む実験室の管理記録を所有していることを怠った。
    ・実験室の職員が、適切な文書、正当性、調査もなく、非公式のテストを実施した。
      査察官は、残留溶媒のサンプルのガス・クロマトグラフィー(GC)分析について、分析者が、
      正式な分析の前に、非公式の分析を実施し、別の“R&D”フォルダに記録したのを見つけた。
      R&Dフォルダに保存された非公式の分析は、貴社の原薬に関する正式な品質管理記録の一部
      にはならず、貴社は、これらの非公式の分析結果を、原薬の品質を評価するため、または、
      原薬のバッチのリリース判断のためのものとは考えなかった。
      査察官は、R&Dフォルダの中のクロマトグラムをレビュし、そのうちのいくつかは、同じ
      サンプルの公式記録では報告されていない、原因不明の大きなピークを示していることに
      気付いた。クロマトグラムのそのようなピークの存在は、医薬品の中に未知の特性化されて
      いない不純物が存在することを示しているかもしれない。
2.不正アクセスや、データの変更を防ぐためのコンピュータ化システムの十分な管理の実施を
    怠った。また、データの削除を防ぐための適切な管理の提供を怠った。
    ・残留溶媒のテストに使用されるGCシステムは、改ざん、データの削除、不正アクセスを防ぐ
      管理が欠けていた。例えば、CGMPの記録の生成に責任を負うオペレータ達が、サーバへの所定
      のデータ転送前のデータを含むコンピュータにアクセスするための全管理者権限を持ってい
      た。全ての分析者は共通のログインIDとパスワードを共有していた。万能な管理者権限の使用
      と1回の共通のログイン/パスワードは、アクションから特定の個人へとトレースすることが
      できないことを意味していた。さらに、分析中、ユーザによって実行された全ての活動に関す
      る履歴ファイルを作るための監査証跡の設定がされていなかったので、貴社の電子データは
      監査証跡なしに、改ざんや削除の危険にさらされていた。
3.作業を実施した時に記録することを怠った。
  ・査察中、査察官は異なる分析者が、原薬の品質管理の実験室において、プリデートまたは
      バックデートで記録していることを発見した。高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)分析に
      よる適合性試験を文書化するのに、分析者たちがプリデートのワークシートを使っていた。
      ワークシートは、テストの5日前の日付になっていたが、分析者たちは、日付通りにテストを
      実施したと主張した。査察官は、テスト結果が入手できる5日前に、分析者が微生物学的試験
      の実験室ワークシートにサインをして日付を書き、不純物と含有量試験に関する実験室ワーク
      シートには4日遅れてバックデートで記録していた。
〇データの完全性の改善
  ・貴社の品質システムは貴社の製造した医薬品の安全性、有効性、品質を裏付けるデータの正確
      さと完全性を適切に保証していない。我々は貴社の改善を手助けするために、適格なコンサル
      タントを雇うことを強くすすめる。このウォーニングレターの回答では以下の情報を提供せ
      よ。
       A.データ記録・報告の不正確な範囲の包括的な調査
       B.貴社の医薬品の品質でみつかった不具合の潜在的影響のリスク評価
       C.グローバルな是正処置・予防処置の詳細を含む貴社のマネジメント戦略
http://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2016/ucm516163.htm

■WL:320-16-25 中国の最終医薬品製造の重大なCGMP違反に関する2016/8/10付ウォーニングレター
1.リリース前に、医薬品の各バッチに関し、医薬品の同一性や有効成分の濃度を含む、最終仕様へ
    の適合についての実験室による適切な判定を行っていない。
2.医薬品の安定性を評価するために設計し文書化したテスト計画を定めそれに従うこと、安定性
    試験の結果を適切な保管条件や使用期限を決定するために使用することを怠った。
3.バリデーション手順や、貴社の医薬品が同一性、濃度、品質、純度を持っていることを保証する
    ために設計され、工程を説明した報告を含む、製造や工程管理のための文書化された手順を制定
    することを怠った。
4.装置の洗浄および保守管理のための文書化された手順を制定し従うことを怠った。
5.バッチの製造の立案をし、製造した医薬品の各バッチの製造と管理に関わる完結した情報の記
    を管理することを怠った。
http://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2016/ucm516836.htm

■WL:320-16-26 中国の原薬製造の重大なCGMP違反に関する2016/8/11付ウォーニングレター
1.制定した仕様や規格に合っていることを保証するために実施する全ての実験室の試験から得られ
    る完結したデータを保持することを怠った。
   ・査察の間、FDA査察官は、電子的に保管されたデータや紙の記録を変更することを防ぐ基本的
      な実験室の管理が不足していることを発見した。疑わしい、規格外(OOS)の結果に遭遇した
      時、貴社は、望ましい結果が得られるまでサンプルの再試験を行った。貴社は、もともとの
      結果の調査、レビュ、または報告をしなかった。貴社は医薬品の品質を評価し、制定した仕様
      や規格に合っているかを判断するのに不完全な記録に頼った。
      例えば、査察中、HPLCシステムから得られる電子データをレビュしたところ、2014年10月9日
      に実施した安定性サンプルの試験に、未知の不純物のピークがありOOSだったが、この安定性
      試験の公式記録にそれは含まれなかった。かわりに、分析者は2014年10月10日に合格になった
      新しいサンプルを使って試験を行い、公式記録には2番目のサンプルから得られた合格の結果
      しか報告されなかった。
2.不正アクセスやデータの変更を予防すること、データの改ざんや削除を防ぐ適切な管理を提供す
    ることを怠った。
    ・査察中、貴社の実験室のシステムは、ローデータの削除や変更を防ぐためのアクセス管理が
      不足していることを発見した。例えば、査察官が原薬のバッチの残留溶媒に関するGCによる
      テスト時に生成されるデータファイルを含む電子フォルダをレビュし、GCシステムにより生成
      されるメタデータと比較したところ、2つのクロマトグラムが削除されていた。操作者・管理
      者のデータの変更を制限する管理がなく、分析者は、2回の結果を削除していた。
3.作業が行われた時に記録を作ることを怠った。
    ・査察中、貴社がマイクロバイアルのテスト結果を記録するためのワークシートを持っていない
      ためテスト結果を同時に記録していないことを発見した。
〇査察中のデータ生成の遅れ
  ・査察中、査察官が要求したいくつかの記録をレビュに利用できなかった。
   たとえば、微生物学的実験室の査察中、査察官は原薬のバッチに関するマイクロバイアルの
   完結したワークシートの提出を要求したところ、貴社の職員が、査察官を、完結したデータが
   あるという実験室の外の別の部屋に案内した。完成したワークシートが提供されずに約30分
   間、実験室の外にいた後、実験室に再入室すると、問題になっているバッチに関する部分的に
   完成したQCのワークシートを持った微生物学者がいた。
〇データの完全性の改善
  ・貴社の品質システムは貴社の製造した医薬品の安全性、有効性、品質を裏付けるデータの正確
   さと完全性を適切に保証していない。我々は、貴社の作業の監査をし、FDA要件を満たすための
   支援をするコンサルタントの使用を承認する。このウォーニングレターの回答では以下の情報
   を提供せよ。
   A.データ記録・報告の不正確な範囲の包括的な調査
   B.貴社の医薬品の品質でみつかった不具合の潜在的影響のリスク評価
   C.グローバルな是正処置・予防処置の詳細を含む貴社のマネジメント戦略
http://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2016/ucm518546.htm

■WL:320-16-27 インドの原薬製造の重大なCGMP違反に関する2016/8/12付ウォーニングレター
◇Vapi製造所
1.OOSの結果の適切な調査と文書化及び是正処置を怠った。
2.原薬の品質に与えるかもしれない製造工程の変更の潜在的な影響の評価を怠った。
◇Bavla製造所
1.OOSの結果の適切な調査と文書化及び是正処置を怠った。
2.貴社の原薬が、制定した品質の規格、純度に合っていることを確実にするためのテスト手順が
  科学的に妥当で適切であることを保証することを怠った。
3.中間体または原薬の製造に関わる従業員の教育記録の保持を怠った
  ・従業員のCGMP教育記録に信ぴょう性を疑う多数の食い違いがみつかった。
4.原薬の製造に使う設備を清潔な状態に保つことを怠った。
  ・製造エリアの壁に虫、鳥、トカゲ、ねずみ、または他の動物が入ることのできる穴があった。
http://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2016/ucm516883.htm

■WL: 320-16-28 中国の原薬製造の重大なCGMP違反に関する2016/8/19付ウォーニングレター
1.原薬の製造に使用される装置を適切に保持することを怠り、開放系装置を使用する場合は、汚染
  のリスクを最小限にすることを怠った。
  ・専用でない医薬品製造装置が、修理が必要な状態になっていた。
2.原薬の製造に使用する建物が、開放系装置を使用する場合、汚染を防ぐ方法で、建物を保持し、
  修繕し、清潔に保つことを怠った。
  ・原薬を製造する開放系装置の上の天井のはげた塗料がみつかった。また、窓やドアのまわりに
   隙間があり、天井に穴があった。クリーンルームに虫が飛んでいた。
〇CGMPコンサルタントの推奨
  ・貴社で見た逸脱の性質に基づき、貴社がCGMP要件に合うよう貴社の作業を評価する適格な第三
   者のコンサルタントを雇うことを強く勧める。コンサルタントの使用はCGMPへの適合に関する
   貴社の責任を解放するものではない。全ての欠陥の完全な解決とCGMP適合の保証に関する責任
   は、貴社の経営者に残る。
http://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2016/ucm517942.htm

■WL:320-16-29 インドの最終医薬品製造の重大なCGMP違反に関する2016/8/25付ウォーニングレター
1.すべての成分、製品容器、密閉、中間材料、包材、医薬品の合格・不合格について責任と権限を
  持つ適切な品質管理部門の制定を怠った。
  ・貴社の品質部門は不純物の混ざった原薬の使用を許可した。
   品質管理やリリース試験の実施前にCoAを承認した。
   さらに、査察官がレビュした11のバッチ記録において、品質部門は、データの完全性の確認を
   怠った。貴社の製造の責任者は、作成者、レビュ者、許可者、承認者のサインを偽造したこと
   を認めた。
2.製造、加工、包装、保管に使用する建物を清潔で衛生的な状態に保つことを怠り、ねずみ、鳥、
  虫、その他の害虫が侵入できないようにすることを怠った。
  ・パイプや空気孔の周りの壁に隙間や穴があった。
3.公的またはその他の要件を超えて、医薬品の安全性、同一性、濃度、品質、純度を変える異常や
  汚染を防ぐため、適切な間隔で、医薬品の性質、消毒装置、滅菌装置や器具を清潔にし、維持す
  ることを怠った。
  ・共有の医薬品製造装置の周りに、さびや汚れや銃滑油の漏れがあった。
4.許可された職員だけが製造のマスタ、管理記録、その他の記録の変更を行うことを確実にするた
  めのコンピュータまたは関連システムの適切な管理を怠った。
  ・品質部門エリアのコンピュータは、アクセス制限の管理や、権限を持たない者がデータファイ
   ルやフォルダの変更を防ぐ管理がなかった。
   すべての職員が、年次の製品照査(APR : Annual Product Review)のスプレッドシートにアク
   セスでき、APRがあるデスクトップコンピュータはロックされていなかった
〇データの完全性の改善
  ・貴社の品質システムは貴社の製造した医薬品の安全性、有効性、品質を裏付けるデータの正確
   さと完全性を適切に保証していない。我々は貴社の改善を手助けするために、適格なコンサル
   タントを雇うことを承認する。このウォーニングレターの回答では以下の情報を提供せよ。
   A.データ記録・報告の不正確な範囲の包括的な調査
   B.貴社の医薬品の品質でみつかった不具合の潜在的影響のリスク評価
   C.グローバルな是正処置・予防処置の詳細を含む貴社のマネジメント戦略
〇査察中の情報へのアクセス
  貴社は、査察の開始を遅らせようとし、査察中に我々が要求したいくつかの記録は提供されな
  かった。
  ・2015年11月30日、査察官は、倉庫の管理者が貴社の年次報告書からページを破いて、ポケット
   に入れるのを見た。管理者は、最終的には、査察官にそのページを提供した。
  ・2015年12月1日、査察官は、HPLCの印刷したクロマトグラムを要求したが、提供しなかった。
http://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2016/ucm518540.htm

■WL:320-16-30 ブラジルの最終医薬品製造の重大なCGMP違反に関する2016/8/25付ウォーニングレター
1.貴社は、品質管理部門に適用する文書化された責任や手順の制定を怠った。
2.貴社は、非無菌製剤の中に好ましくない微生物が入ることを防ぐために設計された文書化された
  手順を制定し、それを守ることを怠った。
  ・貴社は最終製品の微生物学的試験の実施を怠った。
3.同一性、濃度、品質、純度及び関連試験の規格を満たさない成分、製品容器、密閉容器の1ロット
  またはそれ以上の使用を許可し出荷した。
4.製品が適切な安定性試験で裏付けされた使用期限を耐えることを保証することを怠った。
  ・貴社は、使用期限を裏付けする安定性データを持っていなかった。
〇CGMPコンサルタントの推奨
  ・貴社で見た逸脱の性質に基づき、貴社がCGMP要件に合うよう貴社を支援する適格なコンサルタ
   ントを雇うことを強く勧める。
http://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2016/ucm518694.htm

■WL:320-16-31 中国の原薬製造の重大なCGMP違反に関する2016/9/6付ウォーニングレター
1.制定した仕様や規格に従っていることを確実にするために実施した全てのテストから得られた
  完結したデータを含む実験室の管理記録を所有していることを怠った。
  品質管理ラボは、原薬の分析から得られた完結したデータを記録し保持することを怠った。
  例えば:
  ・原薬が仕様を満たしているかどうか評価するための製品バッチの正式な分析の前に、“実験的
   な”分析を実施したが、これらの“実験的な”試験について文書化していなかった。
  ・クロマトグラフィックシステムの監査証跡のレビュの結果、貴社の分析者は、何度もクロマト
   グラフィックのローデータを削除していることがわかった。貴社は、分析者はシステムをテス
   トして、その関連するファイルを消したのだろうと述べた。しかし、削除されたローデータの
   監査証跡は、実際のバッチ番号を含んでいた。実験室の記録とローデータが正確で妥当なもの
   という保証がない。
2.作業時の実験室の管理に従い文書化することを怠った。また、実験室の手順からの逸脱につい
    て、文書化し説明することを怠った。
  ・査察中、貴社は、2014年8月30日9:46:39のクロマトグラムを提出したが、その後、同じ分析、
   機器、日時、バッチで、異なるクロマトグラムを提出した。2つ目のクロマトグラムは、査察中
   に提供されたものと同じに見えるが、異なるメソッドファイル名、カラムタイプ、シリアルナ
   ンバー、システム温度を含んでいた。これらの文書は2014年8月30日9:46:39に貴社が実施した
   実際の分析を示していない。
3.品質部門が、全ての重大な逸脱が調査され解決されることを保証することを怠った。
  ・査察時、微生物の汚染に関し、67の逸脱が文書に記録されていた。これらの逸脱は
   2015年1月1日から8月20日に発生したが、査察の記録によれば、2013年から汚染は起こり続け、
   問題は解決されていなかった。
〇データの完全性の改善
  ・貴社の品質システムは貴社の製造した医薬品の安全性、有効性、品質を裏付けるデータの正確
   さと完全性を適切に保証していない。我々は、貴社の改善を支援する適格なコンサルタントを
   雇うことを強く勧める。このウォーニングレターの回答では以下の情報を提供せよ。
   A.データ記録・報告の不正確な範囲の包括的な調査
   B.貴社の医薬品の品質でみつかった不具合の潜在的影響のリスク評価
   C.グローバルな是正処置・予防処置の詳細を含む貴社のマネジメント戦略
http://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2016/ucm521098.htm

■WL:320-16-33 台湾の原薬製造の重大なCGMP違反に関する2016/9/15付ウォーニングレター
1.原薬の品質を変えうる汚染や原料の持ち越しを防ぐ適切な保管の手順を持っていない。
  ・査察官は、医薬品製造装置の上やまわりに、腐食、穴、汚れ、漏れがあることを発見した。
2.不具合や逸脱に関連する適切な調査の実施や、関連する他のバッチに広げた調査の実施を怠っ
  た。
  ・顧客の苦情を十分調査しなかった。
   例えば、顧客から苦情を受けたが、そのバッチの保管サンプルの評価をせず、他のバッチで評
   価した。異物を発見したが、異物の特定や適切な是正処置を行わなかった。
3.原薬の製造に使用する建物を清潔な状態に保つことを怠った。
  ・例えば、査察官は、床の上のごみ、虫、正体不明の湿った積み重ね、最終の原薬の製造に使用
   する原材料や中間体を保管するための冷所にて鼻につく臭気を発見した。貴社の職員は、部屋
   は一度も清掃されたことはないと述べた。
http://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2016/ucm521320.htm


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まとめ
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12件のウォーニングレターの指摘内容、いかがでしたでしょうか。
汚染の防止、是正処置・予防処置、手順や記録の文書化、設備の管理、データの完全性など、多岐に
わたる問題が指摘されていましたが、やはり、データの完全性に関する指摘が目立っていました。
IDやパスワードの共有、監査証跡の不設定、アクセス権限(特に変更・削除権限)の管理の不履行、
作業した時点でのデータ作成の不履行、手順や記録の文書化の不履行が、データの完全性の指摘の
原因になります。
基本的なことではありますが、意外に徹底されていなかったりしますので、今一度、社内で見直して
みてはいかがでしょうか。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。
☆次回は、10/31(月)に配信させていただきます。


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