ASTROM通信バックナンバー

2019.08.15

20 / 多数 【EU GMP/GDPノンコンプライアンスレポート】ASTROM通信<176号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

お盆休み真っ只中ですが、いかがお過ごしでいらっしゃいますか。

さて、今回は、EUのGMP及びGDPのノンコンプライアンスレポート(Non-Compliance Report)を取り上げたいと
思います。

EUの規制当局がどんな点を指摘しているのか、参考にしてみていただければと思います。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
1.EU GMPノンコンプライアンスレポート  
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
EU GMPノンコンプライアンスレポートは、EUの当局による製造所の査察において、EU GMPに不適合と判断される
不備が見つかった場合に発行されるもので、3部構成になっています。
Part1に確認した当局の名前、製造業者の名前、製造所の住所等、Part2にノンコンプライアントな製造オペレー
ション、Part3に不備の内容、EUの対策等が書かれています
査察結果を報告するという点ではウォーニングレターと似ていますが、ウォーニングレターに比べて、指摘の
内容があまり詳しくありません。また、不備を、クリティカル(Critical)、メジャー(Major)、
その他(Others)に分類して、クリティカルとメジャーが何件あったかを明記しているという特徴があります。
Part3の不備の内容をみていきたいと思います。
■Report No.CH19-0209
スイスの当局が2019/3/9にインドの製薬会社を査察し、2019/7/10付で以下のノンコンプライアンスレポートを
発行した。
●ノンコンプライアンスの性質
スイスとEDQM(医薬品の品質の欧州理事会)の査察が、アメリカFDAの査察官と一緒に、並行して実施された。
この査察では10件のメジャーと2件のその他の不備が、品質管理、職員、建物と設備、文書と記録、原材料の
管理、試験室の管理、バリデーションの部分で確認された。ニトロソアミンの汚染のリスクと、回収溶媒及び
回収された中間体が、会社により適切に対処されていなかった。これは、原材料のトレーサビリティを保証する
ことと、汚染のリスクを軽減することに関する重大な不具合により証明された。洗浄バリデーションが不適切で
あることがみつかった。品質管理部分では、装置及び試薬の管理と、データインテグリティにおいて問題がみつ
かった。文書の管理と保管が不適切であることがわかった。
●当局によりとられた/提案された行動
この査察の結果に基づき、CEPの申請が差し止められた。

■Report No.IT/GMP/NCR/1-2019
イタリアの当局が2019/3/22にイタリアの製薬会社を査察し、2019/5/13付で以下のノンコンプライアンスレポ
ートを発行した。
●ノンコンプライアンスの性質
査察中、メジャー19件、その他9件の不備がみつかった。メジャーの不備は、(包括的ではないが)以下の問題に
つながる不十分な品質システムに関するものだった:不十分は逸脱管理と調査、出荷の文書の不足、洗浄バリ
デーションの不足、プロセスバリデーションの不足、分析のレビュと方法のバリデーションの不足、コンピュ
ータシステムバリデーションの不足。
●とられた/提案された行動
・医薬品の製造承認の差し止め
・GMP証明の撤回

■Report No.INS/GMP/2018/111;INS/GMP/2018/112;INS/GMP/2019/063;INS/GMP/2019/064
スペインの当局が2019/3/26に中国の製薬会社を査察し、2019/7/30付で以下のノンコンプライアンスレポート
を発行した。
●ノンコンプライアンスの性質
査察中、クリティカル2件、メジャー5件を含む25件の不備が報告された。クリティカルの不備は、多品種を扱う
施設内での非細胞毒性、細胞毒性、有害性、強力な作用の物質の取扱いの不備によるものだった。これらの施設
内での交叉汚染のリスクは、適切に特定・軽減されていなかった。みつかったメジャーの不備は、洗浄バリデー
ション、精製水のモニタリング、中間体の保持時間のバリデーション、回収溶媒プロセスで確認された。
●とられた/提案された行動
〇販売承認の変更要求
1.この製造業者は、ノンコンプライアンスな状態のもとで、いかなる新しい/継続の販売承認または医薬品の
    有効成分に関する変更申請を許可されるべきではい。
2.当該有効成分の別の製造業者の変更申請の提出が推奨される。
〇出荷されたロットの回収
2016年のノンコンプライアンスな状態の結果として、EU市場での活動は既に差し止められ、重要な有効成分のみ
製造されEUに輸入されているので、この製造所で製造された有効成分の回収は現在のところ推奨されていない。
しかしながら、万が一、暫定手段として推奨された試験の結果として、OOSの結果が得られた場合は、
MAH(医薬品市販承認取得者)からNCA(国の当局)に伝達されなければならない。NCAとMAHの間の評価後、特定の
製品のバッチを回収するかどうかについてNCAにより下される決定は、リスクアセスメント及び製品の重要性に
基づくべきではない。評価は、代替供給者がいるかと、製品の不足の潜在的なリスクがあるかを考慮すべきで
ある。
〇供給禁止
代替供給者がおらず、不足のリスクがあるのでなければ、原薬の供給禁止が推奨される。
〇その他
みつかったものの数と重要性により、以下の追加の手段が推奨される:上記の有効成分と、問題の建物で製造
された有効成分に関し、GMPのノンコンプライアンス状態が公表されるべきである。
全ての細胞毒性/有害性のある製品の製造、上記の建物で製造された細胞毒性/有害性のある製品以外の製品の
製造、新しい建物内での製造は、フォローアップの査察が実行された後も実施されるはずである。問題の製造所
で製造された有効成分の全てのロットについて、不純物、残留溶媒、微生物を含む分析試験をEU及び第三国の
医薬品製造業者に義務付けること。加盟国は、強化された分析試験の結果として集められた情報を受け取り
モニタすべきである。これは、現在市場にあるロットには適用されない。
●追加コメント
販売承認取得者には、ノンコンプライアンス状態の範囲を超えて、上記に挙げられた原薬が重要と考えられるか
どうか、代替供給者がいないかどうか、域内で不足のリスクがあるかどうかを確認するために、国の当局に連絡
をとることが求められる。

■Report No.DEC-NCF19-95c
スペインの当局が2019/6/4にスペインの製薬会社を査察し、2019/7/1付で以下のノンコンプライアンスレポート
を発行した。
●ノンコンプライアンスの性質
a)技術的な監督者がいない、もしくは、ふさわしい技術的な監督者がいない
b)技術的な監督者が病気休暇中、彼女によってサインされたと推察される、署名の偽造された書類がある
c)彼らが実施している医薬品の品質管理の中で発生した逸脱やOOSの結果を記録することをやめてしまったため、
  2019年1月以来、品質保証システムが停止している
d)品質管理の試験室で彼らが行っている手順は、医薬品の分析においてGMPの遵守を確実にするのに十分では
  ない
●当局によりとられた/提案された行動
〇販売承認の差し止め
販売承認が一時的に差し止められた。全ての医薬品に品質管理活動の停止を命じる。
〇GMP証明の取り消し
GMP証明が取り消される。

■Report No.PE010-2625
スペインの当局が2019/6/27にスペインの製薬会社を査察し、2019/8/7付で以下のノンコンプライアンスレポ
ートを発行した。
●ノンコンプライアンスの性質
2019年6月に実施された査察中にEU-GMPの遵守が欠けていることがわかった。31件の不備がみつかった。それら
のうちの3件はクリティカル、20件はメジャーと特定された。3件のクリティカルな不備は
以下の通りである。
1.この会社は、2016年6月4日にノンコンプライアンスと証明された製造所により製造されたイベルメクチン
    を2バッチ、2019年に受け取った。このノンコンプライアンスの証明は、この製造所で製造された全ての
    原薬を含む。しかし、この原薬は、当局により重要とみなされ、全てのロットに対してヨーロッパの薬局方
  の要求に基づいた試験が実施されれば輸入が許可された。この点で、この要求は満たされていなかった。
2.高度な薬理作用または毒性を持つ原薬の製造(再包装)の活動に関し、彼らは、この活動に関し、不完全な
  文書を作成した。(洗浄バリデーションは完了されていなかった。ワーストケースの基準の原薬の選択が
  容認できるものとみなされなかった。残留物の限界の計算に使用される基準が容認できるものとみなされな
  かった)
3.品質システムは、適切で効果的とみなされない。埋め込まれたシステムは、リスクを防ぐための適切な手段
  の適用をするためのリスクの特定ができない。更に、品質システムの管理の積極的な参加がない。更に、
  査察官は、品質システムと品質管理活動に関するメジャーな不備を発見した。発見されたクリティカルと
  メジャーな不備の重大性と、EU GMPのノンコンプライアンスのレベルは、査察官チームが、公衆衛生の
  潜在的なリスクを取り除くために、暫定的な管理手法がとられることを勧めるほどである。さらに会社は、
  異なる原薬同士の取り違え/ラベルの貼り間違えが起きないことを保証することができない。
●当局によりとられた/提案された行動
〇出荷済ロットの回収
〇供給の禁止
供給の禁止に加え、原薬の受け取り、再包装、出荷に関する製造所の活動が差し止められた。
〇販売承認の差し止め
販売承認が一時的に差し止められた。全ての医薬品に品質管理活動の停止を命じる。
〇GMP証明の取り消し
GMP証明が取り消される。

出典:
 http://eudragmdp.ema.europa.eu/inspections/gmpc/searchGMPNonCompliance.do


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
EU GDPノンコンプライアンスレポート 
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
EU GDPノンコンプライアンスレポートは、EUの当局による卸売販売業者の査察において、EU GDPに不適合と判断
される不備がみつかった場合に発行されるもので、3部構成になっています。
Part1に確認した当局の名前、卸売販売業者の名前、卸売販売業者の住所等、Part2にノンコンプライアントな
作業、Part3に不備の内容、当局の対策等が書かれています。
Part3の不備の内容をみていきたいと思います。
■Report No.UK WDA(H)18799 Insp GDP 18799/303632-0035 NCR
イギリスの当局が2019/5/21にイギリスの卸売販売業者を査察し、2019/6/27付で以下のノンコンプライアンス
レポートを発行した。
●1.ノンコンプライアンスの性質
会社のシステムは、適法なサプライチェインに偽造医薬品が再び入ってくることを検知または防止することを
せず、偽造医薬品を保持しているのがみつかった。
●2.当局によりとられた/提案されたアクション
卸売販売業許可ライセンスの即時停止が2019年6月20日に実施された。

■Report No.UK WDA(H)39307 Insp GDP 39307/303632-0036 NCR
イギリスの当局が2019/5/21にイギリスの卸売販売業者を査察し、2019/6/27付で以下のノンコンプライアンス
レポートを発行した。
●1.ノンコンプライアンスの性質
会社のシステムは、適法なサプライチェインに偽造医薬品が再び入ってくることを検知または防止することを
せず、偽造医薬品を保持しているのがみつかった。
●2.当局によりとられた/提案されたアクション
製品並行輸入許可品に関し、EEA(European Economic Area:欧州経済領域)の加盟国からイギリスへの医薬品の
調達を2019年9月19日まで部分的に停止

■Report No.NC-NVN/01/2019
キプロスの当局が2019/1/31にキプロスの卸売販売業者を査察し、2019/7/2付で以下のノンコンプライアンス
レポートを発行した。
●1.ノンコンプライアンスの性質
a.卸売販売業者は、卸売販売業の許可、または、製造承認の持っていない人物から医薬品の供給を受けていた。
b.卸売販売業者は、供給者の適性、能力、信頼性を評価するための適性評価を実施しなかった。
c.責任のある職員が職務を適切に遂行していなかった。
●2.当局によりとられた/提案された行動
法律およびGDPガイドラインの重大な違反により3ヶ月間、2015/2/17に発行された卸売販売業の許可が差し止め
られた。

■Report No.7/2/2019/I/DGMUH
ポルトガルの当局が2019/3/7にポルトガルの卸売販売業者を査察し、2019/7/3付で以下のノンコンプライアンス
レポートを発行した。
●1.ノンコンプライアンスの性質
卸売販売業者は、いくつかの点でGDPの原則に従っていない。クリティカルな指摘事項5件は、品質システムに
関するものである。すなわち:満足できる適格性評価のない状態での輸送に関する契約業者の使用、不十分な
温度と環境の管理、記録に関する問題、品質システムの管理、レビュとモニタリングである。
それ以外に、複数のGDPの内容に及ぶ15件のメジャーと、その他の5件の不備が査察中にみつかった。
●2.当局によりとられた/提案されたアクション
卸売販売業の許可の差し止め
●追加コメント
現時点で、追加の方策が必要と考えない。(この卸売販売業者により販売された医薬品の回収は不要)

■Report No.DE GAALG 41403/053
ドイツの当局が2019/6/27にドイツの卸売販売業者を査察し、2019/7/5付で以下のノンコンプライアンスレポー
トを発行した。
●1.ノンコンプライアンスの性質
GDP要件へのクリティカルな違反:
a.品質システムは、配送される製品がその品質を維持し、保管中及び輸送中に適法なサプライチェインの中に
 とどまっていることを保証しなかった。
b.責任のある職員が職務を適切に遂行していなかった。
c.供給者及び顧客の適格性評価が部分的に不十分だった。
●2.当局によりとられた/提案されたアクション
卸売販売業の許可の停止が2019年6月27日に実施された。
●追加コメント
イラン・イスラム共和国のみに販売

■Report No.sukls132322/2019
チェコ共和国の当局が2019/7/15にチェコ共和国の卸売販売業者を査察し、2019/7/24付で以下のノンコンプライ
アンスレポートを発行した。
●1.ノンコンプライアンスの性質
会社は活動の許可に関する条件において重大な違反をし、医薬品の法令の76項にある義務を果たしていない。
●当局によりとられた/提案されたアクション
2018/9/21付で卸売販売免許の差し止め
●追加コメント
販売活動は実施されていなかった。会社が適格性のある職員の業務を保証せず、倉庫が利用できなかったこと
から、卸売販売業のライセンスは停止された。

出典:
http://eudragmdp.ema.europa.eu/inspections/view/gdp/viewGDPCertificate.xhtml


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
まとめ
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
いかがでしたでしょうか。

EUのノンコンプライアンスレポートは、FDAのウォーニングレターに比べて詳細が書かれていないのでわかりづ
らい部分はあるのですが、おおよその指摘内容を知ることができるため、是非、参考にしていただければと思い
ます。

ところで、イギリスがEUを離脱した後、イギリス当局の査察情報が共有されなくなってしまう点や、受入試験の
条件の変更が気になるところです。

このノンコンプライアンスレポートとは関係ないのですが、2019年6月27日に
MHRA(Medicines and Healthcare products Regulatory Agency:英国医薬品庁)が発表した情報によると、
イタリアからイギリスに医薬品が輸入される際、その一部が配送中に規定された医薬品のサプライチェインから
持ち出され、後でラベルが貼り直されたうえで流通に戻るというGDP関連の問題が発生し、医薬品に異物が混入
したか、また、これらの医薬品が安定した室温の状態に置かれていたかを証明するエビデンスがないために回収
が発生したそうです。
今後、ますますGDPの強化が求められるのではないでしょうか。

☆次回は、9/1(日)に配信させていただきます。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
★弊社サービスのご案内
https://drmarketing.jp/cch/73/290/3/426/188845/364d47

★ブログ毎日更新中!
◆ PROS.社長の滋養強壮ブログ
https://drmarketing.jp/cch/73/290/1/426/188845/9e9de7
◆ プロス橋本のブログ
https://drmarketing.jp/cch/73/290/2/426/188845/6a5953
※URLクリック数の統計をとらせていただいております。


本メルマガは、名刺交換させていただいた方に配信させていただいております。
今後このような情報が必要ない方は、お手数ですが、こちらに配信停止依頼のメールをお願いいたします。
hashimoto@e-pros.co.jp

【発行責任者】
株式会社プロス
ASTROM通信』担当 橋本奈央子