ASTROM通信バックナンバー

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2019.02.15

【最近のウォーニングレター】ASTROM通信<164号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは 
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

厳しい寒さが続き、春が待ち遠しいこの頃ですが、いかがお過ごしでいらっしゃいますか。

さて、本日は最初にお詫びがございます。
システムの不具合で、2019年1月以降のASTROM通信が1970年の日付で送信され、メールマガジンが
うまく受信できないという現象が発生しておりました。使用されているメールソフトによっては問題が
起きないケースもあるのですが、1月からASTROM通信が届いていないという方は、弊社ホームページに
バックナンバーを掲載いたしましたので、下記URLから確認していただければ幸いです。
https://astrom.jp/mailmagazine/  ※画面右の「最近のエントリー」をご覧ください。
ご迷惑をおかけして誠に申し訳ありませんでした。

さて、今回はFDA(米国食品医薬品局)の製造品質局から最近出たウォーニングレター(4件)について見ていき
たいと思います。
指摘内容には、どこの会社様にも起こりうることが含まれていますので、是非参考にして頂ければと思います。


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最近のウォーニングレターの概要  
注:文中のXXはウォーニングレターでマスキングされている文言です。
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■WL:320-19-01 韓国の製造所の査察(2018/1/29~2018/2/6)でみつかった医薬品製造における重大な
CGMP違反に関する2018/10/3付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。
1.貴社は、無菌をうたう医薬品の微生物汚染を防ぐために策定された全ての無菌及び滅菌工程のバリデー
    ションを含む文書化された適切な手順に従うことを怠った。
貴社の作業者の無菌液剤XXの準備及び充填作業中の不十分な無菌手順が、重大な微生物汚染のリスクをもたら
した。充填の準備中、作業者はISO-7とISO-5 エリアの間のXXを触った。その後作業者は、ISO-7エリアか
ISOの無菌充填ゾーン内の表面や部品に微生物を移動させるかもしれないのに、手の消毒をせずにISO-5ゾーン
で装置の組み立て作業を続けた。また、ラインXXで液剤XXの1月30日の充填中、我々査察官は、作業者達が
90分間の間に10回以上、ボトルのつまりをきれいにするためにラインを止めてXXを開けているのを見た。
いくつかの場合、作業者達は、開いたボトルの上のXXの内側に頭と胴体を傾けた。彼らは、彼らの介在により
汚染された可能性のある開いたボトルを洗浄することなくラインを再始動させた。
貴社は回答の中で、充填ラインを変更し、充填室内での動作について作業者達を教育するつもりであると述べ
たが、貴社は無菌充填ラインの設計の適切性について十分に評価していなかったので、貴社の回答は不十分
である。貴社は、培地充填と煙の研究の実施による充填ラインの変更の適格性評価に関する詳細な計画を提供
しなかった。また、貴社は、作業者の教育に関する詳細を提供しなかった。
更に、FDAは、2014年4月に無菌ラインの不適切な設計に関して、同様のCGMP違反を挙げている。
この文書への回答の中で以下の情報を提供せよ。
・適切な無菌手順とクリーンルームでの動作の手順を厳格に順守することを確実にするための貴社の計画
 各ロットの製造中の定期的で効果的な管理監督をいかに保証するかを詳細に述べよ。また、無菌処理や
  その他の作業中の、例えば監査のような品質保証の監督の頻度を述べよ。
・査察中にみつかったような不十分な無菌技術とクリーンルームでの動作が、いかに貴社の医薬品の品質や
  無菌性に影響を与えるかを評価する徹底的なリスクアセスメント
・貴社の無菌工程、装置、設備に固有の汚染の危険の包括的で独立した確認
 とりわけ、ISO-5エリアの人の介入、装置の配置と人間工学、ISO-5エリアと周辺の部屋の空気の品質、
  設備のレイアウト、人の流れ、原材料の流れに関する独立したリスクアセスメントを提出せよ。
・汚染の危険のリスクアセスメントで見つかったことに対応するための、タイムライン付きの詳細な是正処置・
  予防処置(CAPA)の計画
 貴社がいかに無菌処理作業の設計、管理、維持、人の適格性評価を改善するつもりかを述べよ。
2.貴社は、無菌処理エリアの環境状態をモニタリングするための適切なシステムを制定することを怠った。
貴社は、ラインのXXバリア内の充填エリアの定期的な生菌のモニタリングを実施しなかった。我々査察官は、
作業者たちが、微生物の成長を抑制しうるスプレーXXを、環境モニタリングの隣で噴霧しているのを発見した。
さらに、貴社は、滅菌製造の準備をする職員のモニタリングを実施しなかった。不十分な環境モニタリング
手順は、貴社の設備内の微生物の実際の汚染レベルを過小評価する可能性がある。
貴社は回答の中でラインXXのバリア内に2つの設置プレートを追加し、噴霧のしかたを作業者に教育する
つもりだと述べた。また、貴社は、無菌作業の装置を準備する個人に関する職員モニタリングを実施つもり
であると述べた。貴社は、モニタリングの場所を増やすと述べたが、この変更に関する手順の改訂を含める
ことを怠った。また、貴社は、汚染の可能性のあるルートを迅速に特定して、製品の汚染が発生するために
是正を可能にするための総合的な環境モニタリングプログラム(職員モニタリングを含む)の十分性を評価
しなかった。
この文書への回答の中で、貴社の無菌処理設備の安定した環境コントロールを支えることを確実にするため
の環境モニタリングプログラム(職員モニタリングを含む)に関する包括的なアセスメントとCAPAの計画に
ついて情報を提供せよ。貴社のアセスメントには、サンプリング場所の正当性、サンプリングの頻度、
アラートとアクションの限界(Alert and Action limits)、サンプリング技術の妥当性、傾向分析プログラム
を含めるべきである。
3.制定した規格や基準に従うことを確実にするために必要な全ての試験から得られた完全なデータを含む
    試験室の記録を保証することを怠った。
査察官は、品質管理の分析者と試験室のチームリーダが試験記録にバックデートでサインしているのを発見
した。微生物試験室では、分析者が、環境モニタリング設置プレートを読む前に微生物試験の結果を記録
したり、以前の日の結果を記録したりしているのを発見した。査察官の質問に対し分析者は、プレートの
菌数測定データを間違って割愛してしまっていたと述べた。CGMPの活動は、実施時に記録されなければなら
ない。
貴社の回答は、貴社の分析者は“Good Documentation Practice(正しい文書化の基準)”の意識が欠けていた
と認め、自己監査を実施し、関連する教育を行うためにコンサルタントを雇うつもりであると述べた。貴社の
回答は、文書化を後押しする詳細なCAPAの計画を含めていないので不十分である。この文書への回答の中で
この文書の下のデータ・インテグリティの改善の章で要求した通りのCAPAの計画を提出せよ。
4.貴社は、権限を与えられた職員のみが製造指図書原本及びその他の記録の変更を行えることを確実にする
    ためにコンピュータ及び関連システムの適切な管理を実施することを怠った。
貴社の品質管理チームの3人のリーダは、貴社のHPLCのコンピュータ化された試験室のソフトウエアシステム
内の管理者特権を持っていた。彼らはCGMPデータをレビュし承認するので、彼らのアクセスレベルは、
ファイルの削除や変更を不可能にしないといけない。さらに、貴社の試験室のソフトウエアシステムの2つは、
時間と日付の機能のロックが解除されていて、ユーザが記録日時や分析時刻を変更することが可能だった。
FDAは、2016年7月の査察で、貴社のコンピュータ化された試験室システムの不十分な管理に関する同様の
CGMP違反を挙げていた。
貴社は回答の中で、試験室の試験に関与しない情報技術に従事する職員にのみ管理者特権を与えると述べた。
また、貴社は、システムの時間と日付の設定機能をロックしたと述べた。貴社の回答は、CGMPデータが不適切
に変更されたり削除されたりしたかどうか評価していないし、貴社が提案したCAPAの計画は文書化のサポート
を含んでいなかったので、不十分である。
この文書への回答の中で、貴社の全ての試験室装置から生成された電子データの管理に関する管理と手順の
包括的で独立したレビュの結果を提出せよ。このレビュに基づき、これに限定されないが、データの生成、
メンテナンス、保持、システムのセキュリティを含む試験室のシステムを改善するための詳細なCAPAの計画を
提出せよ。貴社の計画には、CAPAの効果を評価するのに使用するプロセスも含めるべきである。
●データ・インテグリティの改善
貴社の品質システムは、貴社が製造した薬の安全性、効果、品質を裏付けるデータの正確性・完全性を適切に
保証していない。我々は、貴社が貴社の作業を監査し、FDAの要件にあうように貴社を手助けするための
コンサルタントを使用していることを認識している。この文書への回答において、次の情報を提供せよ。
A.データの記録と報告における不正確さの範囲の包括的な調査
貴社の調査には以下のことを含めよ:
・アセスメントにより、全ての試験室の装置とシステムがカバーされることを保証する詳細な調査手順と
  方法論
 また、データ・インテグリティと文書化手順に関して評価されるであろう貴社のその他全ての製造作業
  について述べよ。除外する場合はそれが正当である根拠を示せ。
・貴社の設備のデータ・インテグリティの不備の範囲の評価
 省略、変更、削除、記録の破壊、非同時の記録の完成、その他の不備を特定せよ。データの不正確の
  性質、範囲、根本原因を特定するために、従業員にインタビュせよ
B.貴社の薬の品質で発見された不具合の潜在的な影響に関する現在のリスクアセスメント
アセスメントにはデータ・インテグリティの欠落の影響を受けた薬の出荷により引き起こされた患者のリスク
と、継続的な作業によるリスクの分析を含めるべきである。
C.全体的な是正処置及び予防処置の計画の詳細を含む貴社の管理の戦略
貴社の戦略には以下のことを含めよ:
・データ・インテグリティの欠落の根本原因の包括的な記述
・分析データ、製造記録、FDAに提出される全てのデータを含む貴社が生成する全てのデータの信頼性と
  完全性を、貴社がいかに保証するつもりかを述べた詳細な是正処置
・改善努力や、貴社のデータの完全性を保証するために策定された手順・工程・方法・管理・システム・
  マネジメントの監督・ヒューマンリソース(例:教育、スタッフの改善)の強化を述べた長期の方策
・既に進行中もしくは完了した上記活動のステイタス報告
●CGMPコンサルタントの推奨
我々は貴社がCGMPコンサルタントを雇ったことに気付いている。我々が貴社で確認した違反の性質と、貴社
が繰り返す違反を適切に是正するのに失敗したことにより、貴社がCGMP要件を満たす手伝いをするために、
貴社のコンサルタントは、21CFRの211.34章に示す通り適格性があることを強く勧める。
また、我々は、貴社が、FDAとコンプライアンス状態の解決に着手する前に、適格性のあるサードパーティが、
CGMPの遵守に関し貴社の全ての作業の包括的な監査を実施し、その十分性を評価し、是正処置及び予防処置
の効果を評価することを勧める。
貴社のコンサルタントの使用は、CGMPを順守するための貴社の義務を軽減するものではない。貴社の経営陣
には、全ての不備を解決し、継続的なCGMP順守を保証する責任が残る。
●結論
この文書で挙げた違反は、包括的なリストではない。貴社には、これらの違反を調査し、原因を判断し、
再発を防止し、その他の違反を防止する責任がある。
FDAは2018年5月3日、貴社に輸入警告措置66-40をとった。
貴社が全ての違反を完全に解決し、我々がCGMPの遵守を確認するまで、FDAは、貴社の医薬品製造業者として
のいかなる新しい申請やリストの補完の承認を保留する。
出典:https://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/ucm622860.htm


■WL:320-19-03 韓国の製造所の査察(2018/5/17~2018/5/18)でみつかった医薬品製造における重大な
CGMP違反に関する2018/11/28付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。
1.貴社は、品質管理部門に適用される文書化された責任と手順を制定することを怠った。
貴社は、受託製造業者によって製造されたOTC医薬品のラベルを貼り替え、これらの製品をアメリカに販売
しているが、貴社は、品質管理部門の役割と責任を記述した文書を持っていない。貴社の従業員は、品質
管理部門も含め、CGMP要件の知識が不足している。
貴社は回答で、“これらの手順は、下記の通り、品質部門によりレビュされ承認されるだろう”と述べ、
文書の残りは、21 CFR Part211を一語一語引用したものを含んでいた。貴社の回答は、以下の提出を怠って
いる:
・貴社の品質管理部門の責任の詳細な記述
・貴社が品質管理部門の機能に関し適切に文書化された手順を制定したエビデンス
・貴社の職員が、彼らに割り当てられた機能を実施するために適切に教育されているというエビデンス
2.貴社は、製品へのラベル貼付作業で使用するために発行されたラベルの厳格な管理を実施することを
    怠った。
貴社は、ラベルの発行または照合を含む、ラベルの貼り替え作業に関する手順を持っていない。貴社は、
ラベルの取り違えを防ぐための適切なラベル貼付の管理もせずに、アメリカ市場向けのXXを含む、少なく
ともXXの医薬品ラベルを貼り替えている。
貴社の回答は、貴社の設備で行われたラベル貼付作業に関する文書化された手順の提出を怠った。貴社は、
適切なCGMPの管理のもとでラベルの貼り替え作業が発生することを保証することを怠った。
3.貴社は、医薬品の貯蔵と倉庫保管に関する文書化された手順を制定してそれに従うことを怠った。
貴社は、リリース前の隔離保管を含む医薬品の貯蔵及び倉庫保管に関する手順を持っていない。
貴社の回答は、貯蔵及び倉庫保管に関する手順の提出を怠った。医薬品の保持は、適切なCGMPの管理の
もとで実施されなければならない。
●CGMPコンサルタントの推奨
我々が貴社で確認した違反の性質に基づき、我々は、貴社がCGMP要件を満たす手伝いをするために
21CFRの211.34章に示す通り適格性があるコンサルタントを雇うことを強く勧める。貴社のコンサルタ
ントの使用は、CGMPを順守するための貴社の義務を軽減するものではない。貴社の経営陣には、全ての
不備を解決し、継続的なCGMP順守を保証する責任が残る。
●オーナーの責任
医薬品は、CGMPに従って製造されなければならない。FDAは、多数の医薬品製造業者が、製造設備、試験
をするラボ、包装業者、ラベル貼付業者などの独立した受託業者を使用していることを知っている。FDA
は受託業者を製造業者の延長とみなす。
貴社は、貴社の受託設備との契約に関わらず、貴社の製造する医薬品の品質について責任を負う。貴社に
は、安全性、同一性、含量、品質、純度を保証するためのFD&C 501(a)(2)(B)に従って医薬品が製造され
ていることを保証することが求められる。
●結論
この文書で挙げた違反は、包括的なリストではない。貴社には、これらの違反を調査し、原因を判断し、
再発を防止し、その他の違反を防止する責任がある。
FDAは2018年11月8日、貴社に輸入警告措置66-40をとった。
貴社が全ての違反を完全に解決し、我々がCGMPの遵守を確認するまで、FDAは、貴社の医薬品製造業者と
してのいかなる新しい申請やリストの補完の承認を保留する。
出典:https://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/ucm627153.htm


■WL:320-19-04 中国の製造所の査察(2018/7/23~2018/8/3)でみつかった原薬製造における重大なCGMP
違反に関する2018/11/29付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。
1.貴社の品質部門が品質関連の苦情の調査と解決を確実に行っていないこと
〇バルサルタン原薬
貴社は、貴社の製造所で製造されたバルサルタン原薬の残留溶媒の試験中に未知のピークが発見された後、
2018年6月6日に顧客から苦情を受けた。未知のピークは、おそらくヒト発ガン性物質N-ニトロソジメチル
アミン(NDMA)であると確認された。貴社の調査(DCE-18001)で、NDMAの存在は、3つの工程関連のファクタ
の集合によるもので、その1つは、溶媒XXの使用であると判断した。貴社の調査は、1つのバルサルタン
製造工程のみが、NDMAの存在により影響を受けたと結論づけた
しかし、貴社の原薬のサンプルと、貴社の原薬を使って製造された最終製品のFDAによる分析で、溶媒XXを
使っていなかったXX工程で製造された複数のバッチでNDMAが確認された。
これらのデータは、貴社の調査が不十分で、顧客に販売されたバルサルタン原薬内のNDMAの存在の管理を
怠っていることを示している。また、貴社の調査は以下のことを怠っている:
・調査に、NDMAの存在に寄与したかもしれない他のファクタを含めること
 例えば、貴社の調査は、XXを含む製造中に使用された全ての原材料の包括的な評価が不足していた。
・バッチの混合、溶媒の回収と再利用、共用の製造ライン、洗浄手順を含む、貴社の原薬をNDMAの交叉汚染
  のリスクにさらす可能性のあるファクタを評価すること
・貴社の製品を形成する、その他の変異原性不純物の可能性を評価すること
  我々査察官は、他にも、貴社のクロマトグラムで発見された未知のピークの不十分な調査に気付いた。
  例えば、バルサルタンの中間体XXとXXは、両バッチがXX%の結果だった未知の不純物(規格<=XX%)に関する
  試験を怠った。貴社のアクションプランは、調査の一部で不純物が見つかるであろうと示唆していたが、
  見つからなかった。更に、未知の不純物の存在に関する根本原因の特定がされなかった。貴社は、バッチを
  再加工して、更なる製造のために使用を許可したと述べた。
貴社の回答は、NDMAの検知が難しいと述べている。しかし、もし貴社がもっと調査をしていたら、NDMAの存在
を警告するインジケータを残留溶媒のクロマトグラムに発見していたかもしれない。例えば、貴社は査察官に
対して、バルサルタン原薬の残留溶媒のクロマトグラムの中に、NDMAの存在が疑われる、XXのピークの後に
溶離する1つのピークに気付いたと言った。更に、2012年にXX工程を使って製造されたバルサルタン原薬の
バリデーションバッチの残留溶媒のクロマトグラムは、NDMAの存在が疑われる、XXのピークの後に溶離する
少なくとも1つの特定されないピークを示している。
貴社は回答で、貴社がバルサルタン原薬内にNDMAを確認した唯一の会社ではないと述べているが、FDAの
サンプルの分析で、貴社で製造されたバルサルタン原薬内のNDMAの量は、他の会社で製造されたバルサルタン
原薬内のNDMAのレベルより著しく高いことを確認した。貴社の複数の工程で製造された原薬内の不純物の存在
を示すデータと、貴社の調査の著しい不適切さにより、FDAは、貴社の設備で製造された全ての中間体と原薬
の中に変異原性不純物が存在する可能性について深刻な懸念を抱いている。
この文書への回答の中で:
・貴社の設備で製造された全ての原薬と中間体について、変異原性不純物の存在の可能性に関するリスクアセ
  スメントを提出せよ。
・貴社で製造された全ての原薬内のNDMA及び他の潜在的な変異原性不純物の存在に取り組むために開始した
  調査とCAPAの計画の最新情報を提出せよ。
・逸脱・食い違い・規格外(OOS)試験結果・苦情・その他の不具合についての調査に関する監督システムの
  徹底的で独立したアセスメントを提出せよ。さらに、貴社が制定した規格や適切な製造手順に従っていなか
  ったバッチを出荷したかどうかを判断するために、販売された使用期限内の全てのバッチの回顧的レビュの
  結果を提出せよ。
・全てのXX及び中間体について、NDMA、N-ニトロソジエチルアミン(NDEA)、その他の潜在的な変異原性
  不純物の存在に関する試験結果を提出せよ。
〇XX原薬
貴社は、2016年9月13日に、XXに関する規格(<=XXppm)を越えたXX原薬のロットXXとXXに関し、顧客の苦情を
受け取った。XXは、おそらくヒト発ガン性物質であると分類された。顧客の試験結果は、2バッチは出荷規格
を満たしていると示した貴社のXXの試験結果と矛盾した。貴社の苦情調査(CC-16008)は、明らかな試験室の
エラーは特定せず、そのロットの製造中に異常も検出しなかった。貴社は、過剰なXXの存在が悪い傾向なのか
どうかを判断するために、他のXX原薬のロットを評価することを怠った。例えば、XXのロットXXとXXは、
製造エラーにより、XXに関してOOSだった。しかし、それらは、貴社の苦情調査の中で議論されなかった。
貴社は回答で、XX原薬のロットXXとXXは回収され、再加工され、アメリカ市場以外の顧客に再出荷されたと
述べた。
また、貴社は回答で、誤ったOOSの結果を出しがちなXXのLC-MS法を置き換えるために、2017年8月にXXの
LC-MS/MS法を使う新しいXX試験方法を実装したと述べた。貴社の最新の方法より劣っていると述べたXXの
LC-MS法を使って、もともと出荷された(XXのロットXXを含む)XX原薬の全てのロットに関するXXの結果の
信頼性を検証することを怠った。
この文書への回答の中で以下の情報を提供せよ:
・使用期限内の、製造されたXX原薬の全てのロットに関するリスクアセスメント
・全ての苦情が適切に文書化され徹底的に調査されることを保証するために改訂された苦情対応手順と、
  貴社の設備で実装された更なる管理の詳細
・回収された医薬品の受入と再加工の手順
・最新化されたXXのLC-MS/MS試験法を使い、アメリカ市場に出荷された原薬XXの全てのロットのXX試験の
  結果
2.製造工程の変更が貴社の原薬の品質への影響の可能性を評価していないこと
2011年11月に、貴社は、溶媒XXの使用を含む、バルサルタン原薬のプロセスの変更を承認した。貴社の目的
は、製造プロセスの改良、生産収率を増やすこと、製造コストを減らすことだった。しかし、貴社は、貴社
が新しいプロセスを実施した時の変異原性不純物の形成の可能性を適切に評価することを怠った。特に、
貴社は、XX分解物から変異原性不純物または他の毒性不純物が形成される可能性を検討しなかった。貴社の
継続的な調査によれば、XXは、バルサルタン原薬の製造プロセス中に、ヒト発ガン性物質の可能性があるNDMA
を必ず生成する。NDMAは貴社の製造所で製造されたバルサルタン原薬内に確認された。
貴社は、プロセス変更を承認する前に、バルサルタン原薬内で予期せぬ不純物が適切に検知され管理される
ことを確実にするために、追加の分析法の必要性を評価することも怠った。貴社は、製造プロセスを開発し
変更する場合、不純物を検知する適切な方法を開発して使用する責任がある。もし、新しい、または、より
レベルの高い不純物が検知された場合、貴社は、不純物を十分に評価し、医薬品が患者に安全であることを
保証するためのアクションをとらなければならない。
貴社は回答で、バルサルタンの製造プロセス中にNDMAの形成を予測するには、現在の工業的手法を越えた
特別な精度が必要であり、貴社のプロセス開発の研究は適切だったと述べたが、我々は同意しない。一般的
な工業的手法が常にはCGMPの要件に一致しないかもしれないが、貴社は貴社の製造する医薬品の品質に責任が
あることを、我々は貴社に思い起こしてもらいたい。
貴社の回答は、貴社が適切な変更管理手順を持つことを確実にするための次に挙げる十分な是正処置を述べて
いない:
(1)変更を含む、原薬製造プロセスを徹底的に評価すること
(2)潜在的な変異原性不純物を含む安全でない不純物を検知すること。潜在的な変異原性不純物の管理に
      関するFDAの現在の考えは、FDAのガイダンス文書を見よ。
この文書への回答の中で以下の情報を提出せよ。
・貴社の製造所で製造された原薬及び中間体の中の、変異原性不純物を含む全ての不純物を、いかに評価し
  管理するつもりかを述べた、改訂された詳細の変更管理手順
・貴社で製造された製品の不純物の分析結果をいかに説明するかを述べた詳細な手順
 これらの手順には、原材料、装置の操作パラメータ、製造プロセスの変更から起こる原薬の変化を検知する
  ために、適切な間隔での、当局への提出書類の中の不純物の分析結果との比較や、過去のデータとの比較の
  指示を含めるべきである。
・潜在的な変異原性不純物を含む、予測された不純物と予期しない不純物に関し、適切に評価されているかを
  判断するために、貴社で製造された他の原薬や中間体の回顧的分析
●CGMPコンサルタントの推奨
我々が貴社で確認した逸脱の性質に基づき、我々は、貴社の作業を評価し、貴社がCGMP要件を満たす手伝いを
するために適格なコンサルタントを雇うことを強く勧める。貴社のコンサルタントの使用は、CGMPを順守する
ための貴社の義務を軽減するものではない。貴社の経営陣には、全ての不備を解決し、継続的なCGMP順守を
保証する責任が残る。
●品質システムのガイダンス
貴社の品質システムは不十分である、CGMPに準拠した品質システムの制定と遵守には、FDAのガイダンスを見よ。
●追加の原薬のCGMPガイダンス
FDAは、原薬がCGMPに従って製造されたかどうかを判断するのにICH Q7に述べられた期待を考慮するのでQ7を見よ。
●結論
この文書で挙げた逸脱は、包括的なリストではない。貴社には、これらの逸脱を調査し、原因を判断し、再発を
防止し、その他の逸脱を防止する責任がある。
FDAは2018年9月28日、貴社に輸入警告措置66-40をとった。
貴社が全ての逸脱を完全に解決し、我々がCGMPの遵守を確認するまで、FDAは、貴社の医薬品製造業者としての
いかなる新しい申請やリストの補完の承認を保留する。
出典:https://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/ucm628009.htm


■WL:320-19-06 インドの製造所の2018/6/25の査察の際にあった査察の制限や拒否に関し、2018/12/3付ウォー
ニングレターには、下記の指摘事項があげられています。
1.エリアに入ることの妨害
査察中、貴社は製造エリアへの査察官の立入を制限した。貴社の従業員は、貴社が現在、医薬品の製造と包装を
行っていると述べたが、貴社は、製造エリアに査察官が入ることを妨げた。
2.文書のコピーを提供することの拒否
査察中、FDAは、貴社の設備のいくつかの出荷記録と、貴社が製造する医薬品のリストを含む記録を要求した。
貴社はFDAに対しこれらの記録のコピーの提供を拒否することにより、査察を制限した。
●査察中の情報へのアクセス
オーナー・作業者・代理人が査察を遅らせ、否定し、制限し、また拒絶した場合、FD&C 501(j)に基づき、
医薬品は不良であるとみなされるだろう。
●貴社の製造所に関する補足の所見
貴社の製造所は、現在輸入警告措置99-32をとっている会社と同じ物理的住所であったため、FDAは無通告査察
を実施した。
●結論
この文書で挙げた違反は、包括的なリストではない。貴社には、原因を調査・判断し、再発を防止し、その他
の違反を防止する責任がある。
FDAは2018年11月8日、貴社に輸入警告措置99-32をとった。
出典:https://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/ucm627878.htm


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まとめ
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いかがでしたでしょうか。

4件目のウォーニングレターの査察妨害の内容や、この製造所が既に輸入警告措置がとられている会社と同じ
住所であったということにびっくりしました
査察に行かなければ、こういった違反を行う製造所を見つけることはできないので、査察は必要であると
あらためて感じました。

3件目のウォーニングレターは、最近話題となったバルサルタン原薬に関する内容でしたが、ウォーニング
レターの結論で使用されている言葉が、他の3件は違反(violation)であるのに対し、これだけは
逸脱(deviation)という言葉を使っているが興味深かったです。FDA自身、バルサルタン原薬にNDMAが混入した
ことを検出するのは難しく、ある意味、やむなしと判断しているということなのでしょうか。それとも、
ウォーニングレターの書き手の言葉の選び方の違いなのでしょうか。ちょっと気になりました。

1件目のウォーニングレターの4で、CGMPデータをレビュし承認する職員がファイルの削除や変更が可能で
あってはならないということが書かれていましたが、皆様の会社はいかがでしょうか。
レビュや承認を行うのは、おそらくはマネージャクラスの方で、そうなると、部下の入力ミスを上司として
修正できなければ困るという理由で、ファイルのデータの修正権限を持ってしまっているケースもあるのでは
ないでしょうか。やむを得ない場合もあるかもしれませんが、この機会にシステムの権限設定を再確認して
みるのもよいのではないでしょうか。

☆次回は、3/1(金)に配信させていただきます。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
おしらせ
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
弊社は、今年も、2月20日(水)~2月22日(金)に開催される医薬品・化粧品・洗剤 研究・製造技術展イン
ターフェックス大阪(会場:インテックス大阪)に出展します。
ブースは、1号館【3-18】となります。
お時間がおありの方は、是非弊社ブースにお立ち寄りいただければ幸いです。
よろしくお願いいたします。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
★弊社サービスのご案内 
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【発行責任者】 
株式会社プロス 
ASTROM通信』担当 橋本奈央子

2019.02.01

【PIC/Sデータ・インテグリティ関連ガイドラインドラフトについて(4)】ASTROM通信<163号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

1年で一番寒さの厳しい時期となっていますが、お元気でお過ごしでしょうか。

さて、これまで、PIC/Sから2018年11月30日に発出された、「GMP/GDP環境でのデータ管理とインテグリティに
関する適正管理基準のガイドラインのドラフト(PI 041-1 (Draft 3))」について見てきましたが、今回が
最終回となります。
最後までお付き合いいただければ幸いです。

出典
https://www.picscheme.org/en/news


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
PIC/S GMP/GDP環境でのデータ管理とインテグリティに関する適正管理基準のガイドラインのドラフト
GOOD PRACTICES FOR DATA MANAGEMENT AND INTEGRITY IN REGULATED GMP/GDP ENVIRONMENTS

PI 041-1 (Draft 3)
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
10章 外注活動に関するデータ・インテグリティ
10.1 全般的なサプライチェインの検討
10.1.1 データ・インテグリティはサプライチェインの安全性とインテグリティを保証するために重要な役割を
        演じる。委託者のデータ・ガバナンスの手段は、サプライチェインのパートナーによって提供される
        信頼できない、もしくは偽造されたデータや原材料により著しく弱められる可能性がある。この原理は
        原材料の供給者、受託製造業者、分析サービス、卸売販売業者、契約したコンサルティングサービス提供
        者を含む全ての外注活動に当てはまる。
10.1.2 サプライチェインのパートナー及び外注活動の、最初の評価と定期的な再適格性評価には、データ・
        インテグリティと適切な管理方法の考慮を含むべきである。
10.1.3 組織にとって、サプライチェインから得る情報(例:記録のサマリやコピー/プリントアウト)のデータ
        ・インテグリティや、リモートの監視の試みの限界を理解することが重要である。これらの限界は、この
          ガイドラインの8.11章で考察されたことと似ている。これは、品質リスクマネジメントのアプローチを
          使って、データ・インテグリティの検証や監督にリソースを集中させるために役立つ。

10.2 定期的な文書の検証
10.2.1 サプライチェインは、組織から組織に渡る文書やデータの使用が頼りである。委託者が、報告された結果
        に関する全てのローデータをレビュすることは、しばしば実際的ではない。品質リスクマネジメントの
        原則を使い、供給者と委託者の強固な適格性に重点が置かれるべきである。

10.3 サプライチェインのデータ・インテグリティの評価に関する戦略
10.3.1 会社は、サプライチェインや外注活動のリスクの定期的なレビュを実施し、データ・インテグリティの管理
        が必要な範囲を評価すべきである。リスクのレビュ中、以下のことを含む情報について考慮すべきである。
     ・データ・ガバナンスの方法に重点を置いた、製造所の監査の結果
     ・定期的なレポートの中で提出されるデータのレビュ:例えば
      ○レビュの範囲
             契約者もしくは供給者から報告される分析データと、同じ原材料の分析から得た社内データの比較
      ○理論的解釈
       データの改ざんを示すかもしれない矛盾したデータを探すこと
10.3.2 品質協定は、サプライチェインを通じてデータ・インテグリティを保証するための特別の規定と共に、
        製造業者と供給者/受託製造組織(CMO)の間で整えられるべきである。これはデータ・ガバナンスの期待
        を設定し、受託業者による委託業者へのエラー/逸脱の透明な報告により達成されるだろう。受託業者の
        製造所で確認されたデータ・インテグリティの全ての不具合を委託業者に通知する要件もあるべきである。
10.3.3 製造業者により(またはその代わりにサードパーティにより)実施される、原薬の供給者や製造業者、
        重要な中間体の供給業者、 主要な印刷包装資材の供給者、受託製造業者やサービスプロバイダの監査では、
        契約組織におけるデータ・インテグリティの方法の検証を含むべきである。
10.3.4 監査と定期的な調査は、品質リスクマネジメントの方針を使い、委託業者の品質部門による、電子データ
        とメタデータの発生源の適切な検証を含むべきである。これは、以下の方法により達成されるだろう。
        ○現場査察
        受託組織の挙動や、データ・ガバナンス、データ・ライフサイクル、リスクと重大性の理解のレビュ
        ○原材料試験 対 分析証明書
         分析試験と供給者が報告した分析証明書の結果の比較
     正確性、精度、純度の結果を調べよ。これは、原材料や供給者のリスクにより、日常的、定期的、
          抜き打ちで実施してもよい。
    ○リモートのデータレビュ
     委託業者は、ロットの製造や試験に使用するために、契約設備/供給者が彼ら自身のハードウエアや
          ソフトウエアの使用を提案することを検討するかもしれない。委託業者は、契約設備の職員により
          生成されるデータの品質とインテグリティをリアルタイムでモニタしてもよい。
          この場合、委託業者のデータの監視が、受託業者により生成されたデータの修正を許さないことを
          保証するために、職務の分離がされるべきである。
    ○品質のモニタリング
     品質と実績のモニタリングは、データ改ざん(例:頻繁な、規格の限界まで一致した原材料)の動機
          を示すかもしれない。
10.3.5 委託業者は、顧客を特定しないよう全ての顧客の秘密の情報を記号化することを保証するために、
        受託業者と協力してもよい。これは、他の顧客に対する守秘義務を破ることなく、委託業者の製造所に
        おいて、電子データ及びメタデータの発生源のレビュを促進するだろう。より大きなデータセットの
        レビュにより、これは、委託業者のデータ・ガバナンスの方法をより強固に評価することを可能にする
        だろう。また、データセットの繰り返しや、予想されるばらつきを示さないデータなど、データ・
        インテグリティの不具合の指標の検索も可能にする。
10.3.6 供給される文書の真正性や正確性を保証するために、注意が払われるべきである。(8.11章参照)
        契約者とサプライチェインの適格性の判断をする際に“真正なコピー”と“サマリーレポート”のデータ
        の間のデータ・インテグリティの相違やトレーサビリティのリスクが考慮されるべきである。

11章 データ・インテグリティの指摘事項に対する規制上の行動
11.1 不備の意味
11.1.1 データのインテグリティは、GMPにとって基本的なことであり、適正なデータ・マネジメントの要件は、
        医薬品のGMP/GDPのための現在のPIC/Sガイドラインの中に組み込まれている。以下の表はこれらの既存
        の要件のうちのいくつかの強調している参照ポイントを示している
■ALCOAの原則
●帰属性
PIC/S GMPガイドラインPE009(Part1) : 4.20 c&f、4.21 c&i、4.29 point5 PIC/S GMPガイドラインPE009(Part2) : 5.43、6.14、6.18、6.52
Annex11(コンピュータ化システム) : 2、12.1、12.4、15
PIC/S GDPガイドラインPE011 : 4.2.4、4.2.5
●判読性
PIC/S GMPガイドラインPE009(Part1) : 4.1、4.2、4.7、4.8、4.9、4.10
PIC/S GMPガイドラインPE009(Part2) : 6.11、6.14、6.15、6.50
Annex11(コンピュータ化システム) : 4.8、7.1、7.2、8.1、9、10、17
PIC/S GDPガイドラインPE011 : 4.2.3、4.2.9
●同時性
PIC/S GMPガイドラインPE009(Part1) : 4.8
PIC/S GMPガイドラインPE009(Part2) : 6.14
Annex11(コンピュータ化システム) : 12.4、14
PIC/S GDPガイドラインPE011 : 4.1、4.2.9
●原本性
PIC/S GMPガイドラインPE009(Part1) : 4.9、4.27、 Paragraph”記録“
PIC/S GMPガイドラインPE009(Part2)  : 6.14、6.15、6.16
Annex11(コンピュータ化システム)  : 8.2、9
PIC/S GDPガイドラインPE011 : 4.2.5
●正確性
PIC/S GMPガイドラインPE009(Part1) : 4.1、6.17
PIC/S GMPガイドラインPE009(Part2)  : 5.40、5.42、5.45、5.46、5.47、6.6
Annex11(コンピュータ化システム)  : Paragraph”原則“、4.8、5、6、7.2、10、11
PIC/S GDPガイドラインPE011 : 4.2.3
●完全性
PIC/S GMPガイドラインPE009(Part1) : 4.8
PIC/S GMPガイドラインPE009(Part2)  : 6.16、6.50、6.60、6.61
Annex11(コンピュータ化システム)  : 4.8、7.1、7.2、9
PIC/S GDPガイドラインPE011 : 4.2.3、4.2.5
●一貫性
PIC/S GMPガイドラインPE009(Part1) : 4.2
PIC/S GMPガイドラインPE009(Part2)  : 6.15、6.50、
Annex11(コンピュータ化システム)  : 4.8、5
PIC/S GDPガイドラインPE011 : 4.2.3
●耐久性
PIC/S GMPガイドラインPE009(Part1) : 4.1、4.10
PIC/S GMPガイドラインPE009(Part2)  : 6.11、6.12、6.14
Annex11(コンピュータ化システム)  : 7.1、17
PIC/S GDPガイドラインPE011 : 4.2.6
●利用可能性
PIC/S GMPガイドラインPE009(Part1) : Paragraph”原則“、4.1
PIC/S GMPガイドラインPE009(Part2)  : 6.12、6.15、6.16
Annex11(コンピュータ化システム)  : 3.4、7.1、16、17
PIC/S GDPガイドラインPE011 : 4.2.1

11.2 不備の分類
注意:以下のガイドラインは、データ・インテグリティの不備の報告と分類の整合性の助けとなることを
目的とし、その内部の方針や国の規制のフレームワークに従って行動する査察当局の能力に影響を与える
意図はない。
11.2.1 データ・インテグリティの不具合に関係した不備は、製品品質にさまざまな影響を与えるだろう。
        不具合の蔓延の度合いも、一人の従業員の行動から、査察される組織に固有の活動まで多様だろう。
11.2.2 不備の分類に関し、PIC/Sガイドラインのドラフトは以下のように述べている:
    “重大な不備とは、人または動物の患者に有害な製品、または、食料生産動物内に有害な残留物が
        生じる製品を製造するか、もしくは、製造する重大なリスクにつながる手続きやプロセスである。
        重大な不備は、製造業者が製品またはデータの詐欺、虚偽表示、改ざんに関与したことが見つかっ
        た時にも発生する。”
11.2.3 詐欺、虚偽表示、改ざんに関する不備の分類が“重大”に関わらず、データ・インテグリティの
        不備は、以下のことにも関係しうると推測される。
     ●正しくない手順から生じるデータ・インテグリティの不具合
       ●必要なデータ管理手順がないことにより、不具合(実際の不具合のエビデンスのない)の発生
          する可能性
11.2.4 これらの場合、以下のこと(指示的リストのみ)を考慮することにより、不備の分類を決めること
        が適切だろう。
        〇患者の健康への実際の、もしくは、潜在的なリスクを与える製品への影響:重大な不備
          ・出荷時もしくは使用期限内に、規格を満たさない製品
          ・QCの試験、重大な製品またはプロセスパラメータの報告時に、実際の規格外の結果ではなく、
           ‘望ましい’結果を報告すること
     ・経営陣の認識や支援のある/なしに関わらずデータの広範囲の意図的な改ざんや偽造、医薬品
            品質システムの信頼性の土台を壊し、製造所により製造もしくは管理された医薬品の品質と
            安全性の全ての信頼を損なう度合い
        〇患者の健康にリスクを与えない製品への影響:メジャな不備
          ・誤ったデータの報告(例:もともと‘規格内’の結果を、より好ましい傾向に変更する)
          ・品質試験や重大な製品またはプロセスパラメータに関係ないデータの報告の際、実際の規格外
            の結果の代わりに‘望ましい’結果を報告すること
          ・不十分に設計されたデータ収集システム(例:情報を後で転写するために紙きれを使用する
            こと)により発生する不具合
        〇製品に影響を与えない;少しの不具合のエビデンス:メジャな不
          ・データ・インテグリティの問題や、限定された機能間(例:品質保証、製造、品質管理等)の
            トレーサビリティの喪失を生じさせるかもしれない、正しくない手順と不十分に設計された
            システム
            それ自身は製品品質に直接の影響がない
        〇製品に影響を与えない;不具合のわずかなエビデンス:その他の不備
          ・データ・インテグリティの問題や、個々の分野のトレーサビリティの喪失につながる、正しく
            ない手順または不十分に設計されたシステム
      ・その他の点では受け入れられるシステムの限定された不具合 
            例:個人による重要でないデータの改ざん
11.2.5 全社的な不具合または限定された範囲/影響の不備があるかどうかについて、妥協しないアセス
        メントを実施するために、重要な要素(データ・ガバナンスのプロセス、規定に適合したデータの
        記録を助けるシステムの設計、監査証跡とITユーザのアクセスの利用と検証等)の適合性の総合的
        な概念を作成することが重要である。
11.2.6 個々の状況(悪化する/軽減する要素)は、最終的な分類や規制対応に影響を与えるかもしれない。
        不備の分類や、コンプライアンス問題の当局への報告に関する更なるガイダンスは、既に一度発行
        されているPIC/Sガイドラインの不備の分類にて利用可能である。

12章 データ・インテグリティの不具合の改善
12.1 重大なデータ・インテグリティの問題への対応
12.1.1 データ・インテグリティの問題に関連する、発見された緊急の問題と評価されたリスクを第一に
        解決するために、検討がされるべきである。問題への会社による対応は、取られるアクションの
        概要を述べるべきである。関与する製造業者からの対応には以下のことを含むべきである:
12.1.1.1 データの記録と報告の不正確な範囲の包括的な調査に含むべきこと
     ・詳細の調査の手順と方法論
      全ての試験室、製造作業、システムの概要が、アセスメントに含まれるべきである。
      規制を受けるユーザが除外を提案する作業に関する正当化の理由
     ・データの不正確さの性質、範囲、根本原因を特定するための現在及び過去の従業員のインタビュ
      これらのインタビュは、適格なサードパーティにより実施されるのがよい。
     ・設備内のデータ・インテグリティの不備の範囲の評価
      省略、変更、削除、記録の破壊、非同時の記録の完成、その他の不備を特定せよ。
     ・範囲(データ、製品、工程及び特定のロット)、適用される時間の境界の正当化の理由と共に
            問題の時間枠の決定
     ・データ・インテグリティの欠落が発生した作業の全ての部分の記述と追加の考察が、複数の
            異なる製造所を横断する多国籍企業のグローバルな是正処置に関してなされるべきである。
     ・試験と製造に関するデータ・インテグリティの不備の性質の包括的で回顧的な評価、潜在的な
            根本原因
      潜在的な欠陥が確認された分野の特別な専門知識を持った適格なサードパーティのコンサルタント
            のサービスが必要かもしれない。
     ・発見された不具合の、関係する医薬品の品質への潜在的な影響のリスクアセスメント
      これらのアセスメントは、データ・インテグリティの欠落、継続的な作業によるリスク、製品の
            登録書類に関連するデータを含む規制当局に提出されたデータの正確性の影響を受けた製品の
            出荷/販売により発生する患者の潜在的なリスク分析を含めるべきである。
12.1.1.2 データ・インテグリティの脆弱性に取り組むための是正処置・予防処置、実施の時間枠、及び
          以下のことを含めよ。
          ・顧客への通知、製品の回収、追加試験の実施、安定性を保証するために安定性プログラムへのロット
            の追加、薬の申請活動、強化された苦情のモニタリングなど、患者を保護し、医薬品の品質を保証
            するためのアクションを述べた暫定的な方策
          ・改善努力や、データ・インテグリティを保証するために計画された手順、プロセス、方法、管理、
            システム、経営者の監督、人的資源(例:訓練、スタッフの改善)の改善を述べた長期の方策
12.1.2 可能であれば、視察団は、確認された不備の性質を伝えて問題の全面開示と迅速な解決を約束する
        文書化された確認書を求めるために、関係する会社の上位の代表者と会うべきである。グローバルな
        是正処置・予防処置の詳細を含む経営戦略が、規制当局に提出されるべきである。戦略には下記のこと
        を含めるべきである:
        ・規制を受けるユーザが、どうのように、分析データ、製造記録、所轄官庁に提出または提示される
          全てのデータを含む、生成された全てのデータのALCOA+の属性を保証するつもりかを述べた詳細な
          是正処置の計画
        ・現在のアクションプランの範囲と深さが、調査やリスクアセスメントでみつかったものに見合うと
          いうエビデンスを含む、データ・インテグリティの欠落の根本原因の包括的な記述
          これには、データ・インテグリティの欠落に責任を負う個人が、GMP/GDP関連、または薬の申請データ
          に影響を与えることが出来る状態のままであるかを示さなければならない。

12.2 改善の指標
12.2.1 現地の査察には、深刻なデータ・インテグリティの問題に取り組むためにとられたアクションの効果を
        検証することが求められる。改善のいくつかの指標は次の通りである:
12.2.1.1 組織レベルでの是正処置・予防処置の適切な実施を含む、確認された問題と、迅速で効果的な是正
          処置・予防処置の実施の徹底的で公平な評価のエビデンス
12.2.1.2 問題の顧客及び規制当局とのオープンなコミュニケーションのエビデンス
     透明なコミュニケーションは、調査及び改善の段階を通じて維持されるべきである。規制当局は詳細
          な調査の結果として、さらなるデータ・インテグリティの不具合が報告されるかもしれないことを
          わかっている必要がある。これらの通知に対する追加の反応は、継続的な報告を促進するために、
          公共の健康リスクに比例しているべきである。
12.2.1.3 潜在的な問題と、改善の状況をオープンに報告するためのプロセスを包含した、組織をまたがるデータ・
          インテグリティに対する期待のコミュニケーションのエビデンス
12.2.1.4 規制を受けるユーザは、サードパーティの専門家が要求するかもしれない全ての違反のフォローアップ
          活動が完全に解決していることを保証するために、高度な電子的システムのデータの改ざんに対する
          脆弱性の適切な評価が行われることを保証しなければならない。
12.2.1.5 このガイドラインの原則と一致したデータ・インテグリティの方針の実装
12.2.1.6 定期的なデータの検証手順の実装

13章 定義
13.1 Archiving(アーカイブ)
   プロセスや活動の復元の目的のために、完成されたデータと関連するメタデータをその最終的な形式での
      長期間、不変に保持すること
13.2 Audit Trail(監査証跡)
   GMP/GDPの監査証跡は、GMP/GDP活動の復元を可能にする、GMP/GDPの重要な情報(例えば、GMP/GDP関連
      データの変更や削除)の記録のメタデータである
13.3 Back-up(バックアップ)
   災害復旧の目的で保持される、現在の(編集可能な)データ、メタデータ、システムの構成設定
      (例:分析実行に関連する様々な設定)のコピー
13.4 Computerised system(コンピュータ化システム)
   報告または自動のコントロールに使用される、データの入力、電子データの処理、情報の出力を含む
      システム
13.5 Data(データ)
   参照や分析のために、一緒に収集された事実、数量、統計値
13.6 Data Flow Map(データフローマップ)
   情報システムのデータの流れのグラフィックな説明
13.7 Data Governance(データ・ガバナンス)
   データが、生成、記録、処理、保持、仕様されるフォーマットに関わらず、データのライフサイクルを
      通じて、完全で一貫して正確な記録であることを保証するためのデータの全体的なアレンジメント
13.8 Data Integrity(データ・インテグリティ)
   データのライフサイクルを通じて、全てのデータが完全で、一貫していて、正確である度合い
   データはALCOA+の原則に従わなければならない
13.9 Data Lifecycle(データ・ライフサイクル)
   最初の生成、処理を通じた記録(変換または移行を含む)、使用、データの保持、アーカイブ/検索、
      廃棄までのデータ(ローデータを含む)の有効期間内の全てのフェーズ
13.10 Exception report(例外報告)
    データのレビュ者による更なる注目や調査を求めるために、予め‘異常’と定められたデータまたは操作
       を特定し文書化するバリデートされた検索ツール
13.11 Hybrid Systems(ハイブリッドシステム)
    定められた手動のシステムによって補われる電子システムからなる、データのマネジメントや管理のため
       のシステム。ハイブリッドシステムは、正しい操作によるサブシステムの効果的な管理に依存している
13.12 Metadata(メタデータ)
    他のデータの属性を記述するデータで、その背景や意味を提供する
13.13 Quality Unit(品質部門)
    医薬品品質システムの設計、効果的な実装、モニタリング、維持を含む品質の監視に責任を負う、規制
       を受ける団体の中の部門
13.14 System Administrator(システム管理者)
    コンピュータシステムや特定の電子コミュニケーションサービスの操作を管理する人間

14章 改訂履歴
●Draft1:2016年7月18日
 PIC/S参加当局の協議の管理基準ドラフトの発行
●Draft2:2016年8月10日
 ウエブサイトでのDraft2の発行
  トライアルベースのドラフトの実装、PIC/S参加当局のコメント期間の終了
●Draft3:2018年11月30日
  PIC/S参加当局からのフィードバックを含めた最新化バージョ


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
まとめ
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
いかがでしたでしょうか。
サプライチェインを通じてのデータ・インテグリティ、委託先データのリモートのレビュなど、興味深い
内容が多かったと思います。

今後、さらにシステム化が進み、新しい技術やサービスが増加すればするほど、データ・インテグリティ
の保証が難しくなり、また、データ・インテグリティの定義自体も変わってくると思います。
あらためて、最新の規制動向には常に注意を払っておく必要があると感じました。


☆次回は、2/15(金)に配信させていただきます。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
おしらせ
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
弊社は、今年も、2月20日(水)~2月22日(金)に開催される医薬品・化粧品・洗剤 研究・製造技術展
インターフェックス大阪(会場:インテックス大阪)に出展します
ブースは、1号館【3-18】となります。
お時間がおありの方は、是非弊社ブースにお立ち寄りいただければ幸いです。
よろしくお願いいたします。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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