ASTROM通信バックナンバー

2021.07.01

【EU GMPノンコンプライアンスレポート】ASTROM通信<221号>

 

~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは

ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

 

新型コロナに気を取られているうちに、あっという間に今年も折り返し地点まできてしまいましたが、

いかがお過ごしでいらっしゃいますか?

 

さて、今回は、EU GMPのノンコンプライアンスレポート(Non-Compliance Report5件を取り上げ

たいと思います。

EUの規制当局がどんな点を指摘しているのか、参考にしてみていただければと思います。

 

最後までお読みいただければ幸いです。

 

 

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1.EU GMPノンコンプライアンスレポート  

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EU GMPノンコンプライアンスレポートは、EUの当局による製造所の査察において、EU GMPに不適合と判断

される不備が見つかった場合に発行されるもので、3部構成になっています。

Part1に確認した当局の名前、製造業者の名前、製造所の住所等、Part2にノンコンプライアントな製造オペ

レーション、Part3に不備の内容、EUの対策等が書かれています。

査察結果を報告するという点ではFDAのウォーニングレターと似ていますが、ウォーニングレターに比べて、

指摘の内容があまり詳しくありません。また、不備を、クリティカル(Critical)、メジャー(Major)、

その他(Others)に分類しているという特徴があります。ここでは、Part3の内容をみていきたいと思います。

 

Report No : CH20-0177

スイス医薬品局が2020/2/28にインドの製造業者を査察して得た情報から、この製造業者はEUとスイス間の

相互認証協定(MRA)に照らしてGMP要件に従っていないとみなされ、2020/4/20にノンコンプライアンス

レポートが発行された。

●ノンコンプライアンスの性質

スイス医薬品局/EDQM(医薬品品質欧州理事会)の合同査察中、クリティカル:1件、メジャー:7件、その他:

11件の不備が見つかった。クリティカルの不備は、患者に有害になりうる製造品の潜在的なリスクを引き

起こす状況につながるQAの不十分な監督に関係している。

ラベル貼付を含む資材の管理、トレーサビリティ、保管条件、調剤、洗浄、原材料の害虫駆除、中間体、

溶媒及び回収溶媒に関する貴社のアプローチは、EU GMPに従っていないとみなされた。

会社は、多目的設備内の交叉汚染のリスクの軽減を怠り、サンプリング・調剤・合成エリアで新しい化学

物質を導入する前に取られるべき必要な手段を意識していなかった。

精製プラント内の洗浄が難しい設備・3A及び3Bの製造ユニット・ドラムや保管エリア内のさびや汚れの原因

となる、効果的な保全・洗浄の不足が明らかだった。

精製プラント内の溶媒の回収は適切に管理・文書化されていなかった。

ジヒドロタキステロールのプロセスバリデーションの欠陥がみつかった。

高度の活性物質(プロゲステロン)が取り扱われているにもかかわらず、洗浄バリデーションが多目的の

中間体製造ユニット3Cで実施されていなかった。

発見されたクリティカル及びメジャーの逸脱は、製造ユニット9を除く多目的工場内で製造される全ての

中間体と原薬にリスクをもたらす。

 

NCA(National Competent Authorities)によりとられた/提案された行動

・製造承認の差し止め

 この製造業者は、全ての新しい/継続中の製造承認または変更申請を承認されるべきでない。有効成分の

 代わりの製造業者の導入に関する変更申請が推奨される。

・出荷済ロットの回収

・供給禁止

 ノンコンプライアンスレポートの発行後、それが有効な間は、代替供給者がなく原薬の不足のリスクが

 なければ、原薬の供給中止(ユニット9で製造された原薬を除く)が推奨される。

 いくつかの重要な製品の供給が懸念される。従って、重要な製品の代替の原薬供給者の適格性を評価して

 いる間、発見されたGMPの不備に関連したリスクを軽減するために、NCAにより賛同された手順を制定する

 ためにリスクアセスメントの実施が求められる。

CEP(適合証明書)の停止や無効化(EDQMにより取られるアクション)

 CEPの停止または取り消しが推奨される。

 

●追加コメント

フランス当局により発行されたGMP証明書#16MPP065HPT01の取消が推奨される。GMP不適合が全ての原薬に

あてはまるが、ユニット9で製造された製品に関して発見された不備への適応はできない。高度に強力なAPI

の製造専用のこのユニットは、専用の保管設備と品質管理設備を持ち、他の製造ユニット/エリアと分離

されていて、査察の対象ではなかった。ユニット10で製造された製品に関してみつかった不備はあてはま

らない。このユニットは、原薬に適用されたのとは異なるGMP要件があてはまる医薬品を製造しているので、

現在の査察の対象外である。

 

出典:

http://eudragmdp.ema.europa.eu/inspections/gmpc/searchGMPNonCompliance.do?ctrl=searchGMPNCResultControlList&action=Drilldown&param=85650

 

 

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Report No :  INS-482723-12976686

オーストリアの当局が2020/5/14にオーストリアの製造業者を査察して得た情報からこの製造業者はGMP要件

に従っていないとみなされ、2020/6/30にノンコンプライアンスレポートが発行された。

●ノンコンプライアンスの性質

会社は、2020630日まで、限定製造承認を保持していたが、会社のCAPA計画の評価に基づき、製造承認は

延長できない。

供給者の適格性評価、変更管理、逸脱管理、装置の適格性評価、コンピュータ化システムのバリデーション、

文書化手順の分野におけるメジャーのシステム的な不備が解決されなかった。

NCAによりとられた/提案された行動

・製造承認No.482723の全ての取り消し

 会社は、2020630日まで有効な限定製造承認INS-482723-0003-016と、2020630日まで有効な有効

 成分の販売承認INS-482723-0003-017を持っていた。両承認は、延長できない。

・現在有効なGMP証明書No.482723-0003の取り消し

 会社は2020630日まで有効な現地GMP証明書を持っていたが、新しい証明書は発行されないだろう。

 

出典:

http://eudragmdp.ema.europa.eu/inspections/gmpc/searchGMPNonCompliance.do?ctrl=searchGMPNCResultControlList&action=Drilldown&param=94702

 

 

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Report No :  CH20-0566

スイス医薬品局が2020/8/28にスイスの製造業者を査察して得た情報から、この製造業者はEUとスイス間の

相互認証協定(MRA)に照らしてGMP要件に従っていないとみなされ、2020/9/30にノンコンプライアンス

レポートが発行された。

●ノンコンプライアンスの性質

ノンコンプライアンスレポートが発行されてから状況が変わったので、スイス医薬品局はノンコンプライ

アンスレポートをアップデートした。

この会社は、2020年の12月のはじめに、破産申請をして廃業した。

スイス医薬品局は20201231日まで有効だった製造承認を取り消した。

スイス医薬品局は、2020827日~28日に実施された査察でクリティカル:5件、メジャー:14件、その他

6件の不備をみつけ、無菌製品の製造に関して2020930日にノンコンプライアンスレポートを発行した。

不備は以下の内容を含んでいた:

・クリーンルームの空気品質の不十分な管理

・一部のクリームルームの空気処理システムの不完全な適格性評価

・無菌で製造された製品の除菌作業の不完全なバリデーション

・一部の製造ラインの培地充填の不十分な頻度(2x/年未満)

・培地充填で発生した逸脱がタイムリーに完了されていない (逸脱は濁度には関係していなかった)

・不十分な逸脱管理

・装置の品質保全と適格性評価の状態が最新でなかった。

 

NCAによりとられた/提案された行動

・製造承認の取り消し

 倒産した会社の製品に関するGMP関連文書の提出のニーズがある/保管・参考品サンプルや安定性プログラム

 のサンプルが譲渡されなければならないなら、倒産した会社で製造された製品の製造承認保持者がチェック

 されるべきである。

・出荷済ロットの回収

 スイス医薬品局は、それが治療のための使用/代替品の入手可能性により重要な製品を除き、スイス市場に

 ある無菌製品の全てのロットの回収を開始するだろう。

 

●追加コメント

会社はもはや存在していないので、いかなる文章にも承認や回答する立場にない。今後、ノンコンプライ

アンスレポートの改訂はされないだろう。

 

出典:

http://eudragmdp.ema.europa.eu/inspections/gmpc/searchGMPNonCompliance.do?ctrl=searchGMPNCResultControlList&action=Drilldown&param=125802

 

 

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Report No :  NL/H 21/V2017937

オランダの当局が2021/2/25にオランダの製造業者を査察して得た情報からこの製造業者はGMP要件に従って

いないとみなされ、2021/4/19にノンコンプライアンスレポートが発行された。

●ノンコンプライアンスの性質

2021/2/25に実施された査察中、合計13の不備がみつかった。1件はクリティカル、1件はメジャーとして分類

された。会社は、ATMPsAdvanced Therapy Medical Products)に関し、GMPの原則を順守する能力に欠けて

いることを示していた。

重大な不備の5つの主な部分をまとめる。会社は、以下の査察結果によると、製品の安全性と効能を十分に

保証していなかった。

1.出発原料の品質と安全性が保障されていない。

2.最終製品の品質と安全性が保障されていない。製品は十分に規定され特性を明確にされていない。

3.ガンマ線照射手順の手順と製品の安全性が所掌されていない。

  細胞のガンマ線照射に関し、受託業者1から受託業者2への変更がATMPに関するGMPの通りに実施されていな

  かった。

4.(交叉)汚染の防止が十分に保証されていない。

5.環境モニタリングプログラムと職員のモニタリングが不十分である。結果として、製造所で製造された

    製品ERC1671/Gliovacの品質と安全性が保証されていない。

 

NCAによりとられた/提案された行動

・出荷済ロットの回収

 会社は、ATMP ERC1671/Gliovac1種を製造している。これは、患者毎に多数の治療を行う自己移植・同種

 異系の方法で使用される。出荷された製品は患者に投与されているので回収はしない。

・供給禁止

 ATMP ERC1671/Gliovacの販売の差し止め

・その他

 NCAにより十分なGMPレベルが確認されるまで、認可された活動の差し止め

 

出典:

http://eudragmdp.ema.europa.eu/inspections/gmpc/searchGMPNonCompliance.do?ctrl=searchGMPNCResultControlList&action=Drilldown&param=126002

 

 

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Report No :  OGYEI/37756-2/2021

ハンガリーの当局が2021/6/2にハンガリーの製造業者を査察して得た情報からこの製造業者はGMP要件に従って

いないとみなされ、2021/6/10にノンコンプライアンスレポートが発行された。

●ノンコンプライアンスの性質

202161日~2日に実施された査察中、3件のクリティカルの不備と、メジャーとしていくつかの不備がみつ

かった。会社は、GMPの原則を順守する能力に欠けていることを示していた。会社は、3件のクリティカルな

不備により、以下の通り、製品の安全性とトレーサビリティを十分に保証していなかった:

1.バイオハザードのリスクにより処分が決まった、不合格の血漿ユニットの取り扱いが安全でなかった。

  不合格の血漿ユニット (例えば、感染したドナーから得たユニット) の冷蔵庫内の物理的な隔離がされて

  いなかった。ラベルは誤解を招くものだった。処分に関する明確な文書化された指示がなかった。

2.血漿の管理のためのITソフトウエアはシステムの複雑さに照らしてバリデートされていなかった。

  間違った分類とバリデーションは、不正確なデータ管理の原因となった。

  例えば、以前のソフトウエアからのデータ移行は、管理された方法で行っていなかった。監査証跡は

  会社のせいでアクセスできず、データ・インテグリティが損なわれた。

3.ローデータを含む紙ベースの記録は、管理された特別な場所に保管されていなかった。記録の場所を示す

  リスト、長期(30年)のドナーと血液の提供から医薬品のロットまでのトレーサビリティ及びその逆の

  トレーサビリティが保証されていなかった。

メジャーの不備は、以下に関連する内容がみつかった:

例)・ベンダの選択と承認、契約の非常に貧弱な技術的側面)

GMPに関連する原材料の不適切な識別と保管

・不十分な文書化手順

 

NCAによりとられた/提案された行動

・製造承認No.HU-M-PLCTの全ての取り消し

 NCAにより十分なGMPレベルが確認されるまで、認可された活動の差し止め

・現在有効なGMP証明書No.17294-8/2018の取り消し

 GMP証明書の無効化

・供給禁止

 回収は不要。さらなる通知があるまで、製造業者の冷凍庫内で現在保管されている血漿ユニットは

 隔離されていなければならない。

 

出典:http://eudragmdp.ema.europa.eu/inspections/gmpc/searchGMPNonCompliance.do?ctrl=searchGMPNCResultControlList&action=Drilldown&param=129602

 

 

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まとめ

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いかがでしたでしょうか。

メールマガジンの原稿を作成するにあたり、20201月以降に出たノンコンプライアンスレポートを検索した

ところ、わずか5件しかなかったことから、あらためて新型コロナの影響を実感しました。

 

EUのノンコンプライアンスレポートは、FDAのウォーニングレターに比べて詳細が書かれていないのでわかり

づらい部分もあるのですが、交叉汚染対策の不備、不十分な適格性評価や逸脱管理など、ウォーニングレター

でもよく見かける指摘が挙げられており、FDAの査察と大きなギャップは感じられませんでした。

 

ただ、5件のノンコンプライアンスレポートのうち2件でコンピュータ化システムのバリデーションの不備の

指摘が挙がっていたことは非常に興味深いです。

ウォーニングレターでは、データ・インテグリティに対する指摘は見られても、コンピュータ化システムの

バリデーションに対する指摘を見ることはありませんでした。

今のところあまり進展はしていませんが、今後EUFDAの査察情報の共有が進むにつれて、FDA査察でも

コンピュータ化システムのバリデーションについて指摘が増える可能性があります。

今後の動きに注目していきたいと思います。

 

 

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