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2017.03.31

【EUとFDAのMRA締結について】ASTROM通信<119号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

ついに桜の季節がやってきましたが、いかがお過ごしでいらっしゃいますか?

さて、今回は、欧州連合(EU)と米医薬食品局(FDA)で採択した医薬品製造設備の査察の
相互承認協定についてみていきたいと思います。
日本-EU間では既に相互承認協定を締結していますが、日本-FDA間ではまだ締結していま
せん。EUとFDAが協定を締結したことにより、今後、日本-FDAの間の協定締結の話が進む
可能性があります。
また、EU-FDA間で日本の製造所の査察情報が共有され、日本の製造所が、査察を受ける
回数が減る可能性もあれば、逆に、ネガティブな情報がEU-FDA間で共有されてしまう
可能性もあるかしれません。
このように、EUとFDAの話題と言いつつ、日本になんらかの影響があるかもしれない内容
ですので、是非最後までお付き合いいただければ幸いです。


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EUとFDAの相互承認協定の概要
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欧州委員会(EC)と米医薬食品局(FDA)は、医薬品製造設備の査察の相互承認協定を採択
しました。1998年のGMPの協定に関する今回の改訂で、EUとアメリカの規制当局は、
ヨーロッパ及びアメリカ市場向けの医薬品及び原薬を製造しているEUまたはアメリカにある
設備に関して、お互いの情報を頼ることができるようになります。この協定は、医薬品の
承認過程には影響せず、製造所の査察にのみ焦点を絞っています。EUとアメリカの規制当局
との連携の強化により、規制当局が、公衆衛生のリスクとなる前に工場の問題を特定し対処
する能力を向上させ、医薬品製造業者の管理上の負担やコストが減ることが期待されています。
2017年1月19日のワシントンにおけるアメリカの署名、2017年3月1日のブリュッセルにおける
EUの署名により協定は発効し、FDAによる査察の承認自体は今年の11月頃になる予定です。
出典:https://ec.europa.eu/newsroom/sante/item-detail.cfm?item_id=55234


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協定の詳細
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ここから協定の詳細が記載された付属文書について見ていきたいと思います。
1章 定義、目的、適用範囲と製品の対象範囲
1条 定義
   ※用語集となっています。計14個の用語が解説されてありますが、ここでは、文書の
    理解に不可欠と思われる用語をピックアップしました。
2~4. “認証された当局”とは、EUにとっては“同等の当局”、アメリカにとっては“能力の
   ある当局”を意味する。
   能力のある当局とは、FDAが、APPENDIX 4の基準と手順、APPENDIX 1にリストアップされた
   アメリカの該当する法律、規則、管理規定により、能力があると判断した当局を意味する。
   同等の当局とは、EUが、APPENDIX 4の基準と手順、APPENDIX 1にリストアップされたEUの
   該当する法律、規則、管理規定により、明白に同等であると判断した当局を意味する。
10. “公的GMP文書”とは、APPENDIX 2にリストアップされた当局により、製造所査察の後に
   発行される文書を意味する。公的GMP文書の例として、査察報告、製造所がGMPに適合して
   いることを証明する当局によって発行された証明書、EUのGMP不適合報告、所見の通知、
   無題の書簡、ウォーニングレター、FDAにより発行されたインポートアラート(輸入禁止
   措置及び警告書)がある。
2条 目的
   この付属文書は、団体(EUまたはFDA)間の公式GMP文書の交換、及びそれらの文書内の
   事実認定の依存を容易にする。この付録文書は、製造設備の管理を向上し、品質リスクに
   より一層取り組み、健康への悪影響を防ぐために、査察の重複を避けることを含む各団体の
   査察資源の活用や再配分を認めることによって、貿易と公衆衛生に役立つことを容易にする
   よう努める。
3条 適用範囲
1. この付属文書は、製品の販売中(以下、承認後査察)、団体(EUまたはFDA)の領域内で
  実施される医薬品の製造所査察、製品が販売される前(以下、承認前査察)の11条の範囲、
  各団体の領域外で実施される製造所査察の8.3条の範囲に適用される。
2. APPENDIX 1は、今回の査察やGMP要件が及ぶ法律、規則、管理規定を挙げている。
3. APPENDIX 2は、この付属文書で対象とする製品の製造設備の管理に責任がある全ての当局を
  リストアップしている。
4. 協定の6条、7条、8条、9条、10条及び11条はこの付属文書には適用しない。
4条 製品の範囲
1. これらの手順は、販売されているヒト用または動物用の最終の医薬品、中間製品、中間材料、
  販売されている特定のヒト用生物学的製剤、原薬、APPENDIX 2と20条に書かれた
  両団体(EUまたはFDA)の規制当局により規制されたものに限り適用される。
2. 血液、血漿、組織、臓器、動物用免疫製剤は、この付属文書の適用範囲から除く。
3. APPENDIX 3に、この付属文書に含まれる製品のリストを含む。

2章 承認の決定
5条 評価
1. 各団体(EUまたはFDA)は、もう一方の団体の要請に従って、APPENDIX 3にリストアップ
  された製品に関し、この付属文書に準拠して、付属文書発効後に追加された当局も含み、
  APPENIDX 2に挙げられた当局の評価を出来る限り迅速に実施するものとする
2. 各団体は、この付属文書に準拠して評価を実施するために、APPENDIX 4に記述された
  評価の基準と手順を使用するものとする。
6条 評価の参加と完成
   APPENDIX 2にリストアップされた当局に関し、各団体(EUまたはFDA)は、APPENDIX 4
   に記載された手順に参加するものとする。各団体は、出来る限り迅速にこの付属文書に
   準拠して評価を終えるために誠意をもって取り組むものとする。
 (a)EUは2017年7月1日までにこの付属文書のもとで、ヒト用医薬品に関するFDAの評価を
  終えるものとする。
 (b)FDAはAPPENDIX 5に設定された通りに、APPENDIX 2にリストアップされた各EU加盟国の
  ヒト用医薬品の当局の評価を終えるものとする。
7条 当局の認証
1. 各団体(EUまたはFDA)は、APPENDIX 4に述べられた基準により、当局を認証するかを決定
  するものとする。各団体は、当局を認証する決定を速やかに合同部門委員会に通知するもの
  とする。合同部門委員会は認証された当局のリストを保持し、最新化するものする。
  リストは各団体により公然と入手可能にされるものとする。
2. 評価している団体は、評価の過程で見つかったいかなる不備も、もう一方の団体と関連当局
  に速やかに通知するものとする。認証拒否の判断の場合、評価団体は、他の団体と関連当局に、
  拒否の判断の理由と、肯定の判断を得るためにとられるべき是正処置を理解するために
  十分詳細な情報を提供するものとする。団体は、他の団体に、5条に従って、一度拒否の
  判断をされ必要な是正処置をとった当局の再評価の実施を依頼することができる。
3. 評価団体は、依頼に基づき合同部門委員会の中で、他の団体と、拒否の判断の理由について
  速やかに意見をかわすものとする。認証拒否の判断の場合、合同部門委員会により、
  3ヶ月以内に、適切な期限と当局の再評価のためにとるべき厳格な方策について議論する
  ための取り組みがされるものとする。

3章 運用面
8条 査察の認証
1. 団体(EUまたはFDA)は、査察を認証し、他の団体に認証された当局により公表された、
  当局の領域内に位置する製造設備に関する公的GMP文書を受け入れるものとする。
  但し、2項に書かれたケースを除く。
2. 特別な状況で、団体は、他の団体に認証された当局により公表された、当局の領域内に
  位置する製造設備に関する公的GMP文書を受け入れない選択をすることもできる。
  そのような状況の例として、査察報告内の材料の矛盾や不備のしるし、販売後の調査で
  みつかった品質問題や、製品品質または消費者の安全に関する重大な懸念に関する特別な
  証拠がある場合を含む。他の団体に認証された当局により公表された公的GMP文書を
  受け入れない選択をした団体は、他の団体や関連する当局に文書を受け入れない理由を
  通知し、その当局から説明を求めることができる。当局はタイムリーに説明の要求に応える
  努力をし、通常は、査察チームの1人またはそれ以上のメンバからの情報に基づき説明
  提供するものとする。
3. 団体は、他の団体に認証され当局により公表された、当局の領域の外に位置する製造設備に
  関する公的GMP文書を受け入れることができる。
4. 各団体は、3項のもとで公表された公的GMP文書を受け入れる諸条件を判断していい。
5. 本付属文書の目的上、公的GMP文書を受け入れることは文書内の事実認定を信頼することを
  意味する。
9条 バッチのテスト
   EU内では、EU指令2001/83/ECの51条2項及びEU指令2001/82/ECの55条2項にて示される
   ように、クオリファイドパーソンは、EU指令2001/83/ECの51条1項及び2001/82/ECの
   55条1項に書かれた、アメリカで実行されていた管理を実行する責任を解除される。
   その管理とは、アメリカで製造された製品の各バッチ/ロットについて、製品が
   販売承認要件に従っているという、バッチ/ロットの出荷に責任を負う人物によって
   サインされ、製造業者によって発行されたバッチの証明書を添付することをさす
10条 公的GMP文書の伝達
   輸入する団体(EUまたはFDA)が、別の団体に認証された当局に承認後の公的GMP文書を
   要求したら、認証された当局は、要求された日からカレンダー上の30日以内に、その団体
   に文書を伝達するものとする。もし、その文書に基づいて輸入する団体が製造設備の
   新しい査察が必要と判断したら、輸入する団体は、他の団体に認証された関連する当局に
   通知し、11条に従って、新しい査察を実施するように依頼するものとする。
11条 承認前及び承認後査察の要請
1. 団体(EUまたはFDA)または団体に認証された当局は、他の団体に認証された当局に、
  製造設備の承認前査察または承認後査察を書面で要請することができる。要請には、
  要請の理由を含み、査察で取り組む詳細の問題と、査察の完了及び公的GMP文書の伝達
  に関する希望期限を含むものとする。
2. EU内では、要請は、欧州医薬品庁(EMA)へコピーを送付すると共に、関連する認証された
  当局に直接送付するものとする。
3. 要請を受け取ってカレンダー上の15日以内に、認証された当局は、受領を通知し、
  要請された期限通りに査察を実施するかどうかを確認するものとする。要請を受け取った
  当局が、要請に関連する公的GMP文書が既に利用できるか審理中であるという意見で
  あれば、要請した当局に適切にしらせ、要請に基づいてこれらの文書を共有するべきである。
4. 間違いなく、その認証された当局が査察を実施しないと示すならば、要請した当局は、
  製造設備に自身で査察を実施する権利を持ち、要請された当局は査察に参加する権利を持つ。
12条 維持
   各団体(EUまたはFDA)は、当局が認証された領域内で認証の基準を維持するよう監督する
   ために、継続した活動を維持するものとする。そのような監督活動の目的のために、
   各団体は、APPENDIX 4に示された基準に基づき、定期的な査察または当局の評価を含む、
   確立したプログラムを利用するものとする。
   そのような活動の本質は、国際的なベストプラクティスと調和するものとする。一方の
   団体が、これらの監督活動に参加するように、もう一方の団体をその団体の費用負担で
   招待してもいい。各団体は、監督プログラムの重大な変更について、他の団体に通知する
   ものとする。
13条 認証された当局の差し止め
1. 各団体(EUまたはFDA)は、他の団体に認証された当局の認証を差し止める権利を持っている。
  この権利は、客観性があり筋の通った方法で実施され、他の団体及び認証された当局に文書で
  連絡されるものとする。
2. 他の団体に認証された当局の認証を差し止めた団体は、他の団体または認証が差し止められた
  当局の要請に基づき、合同部門委員会で、差し止め、差し止めの理由、差し止めを解除する
  ためにとられる必要のある是正処置について速やかに議論するものとする。
3. 以前認証された当局の差し止めに基づき、団体は、差し止められた当局の公的GMP文書を
  受け入れることは、もはや義務ではない。団体は、その団体が健康や安全の考慮に基づき
  別の判断をしない限りは、差し止め前の当局の公的GMP文書を受入続けるものとする。
  団体が差し止めを解除するか、7条の再評価に準拠して認証肯定の判断がされるまで、
  差し止めは有効とする。

4章 合同部門委員会
14条 合同部門委員会の役割と組織
1. この付属文書の下で実行された活動を監視するために、合同部門委員会が設置される。
2. 合同部門委員会にて1票を持つアメリカのFDAの代表とEUの代表が共同で委員会の議長を
  務める。合同部門委員会は、満場一致の同意によって決定をするものとする。
  合同部門委員会は自身のルールと手順を決定するものとする。
3. 合同部門委員会は特に下記の機能を含む:
 (a)査察のタイプや製品に関するいかなる制限条件も含む認証された当局のリストの作成と
  最新化、APPENDIX 2にリスト化された全ての当局と合同委員会へのリストの伝達
 (b)認証または差し止めの判断に関する不一致や、APPENDIX 2にあげられた当局の評価完了
  の期限を含む、この付属文書に関する問題を議論するための公開討論会の提供
 (c)20条及びAPPENDIX 3に従って、ステイタスの考慮しつつAPPENDIX 3に組み入れる製品の
  判断
 (d)この付属文書の効果的なインプリメンテーションのための適用、必要に応じ、適切で
  補足的な技術及び管理上の取り決め
4. 合同部門委員会は、各団体(EUまたはFDA)が合意するよう、認証または差し止めの判断
  に関する不一致やその他の問題についての各団体の要請に応じて、直接またはその他の
  方法で話し合いをする。

5章 規制の協力と情報の交換
15条 規制の協力
   団体(EUまたはFDA)は、新しい管理を紹介するための提案や、存在している技術的な
   規制の変更、査察の手順の重大な変更の提案をしたり、それらの提案にコメントをする
   ための機会を提供したりするために、法で認めらたれ通りに、お互いに知らせたり
   相談したりするものとする。
16条 情報の交換
   団体(EUまたはFDA)は、公的GMP文書や、その他の製造設備の査察に関する情報の交換や、
   確認された問題の報告・是正処置・回収・委託輸入の拒絶、及びこの付属文書の対象となる
   製品に関する規制や法的問題に関する情報交換のために、関連するデータベースへのアクセス
   を含む適切な手配をするものとする。
17条 警告システム
   各団体(EUまたはFDA)は、もう一方の団体の当局が、品質不良、回収、偽造行為または
   偽造された製品、薬の重大な不足の可能性やその他の品質またはGMP違反に関する問題で、
   更なる管理や関連する製品の販売を差し止めることを必要とすることもあり得る事態について、
   積極的に、かつ、適切なスピードで知ることを可能にする警告システムを維持するものとする。

6章 緊急輸入制限条項
18条 緊急輸入制限条項
1. 各団体(EUまたはFDA)は、輸入国が、適切なレベルでヒトや動物の健康の保護を確実にする
  ために必要な行動をとることにより法的責任を遂行するための権利を持つことを認める。
  団体の当局は、他の団体の領域内の製造設備を自身で査察する権利を持っている。
2. 他の団体の領域内の製造設備の査察を実施する団体の当局は、19.2条に書かれた適用可能に
  なる日付において、通常の手順から除外されるものとする。
3. 団体の当局は、1項のもとでの査察の実施に先立って、文書で他の団体に通知するものとする。
  また、他の団体の当局は、その団体によって実施される査察に参加する権利を持っている。

7章 最終規定
19条 効力発生
1. この付属文書は、この付属文書が効力を発するために団体(EUまたはFDA)が個々の手順の完了
  を確認する公式文書の交換を終えた日に効力を発するものとする。
2. 1項に関わらず、この付属文書の8条、10条、11条及び12条は、4項で述べられたことを除き、
  2017年11月1日まで適用しないものとする。
3. 1項に関わらず、この付属文書の9条は、APPENDIX 2に挙げられたヒト用医薬品に関するEU加盟国
  をFDAが認証するまで適用しないものとする。
4. もし、2017年11月1日までにFDAがAPPENDIX 2に挙げられたヒト用医薬品に関する、少なくとも
  8つの加盟国の評価を終えなければ、FDAが8つの当局の評価を終えるまで2項の適用を延期する
  ものとする。
20条 一時的規定
1. 2019年7月15日までに、合同部門委員会は、本付属文書が対象とする製品に動物用医薬品を
  含めるかどうか検討するものとする。合同部門委員会は2017年12月15日までにそれぞれの
  当局の評価の組織と意見を交換するものとする。
2. 2022年7月15日までに、合同部門委員会は、本付属文書が対象とする製品にヒト用ワクチンと
  製剤から得られる血漿を含めるかどうか検討するものとする。この検討に影響を与えることなく、
  この付属文書の発効日に、一方の団体(EUまたはFDA)は、もう一方の団体の関連する当局に、
  その団体の領域内の製造設備の承認後査察を実施する前に通知し、その当局が査察に参加する
  選択権を与えるものとする。本付属文書が対象とする製品にヒト用ワクチンと製剤から得られる
  血漿を含めることをサポートするために、合同部門委員会は特にそれらの合同査察を通じて
  得られた経験を考慮するものとする。
3. 2019年7月15日までに、11条に書かれた承認前査察の条項をレビュするかどうか決定するために、
  得られた経験をレビュする。
4. 1項及び2項の製品は、1項及び2項に従って合同部門委員会が一度判断したら、本付属文書の
  対象に含まれるものとする。
5. FDAが、評価を保留にした、もしくは、認証をしなかった加盟国の当局の領域内の製造設備に
  ついて、承認後査察を必要と判断した場合、FDAは文書でその当局とEMAに通知をするものとする。
 (a)5項に準拠した通知を受け取ってカレンダー上の30日以内に、領域内に製造設備のある当局、
  またはこの当局の代わりにEMAは、査察を実施するためにEUの認証された当局に依頼することを
  選ぶか、もし選ぶ場合、EUの認証された当局は通知内で指定された期限までに査察を実施するか
  どうかを通知するものとする。製造設備が領域内にある当局は、査察に参加することを認められ
  るものとする。
 (b)EUの認証された当局が査察を実施する場合、認証された当局またはこの当局の代わりにEMAは、
  査察を実施する日と、査察に関する公的GMP文書を提出する日をFDAと、APPENDIX 1に挙げられた
  適用される法律、規則、管理規定に従って通知内で特定された日付までに査察が実施される領域
  の当局に通知するものとする。FDAは査察に参加する選択権を持つものとする。
 (c)EUが認証した当局が査察を実施しようとせず、FDAが実施する場合、査察が実施された領域の
  当局は査察に参加する権利があり、FDAはこの当局に査察に関する公的GMP文書を提出するものと
  する。
21条 終了
1. FDAが、APPENDIX 2に挙げられたヒト用製薬会社に関するEU加盟国の当局の付属文書に基づく
  評価を、APPENDIX 5に設定されたスケジュールに基づいて2019年7月15日までに終えなかった
  場合、付属文書は、2019年7月15日に終了する。
2. 1項に指定された日付は、当局毎にカレンダー上の90日まで延長されることがあるが、
  2019年7月15日までである。
3. FDAは、要請に基づき、合同部門委員会の中で評価に関し提起されたEUによる不一致について
  議論するものとする。もし、合同部門委員会が不一致の解決について合意できなければ、
  EUは正式な不一致についてFDAに文書で通知し、当付属文書はその通知から3ヶ月、または、
  合同部門委員会が合意した日付で終了する。

※APPENDIXについて
APPENDIX 1には、アメリカ及びEUの“該当する法律、規則、管理規定のリスト”が記載されて
います。
また、APPENDIX 2には、該当する”当局のリスト“、APPENDIX 3には、“対象となる製品のリスト”、
APPENDIX 4には“評価の基準と手順”、APPENDIX 5には“加盟国の規制当局の最初の評価の日程”
が書かれています。

出典:http://trade.ec.europa.eu/doclib/docs/2017/february/tradoc_155398.pdf


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まとめ
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いかがでしたでしょうか。
EUとFDAの協定に関する内容ではありましたが、3条1項と8条3項には、EU及びFDAの域外の
査察情報を共有できることが書かれています。となると、冒頭にも書きましたが、日本の
製造所がEUやFDAから査察を受ける回数が減るという恩恵を受けられる可能性もありますが、
ネガティブな査察情報がEU-FDA間で共有されてしまう可能性もあり、注意が必要と思われます。

少し話は変わって、2017年3月18日に、G20(20か国財務大臣・中央銀行総裁会議)の共同声明
から、保護主義への対抗を示す定番の文言がアメリカ主導で外されたというニュースがあり
ましたが、このニュースからもわかる通り、昨今、保護主義の風潮が高まりつつあります。
この協定は、FDAとEUの信頼と協力のもとに機能するものであり、保護主義が台頭すれば存続
できません。
そういった意味でも、この協定の状況を常にチェックしていく必要があるように思います

最後までお読み頂き、ありがとうございました。
☆次回は、4/14(金)に配信させていただきます。

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は前日)に配信いたしております。

今後このような情報が必要ない方は、お手数ですが、こちらに配信停止依頼のメールを
お願いいたします。
hashimoto@e-pros.co.jp

【発行責任者】
株式会社プロス
ASTROM通信』担当 橋本奈央子

2017.03.15

【最近のウォーニングレター】ASTROM通信<118号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは

ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

桜の開花が待ち遠しい季節になってきましたが、いかがお過ごしでいらっしゃいますか?

さて、今回は前回に引き続き、米国食品医薬品局(FDA)の製品品質オフィスより発行された
ウォーニングレター(Warning Letter)6通の内容を確認していきたいと思います。
今回も、日本の製薬会社宛に出されたレターもあります。
どんな点が指摘されたのかを確認しつつ、最後までお付き合いいただければ幸いです。


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ウォーニングレターの概要
注:文中のXXはウォーニングレターでマスキングされている文言です
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■WL:320-17-18 インドの製造所の原薬製造における重大なCGMP違反に関する2017/1/18付
ウォーニングレターにおいて、下記の指摘事項があげられています。
1.原薬の品質を変えうる汚染や原料のキャリーオーバーを防ぐための適切な洗浄手順を持って
  いない。
 我々の査察官は、製造装置のXXに、さび、虫、傷んだ内面、薬の残留物を発見した。この装置は、
 “クリーン”と判断され、原薬と直接接触、または、接触する可能性がある。貴社の不完全な
 洗浄と保守の手順は異質の汚染物質の取り込みまたは薬同士の交差汚染といった受け入れ難い
 リスクを招く。
 貴社の回答によれば、汚れを除き、製造装置の修理をするための是正処置と予防処置(CAPA)
 を開始した。しかし、貴社の回答は、洗浄手順、総合的な保守プログラム、この装置を使用して
 製造されたバッチの調査に関する詳細の改善になっていなかった。
2.貴社の品質部門が、貴社の設備で製造された原薬がCGMPに従い、制定した品質及び純度の規格を
  満たしていることを保証する責任を果たしていない。
 我々の査察官は、2014年6月30日に、アメリカ薬局方の原薬XXのバッチXX、XXは、UVが正常に動作
 しなかったため、同一性やXXの内容物に関する紫外線分光測定によるテストをせずに出荷された
 ことを発見した。
 貴社の変更管理用紙には、“バッチは、条件付きで出荷し、UVの保守問題が修正されたら、同一性
 とXXの内容物に関する分析を実施する”と述べていた。
 貴社の2014年6月30日の分析証明書には“UVとXXの結果は更新する”と述べていた。
 しかし、査察官は、同一性とXXのテストは実施されなかったことに気付いた。貴社の原薬が、品質
 特性を満たすことを保証するために要求された品質管理試験を実施せずに販売されることは容認でき
 ない。
3.全ての製品の逸脱が報告され、評価され、重大な逸脱は調査され結論が記録されることを確実に
  することを怠っている。
 我々の査察官の2014年と2015年の製品年次品質照査(Annual Product Quality Review : APQR)の
 レビュで、8件の重大な処理パラメータの不具合があったことが明らかになった。さらに貴社は3つの
 重大な逸脱につき、バッチの廃棄決定に先立って、適切な調査を行わなかった。
4.貴社の原薬が制定した品質・純度の規格に従っていることを保証するためにテスト手順が科学的
  に理にかなっていて適切であることを保証していない。
 貴社の顧客の苦情をレビュ中、我々の査察官は、バッチXXの水分含有量の不具合に関する2014年9月
 13日の苦情を見つけた。規格の範囲では、水分含有量をXX%からXX%であった。貴社はバッチの出荷
 判定時、水分含有量をXX%と測定したが、苦情申立者はXX%と測定した。
 貴社の試験室で実施した回顧的分析は、貴社が顧客に提供したXXの全てのバッチに関して顧客の
 試験室で得られた水分含有量より低い値を報告した。我々の査察官は、貴社が水分含有量の測定方法
 をバリデートしていなかったことを明らかにした。
 貴社の回答によれば、貴社は水分含有量のバリデーションを完了したとのことだった。しかし、
 貴社は、バリデートされていない方法でテストされた出荷済の原薬のバッチの調査を詳しく述べて
 いないので、貴社の回答は適切でない。
https://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2017/ucm538693.htm

■WL:320-17-19 イギリスの製造所の原薬製造におけるにおける重大なCGMP違反に関する2017/1/19付
ウォーニングレターにおいて、下記の指摘事項があげられています。
●最終製品の違反
1.貴社は、バッチがすでに配送されたかに関わらず、バッチやその成分の説明のつかない規格の
  相違や不具合を十分に調査することを怠った。
・貴社の品質管理部門は、注射用医薬品のいくつかのバッチに、設定したアクションリミットを超える
 粒子の問題を発見した。貴社はこれらの粒子問題を適切に調査しなかった。例えば、237のユニット
 で発見された目に見える粒子の問題の調査で、貴社は、栓の供給業者の製造工程を、金属粒子の有力
 な原因であると確認した。
 しかし、その時実施した唯一の是正は、標準操作手順書“検査、計数及び包装”に、最終製品の不合格
 の基準に異物のサブカテゴリを加えて更新することだった。貴社の是正処置と予防処置(CAPA)の
 計画は不十分である。
・貴社は、最終製品の3バッチの不適合の調査を開始し、再び、栓の製造工程から発生したと思われる
 金属片の粒子の問題を発見した。しかし、これらの調査は不十分で、2016年3月7日まで調査はなく、
 3つ目のバッチの粒子問題の根本原因を調査する際に、ようやく2つの追加のCAPAが開始された。
・貴社は、凍結乾燥された製品のバッチ内の5ユニットの中に繊維を発見した。繊維は、後でボール紙
 または紙と確認された。貴社は、貴社の無菌薬の中の異常な外因性の汚染の潜在源を適切に調査しな
 かった。
・さらに、2016年10月、貴社は、XXが原因の、目に見える粒子を含んでいた更なるバッチの記録を提出
 し、2016年12月、貴社はタンパク性物質の目に見える粒子が含まれた別のバッチの記録を提出した。
 貴社の汚染を予防する能力を疑問視する。
 2016年9月16日の回答では、貴社は、栓の供給業者が、粒子の問題を減らすために装置と設備を改良し、
 品質管理のサンプリングをXXパーセントに増やしたと述べた。
 我々は、貴社が、栓の代わりの供給業者の使用を検討して努力も認識している。しかし、貴社の回答に
 基づくと、貴社は、代替業者の栓の使用を可能にする適格性評価を終えていない。栓の代替業者の適格
 性評価を完全に終えるまでは、貴社がリスクを軽減するために追加のCAPAを検討することを勧める。
 貴社は、貴社の注射製剤内の異物の混入による危険を解決するための迅速で、十分な是正処置・予防
 処置を実施することを怠った。連続する目に見えるさまざまなタイプの粒子の存在は、全ての可能性の
 ある故障モードの不十分な評価と、最終製品の目視検査への過度の依存の証拠である。
 さらに、貴社は、個々の不具合のカテゴリに関する厳格なアクションリミットを持っていない。
2.貴社は無菌とされる医薬品の微生物汚染を防ぐために設計された適切な文書化された手順を制定し、
  それに従うことを怠った。
 2015年1月の査察中、我々の査察官は、無菌製造作業に関連し、以下のことを含むいくつかの不備を発
 見した:
 ・エンクロージャシステムが低下したアクセス制限バリアシステム(RABS)
 ・RABS内の環境モニタリングの不足
 ・環境モニタリングで芽胞形成性の微生物が検出されたのに、無菌充填室の内側表面への殺胞子殺菌剤
  を不使用であること
 ・培地充填バイアルのトレーサビリティの不足
 2015年11月24日、我々は、貴社との会議の中で、これらの不完全な製造手順について議論した。
 2016年3月の査察中、我々の査察官は、以下の追加の無菌製造作業の問題を発見した:
 ・充填室に入る空気を取り除くための煙の調査により、培地充填室作業のシミュレーション中、
  フロア排気穴が付属装置により封鎖されていたこと
 ・無菌充填室に移動された滅菌サイクルに使用される装置の不十分なバリデーション
 貴社は、注射製剤の微生物汚染を防ぐための無菌工程作業の適切で継続的な管理の実施が重要である。
●製剤原料の逸脱
1.中間体や原薬の製造と管理に影響するかもしれない全ての変更を評価する変更管理の制定と実施を
  怠った。
 貴社は、セルバンクの使用に先立ち、適切な変更管理を怠った。例えば、貴社は、製剤原料及び製品の
 製造のためにセルバンクXXを使用した。貴社は、以前は、セルバンクXXのみを使用していた。貴社は、
 新しいセルバンクが商業生産の使用の条件を満たしていることを保証するための十分な変更管理を
 確実にすることを怠った。
https://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2017/ucm538105.htm

■WL:320-17-20 中国の製造所の最終医薬品製造におけるにおける重大なCGMP違反に関する2017/1/26付
ウォーニングレターにおいて、下記の指摘事項があげられています。
1.貴社では、製品の各バッチについて、出荷前に、有効成分の同一性や力価を含む、製品の規格書への
  十分な適合性について試験室が適切な判断を行っていなかった。
 例えば、貴社は貴社が製造したXXのどのバッチについても、出荷前に各有効成分の同一性、純度、有効
性を判断するためのテストをしなかった。
2.貴社は純度、力価、及び品質が適切な文書化された規格に一致するか、各成分のサンプルでテストし
なかった。
 例えば、同一性、純度、有効性を判断するために、XXの製造に使用した有効成分またはその他の成分の
 テストをしなかった。
3.貴社はXXの製造に使う装置の洗浄、保守の文書化された手順の制定と実施を怠った。
 例えば、貴社は、製造装置の洗浄手順を持っていなかった。査察中、我々の査察官は、XX及び他の製造
 装置上に、さびと正体不明のXXの残留物を発見した。
4.他の製品の作業と物理的または空間的に分離することにより取り違えや交差汚染を防ぐための文書化
  された手順の制定と実施を怠った。
 例えば、我々の査察官は、サイズと色が異なり、ラベル表示のないXXが、最終包装を待つテーブルに
 いっしょに置かれているのを発見した。それは、包装作業中に取り違えを起こし得る。
5.貴社は、査察を遅らせたり拒否したり制限したり、または、FDAの査察実施を許可しなかった。
 貴社は、成分の供給業業者や貴社の設備で再包装している製品に関する記録をFDAに提供することを
 拒否し、FDAの査察を制限した。
 貴社は供給業者のうち2社の名前は教えたが、これらの供給業者から得る成分または製品の同一性を示す
 文書や、これらの供給業者が、貴社が受領する前に原料の適切な出荷試験を実施しているかどうか
 示す文書を提供することを拒絶した。査察する権限を持ったFDA査察官が要求した記録の提供の拒否は
 査察の制限とみなされる。
●貴社製品のFDAによるサンプリングと試験
FDAは、顧客の設備の査察中に貴社製品のサンプルを収集した。FDAはXXのサンプルを試験した。FDAの
実験室の分析は、貴社製品のそれらのサンプルは、ラベルには平均69%含むとされる有効成分が通常より
薄いことを示した。
https://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2017/ucm540251.htm

■WL:320-17-21 中国の製造所の最終医薬品製造におけるにおける重大なCGMP違反に関する2017/1/31付
ウォーニングレターにおいて、下記の指摘事項があげられています。
1.貴社は、製品の各バッチについて、出荷に先立ち、各有効成分の同一性と力価を含む最終規格を
  十分満たしていることを実験室で適切に判断しなかった。また、好ましくない微生物が含まれて
  いないことが求められる製品の各バッチについて、適切な実験室の試験を実施しなかった。
 貴社は、規格に一致することを確認するためのバッチの試験を十分に実施しなかった。例えば、
 2015年に出荷したXXの約XXのバッチのうち、同一性と力価の試験は3バッチ、微生物試験は2バッチ
 しか実施しなかった。
2.貴社は、製品が適切な安定試験によって裏付けされた使用期限を有することを保証することを
  怠った。
 例えば、貴社の製品の多数は、安定性の調査の裏付けのない使用期限を設定していた。
3.貴社はさまざまな供給業者から得られる有効成分を含む成分の同一性を保証することを怠った。
 例えば、貴社は、外観と匂いにのみ基づいて、製品に入れる有効成分の原料を合格として使用した。
4.貴社は、製造した製品の各バッチの製造と管理に関する完全な情報と共に、バッチの製造及び管理の
  記録を作成することを怠った。
 例えば、貴社のゲル製品XXロットXXのバッチの記録は、工程内原料や最終製品が、あらかじめ定めら
 れた品質要件を満たすことを保証するためのプロセスパラメータを明示して記録することを行わなか
 った。
 さらに、貴社は、製造工程が、再現性のある製品品質を保証するために設計され管理されていることを
 証明しなかった。
https://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2017/ucm540306.htm

■WL:320-17-22 日本の製造所の最終医薬品製造におけるにおける重大なCGMP違反に関する2017/2/2付
ウォーニングレターにおいて、下記の指摘事項があげられています。
1.貴社は、無菌工程エリア内の環境状態のモニタリング用の適切なシステムを制定しなかった。
 手順の刷新前の査察中、我々は、貴社が無菌製造作業中、所定の人員のモニタリングを実施していない
 ことに気付いた。貴社は、新しい標準操作手順を起草したが、このSOPは明確な指示が欠けている。
 例えば、人員のモニタリングの結果が、アクションリミットやアラートリミットを超えた場合の適切な
 取るべき対応に十分取り組んでいない。また、アクションリミットやアラートリミットが適切な科学的
 論拠により裏付けされていない。
 さらに査察中、我々は、貴社がクリーンルームの環境の表面サンプリングを規定通りに実施していない
 ことを発見した。貴社は、XX内の空気の品質のデータも欠けている。貴社がSOPを改訂したことは認める
 が、貴社の環境モニタリングの頻度と場所は不十分なままである。
2.貴社は、無菌をうたう製品の微生物汚染を防ぐために設計された、全ての無菌及び滅菌工程のバリデ
  ーションを含む適切に文書化された手順の制定と実施を怠った。
 貴社は、開放状態のアクセス制限バリアシステム(RABS)の気流特性の評価をするために、“静止”
 及び“動的”状態での煙の調査を実施しなかった。そして、製造中のむき出しの無菌製品上の一方向気流
 を示すための調査をせず、この無菌製造ラインで製造された無菌製品を出荷した。
 貴社はその後、閉鎖構造で使うためにRABSを改修しバリデーションを実施した。しかし、もともとの
 開放構造のRABSを使って出荷された現在米国市場にあるXXについて対処していないので、貴社の回答は
 不十分である。
https://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2017/ucm540820.htm

■WL:320-17-23 インドの製造所の原薬製造における重大なCGMP違反に関する2017/2/3付ウォーニング
レターにおいて、下記の指摘事項があげられています。
1.水システムがその使用目的にあった水を連続して製造することができることをバリデートすることを
  怠った。
 貴社は、無菌製剤を製造する顧客により使用される原薬を製造している。貴社はXXの終了時点で装置を
 洗浄するために使用される蒸留水の生成法が使用に適していることを証明することを怠った。例えば、
 XXクリーンルーム内の装置の洗浄に使用される蒸留水が、マイクロメーターフィルタを通った後、容認
 できないレベルの微生物数を示した。
2.原薬の品質を変えうる汚染や原料のキャリーオーバーを防ぐための適切な洗浄手順を持っていない。
 貴社は、製造する原薬について、共有装置を使っている。洗浄の適格性評価やバリデーションから得ら
 れたデータから、貴社の洗浄手順は効果が無いことが分かった。例えば、我々の査察官は、2015年から
 2016年の我々の査察の開始までに取られた洗浄評価用サンプルのうち105は、残留薬物がXXppmを超え
 ないこととしている貴社の規格に不合格であることを発見した。洗浄評価の不合格結果を得た後、貴社
 は、合格結果が得られるまで洗浄を繰り返した。貴社は、再発する洗浄手順の効果の無さを調査する
 ことを怠り、不十分な手順を修正することをしなかった。
https://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2017/ucm540822.htm


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
まとめ
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
今回は6通のウォーニングレターをみてきましたが、今回も、適切な手順が定められていないという指摘が
非常に多かったと思います。
手順がない、あるいは、手順はあっても明確でなければ、どうしても属人的な作業や属人的な判断に
つながり、再現性のある製品品質を実現することはできないということを強く感じました。
また、WL:320-17-19のレターを読み、あたりまえのことではありますが、不具合が発生した時にしっかり
CAPAを行っておかなければ、不具合は起き続けるということをあらためて認識しました。
皆様はいかが感じられたでしょうか?
最後までお読み頂き、ありがとうございました。

☆次回は、3/31(金)に配信させていただきます。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

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【発行責任者】
株式会社プロス
ASTROM通信』担当 橋本奈央子

2017.03.01

【最近のウォーニングレター】ASTROM通信<117号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

花粉症の身にはつらいシーズンとなってきましたが、いかがお過ごしでいらっしゃいますか?

さて、2017/1/5のASTROM通信113号で取り上げた後、米国食品医薬品局(FDA)の製品品質
オフィスより、日本の製薬会社宛も含め、多数のウォーニングレター(Warning Letter)が発行
されています。
そこで、今回と次回のASTROM通信では、それらのウォーニングレターの内容を確認していき
たいと思います。

最後までお付き合いいただければ幸いです。


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ウォーニングレターの概要
注:文中のXXはウォーニングレターでマスキングされている文言です
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■WL:320-17-10 ブラジルの製造所の最終医薬品製造における重大なCGMP違反に関する 2016/12/8付
ウォーニングレターにおいて、下記の指摘事項があげられています。
1.貴社は、薬の製造、加工、包装、保管において、適切な設計、適正なサイズ、意図した使用・
  洗浄と保守管理のための作業が実施しやすいように適切に配置された装置の使用を怠った。
 ISO5の無菌充填区域におけるXXとXXの無菌充填ラインは、一方向気流でない。充填区域のXXの
 気流は、無菌充填XXへの入場を含む作業者の介入中に無菌注射製剤を保護するのに十分なほど
 堅固でない。
 煙の調査において、充填ラインの設計は、開いたバイアルの上下の乱気流をもたらすと示した。
 XXの閉栓は著しく気流を乱す。無菌充填区域におけるこの乱れた気流は、重大な汚染の危険を
 もたらす。
2.無菌とされる薬の微生物汚染を防ぐために設計された、全ての無菌及び滅菌工程のバリデー
  ションを含む、適切な文書化された手順を制定し、それに従うことを怠った。
 貴社の煙の調査は、全ての無菌操作に関し、一方向気流を維持しているという貴社の主張を立証
 していない。気流を正確に示すのに煙の量が少なすぎることがある。貴社は一方向気流への作業者
 の介入の影響を示すために煙を注入していなかった。これらの煙の調査は貴社のラインが微生物汚染
 を防ぐため、または、製品の無菌性の高度の保証を提供するために設計されたことを示していない。
 貴社の回答において、貴社は追加の煙の調査を計画していると述べた。貴社の新しい煙の調査は
 動的な作業状態での一方向気流を明確に証明すべきである。
 煙の調査で、活動が一方向気流を乱すかどうかを正確に測定するために、実際の作業中の手動の
 介入をシミュレーションすることが不可欠である。
3.貴社は無菌処理エリア内の環境状態をモニタリングするための適切なシステムを制定すること
  を怠った。
 貴社は環境モニタリングを適切に文書化することを怠った。例えば、貴社の記録は、XXのロットXX
 の製造中に作られていなかった。環境モニタリングのサンプルを、環境モニタリング手順で指定
 した全ての場所から収集したが、記録は、収集した結果及びサンプルと照合していなかった。
 また、貴社の手順は“ゼロではない結果”がある場合にのみ環境モニタリングデータ記録するよう
 にしていた。貴社の環境モニタリング記録はゼロの時に文書化されていない。
https://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2016/ucm534320.htm

■WL:320-17-11 スペインの製造所の最終医薬品製造における重大なCGMP違反に関する 2016/12/15付
ウォーニングレターにおいて、下記の指摘事項があげられています。
1.貴社は、製品の各バッチについて、出荷前に、有効成分の同一性や力価を含む、製品の規格書へ
  の十分な適合性について試験室が適切な判断を行うことを怠った。
 査察者は、貴社が出荷前にOTC医薬品の同一性や力価のテストをしなかったことを発見した。
 2013年の査察でもFDAは同様の不備をみつけていて、貴社は改善すると説明したが、2016年1月の
 査察で、貴社はまだ出荷前の同一性と力価の試験の実施を怠っていた。
2.製品が適切な安定試験によって裏付けされた使用期限を有することを保証することを怠った。
 査察官は、貴社がどの製品についても安定性試験の実施を怠っていることを発見した。貴社は、
 貴社の薬の使用期限を裏付けるテストデータを持っていなかった。安定性プログラムの不履行と、
 使用期限の裏付けデータの不作成は、貴社の製品の品質問題の発見と反応をする貴社の能力を
 制限した。
 例えば、貴社は、製品の分離に関する消費者の苦情に応えて2015年にXXの複数ロットの回収を
 実施した。XXのようなクリームの分離は製品がラベルに表示された保存期間を通して安定して
 いないことのサインである。貴社は安定性プログラムの一環として製品を適切に観察していな
 かったので、製品が既に消費者の手に渡るまで、製品の分離の問題に気付かなかった。
 2013年の査察でもFDAは同様の不備をみつけていて、貴社は安定性プログラムの不足を改善する
 と説明したが、最近の査察でもこの是正処置が実施されていなかった。
3.貴社は、適切な組織単位により起草され品質管理部門によりレビュ・承認された変更を含む
  試験室の管理メカニズムに従わなかった。
 貴社試験室は、微生物試験、物理化学試験、官能試験の結果を記録したログシートの適切な管理が
 できていない。
https://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2016/ucm534309.htm

■WL:320-17-12 カナダの製造所の最終医薬品製造における重大なCGMP違反に関する2016/12/15付
ウォーニングレターにおいて、下記の指摘事項があげられています。
1.バッチがすでに配送されたかに関わらず、バッチやその成分の説明のつかない規格の相違や
  不具合を十分に調査することを怠った。また、調査を、不具合や相違が関係あるかもしれない
  他のバッチに広げることを怠った。
2.貴社は、品質管理部門に適用可能な文書化された責任や手順を規定することを怠った。
3.汚染を防ぐため適正な間隔で装置が洗浄されることを保証するのを怠り、文書化された洗浄手順
  を制定するのを怠った。
4.製品の、規格に対する潜在的な不具合を含む苦情に関する品質管理部門のレビュや、
  21CFR211.192 に従った調査の必要性に関する判断の提供を含む、製品に関する全ての文書または
  口頭の苦情の取扱を述べた適正な文書化された手順の制定を怠った
5.製造、及び、製造した製品がうたっている同一性、力価、品質、純度を持つ、または持つように
  設計された工程管理に関する適正な文書化された手順の制定を怠った。
 例えば、バッチの均一性、完全性、薬の品質の一貫性を保証するために、制定されたパラメータ内で
 操作できることを示すための製品の製造工程のバリデーションを行っていなかった。
https://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2016/ucm534336.htm

■WL:320-17-13 インドの製造所の原薬製造における重大なCGMP違反に関する2016/12/23付
ウォーニングレターにおいて、下記の指摘事項があげられています。
●無菌原薬の違反
1.全ての無菌及び滅菌工程のバリデーションを含む、無菌製品の微生物汚染を防ぐために設計された
  適切な文書化された手順の制定を怠った。
 層流(LAF : Laminar Air Flow)のISO-5エリア内部のXX装置の無菌接続における気流の分析
 (煙の調査)中、査察官は一方向気流の外乱と乱気流をみつけた。動的条件のもと、空気は
 無菌接続部分から吹き抜けたり流れ去ったりすることはなかったため、これらの状況で処理
 されるいかなる製品の無菌状態も損なわれているかもしれない。
 さらに、我々の煙の調査において、XXの装置の無菌接続の間に、複数の無菌技術の欠陥を発見した。
 貴社の装置の設計と無菌工程の作業者の能力が、気流の一方向性の欠如に寄与している。
 無菌処理装置は、作業者が再現可能な無菌操作を実施することを可能にする適切な人間工学を
 提供しなければならない。さらに、貴社の無菌処理操作者は厳密な無菌技術を実践するための
 知識と技術を持っていることが必須である。
 限定された操作でさえ、貧弱な操作の実施や維持管理、劣った職員の実施により、損なわれうる。
2.貴社は、製造する薬を汚染から守るために適切に衣服を着ていることを保証することを怠った。
 査察官は、フード、ジッパー、及び、パンツからほつれて縫い目が広がった作業着を着て働いて
 いる従業員をみつけた。アメリカ薬局方の無菌XX原薬や、無菌XX原薬の製造中、従業員はそれら
 の衣服を着ていた。無菌製造エリア用の衣服の10着のうち5着は、ほつれた繊維やその他の損傷が
 あった。貴社は手順に従ってこれらの衣服を捨てるべきだった。貴社は不適切な照明や効果のない
 操作者の訓練が根本原因だと結論づけた。
 貴社の回答は、滅菌衣服の損傷の原因になりうる洗濯、乾燥、アイロンがけ、滅菌、または他の
 作業の評価を含んでいないので、適切ではない。滅菌の回数の制限の必要性に対処していない。
 査察官は貴社が何度も衣服を滅菌していることに気づいた。これらの過度の滅菌は、衣服の繊維の
 破損につながる。
 貴社の無菌工程の衣服は、従業員の体から落ちた小片や微生物による無菌製品の汚染を防ぐために
 不適切であった。貴社は適切に無菌処理された衣服を使わなければならない。
 ・適切な衣服の供給者を選択しなさい。供給者の選択と継続的な適格性の判断に品質部門の役割を
  含めなさい。
 ・衣服が破損の兆候を示す前に衣服が捨てられることを保証するために衣服の滅菌の最大回数を
  減らしなさい。貴社が許す衣服の再滅菌の最大回数を規定し、この手順をいかに文書化し
  バリデートするか述べなさい。
 ・欠陥のある衣服の発見と排除を強化するために、滅菌衣服の外観検査の手順を是正しなさい。
 ・製造に使う原料と消耗品(例:衣服)の使用許可に関する最終判断を品質部門が行うことを保証
  しなさい。
 ・損傷した衣服の、貴社の薬に対する影響のリスク評価を実施しなさい。
3.貴社は、制定された規格や基準に従うことを保証するために必要なすべてのテストから得られる
  完全なデータを試験室の記録に含めることを怠った。
 装置QA/G07のガスクロマトグラフィーのデータをレビュし、査察官は、原料の規格外(OOS)を含む
 報告されていない結果を発見した。貴社はこのOOSの結果の調査や、この不合格の結果を公式記録
 から除外した理由の説明をしなかった。
 査察官は、残留溶媒に関するサンプリング試験について貴社がクロマトグラフの3回の注入のうち
 2回しか報告しなかったことを発見した。貴社は3回目の注入を除外した理由を説明しなかった。
 貴社は、装置のデータのレビュをすることなく2014年7月にこの装置を廃棄した。
 貴社は、複数年以上の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)とガスクロマトグラフィー(GC)のデータ
 の回顧的レビュを開始したと回答したが、電子データのレビュの程度を説明せず、試験室内の全ての
 装置及びシステムの包括的な回顧的レビュを約束していないので、貴社の回答は適切でない。
 回答の中に、HPLCとGCの電子データのレビュの詳細の最新情報を含めなさい。期間内の注入の総数、
 実施した回顧的な監査の数、みつかった異常と逸脱の総数を含めなさい。テストの日、製品、
 得られた関連するすべての結果、テストが行われたバッチを特定しなさい。
4.製造と管理の記録、またはほかの記録の変更をオーソライズドパーソンのみが行うことを保証
  するために、コンピュータおよび関連システムを適切に管理することを怠った。
 査察官は、貴社が、品質管理の試験室の12のコンピュータ化システムをバリデートしていないこと
 を発見した。これらのシステムは、安定性チャンバー、紫外線(UV)及び赤外線(IR)の分光光度計、
 及び薄層クロマトグラフィー(TLC)に使われている。
●原薬の逸脱
5.作業を行ったときに記録することを怠り、オリジナルの記録を破棄した。
 ・個人の日誌に記録されたデータ(非公式ノート)
  開発研究の過程で、査察官はOOSの調査のためのサンプルの準備、合成ルートの試験、
  スケールアップのデータを記録したいくつかの非公式のノートを発見した。
  査察官は、これらの非公式のノートと品質部門によって保管されていた公式データに食い違いが
  あることを発見した。
 ・CGMP文書の破棄
  CGMP文書が品質部門によって評価されることなく破棄された。査察官は、焼却待ちの廃棄物置き場
  で、ちぎられたり、シュレッダーにかけられたりした装置のメンテナンス記録、原料のラベル、
  変更管理の作業指図書を発見した。貴社の職員は文書の破棄と焼却に関する会社の手順の知識に欠けていた。
※データの完全性の改善に関する指摘あり
https://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2016/ucm534983.htm

■WL:320-17-14 中国の製造所の原薬製造における重大なCGMP違反に関する2017/1/6付ウォーニング
レターにおいて、下記の指摘事項があげられています。
1.貴社は、原薬製造者から受け取った全ての品質及び規制情報を顧客に伝えることを怠った。
 貴社は、原薬のもとの製造業者の名前と住所を、貴社が顧客に発行した分析証明書(CoA)から削除した。
 複数の原薬に関し、貴社は、もとの製造業者の情報を貴社のレターヘッドに差し替え、製造業者から
 得た分析結果をコピーと貼り付けてCoAを作った。貴社はもとの製造者の名前、住所、テストを実施
 した試験室の名前、住所、電話番号を含む重要な情報を削除した。
 顧客も規制機関も品質、薬の製造元、成分に関するCoAの情報を信頼している。CoAから情報を削除
 することは、サプライチェインの説明責任とトレーサビリティを損ない、顧客を危険にさらすかも
 しれない。
2.分析証明書(CoA)を含む全ての品質にかかわる文書のレビュと承認に関し品質部門が責任を負う
  ことを怠った。
 貴社は、品質部門を持っていない。査察中、貴社は品質部門の役割と責任を述べた文書を提供しな
 かった。貴社は、品質活動に関する文書化された手順を持っていない。
 貴社の販売員は、“QCディレクター”として、CoAにサインした。テストを実施せず、“テスト者”
 としてもサインをした。
3.適切な条件のもとですべての原料を適切に保管に関する設備を持つことを怠った。
 査察中、貴社の設備の室温は、温度を下げるために窓を開けるほど暖かく湿度が高かった。
 貴社は、温度と湿度を管理するシステムを持っていなかった。製造所でXXまで保管されうる原薬の
 保管条件が文書化されていない。
https://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2017/ucm536866.htm

■WL:320-17-15 日本の製造所の最終医薬品製造における重大なCGMP違反に関する2017/1/6付
ウォーニングレターにおいて、下記の指摘事項があげられています。
1.貴社は、制定された規格や基準に従うことを保証するために必要なすべてのテストから得られる完全
  なデータを試験室の記録に含めることを怠った。
 ●不完全なデータへの依存
  我々の査察官は、XXのロットXXの貴社の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって生成される
  監査証跡をレビュした。監査証跡は貴社がロットXX、XX、XXのテストを繰り返し実施したことを
  示した。監査証跡は、2014年4月14日にロットのサンプルの不純物のクロマトグラフィーの一連の
  分析を実施したことを示した。監査証跡は、ちょうど24時間後の2014年4月15日に、ロットXX、XX、
  XXについて、新しい一連の分析をはじめたことを示した。一度目の分析で生成された19のクロマト
  グラムは保持されず、レビュに利用することができなかった。二度目のクロマトグラムのみ保持
  され、アメリカ市場むけ製品の製造用の使用許可に使用された。貴社は、オリジナルのデータを
  保持しなかった論理的根拠を提出できず、分析を繰り返したことに関する科学的正当性を文書化
  することを怠った。
 ●適切にデータを保持することの不履行
  貴社は、XXカプセルの均一性と同一性のテストのために使用した紫外線可視分光光度計UV SP-502
  の電子データを保持していない。
  貴社の回答では、貴社のデータの完全性に欠陥があった。貴社はクロマトグラフィーのソフトウエア
  のバージョンがアップグレードされ、2016年6月1日以後はすべての電子データを保持していると
  述べた。貴社は、UV SP-502をアップグレードし、この装置のデータのアクセスを適切に管理する
  ことを約束した。さらに、貴社は、“分析装置で生成されたすべてのデータは、記録として保管
  されるべきである”と規定した 改訂版の “テスト記録手順”を提出した。しかし、貴社の回答は
  不十分である。貴社は、薬の品質に影響を与える完全な記録の保持をいかに怠ったかを究明する
  ための回顧的レビュを実施していなかった。さらに、貴社は、改訂した試験室の手順が、バッチの
  リリースや他の品質のレビュの判断のために使う記録からのデータの削除、改ざん、除外をいかに
  防ぐかを示していなかった。
2.貴社は、バッチがすでに配送されたかに関わらず、バッチやその成分の説明のつかない規格の相違や
  不具合を十分に調査することを怠った。
 貴社の分析者は査察官に対して2016年6月1日まで、科学的正当性や文書のない状態で、繰り返し試験
 を実施することが許されていたと話した。彼らは、システムの適合性の不具合、エラーが疑われるもの、
 傾向外試験結果(OOT)の調査を実施するときはオリジナルの結果から得られたデータを保持することは
 義務付けられていなかったとも話した。査察官は2年の間の貴社の調査の記録をレビュし、貴社は
 製造エリア内の小さな2件の逸脱のみを記録し、規格外試験結果(OOS)の調査は記録されていないことを
 発見した。
 貴社は回答の中で“分析者は自身の裁量で再分析を実施する判断をせず、最初の不具合についての調査
 を実施し、テスト結果は検証されるだろう”と述べた。さらに、貴社は、記録が保持されることを
 義務付けるために手順を改訂する予定であると述べた。しかし貴社は、この手順の中で品質部門の役割
 を述べていない。
※データの完全性の改善に関する指摘あり
https://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2017/ucm536811.htm

■WL:320-17-16 中国の製造所の最終医薬品製造における重大なCGMP違反に関する2017/1/6付ウォーニング
レターにおいて、下記の指摘事項があげられています。
1.貴社の品質管理部門は、バッチがリリースもしくは配送される前に、全ての、制定され承認され
  文書化された手順に従っているかを判断するために、包装やラベル表示を含む全ての製品の製造と
  管理の記録をレビュし承認することを怠った。
 貴社の品質管理部門(QCU)は、製品の製造と管理の記録をレビュし承認することを怠った。例えば、
 貴社のQCUは、バッチの製造記録と、ゲル及びローションの製品の中の有効成分のタイプと濃度に
 関する表示の相違を確認しなかった。
2.貴社は、製品の各バッチについて、同一性と力価を含む最終規格を十分満たしていることを実験室
  で適切に判断しなかった。
 貴社は、出荷に先立ち、最終製品の全てのバッチについて分析試験を実施しなかった。例えば、我々の
 査察官は、貴社のリリース試験をレビュし、製品の内容物を確認するための分析試験を実施していない
 ことを発見した。
3.貴社は製品の安定特性を評価するために設計された文書化されたテストプログラムを制定して従うこと
  を怠り、適切な保管条件と使用期限を決定するために安定性試験の結果を使用することを怠った。
 貴社は、製品の安定性を試験して評価するためのサンプルを保持せず、製品の保存可能期間の主張を
 裏付けるデータを持っていなかった。
4.貴社は、各バッチの工程内の原料の適切なサンプルについて実施される工程内管理、テスト、または
  検査について述べた、製品のバッチの均一性と同一性を保証するために設計された適切に文書化された
  手順を制定して行うことを怠った。
 貴社は、アメリカ市場向けのゲル、スプレイ、ローションのプロセスバリデーションを実施することを怠った。
https://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2017/ucm538059.htm

■WL:320-17-17 イタリアの製造所の最終医薬品製造における重大なCGMP違反に関する2017/1/13付ウォーニング
レターにおいて、下記の指摘事項があげられています。
1.貴社は、試験室が、制定された規格や基準に従うことを保証するために必要な全てのテストから得ら
  れる完結したデータを含む記録をすることを確実にすることを怠った。
 複数の無菌薬のロットについて、オリジナルのデータは不合格の結果を示したが、貴社が報告した
 データは合格の結果を示した。この不一致は、適切に説明されなかった。
 貴社はオリジナルデータを、共有コンピュータのネットワークドライブの非公式の、管理されていない
 スプレッドシートに保存している。貴社の分析者は、オリジナルデータは、最初に、この非公式の
 スプレッドシートに記録され、あとで公式フォームに書き換えられると述べた。
 例えば、スプレッドシートは、OOSとなる5つのガラスの小片(100~200ミクロン)がXXのサンプルの
 中に入っていることを示したが、貴社の報告データはガラスの小片は0であるとされていた。
 貴社の分析者によれば、第2のレビュ者が、最初に記録されたガラス、メタル、ファイバー、その他の
 小片の数や種類が間違っていると判断したのかもしれないとのことだった。しかし、第2のレビュ者が
 結果を評価することは文書化されていない。
2.貴社は、全ての成分、製品の容器、衣服、工程内の原料、包装材料、表示、製品の合格・不合格に
責任と権限を持つ適切な品質管理部門を制定することを怠った。
 我々の査察官は、管理されていない多数のブランクシートのコピーや、品質部門の責任や管理外の、
 部分的に完成したCGMPフォーム(例:環境モニタリング記録、OOSフォーム、水の検査シート、
 クリーンルームの入退室ログ)を発見した。
 例えば、管理者は、もともとの書類で間違えたため、ブランクのOOSフォームをコピーし、情報を記載
 したと述べた。貴社の手順は、もともとのフォームで間違えを訂正するよう求めているが、彼は、
 ブランクのOOSの新しいコピーを作り、データを書き直した。
 我々の査察官は、貴社の従業員が、適切な管理や手順のないまま、重要な試験室や製造の記録を破棄
 するためにシュレッダーを使用したことを記録した。シュレッダーにかけられた書類は、HPLCの
 クロマトグラムや、部分的に完成したOOSフォームを含む。
 貴社の品質部門は、包括的な調査を実施して誤りが起きていないことを確実にするために、これらの
 重要な製造記録をレビュし承認する責任を負っている。CGMP記録の保持は、品質部門により承認された
 手順に従って行われなければいけないので、CGMP記録の野放しの破棄は、懸念を生む。
 これらの発見は、貴社の品質部門の効果や貴社のCGMP記録の完全性や正確性に疑問を生む。
※データの完全性の改善に関する指摘あり
https://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2017/ucm538068.htm


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まとめ
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今回取り上げた8通のウォーニングレター、いかがでしたでしょうか。
ブラジル×1件、スペイン×1件、カナダ×1件、インド×1件、中国×2件、日本×1件、イタリア×1件と、
さまざまな地域の製造所に対するものでしたが、指摘内容は、これまであった「製造所にネズミがいま
した、虫がいました」といった類のものではなく、適切な手順を定めてそれに従った作業がなされて
いないことや、データの改善性についての指摘しているものがほとんどで、つまり、どこの製薬会社様
でも起こりうる(もしくは起きている)内容だったと思います。
今回のウォーニングレターの指摘内容を参考に、自社の業務の見直しをしてみることをお勧めします。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。
☆次回は、3/15(水)に配信させていただきます。


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