ASTROM通信バックナンバー

2020.03.15

【PIC/Sドラフト:変更管理関連のPQS評価】ASTROM通信<190号>

 

~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM
通信担当の橋本奈央子です。

 

WHOが新型コロナウイルスのパンデミックを宣言し、国内でも、時差出勤・在宅勤務・小中高一斉休校等これまで経験したことのない事態が発生していますが、皆様いかがお過ごしでいらっしゃいますか。

今回は、20191128日にPIC/Sが発表した、“リスクベースの変更管理との関連で、PQS(医薬品品質システム)の効果の評価・実証方法の提言”のドラフト(PI-054-1(Draft 1))について見ていきたいと

思います。

最後までお読みいただければ幸いです。

 

 

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“リスクベースの変更管理との関連で、PQSの効果の評価・実証方法の提言”のドラフト

(PI-054-1(Draft 1))
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※1章 文書履歴、2章 序論 省略

3章 目的

3.1 この文書の目的は、リスクベースの変更管理との関連で、PQS(医薬品品質システム:Pharmaceutical Quality System)の効果を評価し実証する指針を提供することにある。

  これは、PIC/S GMPガイドラインが企業に対し、PQSの効果を示し、変更管理活動にQRM(品質リスクマネジメント)の原則の適用を求めていることによる。

 

3.2  PIC/S GMPガイドライン1章では、PQSの効果と計画された変更に関し、以下のように述べていることに注意したほうがいい。

  ●原則

GMPQRMを取り入れ、包括的に設計され、正しく実装されたPQSがあるはずである。それは

完全に文書化され、その効果がモニタされているはずである。

  ●1.3

   システムの効果は、通常は、現場レベルで実証される。

  ●1.5

   経営層は効果的なPQSが実施されていることを保証する最終的な責任を持つ。

  ●1.4(xii)章 

   計画された変更の予想される評価と実施前の承認のための取り決めがされていなければならない。

 

3.3 変更管理に関連しPIC/S GMPガイドラインのAnnex15は以下のことを述べている。

  ●11.1

   変更管理は、ナレッジ管理の重要部分であり、医薬品品質システムの中で管理されるべきであ

る。

  ●11.4

品質リスクマネジメントが、計画された変更の評価、必要なプロセスバリデーション、検証または、再適格性評価の取り組みを計画するために使用されるべきである。

  ●11.7

   変更の効果の評価が実施されるべきである。

 

3.4 この文書の5章のガイダンスは、以下の点に対応している:

  ●リスクベースの変更提案に含まれている可能性がある重要な要素

  ●変更提案を行った医薬品製造業者による、変更提案のリスク視点からのアセスメント

その厳しさ、取り組み、文書作成は、リスクのレベルに釣り合っていて、変更による製品品質、安全性、効能、他の製品、工程、システムに対する潜在的なリスクと利点を適切に評価したリスクアセスメントを行っていること

●リスクレベルに基づく、医薬品製造業者による変更のカテゴリ化

●リスクアセスメントの結果と割り当てられたリスクレベルが、変更計画、優先順位付け、実施とそのタイムラインをコントロールするような変更の計画と実施の役割

  ●医薬品製造業者における変更のレビュと効果のアセスメント

変更が意図した目的と事前に定義した効果の基準を満たすかという観点で、残りのリスクが評価され、許容可能なレベルになるよう管理され、管理状態の維持を保証するために変更が継続的なモニタリングシステムによってモニタされていること

 

3.5 5章以下で立案されているガイダンスの製薬会社による適用は、リスクベースの変更管理に関連して、企業で、PQSの効果のエビデンスを提供することが検討されている。もし、そのようなリスクベースの変更管理システムが企業のPQSにあるならば、よりよい品質と製造能力、継続的な改善とイノベーションはもちろん、製品品質、患者の安全性に対する迅速なリスク管理にもつながるはずである。

 

3.6 前述のPIC/S GMPの要求の文脈だけでなく、効果的なPQSがあること(Appendix 1参照)を示したようなリスクベースの管理を述べたICH Q10の文脈も重要である。このガイダンスは、変更管理の承認後に関して、現在ICHで開発中のICH Q12のガイドラインの原則やコンセプトの実施をサポートするのにも有効かもしれない。

 

3.7 この提言とこのガイダンスで見込まれる利点の背景に関するより多くの情報は、PIC/S Concept Note PS/INF 88/2019(https://picscheme.org/en/publications)で提供されている。

 

4章 範囲

この文書は、医薬品と原薬の製造業者のGMP査察に適用される。

 

5章 リスクベースの変更管理との関連でPQSの効果の評価と/または実証のガイダンス

―以下のチェックリストはこの評価のために使えるツールである。

5.1 変更提案―いつ変更が必要かの判断

  □ 変更のトリガと、それに関連するエビデンスが明確に文書化されている。

    変更を引き起こすライフサイクルのファクタは以下のものを含む:

    ・装置や設備のアップグレード

    ・原材料の改善

    ・製造の能力と(ばらつきを減らし、生産量を向上するため等の)一貫性の改善

    ・生産能力の増強

    ・品質問題の是正

    ・逸脱、苦情/有害事象、是正処置・予防処置(CAPA)、製品品質レビュ、運用レビュ、マネジ

     メントレビュ、新しい法規制、適合性のギャップ

    ・イノベーションの実装または継続的な改善構想

  □ 提案された変更の目標、範囲、期待される結果、予想される利点が文書化されている。

  □ 提案された変更の、他の製品、工程、システム、製造所への潜在的な影響が評価され、論理的根

拠が文書化されている。

  □ 変更提案の作成と承認に、関連する専門家や利害関係者(例:さまざまなSME(主題専門家:Subject Matter Expert)、特定の部署)が関わっている。

  □ 保留中/承認された提案書類や規制上の義務に対処されている。

  □ システムは、変更がタイムリーに提案され、提案された変更が正式に評価され、提案の受理/

下が文書化されていることを保証している。却下された変更提案に関し、システムは、それらの却下の論理的根拠が文書化され、継続するリスクが適切に管理されていることを保証している。

 

5.2 変更のリスクアセスメント

  変更は通常は、変更管理システムの中で影響評価がされている。しかし、提案された変更に関する影響評価は、リスクアセスメントのように包括的でないことがしばしばある。影響評価は、変更を進めるために提案された変更を分類し、それらの影響等を判断する。しかし、提案された変更に発生するかもしれない問題にいつも完全に対処しているわけではない。また、現在の製品や工程の知識、管理戦略、製品ライフサイクルの状況のもとで、改善できることにしばしば対処していない。

  そのために、変更に関する体系的なリスクアセスメントが実施されるべきであり、可能であれば、変更は製品の品質リスクと/または患者の安全上の危険を減らすべきである。少なくとも、変更は、現在のレベルを超えてリスクを増やすべきでないし、工程のばらつきが起こる可能性があってはならない。

  変更管理システムは、下記のポイントを考慮し、変更に関する科学とナレッジベースのリスクアセスメントが実施され、文書化されていることを保証する:

   厳しさ、取り組み(例:試験、バリデーション、レビュ)と文書化がリスクのレベルに一致している。

   リスクアセスメントが、変更による、製品品質、安全性、有効性に対する潜在的なリスクと利点を評価している。

   リスクアセスメントが、他の製品、工程、システムに対する潜在的なリスクと利点を評価している。

   リスクアセスメントが現在のリスク管理及び必要とされるリスク管理を特定し文書化している。

   現在の製品と工程の知識を使って、変更とそれらのリスクが評価されている。適切なデータと情報がそれらのリスクアセスメントを裏付けるために使用(または、必要であれば生成)されている。

   変更の分類が適切でリスクのレベルに基づいている。

 

5.3 変更の計画と実施

  □ リスクアセスメントの結果と、割り当てられたリスクレベルが変更の計画、優先順位付け、実施

とそれらのタイムラインを決定している。

   許容基準や変更の効果の基準はもちろん、変更を裏付けるデータが、変更計画の中で予め定義されている。これらは、リスク管理の定量的な評価を助けるための継続的なプロセスバリデーション(CPV)や、統計的な評価(例:CpK/PpK)等を含んでいる。

   現在のリスク(変更が実施されるまで)と、変更の過程で一時的にもたらされるリスクが適切に評価されている。

   現在の状況(変更が実施されるまで)と関連するリスクをモニタし、リスクを軽減するために、暫定的な管理(短期的処置)がタイムリーに特定され実施されている。

   発見されたリスク管理の方法がタイムリーに適切に実施されている。

   システムは、変更の実施を進めるための承認が文書化されていることを保証している。

   変更が実施された後、関連するリスクアセスメントがレビュされ、改訂されている。

   妥当と判断された場合は、関連するタイムリーな改訂が文書にされている。

(例:年次報告は関連する全ての変更を含んでいなければならない)

 

5.4 変更のレビュと有効性

●変更の完了前

   変更が、意図した目的と予め定義された有効性の基準を満たしている。それらの基準からのいかなる逸脱も適切に評価/承認され、管理/妥当である根拠が示されている。可能であれば定量的なデータが、変更の有効性(例:統計的な信頼度と範囲)を客観的に判断するために活用されている。

   品質リスクマネジメント活動の一環として、残存リスクが評価され、許容可能なレベルまで管理され、適切な手順の適応と管理が実施されている。

   変更の結果として生じた意図しない結果やリスクは評価され、文書化され、承認され、適切に処理され、予め定義されたモニタリングの時間枠の対象となっている。

 

 ●変更管理前または変更完了後

  □ 必要とされる実施後のアクション(予め定義された許容基準からの逸脱と/またはCAPAを含む)が特定され、適切に完了している。

  □ 有効性のアセスメント後に、関連するリスクアセスメントが更新されている。

    それらのリスクアセスメントに起因する新しい製品/工程の知識は、品質及び作業の文書(例:SOP、報告書、製品管理戦略文書等)に保存されている。

   管理状態の維持を保証するために、変更は継続的なモニタリングシステムによって監視されていて、学んだ教訓が保存され、共有され伝えられている。

 

5.5 結論

上記ガイダンスの適用には、効果的で科学的なリスクベースの変更管理システムの十分なエビデンス

を提供しなければいけない。それは、可能であれば、製品品質と患者の安全性のリスクの適切でタイ

ムリーな管理を通じて、よりよい品質性能、製造実績、継続的な改善とイノベーションを保証するた

めのリスク軽減につながらなければならない。

 

 

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まとめ
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この文書は、医薬品及び原薬製造業者に対するGMP査察官向けに作られた、リスクベースの変更管理に関連して医薬品品質システムが効果的に運用されているかを評価するためのガイダンスのドラフトで、正式版の適用はまだ先の話となります。

 

ドラフトというだけあって、わかりづらい部分もあるのですが、5章は、リスクベースで変更管理が正しく行われているかを評価するためのチェックリストとして利用できそうです。

 

変更というと、どうしても、変更前後の状態に注目しがちですが、5.3章で変更の過程(変更の実施中)のリスクにも注目している点が参考になります。

 

次回は、4/1(水)に配信させていただきます。